勇者パーティを、こっぴどく追放されたけど、改造呪術の《グリッチ=コード》が覚醒したため、生活魔法で最強を目指します!   作:手嶋ゆっきー

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第10話 百発百中の魔法 〜VS 巨鬼《オーガ・ジャイアント》〜

 傭兵の人たちとは和解。

 元々悪い人たちでもなかった。

 王国から雇われてこの地方に来ているようで、それなりに身分はしっかりしているのだろう。

 

 何か悪い酒にも酔ったように気持ちが高ぶっていた。

 彼らはそう話した。

 

 

「それで、さっきはあんな風に言ってしまったが、リィト——」

「リィトさん、でしょ?」

 

 

 アリナが胸を張って傭兵の隊長に文句を言う。

 随分偉そうに言うんだな。

 僕は別に呼び捨てで良いんだけど。

 

 

「リ、リィトさんに一緒にディアトリア廃墟まで行って貰えたらと」

「ディアトリア……どうしてでしょうか?」

「実は『勇者パーティの護衛』が我々が王国から受けた依頼なのです。ですが、あの大狼(ウォーグウルフ)の集団などに攻撃され勇者パーティの集団とはぐれてしまったのです」

「勇者パーティ?」

 

 

 そうか、それで僕のことを知っていたのか。

 

 

「はい……ですが、強力な魔法を簡単に行使できる魔術師のリィトさんに御一緒していただければ、我々も安心です!」

「は、はぁ」

 

 

 僕が使ってるの生活魔法なんですよね……。

 

 

「傭兵の我々がからお願いするのもおかしな話ですが、必要であれば我々から報酬を用意しても構わないと思います」

「報酬ですか」

 

 

 今までそんなこと言われたことないからくすぐったい。

 

 彼らの話だと、廃墟に近づくほど、ウォーグウルフや大鬼(オーガ)など魔物が多く出るらしい。

 彼らは引き返してきたのだという。

 

 彼らより強いとは言え、護衛無しで勇者パーティが向かったのなら、ちょっと心配だ。

 マエリスもいることだし僕も向かうことにしよう。

 

 

「じゃあ、どうしょうか……危ないし孤児院に——」

 

 

 少女(コード)を見ると、彼女は僕の手をぎゅっと握った。

 

 

「リィトと一緒に行く。それに……マエ——」

「それに?」

「ううん、なんでもない。絶対一緒に行く!」

 

 

 結局、彼女を連れて行くことになった。

 確かに、魔法のことや反則呪術(グリッチ=コード)のことに詳しい少女がいれば心強いし、どうも彼女は戦闘時の身の置き方に心得があるのか、危なげも無くついてきている。

 傭兵の人たちはざわついたけど、一緒に行くことには納得してくれた。

 

 

「じゃあ、嬢ちゃん、俺が肩車でも——」

「いやーーーーーー」

「隊長、顔が怖いから……」

 

 

 本気で怖がっていないものの、少女(コード)は俺にくっついて離れなかった。

 傭兵の人たちがどっと笑う。

 

 さあ、日の高いうちに出発だ。

 順調にいけば日暮れまでに廃墟にたどり着けるだろう。

 

 僕たちは、アリナやクリスタ、子供達、街の人たちに見送られながら、ディアトリアの廃墟に向けて出発した。

 

 

 ————

 

 

「リィトさんの魔法ヤバくないですか?」

「ってか、もうリィトさんだけでいいんじゃないかな?」

 

 

 僕が襲ってきたウォーグウルフやオーガの集団を【発火(イグニッション)】で仕留めると傭兵さん達にそんなことを言われた。

 

 

「いやいや、敵に接近されると僕は無力ですし」

「屋外だと近づく前に消し炭ですよ。近づいてもあの水魔法で倒せるでしょう? っていうか喧嘩を売っちゃいけない相手だったんですね。ゾっとします」

 

 

 微妙に僕を怖がってすらいるような気がするけど、きっと気のせいだろう。

 一方、少女(コード)はずっと上機嫌だ。

 危なげも無く僕たちは進んでいく。

 

 

「出ました。コイツが倒せずに撤退するしかなかったのです。倒せそうにないなら、最悪足止めだけして、足もとを駆け抜けましょう」

 

 

 傭兵の隊長が叫ぶ。

 現れたのは巨鬼(オーガ・ジャイアント)

 

 ここまでに見たウォーグウルフやオーガを使役していたのだろう。

 オーガはおよそ人の二倍くらいの背丈だけど、コイツは四倍くらいある。

 

 

「リィトさん、お願いします」

 

 

 なんか使われている気がしないでもないけど、悪い気はしない。

 乗せられてしまう性格はどうにかしないとな。

 

 僕は今まで通り、【発火】の魔法を使う。

 しかし。

 

 

 バチバチバチ……ゴォォォォォオオオオオオ——キィィィン。

 

 

「な、なんと」

 

 

 オーガ・ジャイアントは、妙なテカリのある防具で炎の攻撃を弾いた。

 何度【発火】を打っても弾かれてしまう。

 

 ずしん、と音を立て、接近するオーガ・ジャイアント。

 その巨体の動きはやや緩やかだ。

 

 

「ちょっと試したいことがあります。野伏(レンジャー)の方は矢を射って貰えると」

「は、はい」

 

 

 傭兵のレンジャーが矢を射る準備を始めた。

 僕は、彼女に試してみたい魔法を使ってみる。

 

 

「【百発百中(トゥルーストライク)】!」

『【百発百中】の魔法を解析します——成功しました。反則強化(グリッチ)を行いますか?』

 

 

 えっ。

 普通に使うだけのつもりだったのに。

 ここに来るまでに経験を積んだからか?

 もちろん、YESだ!

 

 

「YES!」

『強化を実行。対象に触れてください』

 

 

 僕はレンジャーの肩に触れる。

 すると彼女の瞳が虹色に妖しく変化した。

 

 すぐにレンジャーはオーガ・ジャイアントめがけて矢を射る。

 すると、キィィィィィと空気を切り裂く音を立て、矢が飛んでいった。

 

 

「グァァァァァ!」

 

 

 矢は見事に、オーガ・ジャイアントの顔に突き刺さる。

 ヤツは兜を装備しているので、狙える範囲は狭いのだが。

 

 それにしても痛そうだ。

 でも、見た目ほどのダメージは受けていなさそう。

 

 

「リィトさん、やりました!」

「では、次はこの矢を使って目の近くを!」

「はい!」

 

 

 再び矢が射られ、光を放つそれはオーガ・ジャイアントの目の近くに命中した。

 よろける巨体。

 

 【(ライト)】の魔法がやじり部分にかけられており、輝く光の球により視力を奪ったのだ。

 もうこちら側を認識できないようだ。

 

 

 【光】の魔法は、およそ十分ほど効果がある。

 矢を引き抜かれるか、魔法の効果が切れるまでが勝負だ。

 

 

「駆け抜けろ!」

「うおぉぉぉぉ!」

 

 

 僕らはオーガ・ジャイアントの足もとを抜け、廃墟に向けて走った。

  すれ違いざまに【鑑定(アイデンティファイ)】を使ってみる。

 

 

反則強化(グリッチ)を実行。希望する鑑定内容を思い浮かべてください』

「弱点!」

 

 鑑定結果

 

 名前:オーガ・ジャイアント

 脅威度:A級

 特殊能力:回復

 

 以下、追加情報

 弱点:前方は重装のため強固だが、後方の装甲は軽微。攻撃するなら後方からがオススメ。

 』

 

 

 オススメが出た。

 

 

「背中側の装甲は?」

「ん? リィトさん! 背中側は防具も無くがら空きだ!」

 

 

 材料が足りなかったのか?

 確かに背を見せなければ、裏側はがら空きでよかったのだ。

 むき出しの背中が哀愁を誘う。

 

 

「みんな、飛び道具で攻撃を! 背中と、足を狙って!」

 

 

 当然のように「【百発百中】」を使い、全て命中させていく。

 

 

「す、すごい……聞いたことが無い魔法だけど……リィトさん!」

「お、俺も俺も! すごいぞ」

 

 

 傭兵の人たちが次々と投げ武器を放つ。

 本来投げる武器でない大剣を投げる人もいるぞ……。

 

 放った全ての攻撃が命中した。

 そうか。この魔法は本来は命中率を上げるだけだが、反則強化(グリッチ)で文字通り百発百中になるワケか。

 

 僕は言葉を失ったのだが、オーガ・ジャイアントは倒れない。

 ただ、ヤツは傭兵さんたちの攻撃により、ついに動きを止めた。

 

 動き始める前に。

 

 

「リィトさん、お願いします!」

「【発火(イグニッション)】!」

 

 

 ゴオオオオ!

 反則強化(グリッチ)を背中に向け連打し……オーガ・ジャイアントを燃やし尽くした。

 

 

 

「すごいな、【百発百中】。さすが攻撃支援(バフ)魔法、いつかは攻撃魔法を覚えて……!」

「ううん……リィト。あのね、それはね……針穴に糸を通したりする、生活魔法なの」

「えっ……」

「……」

「……」

 

 

 傭兵の人たちが僕たちの元に集まってくる。

 

 

「うぉぉぉぉ!」

「マジか!」

「全然倒せなかったのに……倒せた!」

 

 

 皆が喜んでいる。

 緊張の糸が一気に緩んだのか、膝を付くひともいる。

 

 

「皆さん、動きを止めて頂き、ありがとうございます」

「リィトさんの魔法なら、要らぬ手助けだったかもしれないな」

「いえ、確実に仕留めるために必要でしたから」

「リィトさん、謙遜を。一緒に戦えたことに誇りに思う。それに、これほどの戦いは記録に残すべきだな」

 

 

 彼らのテンションの高さに驚く。

 僕は、次々に握手を求められたのだった。

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