黄金の旅路 俺の愛バは凶暴です   作:くろわっさん

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久々の更新なのに感想書いてくれたみんな、ありがとうナス!


万葉ステークス / 松籟ステークス / GIIIダイヤモンドステークス

 クラシック最後のレースでユタカ騒動を終え、新しい年を迎えてシニア級に突入したリョテイ。

 

 菊花賞での敗北が堪えた為か最近はスタミナ強化に励んでいるリョテイに合わせて、次のレースは長距離に照準を合わせて3000mの万葉ステークスに決定した。

 

 オープンクラスの格上挑戦になるが、リョテイの能力なら勝ちきれる筈だ。

 

 そして、ひと月の休養を明けてリョテイのシニアへの挑戦が始まったのだが……

 

 

 

 

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 1月後半 万葉ステークス 京都 芝 3000m

 

 3枠4番、2番人気でリョテイは出走した。序盤からいい感じにレースを進め、外に膨らむ他のウマ娘を他所に鋭くインを突いたリョテイは、最終コーナーを抜けた時には単独で先頭に立っていた。

 

「“ 先頭はキンイロリョテイ! 間からユーセイトップランも上がってくる! ”」

 

 残り100で1バ身のリードを付けていたリョテイだが、ユーセイトップランも驚異的な追い上げで迫る。50メートルになった時にはその差は無くなっていた。

 

「“キンイロリョテイ! ユーセイトップラン!! 二人並んでゴールインッ!! ”」

 

 ゴール板を抜けた時には完全に同着となり、勝負は写真判定へともつれ込んだ。

 

 その結果……リョテイは惜しくもハナ差で敗れ、2着となったのだった。

 

 

 

 

 

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 2月前半 松籟ステークス 京都 芝 2400m

 

 ひとつ落として3勝クラスのレースで、距離も落して中距離のものに挑戦してみた。

 

 惜しい勝負が続いたが、これならば勝ちきれると俺とリョテイは納得してレースに挑む。

 

 リョテイは7枠14番、2番人気で外側からの出走となった。

 

 このレースでは後方12番手からじんわりと抑えながら走る展開となる。隣にはピッタリと同じく7枠のアラバンサが着いており、そのまま終盤までふたりで走ることとなった。

 

 直線に入りリョテイが仕掛け、残り1ハロンで先頭を捉えて追い越すも、あとから仕掛けてきたアラバンサが猛追。またしてももつれ込むように2人同時にゴール板を通過した。

 

 タイムは共に2:28:0。上がり3ハロンも同じく35.8。完全に同着に見られた勝負だったが、結果はハナ差リョテイの敗北。

 

 リョテイは3レース連続で僅差で敗北を喫するのだった。

 

 

 

 

 

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 勝ちきれないレースが続くある日のこと。アークトゥルスのチームルームに来ていたゴールドシップが何の気なしに呟いた。

 

「もうここまで来たらどのレースに出ても2着取れんじゃね?」

 

「んなワケねぇだろ。アタシが取りたくて2着とってるとでも思ってんのか!」

 

 シップにリョテイは少し声を大きくして正論のツッコミをいれる。

 

 リョテイの言う通りそんな訳がない。レースの世界は実力と運の勝負だ。もし仮にやる気がなくて勝負を捨てたとしても、1着にならないことが出来るだけで、狙ったら着順に入るのは不可能に近いだろう。

 

 まあどうにもならないくらい圧倒的な強者がいて、他に勝ててもソイツに勝てないみたいな救いは無いのですかと言わんばかりの状況なら連続2着は取れるのだろうが……リョテイの場合は全て違う相手だし、運命のイタズラとしか思えない連続だ。

 

「どうせ同じ着順なら1着のほうがいいに決まってんだろ」

 

「そりゃ違いないね。ところでこのサイコロ振ってみてくれよ。もしかしたら連続で2が出るかも知れない」

 

「ケンカ売ってんのか!? ぜってえ振らねえよ!」

 

 フェスタがリョテイをからかって怒られているのを横目に見ながら、俺は次のレースを探していた。

 

 シップの言うことを真に受ける訳では無いが、リョテイはもしかしたら相手なりに走っていけるのではないかと思ってしまったのだ。

 

 昔からリョテイは併せ練習だけは欠かさず行っていた。理由はしょうもないが、相手の顔を見ながら走り抜ける力を持っていても決して千切らず離されずで走れるのだ。それが癖になっている可能性はなくはないのだろうか。

 

 そうして、俺が考えた次のレースはGIIIダイヤモンドステークスだ。ただ、中2週間で連続で走ることになるため、リョテイの調子次第では無理かと思ったのだが……

 

「重賞? 待ってたぜ! ここで勝ってコイツらにアタシという存在の偉大さを再確認させてやる!!」

 

「腕が! 腕が曲がっちゃいけないほうに曲がりそうっ!!」

 

「ウマ娘だから大丈夫だぞ。走るのに腕は要らねえよなぁ!?」

 

 と、めちゃくちゃ乗り気だったので出走登録をしたのだが……あと、ウマ娘でも腕でも怪我したら困るから辞めなさい。

 

 見たことないプロレス技をフェスタに仕掛けるリョテイを止めて、俺はレースを目標に日々を過ごすことになる。

 

 

 

 

 

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 レース当日。俺がその違和感を覚えたのは、控え室でリョテイと今日のレースの作戦を再確認していた時だった。

 

「──だから今日は先行寄りの走りで、トップ集団か中段前方で待機して、最後に仕掛ける作戦で行こう」

 

「おー」

 

「やる気のない返事だな……大丈夫か?」

 

「んー。あー。大丈夫だっての」

 

 リョテイの声は覇気がなく、生返事を繰り返すだけだった。レースに支障のある不調は起こしてなさそうだが、やる気がないのか元気がないのか判断に困る様子だ。

 

 不審に思いリョテイの状態を改めて確認する。肌がいつもより荒れている。顔色は悪くないが、何だかいつもと違うようだ。

 

 半袖短パンにゼッケンを付けたレースウェア。そして視線を脚に移す。そこで気がついた。

 

 普段よりトモが1センチくらい細くなってるじゃないか!? 

 

 黄金とも言えるキンイロリョテイの太腿が、黄金比を崩し掛けている。毎日ジャージだろうと制服だろうと、私服姿だろうと観察を欠かさないので気づけた。とてつもなく些細な変化、俺じゃなかったら見逃しちゃうね。

 

「リョテイ。ちゃんと飯食ってるか?」

 

「あー、そういやあんまり腹減らないから食ってねえな」

 

「おい! タダでさえ小食なんだから食事量を勝手に減らすんじゃない!!」

 

 俺は前のめりになってリョテイに熱説するも、耳をほじりながら聞き流される。うっせえわくらいにしか思われてねえ……貴方が思うより健康ですってか!? 

 

 オグリキャップほど食べろとは言わないが、現役ウマ娘なのだから俺よりは食べて欲しいが、コイツは昼からカツサンドふたつとかしか食べない。太り気味とは無縁だが、痩せすぎてパワーが出ないのでは世話がない。お米食べろ! 

 

 どれだけ体重が減ってしまったのかすぐに確かめたくなった俺は立ち上がり、その場でリョテイの両脇を抱えて持ち上げた。

 

「げ……1キロ以上減ってるじゃないか……ウエイトだとすると、よんじゅういっ……てぇ!!?」

 

 ウエイトトレーニングで鍛えた俺の正確無比な測量スキルを発揮しようとしたところ、リョテイからグーで鼻っ面を殴られた。落とすことは無かったが、じたばた藻掻いて猫のように腕からすり抜けていくリョテイ。

 

「デリカシーってもんがねえのかてめえは!!」

 

 怒ったリョテイは大股で歩いていった。何処にと尋ねようとする前に、「パドックだよッ!!」とキレ気味に返され言葉を無くした。

 

「グーパンは無いだろ……アイツも連敗でストレス感じてたんだな」

 

 ヒリヒリと痛む鼻を擦りながら、俺は次こそは勝利をと祈るのだった。

 

 

 

 

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 2月後半 GIII ダイヤモンドステークス 東京 芝3200m

 

 菊花賞の3000を超える3200mという長丁場のレース。リョテイのステイヤーとしての才能を感じた俺はこのレースを選んだ。

 

 7枠14番。格上戦ながら3番人気と上々の評価をもらったリョテイは、出遅れることなくスタートを切った。

 

 レース前に不機嫌にさせてしまったが、作戦通りに5番手に付けて着々とレースを進めていくリョテイ。そして最終コーナーを抜けて大外から一気に仕掛けた。

 

「“ キンイロリョテイが仕掛けてきた! 横一線に固まって勝負はまだ分からない!! ”」

 

 直線に入った時には1バ身以内に六人のウマ娘が並び、ゴール目掛けてスパートをかけていく。そこから1人抜け出したのはリョテイだった。

 

 残り400で完全にトップに立つ。しかし、後ろから猛烈な追い込みをかけてくるウマ娘がいた。

 

「“ ユーセイトップランが上がってくる! ”」

 

 万葉ステークスでリョテイに泥をつけたウマ娘、ユーセイトップランが後方で脚を貯めていたを解放して、またしてもリョテイに迫ってくる。

 

 残り200で並ばれ、そのまま追い越されてしまった。先行策と大外回りの仕掛で、スタミナを使ってしまったリョテイは追いつくことが出来ず、そのまま1と½バ身の差をつけられ2着でゴール板を通過した。

 

 これにより、リョテイは4連続2着でレースを終えることとなった。

 

 

 

 

 

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「えー、この度リョテイがオープン入りを果たしました。一先ず、おめでとう」

 

 重賞競走であるダイヤモンドステークスで2着に入着し、収得賞金額が基準を超えたリョテイは一流ウマ娘の目安であるオープン入りを果たした。

 

 アークトゥルスのチームルームで、俺たちはその打ち上げを行っていたのだが、その空気はお祝いムードというには程遠いものになっていた。

 

「おいおい! どうしたよ! オープン入りだぞ!? もっと喜べよ!」

 

 シップが場を盛り上げようとするが、フェスタは苦笑いするだけだし、俺もなんとも言えない。当のリョテイは不機嫌丸出しで腕を組みながら鋭い視線をシップにぶつけていた。

 

 シップの言う通りオープン入りとは本来かなり喜ばしいことだ。年間7000人あまりのウマ娘がデビューする中、その上位3パーセント程しかオープン入りを果たすことが出来ないのだ。

 

 そう考えれば中央でオープン入りを果たしたリョテイは、一流ウマ娘に間違いはない。俺も3年目の新人で、初めての担当がオープン入りした時点で十分に良くやっていると先輩から言われた。天下のトレセン学園ですら中央で一勝も出ないウマ娘が数多く在籍している。俺たちが優秀であるということに間違いは無いのだが……

 

「勝ってねえのに喜べるわけねえだろ!」

 

 リョテイが静寂を打ち破る。乱暴な物言いだが、その一言に尽きるとしか言い様がない。

 

 この歯痒さはいくつもの獲れた勝利を零してきたからに違いない。

 

 力不足は感じなかった。コンマ数秒の世界の闘いであるが、リョテイが勝ってもおかしくないレースが続きすぎた。そう、リョテイの持つ素質ならもっと上に行ける筈だ。

 

「まあ落ち着けよリョテイ。ネットでもお前の名前がチラホラ上がるようになってきてんだからよ」

 

 リョテイを宥めるようにシップがスマホの画面を見せていた。だがリョテイは落ち着くどころか、無言で肩を震わせていた。

 

 どんな酷評があるのか、というかなぜ酷評を見せたのか気になった俺は自分のスマホでキンイロリョテイの名を調べた。

 

 まず“ キンイロリョテイ”まで打ったところでサジェストには“ 阿寒湖特別” “阿寒湖 ”が出てくる。そして“ 2着”の文字が。これは確かに事実だがイラつくな。

 

 チラッとリョテイの方を見ると、怒り顔で一心不乱にスマホに指を滑らせていた。シップのスマホで。

 

 俺は検索欄の1番上にあったウマッターの検索結果ページをタップした。そこにはキンイロリョテイの名が入った話題のツイートが表示されていく。

 

 “ キンイロリョテイレース中の顔怖すぎて泣いちゃった。狂気のウマ娘じゃん”

 

 “ コイツいっつもウイニングライブにいるな #キンイロリョテイ”

 

 “ キンイロリョテイの勝負服好き というかオグリもそうだけどタイツ勝負服いいよね”

 

 “ シルバーコレクターキンイロリョテイ。ネイチャみたいになりそう”

 

 “ キンイロリョテイっていうよりギンイロリョテイじゃない? ”

 

 リョテイが乱暴に頭を掻きながら「誰がシルバーコレクターじゃあぁぁぁ!!」と叫ぶ。どうやら似たようなものを見ていたらしい。

 

「よし、“ 殺すぞてめえ”っと……」

 

「おい! アタシのアカウントで何書こうとしてんだ! 凍結させる気か!!」

 

「うるせー! こいつらに言われっぱなしでいられるか!」

 

「今はネットでそういうの書いちゃダメなんだよ! コンプライアンス!!」

 

 シップはリョテイを後ろから羽交い締めにして、無理矢理スマホを奪い返していた。

 

 リョテイ、お前はSNSとかやるなよ。炎上する未来しか見えん。

 

「トレーナー! 重賞だ! いや、GⅠだ!! GⅠ持ってこぉいっ!!」

 

「おいおい、いくらなんでもそれは……」

 

 怒り心頭のリョテイの吐き出す提案にフェスタが物申すが、俺はリョテイの言葉を聞いて決心した。燻っていたのはリョテイも同じだったんだと。

 

 というより、俺の愛バがあれだけ言われていて、黙っていられるわけがないのは当たり前だ。俺の愛バは最強なんだ。誰がなんと言おうと最強なんだ! 

 

 俺とリョテイ、2人の中で勝利への情熱が燃え上がっていた。

 

「そうだなリョテイ! よし、近いGⅠといえば……高松宮記念は適性が合わないし……桜花も皐月もクラシック……となると──」

 

「「──天皇賞・春っ!!」」

 

 俺たちが声を合わせて選んだのは、ステイヤーの頂上決戦。天皇賞・春だった。リョテイの距離適性を考えればこれ以外の選択肢はない。

 

 当然、春天の前哨戦である三月末の日経賞にもエントリーしておこう。何、俺の愛バはサイキョーなんだ。GIIだって勝てるさ。それに日経賞の中山芝2500mは有記念と同じだし実質長距離だからリョテイの距離適性内に違いないしな。

 

「おいナカヤマ。なんかトレーナーヤバくねえか……?」

 

「リョテイは兎も角、トレーナーも連敗でストレス溜まってんだろ。やりたいようにやらせてやろうぜ」

 

「だな。なんか面白そうだし、ここはスルーで」

 

「了解」

 

 視界の端でフェスタとシップがヒソヒソと何かを話しているが、GⅠ制覇に燃える俺とリョテイはそれをスルーして次のレースの計画を練っていく。ガハハ、勝ったな! 

 

 ──こうして、天皇賞・春の盾を目指して俺とリョテイの戦いは新たなステージへと立ったのだった。

 

 

 

 




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凱旋門賞はクロノジェネシスと共に心中しました……競馬って分からんですわ。
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