るつぼかずら(旧題:四色の愛情ブリミア)   作:駿河鵬命

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R-15の表現にとどめていますが、性的な言い回し等あります。閲覧注意。


‡15

 人間の身体ってか女の身体って不思議だと思う。

 

 

 絶対これはそういう暴行だと察した時点でちゃんと濡れるんだよ。期待じゃなくて純粋な嫌悪感でもちゃんと濡れる。便利な身体だよホントに。人類の歴史の中で男尊女卑の文化が根強く残っているのも納得できる。女って男に虐げられる為に生まれてきたんだと言われて納得してしまう。だってこれって女が自分の身体を守る為の機能だけど、男が悦ぶ為の機能な気がしてならない。

 

 

 何度も首筋のタトゥーを舌で這われた後、後背位で突っ込まれて、童貞のプレイかのように雑に突かれる。挿れる時に手間取っていたあたり、指でも腕でもなく今私の中に入っているのはレプリカなんだろう。当たり前だけど生身の男性器と違って神経の通ってないペニバンは挿れるの時間かかるって。ずっと昔に酔ってヤった女が言ってたわ。そんなどうでも良い事を思い出しながら、雑に突かれるこの感覚は内臓を突き上げられる感じで苦しくて、突かれる度に変な声が漏れた。

 

 

 

 それを命蠟(めいろう)の方は何か征服欲で感じるらしく、息遣いが荒いのは直ぐに分かった。しかし、男の吐息じゃなくてどう考えて女の吐息なので、きっと命蠟は私に姿を見られたくないから私に目隠しなんてつけるんだろう。

 

 

 さっきの冷たい皮膚じゃなくて体温を感じた。多分命蠟も全裸なんだろう。冷血の化け物でも体温はあるんだとまたどうでも良い事を考えながら下腹部の痛みに耐える。

 

 

 

 

 私の口から洩れているのは喘ぎ声じゃなくて呻き声だ。なのに命蠟はこれが嬉しいのだろう。どっちかといえば、命蠟の声こそが喘ぎ声だ。

 

 

 頭がバグってくる。下手な男のような雑な突き方をされているのに、相手から聞こえるのは女の声なのだ。視覚情報は完全に遮断されていても、嗅覚触覚聴覚はしっかりと残っていて触れる身体は私より一回り小さい体格だし、胸はかなりの貧乳なんだろうけど、ちゃんと乳首周りの皮膚は柔らかいので、ああ女だなあって。

 

 

 突き上げる動作が止まり、女らしい可愛い喘ぎ声が聞こえた。ああこんなので満足するんだって。コイツの癖って嫌がって呻く女の態度なんだなって。

 

 

 

 

 

 

 

 顎を持たれてキスされた。舌を突っ込まれて探られる。普通、下を使う前に済ますもんじゃないか?下が終わってから上の口ってのが童貞っぽいんだよ。

 柔らかい唇と舌の厚みはどう考えても女のものだった。命蠟に触れられれば触れられる程にこいつの女性らしさを感じてしまう。ある意味哀れかもしれない。これで命蠟なりに男性になる為にこうやって女を制圧しようとするのだから。

 

 

 ふっとキスが終わると、今度は口の中に何かを入れられて、それを噛むように一気に下顎と上顎を閉じるように押された。

 

 

『あっ、が、』

 

 

 今日一番の衝撃だった。

 

 

 口の中が一気に熱くなり、私はソレを吐き出した。

 

 

 

 異物。今何を入れられたのか理解する前に口の中は一気に鉄っぽい血の味が広がって痺れ始める。

 命蠟が私の目隠しを外すと、私が吐き出したそこには血まみれになったガラスの破片のような物が落ちていて、口に手を当てると口がらボタボタ血が落ちている事に気付いた。

 

 

 

 

 突然の怪我に驚く私を、まだ息遣いの荒い命蠟があの節穴の眼で見降ろしていた。勿論、命蠟はもう既に服は着ていた。

 

 

 

「気が済んだ。帰って良いぞ。」

 

 

 

 馬鹿みたいな犯し方するだけじゃなくて、口の中に刃物突っ込むまでコイツのやり方なのか。

 きっと命蠟は私の皮膚を使うという目的さえなければ、あの拷問器具も使ったんだろう。

 私はこのタトゥーに救われた。これが無かったら多分怪我は口の中だけでは済まなかった。

 

 

 

 命蠟の視線が気持ち悪くて、私は服を着ずに服と杖を持って部屋を出た。一刻も早くここを出たかったのだ。

 廊下で服を着ようと座り込む。口の中の痛みに気を取られていたが、膣もしっかり痛い。処女卒業した時だってこんなに痛くなかった。膣から腹の奥までしっかり痛い。座りながら下着を履くまでに時間がかかった。痛くて思うように足が上がらない。

 

 

 

 口の中は相変わらず血が溜まる不快感に支配されて、油断すると、唾液と混ざった血が端から零れた。服が汚れた。血は落とすのが難しいのに。

 ノロノロと服を着て、さあカズラの部屋に戻ろうと立ち上がったは良いが、足元は覚束ない。

 

 

 

 ただでさえまだ骨折が治ってなくて杖で歩いているのに一連の被害の所為で歩けない。いや、頑張れば歩ける凄く時間がかかるけど、歩けない事はない。ただ、この階段を下りるのが無理なのだ。

 困ったもんだ。此処の廊下で一晩過ごすのかと途方に暮れていたら松明の光が近付いてきた。

 

 

 

 もしかしてカズラが何かを察して来てくれたのか?そう期待したがそこ立っていたのはあまりにも予想外の人であった。

 

 

 

 オギである。

 

 

 松明に照らされ相変わらず赤いチョッキを着たオギがいたのだ。

 

 

 

「アタシの部屋は兄様の部屋の隣だ。随分お楽しみだったみたいだな。」

 

 

 

 アンタの兄さんがな。と言ってやりたかったが口の出血で言葉が発せられる状況ではなかった。

 オギはそれを察したらしく、無言で私を抱き上げた。私より全然小さいのにオギの怪力は規格外で軽々しく私をお姫様抱っこで持ち上げたのだ。

 そのまま階段を下りて、カズラの部屋に向かっていてくれているのは直ぐに分かった。

 

 

 

「勘違いするな。アタシはお前の事嫌いじゃない。お前がたまたま食料の立場だっただけだ。」

 

 

 

 オギなりのフォローの言葉なのか分からんが、喋れない私はオギの眼を見て頷いた。

 

 

 

 カズラの部屋の前に着くと、ノックもせずに盛大に足でドアを開けた。

 

 

 勿論、カズラも音に驚いたようにこちらを見ている。

 オギはそのまま私をベッドの上に降ろして、出て行った。

 


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