美朝村の霧 〜宮中志先生シリーズ 第一巻〜   作:仲村大輝

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ここであちゃ…と思ったのが日時を合せれば良かったです。
ですが、日時あんまり関係なくなっちゃったので毎日の楽しみとして楽しんでください。

「さあ宮中先生!
なぜか村民が宮中先生を疑い出しましたよ。もしかしたら、村民全員が鬼かもしれませんね。」


第4章 十月二十五日(火) 稲葉

「…………」

 私はふと目が覚めたらヒラデエジンではない見慣れない天井を見ていた。

 時間を確認すると朝の七時前だった。

(……どうしてこうなったのか経緯を説明しよう。あの後私は、村長が殺されていると幸三郎さんに説明するためにヒラデエジンに行ったのだが、ヒラデエジンには県から刑事が到着したばかりだったんだ。刑事に事情を説明したら「なにか関係があるだろう。」ということで調査してもらえることになったのだが、ヒラデエジンには音楽イベント参加者 刑事達と、とんでもない人数になってしまったために私は美浅神社に移動して来たのだったな。)

「おはようございます、先生 …よく寝れましたか?」

 浅見さんが起こしに来てくれた。

「おはようございます浅見さん。起きたらここはどこだ?ってなるほどぐっすりと寝られました。」

(…なにか私に隠しているような喋り方だな。)

「朝飯の支度があと少しで出来るので来てください。来客もいます。」

 浅見さんはまだ支度があるので台所に行ったが私は朝飯のところに行った。

 来客とは刑事のことだった。

「いやあ、昨日知らせてくれた駒川大学の宮中先生。」

「刑事さん、おはようございます。」

「刑事さんなんて呼ばないでくださいよ。酒を飲んだ仲じゃないですか?宮中…志さん。」

「………あっ!あのとき隣にいた方!確かに警察官だとおっしゃってた!……一(はじめ)さん」

「こんなところでまた会えるとは思ってませんでしたな。」

「全くです。」

 この時、浅見さんが鍋を持って来た。

「…ところで一さん、なぜ神社に?」

「あなたに用があって来たのです。」

「私に?」

「実は昨日、いろいろな方に聞き取りを行ってきたのですが、どうやらあなたが黒幕じゃないかって説がおおいにあるんです。」

「えっ!」

(…まあ、最初に疑わられるのは俺だとは思ってたけどな…)

「村民の主張としては、…」

「村を調べている。鬼を知っている。鬼を我々が恐れていることを知っている。仮面を被れば誰だか分からない。でしょう?」

「…どんぴしゃです。」

「たまにあるんですよ。受け入れてくれた人は引っ越した人だとか、何処の馬の骨だか分からない人を入れてはいけないとか。」

「職業柄、分かるようになったと?」

「まあ、そういったところです。」

「それで、あなたには美浅神社から出ないで欲しいのです。」

「はぁ?」

「もし、あなたがここにいて変化が無ければあなたということになり、あなたなら事件は起きません。あなたの疑いもなくなります。」

「なんでそこまで言えるのですか?」

「……ここだけの話、次の被害者は確実に羽田さんです。」

「幸三郎さんが⁈」

「はい。実は私もあなたが犯人だと思っていません。犯人は……稲葉だと思っています。」

「はっ?」

 誰?っと聞こうとしたとき、横で聞いてた浅見さんが喋った。

「刑事さん、ふざけないでください。稲葉は十年前に失踪したじゃないですか。」

(浅見さんが怒鳴った!…)

「えぇ、だからです。」

「あのすみません、浅見さん。稲葉ってどなたですか?」

「稲葉とは十年前に鬼に取り憑かれて拓馬の右目を奪い、私の記憶と左足の自由を奪い、妹を森へ連れ去った男です。」

(…浅見さん、明らかにいつもの冷静さが軽くなくなっている…)

「あの 文献に出てくる十年前の…。」

(稲葉って奴が拓馬くんの右目を奪って浅見さんの足を不自由にしたのか…それどころか妹を…連れ去ったとは…)

「私もぶん殴られてどういう風になったのか分からないけどのですが、稲葉はまだ捕まってないんです。」

「だから稲葉がまた十年たったから暴れているんじゃないかって思うんですよ。先生。」

「……すると、稲葉が私を犯人にするように動いていると?」

「おそらくは…。」

「…なんで稲葉は幸三郎さんを狙うのですか?」

「…稲葉は暴れる前、引っ越してきたのに羽田さんに挨拶に行かなかったそうなんです。多分それにムカついた羽田さんが村八分のようなことを仕掛けたのではないかと…」

「……………」

 浅見さんを横目で見た。唇を噛んでなにか言いたいことを我慢しているように見える。

「…十年、それ以上前からの鬱憤を晴らすために村長の大事な家族と、幸三郎さんと仲が良い村長を殺したと?」

一さんはゆっくりうなずいた。

(なるほど、そうとうな恨みがあるようだな。)

「だけど大丈夫です。ヒラデエジンにはイベント参加者などが大量に人がいますし、羽田さんの近くにはいつも誰かいるようにしてあります。これでも来るようであればあなたは犯人じゃない。」

「だけど、稲…」

(ハッ…浅見さんがとても辛そうな目をしてる。)

「…エヘン! …鬼が冷静になりヒラデエジンを襲わなかったら犯人は誰になりますか?」

「それは…」

「……………」

(大変なことになってしまったぞ!)

 我々は朝食を雑談しながら食べた後、一さんはヒラデエジンに戻り、浅見さんはその道案内で出かけてしまった。

 私は神社の敷地から出なければ良いということなので神社の建物を見てまわった。

 前日も見たので大体どういう造りなのか分かっていたし、なにせヒラデエジンと造りが鏡になってるだけなので覚えてしまえば簡単だった。

 面白いことに床下は屈めばなんとか行動出来るほど広いことや、つり天井になっているので縄を切れば屋根に出れることなど分かった。

 ただ、ヒラデエジンの私が泊まっていた部屋に相当する部屋はなぜか閂が刺され、開かないようになっていた。

 なんでも奥の部屋は祭りの道具や私物でいっぱいなのだとか。

 ちなみに私がどこに泊まっていたかというと、ヒラデエジンの応接間に相当する、神社の本殿部分に泊まっている。

 私は探検後、ヒラデエジンから持ってきた『羽田家伝記』を現代語訳していた。なんとなく村長に「これを読めるようにしてくれ。」と、頼まれているような気がしたからだ。

 スマートフォンのアプリで読み込み、文字に起こす。

(まさか学生達も私が殺人容疑でこんな村に幽閉されているなんて考えている奴はいないんだろうな…)

 残念なことにまたこんなことが頭をよぎる。

(…整理すると、鬼は稲葉って人がやってる

 鬼はなにかの理由で犯人を私にしたがってる

 村人も私が犯人だと思い始めている…。

 村人まで私を犯人だと思い始めている!

 これは大変なことになった!早く対策を取りたいが動けない…。ここまで来たらとっととヒラデエジンを襲撃して欲しい…

 だけど、まだ分からないことも多い。)

 時間は飛ぶように過ぎ、正午ごろ浅見さんが帰ってきて昼飯の支度をしてくれた。

「なんですって!?音楽イベントの数名が逃げた?」

「はい。刑事を送り届ける直前、数名が何かから逃れるように逃げたそうです。しかも幹部のメンバーで、拓馬くんが死んだことで精神的に追い詰められたからじゃないか?と刑事が言ってました。ヒラデエジンが必死に残るよう説得したらしいのですが、ヒラデエジンは突き飛ばされて腰を強打し動けなくなったそうです。これではもう音楽イベントのメンバーはヒラデエジンと刑事の力ではどうにもならなくなった言えるでしょう。」

「…これも鬼かい?」

「おそらくは…」

(嘘つけ、他に裏があるんじゃないか?)

「…で、残りのメンバーはどうするんです?リーダーがいないんじゃすぐ散り散りに逃げるかパニックが起きますよ。それこそ車を借りて来たような人は歩いて帰ろうとする人もいるはずです。それこそ…遭難する人とか出るんじゃないんですか?」

「そのためヒラデエジンと私と刑事で相談し、県の方から応援を頼むことにしました。早ければ明日の夜には到着するはずです。」

「…そうですか。」

 食事の後は伝記の現代語訳もする気が起きなくなり、ぼんやりと庭と門 その先から見える村の中心地を見ていた。

 神社は山の中腹にあるので村が門からでも見える。

 すると、門に鶏が現れた。どうやら鶏が下から上がって来たらしい。だが不思議なことにこの鶏は首輪をつけリードが伸びている。

 鶏がこっちに歩いてくる。

 すると数人の子供が追いかけるように上がって来た。

 鶏と子供達がこちらにやって来た。

「こんにちは。」

「こんにちはー!」

 私には弟がいる、また学生時代には後輩の面倒を見るといった形で年下と付き合うことが多かった。

 現に今も学校の先生をやっているのだから年下との付き合い方は慣れている。

 しかも小学生ぐらいの子供は得意中の得意だ。

 私は神隠しを調べたときに、子供を誘拐したことを隠すために神が隠したということにし、子供を売ったりしていたのではないかと仮説を立てた時期があり、子供の誘拐などした犯罪者を取材したことがあった。

 そこで学んだことなのだが、小学生ぐらいの子供達に親や先生は「知らない人にはついていかないように」と教えるが、話掛けられたり、話が合ったりすれば子供の中で(この人は知らない人から、〜〜を知っているおじさんになる。)よって、名前程度の知り合いになった子供(親にも自分のことを話さなそうな子)を誘拐するんだ。と言っていた。

 本当なのか確かめるため、私は住んでいるところで行われているお囃子の練習会に、今の小学生が見ているようなアニメや特撮、ドラマ、テレビ番組を調べ上げ練習会に行ってみた。

 すると、少し話掛けたら小学生が興味を私に持ち、あっという間に子供達の人気者になり 数ヶ月後、子供会の役員に抜擢されたことがある。

 そのノウハウを知っていたので自然と話掛けたのだった。

「おじさん、なにしてるの?というかここの人じゃないでしょ?」

 一番背の高い小学五年ぐらいの男の子が聞いてきた。

「よく分かったね。私は東京の大学から来た先生だ。」

「東大?」

「先生と言ってもそんなに頭は良くない。分かりやすく言えばお祭りを研究してる先生だ。」

「この辺りだと、四月四日にやってるだけで今はなにもしてないよ。」

 鶏のリードを持っている小学三年ぐらいの男の子が答えた。

「お祭りだけじゃなく神社やお寺も調べてるんだ。」

「ここでなにしてるの?」

 これは小学三年ぐらいの女の子が聞いてきた。

「浅見さんにお願いしてここの神社のお勉強をしてるんだ。そして東京に帰って学生さんに先生がお勉強したことを教えてあげるんだ。」

「いつまでいるの?」

 小学一年ぐらいの男の子が聞いた。

「さあ、分からないなぁ。浅見さんは物知りだから当分帰れそうにないほど教えてくれるんだ。」

「ふ~ん。」

「ところでその鶏は?」

「これ?これは鶏の散歩。庭だけだと鶏が飽きちゃうんだって。」

「散歩させるとはまるで犬だな。」

「この鶏は犬より利口だよ。」

 リードを持ってた小三ぐらいの男の子が腕を横にすると、鶏が腕に飛び乗った。

「頭の良い鶏だな。」

 このとき笑ってみせたら、四人ともとても嬉しそうな顔をした。

 その後、この村のことや東京のこと、最近のテレビの話などいろいろ話した。

小五の男の子は圭

小三の男の子は岳斗

小三の女の子は香和

小一の男の子は三郎と言い、岳斗と香和は双子であることが分かった。

 午後の四時ごろ

「お母ちゃんに怒られる」

と言いながら三郎を送るために四人は鶏と帰っていった。

(…こういう地域には子供がいないんじゃないかと思っていたが、まさかあんなにいたとは…)

 四人を門から見送りながら考えた。久しぶりに子供と話したため少し元気が出たため現代語訳を再開した。

 午後七時ごろ、夕飯の支度が出来たと浅見さんに言われた。

「ここに四人も子供がいるとは思いませんでした。」

「圭吾達に会ったんですか?」

「はい。」

「先生…」

浅見さんが箸を置く。

「あなたは自分の立場が分かってますか?容疑がかけられてるんですよ。もしかしたら鬼が遠くから四人とのやりとりを見てて、あなたのせいにするために四人を襲うかもしれませんよ。」

「…えっ………!」

(しまった!そこまで深読みしていなかった!…)

「幸いにもさきほど三郎の父親から東京の先生に世話をかけたと言ってましたから大丈夫だと思いますが…」

「明日はちゃんと家の中にいます…。」

「そうしてください…」

そう言って箸を持ち直す。

「そうだ!明日の夜に県から応援の警察官が来るそうです。稲葉と先生がやっていないことが早く証明されればいいですね。」

(…なにが言いたいんだ?)

 食事が終わり、私は部屋に戻って伝記の現代語訳を再開した。

 また訳しながら考えた。

(…多分、

というか最初から俺は「浅見神職が」なにか隠してるんじゃないかと思っていたが、

稲葉と知り合いなんじゃないか?

それで、

俺を追い詰めるようにしていてどうにか俺を犯人にして…

そうなったら稲葉をどうしたいんだ?

「私の力でお前を殺人罪から解放してやったのだから俺の奴隷のように働くんだぞ!」

ってことにしたいのか?

はたまた、

村長が死に息子の拓馬さんも死んだ今、

美朝御参の力関係

すなわち行政の村長 宗教の美浅神社 金融のヒラデエジンが崩れた訳だから、

ヒラデエジンに圧力をかけて一気に村のトップになろうとしてるのか?

しかしこの案だと俺が犯人である必要がない…。

…トップになるため、

稲葉を使い殺人を行うが稲葉は村民であるため、

稲葉を助けるために俺を犯人に…ちょっと待て!)

 

ちょうど訳していたところはヒラデエジンの金の稼ぎ方が書かれていた。

そこには、「紐やお茶 染料を売買している。」と書かれていた。

(茶や染料…だったら栽培してる畑があるはずだがそんな畑は見当たらなかった…それと紐…紐?…)

私は顔をあげた。

祭壇を見る。

木花咲耶姫を祀った祭壇が閉ざされている。

(…あれを開ければ何か分かるような気がする。)

私は祭壇の前に立った。しかし祀られている扉を開けるための腕が出ない。

(民俗学者としてこの扉を開けても良いのだろうか?…こっちは命がかかってるんだ!…いや、そもそも民俗学はその土地の人の生活のことだ!それに介入しようとしたのは我々民俗学分野の人間だ。今回私が犯人にされそうなのも自然な流れだ。)

「剛に入れば郷に従えか…」

(だけど…)

とても長い時間をかけてついに私は扉に手をかけた。

(民俗学者を捨てて生きるか?民俗学者として犯人にされるか犯人に殺されるか?……。)

「ギャー!!」

扉を開けようとした瞬間、浅見さんの叫び声が聞こえた。

「浅見さん!」

 私はバッと部屋を飛び出し、飯を食べる客間に向かった。

 客間にまでには二回曲がらないといけない。

 その二回目の角で、私は前から走ってきた人とぶつかった。

「すみません。大丈夫ですか?」

 パッと私はぶつかった人を見ながら謝った。

 するとその人は鬼の面を着けている。

 ただ、昨日会った鬼と少し違うのが、顔に巻いている手ぬぐいが私と同じのような紫色をしているところだ。

「あっ!鬼だ!」

 思わず叫んだ。

「…………!」

 鬼は「しまった!どうしよう…」的な感じだったが、叫んだ拍子に鬼が我に帰り駆け抜けて行った。

 追いかけたが鬼は玄関に飛び降り、扉を突き破る勢いで外に駆け抜けて暗闇に消えて行った。

「浅見さんは大丈夫だろうか?」

 私は玄関から客間の方へ引き返した。

 すると、一つ目の角のところで浅見さんに会った。

 なにかとても怒ったような 痛さをこらえるような顔をしていた。

「…先生、今玄関でなにをしてたんですか?」

「鬼とぶつかったので追いかけたんです。」

「嘘つけ!」

 浅見さんが急に怒鳴った。

「えっ⁈」

(下手に大声をあげて…演技か?ついに俺に追い詰めに入ったのか?)

「あんたは、自分で仮面を被って…」

「そんなことする必要がないだろう!」

「じゃあ、その紫の手ぬぐいはなんだ!」

「…それは鬼が私に合わせたんです。現に今私は奥の角で鬼とぶつかったんですよ。」

「そんな嘘が通用するか!」

「私がやったという証拠があるのか!」

 思わず声が大きくなる。

「ある!奥の角のところに私の腕と鉈を落としたろ!」

 浅見さんの右手には叩き斬られたような左手と赤く染まった鉈を持っていた。

「………。」

(…あんたはここまでして私を追い詰めたいのか…)

「さあ言ってみろ!私がやりましたって言ってみろ!」

「俺は無実だ!絶対にやってない!…それより病院に行かなくていいのか?」

「貴様がやったことを認めたら行く。認めないなら俺は大量出血で死ぬ!そしたらお前は俺を見殺しにした犯人だ!ハハハハハハハハハハ!」

「…………」

(…この男、少しおかしくなってないか?)

「ハハハハハ!さあ言え!俺がやりましたって言え!」

「……………」

「ハハハハハァ…さあ!」

と言いながら浅見さんは倒れ込んだ。

 口だけが達者に笑いながら自白しろと言っている。

 その時、玄関からごめんください。と声がした。

 鬼が神社から飛び出して来たので驚いて様子を見に来てくださった方だった。

「鬼に会ったというのなら話がはやい。鬼に浅見さんが斬られたんです。どうにか助けてください。」

 村人は分かりました。

 と言って浅見さんを連れて村の方へ降りていった。

 その間も浅見さんは騒いでいたようなのでいなくなったら急にシーンとなにも聞こえなくなった。

 ただ言い合いになったときのもの、「お前が見殺しに…」などと反復している…。

(なにはともあれ、村人に任せれば大丈夫だろう。)

 そう考えたら無性に眠くなってきた。

 玄関に鍵をかけようとしたとき、目線上にヒラデエジンの明かりが見えていたのだが、ヒラデエジンから霧のようなものが出ていた。

(夜遅くではないのに霧とは珍しい現象だ)

と思った。

 

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