魔女からエモンガを取り戻し、魔女が膝を突いたことでシキ母さんと戦っていた洗脳されていたポケモンたちも正気を取り戻し、逃げ出していった。
一応ヌシである魔女を倒したとはいえ『ひんし』にしたわけではない、戦おうと思えばまだ戦える、だから追撃に警戒しながらシキ母さんと2人で慎重に森を進み、無事に街へと戻った時は思わず脱力した。
「……ありが、とう……ございます、ソラ……さん……」
真っ先にポケモンセンターでエモンガの無事を祈るシノノメの元へと行き、エモンガを差し出すとエモンガが飛び出すようにシノノメへと抱き着く。
そうして自身の手持ちが戻って来たことへのシノノメの嗚咽混じりの感謝を受け取りながら、手持ちのポケモンたちのボール全てをセンターに預けると重い体を引きずりながらスタジアムへと向かう。*1
スタジアムの入口までやってくれば、何人か集まっているのが見える。その中にジムリーダーのビート、そしてポプラの姿もあった。
「―――ええ、分かりました。引き続き街のほうをお願いします」
「すぐに次がどうこうってわけじゃないだろうがね、それでも先の襲撃を切っ掛けにまた別の問題が起こるかもしれないからね。手持ちはしっかり休ませておきな。いざって時に動けなかったら承知しないよ」
ポプラの言にジムトレーナーたちが大きく頷くと、ビートの解散の一声に再び街へと散っていく。
そうして人のいなくなったスタジアムへと近づいていくとポプラがこちらへと視線を向けた。
「戻ってきたかい。ポケモンセンターのやつらから大よその話は聞いてるよ。随分と無茶したね、アンタ」
「……そうかもね」
無茶をした。何より手持ちに……ガーくんに無茶をさせてしまった。
「仕方なかった、なんて言うつもりはないけど、それでもやるべきだと思ったわ」
「……そいつはなんともピンクじゃないねえ。けどまあ、あたしらのツケ払わせちまったんだ、グダグダ言ったって仕方ないことさね」
鼻を鳴らすポプラだったが、直後一転して真剣な視線を向けてくる。
「それで、
端的な問いかけ。
その問いの意味を、けれど今の私ならば理解できる。
「
「なんですって?」
「
「何を言って……!?」
街を襲撃した群れのヌシを逃したという事実にビートが目を見開く。
だが直後のポプラの返答に怪訝そうな表情に変わった。
「ビート、アンタもこの街のジムリーダーとして知っておきな。まずもって代々のアラベスクタウンのジムリーダーたちが一度もあの魔女を倒せる状況になったことが無かったと思うかい?」
「それは……災禍とされるほどの強力なポケモンと聞きますし」
「そうね。確かに強かったわ……でも強いだけでしかないのよ」
私の言葉にますます分からないといった様子のビート。
だからそんなビートの疑問をフォローするようにポプラが口を開く。
「有体に言っちまうならそれこそ今のチャンピオンを呼んでしまえば戦力的には十分さ。だがあの強力なヌシを倒したとして、それでどうなると思う? 魔女はね、確かに強力なポケモンでそれ以上に強力なヌシさ。そんな強力なヌシの存在がある意味でこのルミナスメイズの森の平穏を保っているのさ」
ポプラの言葉にようやく理解が及んだのかビートがなるほど、と納得したような表情になる。
つまりそういうことなのだ。
確かに魔女に膝を突かせた時、そのままアーくんが追撃していれば魔女を『ひんし』に追いやり、群れを完全に壊滅させることだってできただろう。
だがそれをすれば今度は魔女という何百年という長い時間森の頂点に立ち続けてきた巨大な存在の消失によって生まれるその巨大なナワバリの空洞化。
そして洗脳が解けた先の大混乱、そこから自我を取り戻したポケモンたちによる過酷なナワバリ争い。
森のど真ん中にあるアラベスクタウンにとってその争いによる影響は絶大といって良い。
それこそ『ルミナスメイズの森』のポケモンたちが全滅するまでは収まることのないような大紛争。
それを引き起こすくらいならば現状維持を選ぶ。
例え魔女がナワバリを広げるためにことを起こすにしても、何十年に一度という頻度。
過去と比してもトレーナーが日進月歩で強くなり続ける今の世界において、それを抑えることは決して難しいことではない。
ポプラが言うにはあの魔女はこのガラルにおいて『三大災禍』と称されるほどの存在ではあるが。
トレーナーとは、人とポケモンの絆とは決して災禍に折れるほど軟なものでは無いのだと。
故に“白魔女”はその危険さに反して手出し無用の存在とされている。
『ルミナスメイズの森』の中にある街アラベスクタウン。
そこを境界線として、向こう側は『野生の領域』とし。
『ワイルドエリア』なんてものを作り出すほどに開発が進み続けたガラル地方でなお手出し無用の領域とされていた。
「まあ……良いさ。結果だけ見れば、ね」
「良いのですか? 他所の人間に勝手にされたわけですが」
嘆息しながらもポプラがそう告げれば、ビートが眉を潜める。
「本来あたしたちがやらなきゃならないことだった、それが後手に回っちまったのが問題だったんだよ。さっきも言ったがソラはそのツケを代わりに払ってくれただけさ。本当は良くない、そうだとしてもソレを責める権利はあたしらに無いのさ」
苦々しい表情のビートに対して、ポプラは状況の終息に安堵している様子で、後はこちらでやっておくから帰っても良いと告げる。
その言葉に従い、ポプラたちに一礼するとスタジアムに背を向けた。
* * *
ポケモンセンターに戻るとそのまま部屋に直行する。
ジムリーダーへの報告も終えた、シノノメもすっかり憔悴してしまっていて重い足取りのままエモンガを大切そうに抱えたまま部屋に戻ったし、シキ母さんもセンターで部屋を取って妹たちを待つらしい。
つまりやるべきことは全て終えた、と息を吐く。
途端に足取りがふらつき、そのままベッドに崩れ落ちるように倒れ込んだ。
「……疲れた」
取り繕うことすらできない疲弊が言葉として漏れ出る。
長時間に渡る街の防衛に神経を尖らせ、その後の魔女との戦いで心をすり減らした。
肉体的な疲労はある、だがそれ以上に精神的な疲れが体を重くしていて。
「……ガーくん」
ここにはいない手持ちの名前を呼ぶ。
疲れた、体が気怠い、頭が重いし、考えるのも億劫だ。
それでもずっと、頭の中で、心の内で、ぐるぐると渦巻いているものがある。
ただ……どうしてだろう、それを明確にできない。
自分の中に蟠る感情がある。
ぐるぐると渦巻いて、いつまでもそこから出てくることが無い。
それを言葉にできない、それを形容できない、それを行動にできない。
何でだろうか、と考えてみてもそれが分からない。
ぐるぐる、ぐるぐる、渦巻き続ける感情に悶々としながら。
けれど心も体も限界に達して、やがて意識が沈んでいく。
―――ガーくん、大丈夫かな。
眠り落ちる寸前の意識で、そんなことを思った。
それからどれだけの時間が経ったのか。
真っ暗な闇の中、ゆっくりと目を覚ます。
薄っすらとした意識が徐々に覚醒していく感覚。
ひどく重く感じた体がけれど気づけば幾分と軽かった。
どうやら寝入っていたのだと気づき、それから暗闇の中で明りを探し、やがて羽織ったままのコートに入れっぱなしのスマホの存在に気づく。
寝相が悪かったらそのまま割っていたかもしれないと思うと運が良かったというべきか、自身の寝相が良くて助かったというべきか。
取り出したスマホの電源を入れれば眩しい光に一瞬目を閉じ、少しずつ目が慣れてくると画面に表示された時刻は日付が変わるかどうかという時間。
「……ああ、寝てたのね」
朝に襲撃を受け、そこからエモンガを奪還しに行き、その後ジムリーダーに報告だけしてそのまま寝入ってしまったのでだいたい8時間くらいは寝ていただろうか。
道理で体が軽いと思った、と同時にまた着替えるのを忘れていたことに自己嫌悪しながら寝汗をかいて肌着が貼りつくような感覚に着心地の悪さを自覚する。
一度覚醒するとすっかり眠気も無くなってしまっていたので起き上がり、そのままシャワーを浴びに向かう。
熱いシャワーを浴びて清々しい気分になると、ぐぅ、と途端に思い出したかのように空腹感が主張を始めた。
そういえば昼も夜も何も食べていないことを思い出し、一瞬こんな時間に、という思考が過るがぐうぐうという空腹の主張を続けるお腹を抑え、まあいいかと納得する。
とはいえポケモンセンターの食堂もこんな時間には空いていない。そういうわけで荷物を漁ってみれば携行食の買い置きがいくつかあったので一つ二つと口にしてお腹を満たすと自然と安堵の息が漏れた。
物足りなさはあるが、まあ朝に食堂が開いたら食べに行けば良いか、と結論付けて荷物を片付ける。
「……さて、どうしようかしら?」
時刻は0時過ぎといったところ。
今しがた起きたばかりで眠気は全くないし、かといって他の人は眠っているだろう時間。
一瞬シキ母さんも私と同じように寝ていた可能性を考えたが、よく考えれば帰り際も元気そうだったのを思い出す。
こちらは疲労困憊だったのに、と思うがその辺は実戦経験が違い過ぎて比較しても仕方ない部分ではある。
かつての……トレーナーがまだギリギリで地方の戦力として数えられた時代に最前線でトレーナーをやっていたのが父さんやシキ母さんだ。
ともすればあの魔女くらい『普通よりちょっと強い』くらいの感覚なのかもしれない。
普段はそうは見えないがあれでも歴戦のトレーナーの一人だ。多分私と別れてからも普通に部屋を取って普通にご飯を食べて普通に寝ているのだろう。
妹たちももしかしたらすでに到着しているのかもしれないとメールを確認してみれば明日の朝に来るという連絡が入っていた。
「レキとメメが来るのね」
何だかんだ妹たちと会うのも3,4カ月ぶりくらいだろうか。
それまで毎日のように顔を合わせていたはずの家族と別れてもうそれだけの時間が経つのかと驚くと同時に久々に家族と会えるというのは素直に嬉しい。
「……アオとももう2か月以上会ってないのよね」
アオ、文字通り生まれた時から、いつだって傍にいた私の半身。
限りなく私に近く、けれど決定的に違う私の片割れ。
勝手に嫉妬して、その理由すら忘れて、今もなおその存在に対して何の感情も持っていないとは言えない。
そんな存在。
「……どんな顔して会えばいいのかしらね」
そんなことを考えてみる、だがきっと実際に顔を合わせてみればひどくあっさりとした対応をしそうな気がする。
どんな顔をすればなんて、本当は考える必要もないだから。
私がアイツにどんな感情を抱いていようと。
アイツと私は双子の姉弟。
その事実だけは決して変わらないのだから。
だから……多分、うん、多分大丈夫。
考えて、悩んで、思ってみて。
それでも私とアイツの関係性は変わることは無いとそう言える。
だから。
「……むしろ悩みはガーくんのほうよね」
眠りにつく前から渦巻いていた悶々とした感情は未だに胸の中にあって、ぐるぐると渦巻き続けている。
私はこれにどんな名前を付ければいいのだろう。
私はこれにどんな感情を抱けば良いのだろう。
私はこれを抱いて何をすべきなのだろう。
分からない、分からない、分からない。
まさに寝ても覚めても考え続けている。
そして。
そんな私の思考を裂くかのように。
電話が鳴った。
「……こんな夜中に?」
誰が?
そんな思考と共にスマホに視線を落とせば。
―――ユウリ。
親友の名がそこにあった。
ソロート…………お久しぶりの更新。誰にも気づかれまい。
しばらく一次創作の設定練りまくってたのと単純に仕事が半端なく忙しくなってたのと、新作ゲームが面白すぎたのとその他もろもろで遅くなりました。
一次に関してはもうしばらく設定固めたら書き始めると思うので良かったら読んでね。
ポケモンとメガテンと異世界ファンタジー足して3で割ってオリジナル足したような作品になる予定。
あと魔女さんの正式なデータ出してなかったので最後に出しときます。
【種族】“白魔女”ブリムオン/特異個体/擬人種
【レベル】156(100+56)
【タイプ】エスパー/フェアリー
【特性】スペルキャスター(特殊攻撃技を使用する時、自分の『とくこう』を2倍にしてダメージ計算する。自分の技の数が2倍になる。)
【持ち物】たつじんのおび
【技】ワイドフォース/ムーンフォース/マジカルフレイム/シャドーボール/めいそう/もりののろい/まほうのこな/ハロウィン)
【裏特性】『まじょのちゃかい』
自分と同じタイプの技を出す時、相手のタイプが技と同じならタイプ相性に関係なく『こうかはばつぐん』になる。
場に『つかいま』状態の『ヤバチャ』か『ポットデス』が1体以上いる時、毎ターン終了時に『いのちのしずく』を出す。
場に『つかいま』状態のポケモンが3体以上いる時、ターン終了時に『変化技』を出せる。
【技能】『テイミング』
『こうかはばつぐん』となるタイプの技で相手を倒した時、倒した相手を『つかいま』状態にする。この効果は1ターンに1度だけ発動できる。
状態変化:つかいま
┗対象のポケモンは捕獲済状態となり『“白魔女”ブリムオン』に所有される。この状態のポケモン10体につき、『“白魔女”ブリムオン』のレベルを+1する。またこの効果は対象がトレーナーのポケモンでも発動する。
【能力】『マザーグース』
『つかいま』状態のポケモンの中で最も『すばやさ』が高いポケモンと同じ『すばやさ』になるが、対象の『つかいま』を使用できなくなる。
毎ターン開始時、味方の場に捕獲した『つかいま』状態のポケモンを2体まで出せる。場に出せるポケモンの数に上限はない。場に出したポケモンが『ひんし』になった時、『つかいま』状態が解除される。場に3体以上の『つかいま』状態のポケモンがいる時、相手の攻撃の対象にならない。
【称号】『もりのヌシ』
フィールドが『ルミナスメイズのもり』の時、自分のHPが2倍になり、相手から受けるダメージが半減する。
【備考】色違い6V固体。
『ルミナスメイズのもり』の最奥に百年以上のもの間隠れ潜むポケモン。
フィールド効果:ルミナスメイズのもり
『くさ』『エスパー』『ゴースト』『フェアリー』タイプの技の威力が1.2倍になり、それ以外のタイプの『とくぼう』を半減する。
フィールド効果『サイコフィールド』で発動する技の効果が発動する。
『もりのヌシ』は状態異常にならなくなる。
挿絵つけてるけど、あったほうが良い? 無いほうが良い?
-
あったほうが良い
-
ほどほどで良い
-
無い方が良い