黄金の旅路 俺の愛バは凶暴です   作:くろわっさん

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バタバタしていて更新が遅くなりました。これからも楽しんでいただければ幸いです。


やまゆりステークス

「本日をもってこのチームアークトゥルスは解散になります」

 

「「「はあ?」」」

 

 俺が告げたチーム解散の言い渡しに、キンイロリョテイ、ゴールドシップ、ナカヤマフェスタの三人は揃って声を上げた。

 

 何故、新設したチームが解散となったのか、時間をに遡り確認してみよう。

 

 

 

 

 

 

╤╤╤Ω╤╤╤

 

 

 

 

 ゴールドシップ、ナカヤマフェスタを集い、チームを設立したキンイロリョテイ。次のレースも2勝クラスのやまゆりステークスに定め、やる気は充分だ。

 

 チーム無所属ウマ娘が借りれるような最低限の設備ではあるが、三人で細々と練習を続けていた。俺も一応トレーナーとして指導にあたり、チーム設立のための手続きを行ってはいた。

 

 そうして1週間の時が経ち。俺は改めて状況を知らされた。

 

 まずナカヤマフェスタとゴールドシップ。彼女らがとんでもない問題児だったという事だ。

 

 ナカヤマフェスタはギャンブル好きという性格らしく、それだけならウマ娘には色物も多いのでそうかそうかと納得出来た。

 

 しかしこのウマ娘、問題児である。

 

 なんでも学内の選抜レースでどのウマ娘がどんな着順でゴールするかという予想をたてて、マニーでの賭博ゴトを企てていたらしい。

 未遂に終わったため厳重注意で済んだらしいが、スポーツエンターテインメントであるレースで、賭け事などとんでもない発想だ。

 

 当人同士曰く「こうするのが自然だと、運命的な何かを感じた」だそうだ。不思議なことに他のウマ娘も同じことを言っていたらしい。

 

 次にゴールドシップだが、こいつは上げればキリがないほどの問題行動を起こしているらしい。学内の三大要注意ウマ娘の1人だ。

 

 もう1人の要注意ウマ娘であるマッドサイエンティスト“ アグネスタキオン”は、自身の研究のためにという一貫した暴走理由があるが、ゴールドシップは理解不能で脈絡もクソもない暴走を起こすというウワサだ。

 

 あと一人? ウチのキンイロリョテイだよ。言わせんな恥ずかしい。

 

 彼女らが問題児であるという他にも、わかったことがいくつかあった。

 

 ───そもそもこれではチームを設立の出来ないと。

 

 そうして冒頭のセリフに移る。

 

「何でだよ! ちゃんとメンバーも集めてきたろ!?」

 

「ちゃんと集まってないから解散なんだよ、リョテイ」

 

 納得出来ずに俺に詰め寄るリョテイ。そうは言われても無理なものは無理なのだ。

 

「まず、チームのメンバーが足りてない。公式にチームとして認められるには5人以上必要らしいんだ。特例もあるらしいが、あくまでも特例だしな」

 

「じゃああとふたりに集めればいいんだな!?」

 

「いや、三人だ」

 

「はあ!?」

 

「ナカヤマフェスタはいいとして、ゴールドシップなんだが───」

 

 そこまで俺が言いかけたところで、部屋にドアをノックする音が響いた。

 

「失礼致しますわ。こちらにゴールドシップさんはいらっしゃいますか?」

 

「いるぞ」

 

「アーッ! なんでバラすんだよ!」

 

 ゴールドシップが俺に文句を言うと同時にドアが開き、芦毛のストレートヘアのウマ娘が飛び込んできた。

 

「やっと見つけましたわ! 1週間もチームの練習サボって何をしているんですの!?」

 

「サボってねえよ! こっちで練習してただけだ! なあリョテイ?」

 

「まあ落ち着けよマックイーン。お前の気性難は昔っからだけど、こんなんじゃメジロの名が泣くぞ、お嬢様よお」

 

「リョテイさん! あなたにだけは言われたくありませんわ!」

 

「そうだぞーマックイーン」

 

「ゴールドシップさん? あなたまで!?」

 

 ゴールドシップは詰め寄るメジロマックイーンから逃げるため、リョテイを盾にしてその影に隠れる。しかし大柄なゴールドシップが小柄なリョテイの背に隠れきれるはずもなく、リョテイ挟んで言い争う形になっていた。

 

「とにかく、帰りますわよ」

 

「帰るって何処にだよ?」

 

「それは決まってるではありませんか。スピカにですわ」

 

 リョテイの問に答えるメジロマックイーン。リョテイは何を言ってるのかよく分かっていないようだった。

 

 そう、何を隠そうこのゴールドシップ。既にチームスピカに所属していたウマ娘だったのだ。

 

「そういうこと。ゴールドシップはスピカに所属しているからこのチームには入れないんだよ」

 

「チーム!? ゴールドシップさん、あなたスピカを辞めるつもりでしたの!!?」

 

「辞めねえよ! でもこのチームも面白そうだなーって思ったからよぉ……そうだ! 掛け持ちする!」

 

「そんな制度はありませんわ!!」

 

「んじゃゴルシちゃんが第1号ってことで!」

 

「そんな理屈通るわけないですわ!! スピカのみんなやトレーナーのことはどうでもいいってことですの!?」

 

「そんなこと言ってねえじゃん。スピカも好きに決まってるだろ? でもリョテイとナカヤマといるのも面白くて……」

 

 ゴールドシップとメジロマックイーンがわいわいと騒ぐ中、リョテイは静かになり、不安そうな表情で俺を見つめていた。

 

「なあ、シップはウチのチームに居られないのか……?」

 

 呟くようにそう言ったリョテイ。あまりの寂しげな声に周りが静まり返った。

 

「そうだな……掛け持ちについては正直に言うとわからん。恐らく前例はないからな。現実的なのは移籍してもらうことだろう」

 

「なら……」

 

「でも、リョテイはそれでいいのか? ゴールドシップから仲間やトレーナーを取り上げて、それでも自分のチームを作りたいのか?」

 

 俺が尋ねた内容に、リョテイは神妙な面持ちで黙り込んでしまった。ゴールドシップも、迎えに来たはずのメジロマックイーンもすっかりアタマを抱えてしまっている。

 

「……わかった。シップのことを思えばちゃんとしたチームにいた方が良いしな。チーム設立は諦めるよ、トレーナー。マックイーン、シップのこと頼んだ」

 

「かしこまりましたわ。あなたに変わってちゃんとゴールドシップさんに練習させてみせますわ」

 

「そんな落ち込むなよぉリョテイ! ときどきサボってちゃんと遊びに来るからよ!!」

 

「言ったそばからサボる算段を立てないでくださいまし!!」

 

 話しが纏まったことで、メジロマックイーンはゴールドシップの襟首を掴んで引き摺るようにスピカへと連れ帰っていった。

 

 リョテイの野望は果たされなかったが、ゴールドシップのことを思って自分を殺した姿にオレはリョテイの成長を感じた。

 

 しみじみしていると、後ろから袖を引かれた。

 

「なあ、チームが無くなったってことは私はまたトレーナー無しの生活に戻るってことか?」

 

「ナカヤマフェスタは……俺が面倒みるよ。見捨てたりしないから安心しろ」

 

「そっか。じゃあよろしく、トレーナー」

 

 ナカヤマフェスタは照れくさそうに鼻を擦っていた。リョテイは「フェスタ〜!」と嬉しそうに猫可愛がりをして、鬱陶しがられていたが、先程より元気そうに見えて俺は安心する。

 

 こうしてリョテイのチーム結成騒動は一旦の終わりを告げた。

 

 それから俺は頭を下げて先輩のチームにリョテイとナカヤマフェスタを合流させてもらった。先輩にはいつものキンイロリョテイのアレかと笑って許されたが、リーダーであるメジロブライトの呆れかえった顔と、引き攣ったチームメンバーの顔は暫く忘れられそうにない。

 

 それから1週間の時が経った。練習時や、ナカヤマフェスタの前ではリョテイはいつも通りに振舞っていたが、オレと2人になると途端に元気をなくし明らかに調子を崩していた。

 

 そんな不調が拭えないまま、リョテイは次のレースを迎えることとなった。

 

 

 

 

 

╤╤╤Ω╤╤╤

 

 

 

 

 6月後半 やまゆりステークス 阪神 芝2000m

 

 5枠6番、五番人気で迎えたレース当日。ゲートに収まったリョテイは絶不調が見事に尾を引いて見るからに集中を欠いていた。

 

 そしてスタートのタイミングで案の定リョテイは出遅れ、最後方からのレースとなる。追い上げるも三コーナーまでは10番手から8番手をウロウロしており、そのまま第四コーナーへと向かう。

 

 しかし、コーナーでインを攻めるも前を塞がれて抜け出せず、最終直線でやや強引に前に出るも得意の末脚は伸びきらない。

 

 先行した二人のウマ娘に追いつけず、後ろから1人に抜かれてしまい、4位でゴール板を通過した。辛うじて入着は出来たものの、調子がそのまま結果に出たレースとなった。

 

 どうにかしてリョテイの調子を取り戻さなくてならないと、強く感じて俺はレースを終えた。

 

 

 

 

 

╤╤╤Ω╤╤╤

 

 

 

 やまゆりステークスから幾日が経ち、俺は生徒会室に呼び出されていた。扉を開けるとそこには当然シンボリルドルフがいて、さらに理事長秘書のたづなさんがいた。

 

「やあ、急に呼び出して済まないねトレーナー君」

 

「構わないが、いったい今日はどうしたんだ? たづなさんまでいるじゃないですか」

 

「ご無沙汰してます、トレーナーさん」

 

 たづなさんがにこやかに挨拶をしてくれる。しかし、ルドルフとたづなさんに呼び出される要件なんて皆目見当もつかない。

 

「今日は先日君から提出されたチーム設立申請の件で来てもらった訳だが……」

 

「ああ、その件か。分かってるよ、ダメだって」

 

「特例でチームの設立が承認されたよ」

 

「はあ!?」

 

 つまり、特例でチームの設立が承認されたってことは、特例でチームの設立が承認されたっていうことか!? 

 

 いかん、動揺で思考が上手く纏まってないぞ。

 

「本来ならメンバー不足で結成とはならないんですけど、今回は事情がありまして。そこでトレーナーさんにお願いしようかと」

 

「事情?」

 

「君、もといリョテイが集めたメンバーのことだよ。君の知ってのとおり彼女らは少々元気が有り余ってるようで、学内の問題児と言っても過言ではない……」

 

 たづなさんとルドルフは同時に顔を曇らせる。頭の痛くなる事実だが、それがチーム結成の承認とどう繋がるのか。

 

「そこに君の申請があった。リョテイは兎も角として、ナカヤマフェスタ、そしてなによりゴールドシップを君が引き受けてくれるなら、正に渡りに船だ」

 

「でもゴールドシップはスピカに所属してるだろ?」

 

「そのスピカだが、今度新しく新人が入ることと、サイレンススズカの移籍が重なってトレーナーが忙しくなりそうなんだ。今でもトレーナーとメジロマックイーンの2人でゴールドシップの様子を見てもらっているが、どうにも芳しくないようでね……そこで君にも面倒を見てもらいたいと思ったのだよ」

 

「というと、移籍してもらうことになるのか?」

 

「いや、本人の希望を考慮して掛け持ちという特別処置にするつもりだよ」

 

 学園のルールすら変えるとは……やるなゴールドシップ。

 

「それにリョテイに関しては今のチームの子達からも苦情が絶えなくてね……どうにもリョテイが抜けた1週間で快適さを覚えてしまったらしく、メジロブライトも抑えきれなくなってきているらしい」

 

「あー……それはすまない……」

 

 ルドルフの言うことをまとめると、問題児3人を俺に投げて先輩チームとチームスピカを円滑にしたいということだろう。

 

 正直に言うとやりたくない。リョテイだけでも手一杯だというのに。フェスタは練習に関してはリョテイより聞き分けがいいから良いとしても、ゴールドシップはリョテイの言うこと以外はあんまり聞いてくれないからな……

 

 しかし、リョテイの絶不調の原因は間違いなくチーム結成の失敗だ。担当であるリョテイにとって1番の選択はひとつしかない。

 

「わかった……ゴールドシップも引き受ける。2人も3人も同じだ!」

 

「ありがとう。君ならそう言ってくれると思っていたよ」

 

「ありがとうございます! それではチーム申請はこちらで進めておきますね。チームルームは以前使っていた場所をそのまま正式に使えるようにしておきますので。3人のことよろしくお願いしますね、トレーナーさん」

 

 たづなさんとルドルフはいい笑顔で俺に謝辞を述べた。リョテイと学園の平和のため俺も頑張るしかない。

 

 さらば平穏。ようこそ胃痛だらけの新生活……

 

 こうしてチームアークトゥルスは正式に結成され、リョテイのチーム結成騒動は幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

╤╤╤Ω╤╤╤

 

 

 

 

 

 次の日、練習時間となり俺はチームルームへと向かった。そこには既にルドルフから連絡をもらっていた3人が集まっていた。以前のように麻雀でもしているのかと思っていたが、3人は机を囲んで本を見ながら何やら話し合っているようだ。

 

「よう! 遅かったなトレーナー! 今みんなとアタシの次のレースについて話してたんだよ」

 

「ほう。それは興味深いな」

 

 予想外の真面目な話し合いに俺は感嘆の息を漏らす。

 

 なんだ、いざとなったらちゃんとしたチームになるじゃないか。苦労が絶えないと思っていたが俺の思い過ごしだったみたいだな。

 

「関西と東京のレースばっかだったしな。もっと足を伸ばしてみようぜ!」

 

「ん、じゃあシップは何処がいいとおもう?」

 

「九州、いや東北かなあ。うーん、なあナカヤマはどこがいい?」

 

「私は何処でもいい。走るのはリョテイだろ?」

 

「つまんねえこというなよぉ。じゃあゴルシちゃんが決めていいか!?」

 

「ああ、シップが決めていいぞ」

 

「おいおい、流石にそれは甘すぎるぞリョテイ。さてどんな候補から決めて……っておい」

 

 るるぶじゃねえか。

 

 真面目にやってると思っていた俺がアホだった。コイツら旅行感覚で遠征先を考えてたのか。

 

「よし! じゃあ北海道にしようぜ!」

 

「はい、じゃあ次のレースは北海道で決定!」

 

「決定! じゃねえンだ。遊びに行くんじゃないんだぞ」

 

「いいじゃねえかよぉ。北の海の幸食いに行こうぜぇ〜」

 

「やっぱり旅行気分じゃねえか!?」

 

 ゴールドシップはリョテイの遠征をなんだと思っているのか。ここはトレーナーとしてガツンと言ってやらねばと思った時、リョテイに後ろから肩を叩かれた。

 

「なあ、頼むよトレーナー。コイツらにチーム結成のお祝いでいいモノ食わせてやりたいんだよ」

 

 真剣でかつ優しげなリョテイの表情に俺は思わず口篭る。俺にとってはただのワガママに聞こえても、リョテイにとっては可愛い後輩のお願いなのだろう。

 

 ならば俺も一考しなければならないか。

 

「じゃあリョテイがレースで1着を取れたら連れてってやる。それでどうだ?」

 

「いいよ、それでいこう」

 

「よっしゃあ! なかなか話のわかるトレーナーじゃん。スピカのケチんぼとは大違いだぜ! 頼むぜぇリョテイ!」

 

「ああ、アタシに任せとけ!」

 

 喜びを露わにするゴールドシップ。そしてナカヤマフェスタもこっそりとほくそ笑んでるのも見える。リョテイはその様子を見て満足気に笑っていた。

 

 まったくリョテイはふたりに甘いな。いや、俺も人のことを言えないか。

 

 俺は資料からリョテイが出られそうな北海道のレースを探す。そこでひとつのレースが目に止まった。

 

「2勝クラス、阿寒湖特別か。どうだリョテイ?」

 

「アタシはなんでもいけるぜ」

 

 サムズアップで答えるリョテイ。それをみて出走登録の手続きをスマホから行う。これで次のレースは札幌芝2000mの阿寒湖特別に決まることだろう。

 

「しゃあ! 待ってろよ洞爺湖! ゴルシちゃんが木刀片手にえいりあんをバッタバッタと薙ぎ倒す冒険活劇を魅せてやるからなぁ!」

 

 阿寒湖だからな。そして行くのは札幌だ。

 

 腕を振り上げてノリノリのゴールドシップに、何食べようなかなと呟くナカヤマフェスタ。そしてやる気に満ちたリョテイ。

 

 こうして結成されたチームアークトゥルスの旅行気分の抜けない札幌遠征が決定たのだった。

 

 

 

 

 




アニメ寄りの設定で書いてます。アプリ版ゴルシちゃんは常人には扱いきれなかった……


次回もよろしくお願いします!
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