ロドス・フロントライン 作:チランゴ
「ヴェァアアアアアアアッもうヤダッ書類ヤダッ、シゴトヤダッ」
ロドスの某執務室、1人で狂い散らかした男がいる。そう、私だ。吾輩はドクターである。名をチランゴと言う。どこで生れたかとんと見当けんとうがつかぬ。何でも目覚めた時からヒィヒィと書類仕事と作戦指揮とロドス・アイランドの運営とオペレーターとのコミュニケーションをしていたことだけは覚えている。あれ?俺結構こき使われてないだろうか、あのうさ耳CEOに。
「もうヤダ、これ以上仕事したくない。」
「ドクター、まだやすんじゃだめですよ?」
「アーミヤ!?いつの間にっ、ヴッ」
プスっと言う音とともに自分の体に注射器が刺さる。ア゙ー、理性が回復するぅ。
さてと、こんな茶番はさておき自己紹介をさせてもらおう。私はチランゴ。このロドスという組織の中ではドクターという名で通っている。ロドス・アイランド製薬。これが私の所属する製薬会社の皮を被った民間軍事企業だ。一応、申し訳程度に薬の開発はしているが、ここしばらく内部用の医薬品生産につきっきりだ。そして、私はその企業のトップの1人としてそこのCEOのアーミヤにこき使われている。彼女はその小さい体躯でいろいろな物を背負っている。それを背負わせてしまったのは我々大人たちであるからあまり強くは言えない。しかし、そろそろ申し上げたい。
「ふむ、アーミヤや。」
「なんですか?ドクター。」
「今何時かな?」
「23時42分ですね。それがどうしました?」
「私は今日何時から執務を開始してるかな?」
「えぇと、確か朝の5時半あたりでしょうか。」
「なるほど。この会社の就業規則はどうなっているのかな?」
5時半から?冗談じゃない。俺は機械かなんかかっちゅうの。
「ロドス・アイランド製薬の就業規則としましては朝8:30から合計3時間の休憩を含めまして20時までの勤務となっています。」
「だったら...」
「ですが、例外事項としてドクター、そしてクラス2B以上の手術を行うオペレータはこの規則に含まれないものとして扱われています。」
「龍門スラング*、ウルサススラング*、ヴィクトリアスラング*、シラクーザスラング*!私には人権はないのか?」
「人外並みの労働を見せるドクターも素敵です。さてと、そちらの束も終わったみたいですね。では、ってドクター!?」
やってられっか。いくらCEOが怖いからって、過労死したら元も子もないわ!
『至急至急、艦内の各オペレーターへ。ドクターが逃走しました。オペレーターの皆さんは捕獲の協力をお願いします。』
通りすがるオペレーター達は、深夜の艦内をすごい勢いで走る人影を見てギョッとしているが、放送を聞くとまたいつものかと相手にしなくなる。悲しいなぁ。
「クロージャ!クロージャはいるか?」
ひたすら走って向かった先はクロージャの
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『くっ、逃しましたか。』
ロドス甲板の端までドクターを追いかけたアーミヤが睨むのはロドスから全速力で離れていく航空機の放つ航行灯の光。彼女の端末の画面にはロドスから急速に離れていくドクターのPRTS端末の反応が映っている。
『対空砲、狙撃オペレーターのみなさん。撃ち落としてください。』
『えぇっ、ドクター死んじゃいますよ!?』
『大丈夫です。ドクターはその程度では死にません。私はドクターを信じます!』
盗聴器と双眼鏡越しで彼らを観察するが、アーミヤとともにきた狙撃オペレーターはとりあえずもうほとんど見えないぐらいの距離にいるバッドガイ号に対してクロスボウやら銃やらを撃っている。あんなもの効くわけがない。
「アーミヤは私を超人かなんかかと勘違いしてないか?」
「あはは、実際ドクター人離れしてるじゃん。」
「ほぼ強制的に打ち込まれる理性回復剤のせいだ。」
ドンッドンッと眩い光とともにロドスアイランドの艦載砲がバッドガイ号に向けて弾幕を張っている。どうせ、すぐに射程圏外になるだろうと思っていたら、別の艦載機が発艦していった。追っかけに行ったな。ちなみに、バッドガイ号はクロージャ謹製の自動操縦装置で適当なところまで飛んだら一旦潜伏して、その後また帰ってくるようになっている。まぁ、三日後ぐらいには帰ってくるだろう。
クロージャのPRTSの画面でアーミヤが離れていくのを確認。勝ったな。焦っているせいか見事にブラフに引っかかってくれた。
「しかし、残念だったなアーミヤ。条件反射のように理性回復剤を撃ち込んだのが失敗だったな。普段は私が理性切れかけなもんだからすぐに捕まっていたがな。」
「助かった、クロージャ。輸血パックだったな。融通するよう図ろう。」
「毎度ありー。いやー、ドクターじゃないとこういうの頼めなくてさ。ケルシーはその場でMon3trだしアーミヤはケルシーに相談だし、他のオペレーターも禁止リストに乗ってからはね。」
「私だって普段は許可せんわ。じゃぁ、私は失礼させてもらおう。」
なるべく人通りの少ない通路を通りつつ自室まで戻る。さてと、準備はできた。俺は惰眠を貪ろう____
「なるほど、色々と参考になりました。さすがドクターです。」
「えっ、アーミヤ!?なんで!?」
気を失う直前に見たのは目の前に迫ってきた真っ黒いアーツだった。
「おい、起きろ、ドクター。いつまで寝てるつもりだ。」
ゆさゆさと、誰かに起こされた。
「んぁ?今何時?ってかなんで私はここにいる?」
起きたら医務室にいた。めっちゃ頭がズキズキする。
「朝8時だ。アーミヤがお前をしばき倒したからここにいるんだ。覚えてないのか。」
「んー、覚えてねえわ。もう少し寝せて...」
「なんだ、気付けに1発欲しいのか?」
ガヴィルが怪訝な目で俺を見ながら物騒なものを取り出してくる。
「いやいやいや!大丈夫だから!大丈夫だからその金属バットをしまって!また記憶喪失になっちゃう。」
「ったく、検査の結果も問題なさそうだからさっさとベッドを開けろ。」
解せない。俺も好きで医務室で寝てたわけじゃないのに。
「やっとお目覚めのようだな。ドクター。」
「おはようございます。ドクター。」
うわぁ、ロドスの2トップのお出迎え付きとは大層なこって。
「色々といいたい事がある。私の執務室まで同行するように。」
「...はい。」
「さてと、まず最初に君の労働形態が正式に制定される。」
ケルシーの執務室の扉が閉まった途端に話し出した。全くせっかちなもんだな。
「労働時間は8時から1時間の休憩と2時間の休憩を1回ずつ挟んだ10時間。」
お?
「土曜、日曜は休日。ただし、作戦期間中等特殊条件下ではこの限りではない。」
おぉ?
「また、時給はこれまで通りとする。つまり...4500龍門幣だ。時間外労働は時給が15%UPだ。」
おぉぉ?
「年に2回1-2週間の有休の権利を与える。」
おぉおおぉ...
「これで、いいだろ...何をしている。ドクター。」
「ケルシー様、一生あなたへの忠誠を誓います!」
「ドクター!?」
アーミヤが悲鳴に近い声で叫んでいるが知らぬ。五体投地を今使わないでいつ使う。
「何を言ってんですか、ドクター!?」
「今だったらその靴を舐めてもいい!」
「...ただし...」
ケルシーの豚を見る視線が痛いが知らぬ。他のオペレーターたちの視線も気になるが知ったことか。
「先日アーミヤを撒くためにグッドボーイ号を損壊させたそうではないか。」
「え?私は壊してないぞ。」
「ならばこう言おう、お前が原因でグッドボーイ号がアーミヤによって撃墜されたと。」
ン?
「幸い、昨日の朝の時点でバッドガイ号がサルベージに成功しているが、それの修理費をドクター、及びアーミヤの報酬から天引きとする。」
アー...なるほ...ね?
「ちなみに、おいくら?」
「クロージャ曰くエンジンモジュールからエアフレームからとそう取っ替えらしいからな。今のところ出ている推定が1352万3500龍門弊だ。」
前言撤回。靴は舐めない。
「それをアーミヤとドクター、君とで二等分すると676万1750龍門弊だ。ただ、直接破壊していないことを考慮してドクターの分を500万に減額しておこう。残りはアーミヤが担当だ。」
「...保険って出ないの?」
「無理ですね。自分たちで壊したので保険の適用外です。」
「諦めることだな。ドクター。アーミヤと仲良く12ヶ月分割で払うことだ。」
そんな...
「ん?あ、500万だったら貯蓄全部叩けばいけるわ。」
「私もです。あまり使い道がないので」
しばらく呑みは無しだな。あー、ブレイズが拗ねそう。
「だったら後ほど口座を指定するからそこに振り込むように。」
「はーい。」
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いやー、まじで天国。ちゃんと労働時間が決まっているなんて最高!
と思ってた時が自分にもありました。
「なんで、仕事が減らないんだ。」
結局残業しているではないか。しかも、えぐい量の。
「ドクター、重装オペレーターの訓練報告書です。その、なんというか。頑張ってください。」
「励ますぐらいなら手伝って欲しいな。」
「ははは、私の酒を断るような奴を手伝う義理があるとお思いで?」
クソゥ、ホシグマめ。金欠によるドタキャンをまだ恨んでやがるな。
「仕事が終わらないといつまでも呑みに行けないぞ?」
「ふむ、考えておこう。」
そして、またひたすら書類とパソコンの画面を交互に睨むこと数時間。時刻は日付を超していた。
「お疲れ様です。ドクター。あの、大変申し上げにくいのですがおかわりです。ちなみに急ぎです。」
申し訳なさそうにやってきたアーミヤが渡したのは龍門に出さなければならない書類一式。
もう...
「ヤダッ。」
「あっドクター!...至急至急!各当直オペレーターへ、ドクターが脱走しました!」
ドクターの執務室戦線は今日も異常なしだ。
MN-EX7で頓挫中です。エイヤがいないのが痛い。