勇者パーティを、こっぴどく追放されたけど、改造呪術の《グリッチ=コード》が覚醒したため、生活魔法で最強を目指します! 作:手嶋ゆっきー
何らかの呪文が発動したのを感じた。
チコの唱えた呪文……?
しかし、目を凝らしてもチコの姿が見えない。
消えてしまった。
いや、そもそも、チコはそこにいたのだろうか?
いやいや、目の前にいたはずだ。
僕は混乱する。
「……チコ? あれ? どこいった——」
チコがいなくなった。探さないといけない。
ディアトリアの廃墟の外側は荒野が広がっている。
砂と朽ちた建物ばかりのところで、一人で生きていけるはずがない。
どこかに迷い込んだのなら、急いで探さないといけない。
でも、どこに行ったのか?
手がかりがない。
でも、とにかく探さなくては……!
「……。あれ? 探すって……誰を? 女の子……?」
「リィト、さっき誰かそこにいたよね?」
マエリスが泣きそうな声を上げる。
そうだ。誰かがいた。
えっと、名前は……何だっけ?
チ——。
急激に、頭の中の記憶が揺れているような感覚がある。
でも揺れているのは頭の中だけで、目の前に広がる廃墟は
まるで、さっきまで近くにいた少女だけが消えてしまったようだ。
「【*****】?」
さっき、聞いたこともない呪文を聞いた。
きっと、それが原因なのだ。
僕は何か大切なものを失おうとしている。
とてつもない喪失感を抱く予感がした。
ぽっかりと胸に穴が開くような感覚。
でも、それすらぼやけてくる。
ダメだ。
このままでは、何か失おうとしていたことすら……全て忘れてしまう。
どうしたらいいのか?
ふと、僕の右手の指にはめられている、マエリスとお揃いの指輪のことが気になった。
これは……。
『
鑑定結果
名前:マエリスとお揃いの指輪
材質:不明。
効果:一度失敗したことを、なかったことにできる。
残り使用回数:1回
』
頭に響いていた声を思い出す。
そうだ、今まで頭の中に響いていた声があったはずだ。
僕の指輪の力は使えない。
急ごう。
マエリスの手を取る。
彼女の指輪の力なら……!
「マエリス、ごめん、ちょっと指輪を貸して」
「えっ? うん!」
僕はマエリスから借りた指輪を【識別】の魔法を使って鑑定する。
『
鑑定結果
名前:リィトとお揃いの指輪
材質:不明。
効果:発動済みのスキルや魔法を、発動前に戻す。
残り使用回数:1回
』
頭に響く声は、僕自身の声だった。
ん?
最初から、僕の声しか聞こえなかった……?
いや、違う!
マエリスには悪いけど、今やらないと絶対後悔する。
僕はその指輪を天に掲げ、その力を解放する。
「指輪よ! その効果を発動せよ!! たった今、発動した魔法を——破棄せよ!」
指輪から光が発せられ、世界がぐにゃりと歪んだ——。