画面の中でダンデとヤローのバトルが続いていく。
ヤローが次いで出したのはルンパッパ。
私とのバトルでも出した超がつくほどの耐久型。
ムーくんという同じ超がつくほどの火力型を出すことで勝利することができた相手だが、3対3のシングルバトルにおいて2体目というのは相手への対策かエースへの起点作り要員として使うことが多いため、2体目にそんな飛び抜けた火力を出すトレーナーというのは少ない。
それこそカブのような攻撃偏重なパーティでも無ければ。
だからこそ、この場面のルンパッパは刺さる。
―――はずだった。
「『
投げられたボールから飛び出したポケモンに、ヤローが絶句し、目を見開く。
同時に観客が一瞬静まり返り。
―――わああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!
直後、歓声が爆発する。
その歓声に応えるかのように。
―――ザァオオオォォォォォォ!!!
「ここでエース投入!?」
画面越しにでも分かる、その圧倒的な強さ。
ただの雰囲気からしてもあれがただのリザードンではないことは明白で。
“アイアムダンデ”*1
“スーパーダンデタイム”*2
“たぎるおもい”*3
―――会場の盛り上がりは最高潮を迎えた。熱く濃い闘争の空気はポケモンたちの本能を呼び覚ます。
まるで今がチャンピオンカップ本選かと錯覚するような盛り上がり。
そしてその熱気がポケモンたちへと伝播しているのが分かる。
「……これが、ガラルのやり方、ね」
思わず漏れ出たその言葉。
それはこれまで私が戦ってきたガラルのトレーナーたちの本領がどこにあるのか、それを今ようやく理解したことを示していた。
交代をしない居座り戦術。エースに全てを託すようなエース重視環境。そして盛り上がりこそを全てとするエンタメ気質。
その全ての行きつく先は
ガラルのポケモンバトルとはトレーナーとトレーナーの戦いだけではないのだ。
ガラルのトレーナーのバトルとは。
自らが積み上げてきたもの、そして
伝播する熱気に背を押されたようにルンパッパの動きのキレが大きく増す。
だがそれ以上に、リザードンの様子は一変している。
キョダイマックス時のように全身のいたるところから炎が噴き出し、頭部や腕などが赤熱化したように緋色に染まっていた。
―――ザァオオォォォォォォォオォォォォォォ!!!
“コロネーション”*4
会場の空気全てを飲みこまんと気を吐くその様に、会場の空気がさらに熱狂に包まれていく。
先も言ったが、ダンデたちの作り上げるその様は最早熱狂と呼ぶしかない。文字通り、熱に浮かされ狂っている。
対戦相手のヤローですら、ダンデの作る熱狂の空気に飲まれかけているのだから、最早冷静なバトルなど望めるはずもなく。
「……ローさん!」
「リザードン!」
確かにルンパッパとて調子を上げている、だがその倍……いや、数倍リザードンのほうが力を増してしまっている。
ここまで行くと最早超越種と名乗っても良いのではないかと錯覚するほどの圧倒的パワーでリザードンがルンパッパの機先を制し―――。
“オーラバーン”*5
“ブラストバーン”
全身から放たれ吹き荒れる熱波が最早フィールドを飲みこみ、まるで『にほんばれ』でも使ったかのようにリザードンの周辺を熱している。
その状況下で放たれた『ほのお』タイプ最強クラスの技はカブ戦で見たキョダイ技にも匹敵するかのごとき必殺の威力となって一撃でルンパッパを燃やし尽くす。
確かにルンパッパは耐久型だ。だがその能力は回復能力に重きを置かれており、ムーちゃんの一撃など足元に及ばないほどの超必殺の火力の前になす術も無く崩れ落ちた。
―――同時、再び歓声が爆発する。
苦い顔をするヤローだったが、このリザードンを前に最早どうしようも無い。
それでも勝負を捨てることなく、望みを託し投げられたボールからはヤローの最後の1体であるタルップルが飛び出す。
タルップルの特性は『あついしぼう』もあったはず、と考えればなるほどリザードンが出てくると分かっていればアップリューの代わりにエースとして出すならこちらだ、理にかなっている。
最早半減どころか1/4まで軽減したところで一撃で消し飛ばされるような火力をリザードンが出していないならば、だが。
“コロネーション”*6
テンションが最大まで上がった今のリザードンは、『ブラストバーン』の反動をまるで無かったかのように次に備えている。
いや、それどころか相手のタルップルが『エース』であることを理解しているのか、さらに意気込んでいる。
『エースポケモン』同士の対峙に、観客のボルテージがさらに増す。
そして両者が同時にボールへとポケモンを戻し―――。
「リザードン!」
「ルーさん!」
「「キョダイマックス!!!」」
その言葉と共にボールが投げられた。
* * *
「……バケモノ」
思わずそう呟いてしまうと同時に言葉が過ぎると反省する。
だがそんな言葉が咄嗟に出てきてしまうほどに画面の中に映るその姿に戦慄していた。
「
“エンペラー”*7
リザードンのキョダイマックスを引き金に、歓声が明らかにダンデの側に偏った。
そしてその歓声の偏りはつまりポケモンにも影響を及ぼす。
目に見えてリザードンの雰囲気が変わった。噴き出す炎の勢いは増しに増し、さらに一回り強くなったのが分かった。
『リザードン! キョダイゴクエン!』
その言葉と共にリザードンが大きく息を吸い込み、そしてその口から吹き荒れる炎の嵐が対面に佇むキョダイなタルップルへと降り注ぐ。
タルップルもまた抵抗しようと、ヤローの指示に従い技を出そうとしているが、そんな抵抗などまるで無意味とばかりに紅蓮の嵐が全てを飲みこみ、そして消し去っていく。
どかーん、という爆音。
それがダイマックスが解除された時の音だとある程度ガラルのポケモンバトルを嗜む人間ならば誰もが理解できた。
当然、誰よりもタルップルの近くにいたヤローにも。
決着。
それからヤローとダンデのやり取りがされるが動画自体はそこで一度切れる。
そして再び動画が映し出されるとそこはバウスタジアムだった。
対戦のカードは先と同じ、ダンデ対ジムリーダー、つまりルリナ戦。
そこでもダンデはスタジアムの観客を熱狂させる派手な立ち回りとパフォーマンスで会場を味方につけていた。
3-0で勝負が終わり、また動画が切れる。
再び始まれば次はエンジンスタジアム。
そして対戦カードはダンデ対カブ。
結果は1-0。
圧倒的なカブの火力に対して火力で押し切るという埒外の領域のバトルを制してダンデが勝利を手にしていた。
どうやらバトルの動画はそこまでだったらしく、そこからはダンデの手持ちの解説だとかそういうのが入っていたが、それを理解して動画を閉じる。
これ以上は必要無かった。
いや、それ以上に一秒でも早く動画の内容を反芻したかった。
「何度見ても理不尽ね」
ユウゼンと共にヤロー戦だけは一度見たことがあったが、あの頃はまだこのガラルにおける『観客』の重要性を理解しきれていなかったためただただ強いことしか分からなかった。
だが数々のジムリーダーと戦い、スタジアムでのバトルを経験した今となってはダンデのその理不尽さを実際に理解できるようになっていた。
ヤロー戦、トータルで4手。
ルリナ戦、トータル6手。
カブ戦、トータル5手。
どれも時間にしてみれば5分にも満たない僅かな間の攻防。
だがそこに詰まっているのはこのガラルの最強が最強たる所以だった。
「ユウリ……これに勝ったの?」
―――自分と同じ1年目で?
確かにあのムゲンダイナという超越種の存在は大きいのかもしれない、が。
それでもあの時戦ったムゲンダイナと動画の中のリザードンを比較すれば、正直リザードンのほうが上のように思える。
だが、それでも、ユウリは勝った。勝ったのだ。あの最強を相手に、勝利を掴み、そしてこのガラルの頂に立った。
果たして自分が同じ状況ならば、勝てただろうか?
例えば今目の前にダンデがいるとして、あのリザードンを相手に勝利を得ることができるだろうか?
「……“おおあらし”抜きじゃまず無理ね」
否、あれに本当に『おおあらし』が通用するとも限らないのだが。
普通に考えれば通用すると思うのだが、あのリザードン十中八九専用個体だ。
専用個体というのはある種超越種にも似た理不尽さを持つ個体が多いので『無効化を無視して攻撃できる』なんて裏特性や能力があっても不思議じゃない。
というかあのリザードン、もう実際のところ足一歩分くらい超越種側に踏み入れている感じがする。
1つの地方のチャンピオンだったと考えれば余程激戦を潜り抜けて来たのだろう、さらに専用個体という特異性、そして聞いた話によれば昨年にはあのムゲンダイナと単独で戦っている、つまり超越種との戦闘経験がある。
それら全てがリザードンを単なるポケモンという枠から逸脱させかけている。
だがまあ実際に超越種に至るか、と言われればきっとそれは無いだろうが。
超越種とは文字通りの存在だ。
あのリザードンは圧倒的ではあって、超越的ではない。
最強ではあっても究極足り得ない。
だからそこに至ることは無い、と思う。
問題はだからといってあのリザードンが弱くなるわけではない、ということだが。
確かに超越的と呼べる存在ではない、だが圧倒的なほどに強いのは事実だ。
究極足り得ないかもしれない、だが少なくとも自身の想像し得る範囲で限りなく最強に近いのも事実なのだ。
「ガーくんじゃ相性が悪すぎるわね」
半減どころか抜群相性の『はがね』タイプのガーくんでは相性が悪い。
いや、あの常識外れの火力を前に相性なんて関係無いのかもしれない。
当たれば死ぬ、そのくらい理不尽な威力だ、あれは。
しかしそうすると可能性があるとすれば。
「……アオ」
目を瞑り、その名を口に出す。
アオ、ジムチャレンジ前にホウエンに戻した自身の
母から嵐の力を自身が受け継いだように、竜としての力を受け継いだ……
アオへの育成はすでに去年の段階で終わっていたが故に、新しくガラルでゲットした手持ちたちの育成を優先していた。
だがガラルに来て、そのバトルに触れる中でまだ上があることに気づいた。
元よりアオは強力なアタッカーだったし、パーティのエース格として運用してはいたが、それはあくまでホウエンでのスタイル。
つまりサイクル戦に適応したやり方だった。
それをガラルにスタイルに適用する。
つまり―――。
「居座り方のエース……ラスト1体に固定するならやり方はまだある、か」
アオは私の双子の弟だ。私の半身とも言える存在。
それはある種、専用個体よりもさらに私に適した存在と言える。
私の専用個体たるガーくんは限り無く私に適した存在ではあるが、それ以上、だから半身。
ある意味自分自身とも言える存在なのだから、専用とはいえ別固体であるガーくんよりもさらに理想通りに育てることができるのは自明の理だろう。
故に今のアオは私のホウエン時代の理想通りに育っている。
「……はー、嫌になるわね」
だから今度は私のガラル式の理想に沿って育てれば良い。
それだけの話だ、話なのだが。
溜め息が出る。
アオを育てるのだから当然アオを呼び戻す必要がある。
12年共に生きて来た半身を呼び戻す。
寧ろ一緒にいなかったここ2,3カ月のほうが異常とも言えるのだろう。
それでも。
「ホントに、嫌になるわ……」
自分がこんな思いを抱いていることを、きっとアオは理解している。
だってアオが自身の半身であるように、アオにとってもソラは自分の半身なのだから。
言葉にしたことが無くても、それでもアオには伝わってしまっている。
―――ソラの嫉妬が。
「ポケモンになりたかった……なんて、馬鹿な話よね」
かつてソラはそう思っていた、本気でそう思っていた。
だが昨日夢で見て思い出した、思い出してしまった。
「全部ただの子供染みた嫉妬でしかない」
私はポケモンとして生まれたかった。
だからアオを羨んだ……
全部全部逆なのだ。
全て、全て、反対だった。
ずっと忘れていた。
最初の思い。
最初に願い。
人にしかなれなかった自分が。
人でしかなかったと自分が。
最初に抱いた心の弱さ。
「私は……アオが羨ましかった」
ポケモンになりたいから、ポケモンであるアオを羨んだ。
否。
違う、それでは順序が逆だ。
私は。
「あまりにも稚拙過ぎで、恥ずかしい」
手で顔を覆って、もう一度溜め息を吐いた。
一つとんでも無いアホやらかしてたんでちょっと訂正しときます。
75話時点でダンデさんすでにヤローさんと戦ってました。
本気で忘れてたけど、ユウゼンさんがソラちゃんにガラルの新システムを説明してる回ですね。
マジで忘れてて、システム周りのとこちょこっと修正してて気づいた時ビビった。
名前:ダンデ
トレーナー評価
指示:8 元チャンピオンとして激戦を潜り抜けてきた経験から来る鋭い読み。
育成:9 長年の経験と持ち前の才覚による高度な育成手腕。
統率:10 ガラル中の人たちを夢中にさせるカリスマトレーナー。
技能:9 長年プロの舞台に立ち続け磨き抜かれた熟練のテクニック。
戦術:10 スタジアムという一つの舞台を掌握し、自らのための力へと変えるまさにガラルトレーナーの極致。
総評:46 Sランク。ガラル全土の頂点に立つに相応しいスーパースター。
【技能】
『アイアムダンデ』=「さあ、ここからはオレの時間だ!」
味方のポケモンを場に出した時、『味方の場』のエキサイトグラフを+1する。
味方の『エース』を場に出した時、『全体の場』のエキサイトグラフを+6する。
全体の場が『クライマックス』状態で、『エキサイトグラフ』が上昇した時、『クライマックス』状態の経過ターンを+1する。
『たぎるおもい』
味方のポケモンが場に出た時、テンション値を最大まで上昇させる。
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【応援】『スーパーダンデタイム!』
味方の『エース』が場に出た時、味方の『エース』の全能力が上がる。
【種族】“エンペラー”リザードン/原種/専用個体
【レベル】120
【タイプ】ほのお
【特性】こうていのぎょくざ(直接のダメージ以外を受けない。自分のテンション値が下がらなくなる)
【持ち物】いのちのたま
【技】ブラストバーン/ぼうふう/ソーラービーム/げんしのちから
【裏特性】『コロネーション』
テンション値が最大の時、『こうかはばつぐん』で受けるダメージが半減し、『こうかはいまひとつ』で与えるダメージが2倍になる。
テンション値が最大の時、毎ターンHPが最大HPの1/8回復し、技の反動を受けなくなる。
場の状態が『クライマックス』の時、全能力が2倍になり、技が必ず命中する。
【技能】『エンペラープライド』
『キョダイマックス』状態の時、同じタイプの技の優先度を+1し、威力を1.5倍にする。この効果は戦闘中1だけ使用できる。
【能力】『エナジーバーン』
毎ターン開始時に『ねっけつ』状態になる。
『ねっけつ』状態の時、自分の『ほのお』技があらゆる効果によって無効化されない。
『ねっけつ』状態の時、天候の影響を受けず、自分を『つよいひざし』状態として扱う。
『エースポケモン』
相手のポケモンを倒した時、エキサイトグラフを+1(味方)する。
相手の『エースポケモン』が場に出てきた時、テンション値を最大まで上昇させ、エキサイトグラフを+2(味方、全体)する。
『キョダイマックス』
3ターンの間、『キョダイマックス』状態になる。
『キョダイマックス』状態の時、自分のHPを2倍にする。
『キョダイマックス』状態の時、『ほのお』タイプの技が全て『キョダイゴクエン』になる。
【称号】『エンペラー』
『キョダイマックス』した時、エキサイトグラフを+3(味方)する。
一部抜けはあるけど、これが去年までの無敵のチャンピオン&そのエースである。
リザードンぶっ壊れ過ぎだろ!!! こんなの許されるのか?! と思うかもしれないが、『エース』に限って言えば許される傾向にあるのがガラルです。
【称号】について。
すっごい簡単に言うと『二つ名』システムになります。
公式試合で活躍しまくったポケモンに観客がつけた『二つ名』が観客たちに浸透して、スタジアムでの試合時にその『共通認識』がスタジアムのパワースポットに影響を及ぼすとかそんな感じです。
要するにダンデさんが普通のポケモン出してもまあダンデさん自身のカリスマ性で盛り上がるけど、リザードン出してキョダイマックスしたらもっと盛り上がるよね、それって要するに『ダンデの相棒=リザードン』という共通認識のもとに作られたもの。
これは要するにトレーナーである『ダンデ』と同様に『リザードン』に対する期待が付随してる結果の効果と言える。
なので二つ名効果は有名トレーナーなら持ってたりするし、引退すると消えたりする。
要するに知名度補正ですね。
挿絵つけてるけど、あったほうが良い? 無いほうが良い?
-
あったほうが良い
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ほどほどで良い
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無い方が良い