「人理継続保障機関 フィニス・カルデア」
時計塔の最高峰である「ロード」の一角。魔術師の名門、「アニムスフィア家」のよって管理
特異点と呼ばれる穴を修復することで、人理を継続させる。その行いは、まさに正義の味方の善行と言っても差し支えないだろう。
もっとも、色々あって現在は本拠地を離れて「ノウム・カルデア」で業務活動を行っているのだが。
というのは表の姿。
もしカルデアに就職したいという者がいるなら、一切の幻想は捨てた方が身のためさ。
脳を直接破壊するオリジナルソングを披露するトカゲ少女や、何かと反逆を推奨する筋肉男が英霊として駐在しているんだ。
何が恐ろしいかというと、上の二人はまだ優しい方ってことさ。
「聖杯」と呼ばれる超魔力リソースを無断使用するヘビ姫が居れば、勝手に霊気を夏使用に改造する女王だっている。当然トラブルなど日常茶飯事。まともな思考をしている内に、退職願いを申請して時計塔でチヤホヤされる方がマシって話だよ。
道を歩けば英霊ばかり。曲がり角を通る時には、絶対にぶつからないようにするべきだね。
そんな英霊たち全員と友好な関係を築いている我が弟子……いや、マスターには、流石に尊敬と憐れみの念を送らざるを得ないね。
なんてことをボヤいているこの時にも、トラブルの種は芽生えんとしているのさ。
ビーッ! ビーッ! ビーッ! ビーッ!
ホラ、警報が鳴っただろう? あぁ、君は管制塔の職員だったね。急いだ方が良いんじゃないかい?
あっ! 待ってくれ! もし我が弟子に会えたら伝えてくれ!
「『
いい!? 憶えたかい!? ホントは義兄が言ってた言葉なんだけど、ライネスが言ってたってことにしておいてくれよ!?
【遡ること数時間前……】
アビゲイル・ウィリアムズは激怒した。必ず、かの邪知暴虐のダヴィンチちゃんを除かなければならぬと決意した。
『ごめんね? シミュレーションルームは今バルサン焚いてるから使えないんだ』
「えぇ……。規則通りに予約してたのに……」
『ごめんね? シミュレーションルームは今バルサン焚いてるから使えないんだ』
「……?」
『ごめんね? シミュレーションルームは今バルサン焚いてるから使えないんだ』
「ホログラムだコレ!!」
アビゲイルはどすどすと足音を立てて進軍した。やがてダヴィンチちゃんを見つけられないと悟ると、腹の底に溜まった鬱憤を晴らすために、マスターの部屋へと歩くのだった。
廊下を歩くと、みんなが手を振ってくれた。眉間にシワを寄せながら歩く彼女の姿は、恐怖よりも可愛らしさが勝ってしまうらしい。
しかし憶えているだろうか。アビゲイル自身が、恐怖ではなく、根源的恐怖の支配する者だということを。
そんなこともいざ知らず、アビゲイルは進み続けた。
「まったく、バカみたい! 吞気にしていられるのも今のうちだわ! レクリエーションルームが使えなくなったら、巴さんとおっきーさんが暴れるに決まってるわ!」
「そーんな怒っていってぇどうしてんでぃ?」
独り言を呟いていたつもりが、意図せず大きな声に変身していたようだ。
アビゲイルと同じく廊下を歩いていた、「
「あ、あら、ごきげんよう。北斎さん。今日はカタナを持ってないんですね」
「うっ……。嬢ちゃん、めんこい顔してかなりエグい所突くじゃねぇか……。ってそんなことよりよ、俺の質問に答えてくれよ」
「いえ、何でもないのよ? 本当よ?」
「ほ~ん……。まぁ、深入りはしねぇけどよ。それじゃ、とと様がますたぁに会いたいって言うもんだから、失礼するぜ」
慌てふためくアビゲイルとは対称に、葛飾北斎(若気の至りの方ではない)はスタスタとその場を後にした。
アビゲイルは焦った。マスターを味方につけてダヴィンチちゃんを提訴するという計画が遅れてしまうからだ。何とか北斎の前に出ようと必死に歩くが、そもそもの身長の差なのか、歩幅の違いでむしろ差を広げられてしまった。
「ふん! 北斎さんったら大人げないのね! いいもん! マスターは私のパンケーキが大好きなんだから!」
北斎に勝てないと知ったアビゲイルは、逆に堂々と歩くのであった。
そして到着したマスターの部屋。絆10が大量に居るカルデアでは、休日にマスターと遊ぶという行為はとてもとても倍率が高いものとなっていた。
何か嫌な予感を感じながら、アビゲイルはそろりとドアを開けた。
「えへ、えへ。わ、私はマスターさんと居られるだけで良かったのに、こんな多くの方と話ができるなんて、えへ、ゴッホ感激……」
「クハハハハ!!喧騒というものも悪くない!狂乱と狂騒に身を委ねよ!!!」
「うるせぇい! てめぇ俺たちの邪魔すんならとっととあっち行ってろい!」
カオスを具現化させたような部屋の有様に、アビゲイルは大きな声で嘆くのであった。
「絶対こうなってるって思ったわ!!!」
キイイイイイイイイイイン・・・・・・。
▼キャラクリエイトが完了しました。
・名前 素性
・ 藤丸立香 村の生き残り
・ アビゲイル・ウィリアムズ 過酷な運命
・ 葛飾北斎 プロフェッショナル
・ ヴァン・ゴッホ 過酷な運命
・ ■■■■・■■■・■■■ 従軍経験
・ ■■■■ プロフェッショナル
・ ■■■■■ プロフェッショナル
以上の三名は、助っ人として参加されます。
初期リスポーン地点、開始ステータス等は全てランダムで決定されます。
デスペナルティとして、一定時間内に定められた回数以上死亡すると、領域外の生命体に招集される可能性が上昇します。
最終目標。下記のうちのどれか一つを達成するとゲームクリアとなります。
・■■■■■■■■を全て使用し、資格を手にする。
・■■■■■■の討伐し、秘匿された真実を暴く。
・自分以外の全プレイヤーの討伐5回以上+全狩人の討伐。
・深き聖杯の最深部から■■■■■■を回収する。
ゲームオーバー条件は生命維持活動の停止です。達成するごとに、ステータスの再配分が行われますが、発狂耐性のみが著しく減少します。また、アビゲイル・ウィリアムズが座に還った場合に限り、ペナルティとして参加者の魂は狩人の夢に監禁されます。
特殊実績。下記の項目を達成するごとに死亡します。啓蒙と発狂耐性が上昇する代わりに、獣性が著しく減少します。
・狩人に討伐される。
・高次元的思想に理解を示す。
・発狂する。
・特定の狩人を討伐する。
・特定の■■■を討伐する。
これほど説明してあげたんだ。君たちは私の最終兵器なんだよ。
状況はかなりマズい。悠長に解説している時間なんて無い。そう、もはや私に手段を選ぶという選択肢は残されていなんだ。
面倒だとは感じるが、君たちのような矮小な存在に申し訳ないという感情は抱かない。私は使う側、君たちは使われる側。その事実を理解したまえよ。
君たちは、ただ本能の赴くままに獣を狩り、無知なる存在を破壊し尽くせばいいんだ。何も考えなくても、結果としては私の悲願の達成に繋がる。
だから、君たちは『工房の狩人』を片付けてくれ。他でもない、私のためにね……。
はい、よーいスタート。
【亜種特異点 獣病隔絶都市ヤーナム 人理定礎値??】
一つの部屋に
最初に異変に気付いたのは巌窟王であった。マスター――藤丸 立香の足元が青白く発光していたのだ。彼だけではない、室内を賑わせていた少女たちの足元も同様に発光していたのだ。
「何だ……?この光は……」
「マズい!全員、俺に掴まれ!!」
岩窟王の声も一歩届かず、藤丸たちの肉体は既に霊体化していた。掴む物も掴めず、アビゲイルたちは意識を失ったかのように倒れていった。
「おああああ!?助けてエドモン!!」
「グッ……!!不可逆的な転送だ!何者かがマスターたちを必要としている!!抑止力として召喚されるぞ!!」
「ど、どうすれば良いってんだい!?あぁ!?あびげいるが消えちまったぁ!!」
「待て、しかして希望せよ!必ずやこの巌窟王が救出に向かう!!好機を待ち続けろ!!クハハハハ!!」
「「何笑ってんだよ!!」」
白く輝く廊下から、青白い光が一つの部屋から漏れ出した。それと同時に、汎人類史の英霊たちから、数名のサーヴァントと一人のマスターの反応が消失した。
カルデアの頭脳であるダヴィンチちゃんやホームズが、その事態の緊急性に気づくのはもう少し後の話。