勇者パーティを、こっぴどく追放されたけど、改造呪術の《グリッチ=コード》が覚醒したため、生活魔法で最強を目指します!   作:手嶋ゆっきー

23 / 39
第23話 もう二度と、頭を撫でてもらえなくても、あなたに向けたいもの

 

 僕の一言に、あっという間に余裕の表情が崩れ去ったボリス。

 いや、それに取り入っている女。

 もしかしてこの女が……魔王?

 

 

「リィト……リィト……えへへ……うん……ありがとう」

 

 

 泣き濡れたチコが振り返り、いつもの笑顔を見せて僕に言った。

 うれしい、そんな素直な感情が伝わってくる。

 何かに満足し、何かを諦めた意思も。

 

 

「まさか、希望を生むとは思わなかったぇ。 どうして感情なんか生まれたので しょうかぇ?」

 

 

 ボリスはチコに対して手を振りかざす。

 歩みが止まりかけていたチコだったが、再びボリスに向かって歩き出した。

 

 同時に、チコの声が聞こえなくなる。

 

 

「おい、チコに一体何をした?」

「何って、これは(シツケ)でありんす」

 

 

 何を当たり前のことを、というようにヤツは答えた。

 

 

 僕らの制止も聞かず、チコはまっすぐボリスの元に歩いて行く。

 と、このタイミングでマエリスが意識を取り戻した。

 

 

「はっっ? リィト……カトレーヌさん? チコ?」

 

 

 彼女はすぐに状況を把握したようだ。

 眠りながら聞いていたのかもしれない。

 

 

「チコ! そっちに行っちゃだめ!」

 

 

 僕に抱かれながら、チコの背中に手を伸ばすマエリス。

 しかし、チコからの返事はない。

 

 

「聖女殿もお目覚めでありんすか。計画通りにはいきんせんね。これも全て、あの反則呪術(グリッチ=コード)使いの力でありんすか?」

 

 

 ボリスは隣にいるグスタフに目をやった。

 

 

「くっ。今、おとなしくさせましょう。それに、聖女がもういらないのであれば、俺が好きにしてよいでしょうか?」

「役立たずに与えるものなどありんせん」

「はい? それでは約束が——」

 

 

 ん?

 あいつら、一体何の話をしている?

 

 

「とにかく、あの男は危険でありんすね……」

 

 

 ボリスが、今度は僕に手の平を向けてくる。

 

 

「【聖域(サンクチュアリ)】!」

 

 

 マエリスが呪文を唱えると、キィン! という音とともに、僕らの周りに透明な板が現れ、囲まれた。

 これは聖女魔法の一つだ。

 外からの攻撃をはねのけ、安全地帯を形成する。

 その力に阻まれ、ボリスの放った黒い力が飛散する。

 

 

「ふむ。聖女のほうは力も確かなようでありんすね。しかも妙に強力でありんす」

「あなたなんかに、チコは渡さない。涙を流して……嫌がって……ツラい思いをさせて……その報いを受けるべきよ」

 

 

 マエリスの怒り。

 僕は、初めてその表情を見た。

 

 

 しかし、チコはついにボリスの元へたどり着きつつあった。

 くっ。

 なんとかして止めないと。

 

 

 この状況で反則強化(グリッチ=コード)が使えるか?

 

 

 やるしかない。

 僕はボリスに標的を合わせる。

 

 

「【水生成(クリエイトウォーター)】!」

 

 

 チコ、そして《グリッチ=コード》!

 

 僕の声に、応えろ!

 

 

『——大丈夫、わたしは、ここに(リィトの中に)()いる! ——反則強化(グリッチ)を実行するね!』

『同時に聖女魔法の解析もはじめるね!』

『そして……力を——あなたに』

 

 

 その声は慣れ親しんだ、僕の内側から聞こえていたもの。

 紛れもないチコの声だった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。