ポケットモンスタースカイブルー   作:水代

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クロガネのつばさ③

 

 

「私ちょっと今日はリーグのほうで用事あるから行ってくるね! あとレベリングとか仲間集めなら『ワイルドエリア』がおススメだよ! ブラッシータウンの駅から列車出てるから次の駅で降りると良いよ!」

 

 とのユウリの言に従って、1番道路を通り……その際中でまた見つけたウールーをモフってブラッシータウンへ。

 遠くに見える研究所とは反対方向に道なりに進めば『ブラッシータウン駅』に到着する。

 路線を確認すれば基本的には一方通行の一本道で『エンジンシティ駅』行きというのがあった。

 どうやらこの途中の駅で『ワイルドエリア駅』というのがあってそこで降りればいいらしい。

 

 切符を購入し、列車に乗る……前に。

 

「ガーくん、列車の中は静かにしてなさいよ」

ぴぎゅあ(わかったー)!」

 

 本当に分かってるんだろうか、なんて疑問を覚えつつも列車に乗る。

 だいたい一時間置きくらいに列車が出ているせいか、朝の通勤時間と夕方の帰宅ラッシュさえ避ければ比較的人入りの少ない快適な列車旅になるらしいと聞いていたので少し時間をずらし、午前十時。

 確かにそれなりに人はいるが、窮屈感を感じるほどでも無くぽつぽつと空いた座席も見える。

 

 適当な窓辺の空いた一席に座って、ガーくんを膝の上に抱えると、窓の外を見やる。

 昨日はアーマーガアタクシーで空から見ていたような景色も、こうして地上からの目線で見ればまた違った趣きがあり、目的地までの間退屈しなくて済みそうだった。

 

 

 

 がたがたと列車に揺られながら窓の外に広がる広大な景色に視線を奪われる。

 ワイルドエリアはガラル地方が誇る特別自然保護地区だ。

 生態系が崩れないような『手入れ』をすることは多少あるらしいが、それ以外には極力人の手を入れず、自然そのままの環境を残すように苦心しているらしい。

 

 と言ってもトレーナーがポケモンを求めて入ったり、命知らずなキャンパーがキャンプしたりで人の侵入自体を拒んでいるわけではないらしいが。

 また、あっちこっちにポケモン協会から要請を受けたリーグスタッフが観測員として点在しており、ワイルドエリア内で遭難した人を救助したり、逆にワイルドエリアに『悪さ』をしようする人間を監視したり、相応の備えはあるらしい。

 

 あとワイルドエリア内では『ワット』と呼ばれる『エネルギー』が存在するらしい。

 ポケモンの巣穴などから得られるエネルギーであり、ガラルではスマホロトムに専用のアプリをインストールすることでこの『ワット』を近づくだけで吸収、貯蓄することが可能であり、『ワット』は『エネルギー資源』として金銭や道具と交換することもできるんだとか。

 

 一般的にこの『ワット』が採取できるポケモンの巣穴というのは『ダイマックス』が可能となる『パワースポット』であり、ガラルの地下に流れるエネルギーの正体の末端……零れて地上に溢れた一部が『ワット』であるとされている。

 ガラル粒子はこの『ワット』をポケモンの使用可能なエネルギーへと転換するための変換機(コンバーター)のような役割を持っているのではないか、と言われており現在も研究が進められているんだとかなんとか。

 

 まあそれはさておいて、貴重な『わざマシン』や使い切り用の『わざレコード』なる道具ももらえるらしいので積極的に狙っていきたい。

 というか記録媒体の技術進化によって『わざマシン』が何度でも使えるようになったというのにわざわざ『わざレコード』として使い切り用の『わざマシン』に需要の高い技を詰め込むあたり、そこまでしないとこのワイルドエリアで『ワット』を手に入れるのが難易度が高い、ということでもあるのだろう。

 

 基本的に『ワット』はワイルドエリア以外では……正確には『パワースポット』があるところでしか手に入らない。

 ガラル本土において最も『パワースポット』が集中しているのがこのワイルドエリアである以上は、『ワット』の採取はトレーナーにやらせるのが一番効率が良いということなのだろう。

 

 それからワイルドエリア最大の特徴として先ほども言ったが『パワースポット』が点在している。

 

 つまり野生のポケモンがダイマックス状態になって現れることがあるのだ。

 

 しかも『ねがいぼし』によって操作されていないため通常のダイマックス状態と異なり制限時間のようなものが無く、さらに溢れるエネルギーの奔流によってダイマックス状態のポケモンは暴れるらしい。

 この状態のポケモンを一人で相手するには難しいものがあるので、ガラルでは最大四人くらいのトレーナーが一匹ずつポケモンを出しての『レイドバトル』が発生するらしい。

 

「ま、今回はそれも無しね……アンタのレベリングをメインにやっていきましょうか」

「ぴぎゃ?」

 

 ココガラという種族について今朝の内にそれなりに調べておいた。

 どうやらそれなりに戦える種族ではあるらしい。

 育成環境を整えて鍛錬するにも最低限のレベルは必要であるし、環境が整うまではしっかり経験を積んでレベルアップを狙うべきだろう。

 

「ホント、拠点だけはどうしようかしらね」

 

 全くもって困った話だ、と嘆息した。

 

 

 * * *

 

 

 ワイルドエリア駅で降りてすぐに『集いの空き地』と呼ばれる場所がある。

 駅とワイルドエリアの中間地点であり、ここから先がワイルドエリアになるわけだ。

 

 ワイルドエリアは非常に広大だ。

 

 何せガラル地方全土の大よそ三割以上を占めている。

 人の足で終端の『ナックルシティ』へと向かおうとすれば直線で一週間以上はかかる。実際には真っすぐ進めるわけも無し、夜は足を止めてキャンプしたり、野生のポケモンに絡まれたりと二、三週間はかかるほどに広く、深い。

 

 出てくるポケモンの種類や強さも幅広く、人里に近いほど弱いポケモンが……奥深く人里から離れるほどに強力なポケモンが生息している。

 ポケモン協会ではこのワイルドエリア内における各地域ごとのポケモンの強さや危険性などを考慮し大よそのランク付けを行っており、それぞれ『浅域』『中間域』『深域』の三段階で表される。

 

 『浅域』は比較的人里に近く、基本的にレベル20未満の弱いポケモンばかりで初心者トレーナーでも安全だが稀に強力な『ぬしポケモン』が現れることもあるので注意が必要なレベル。とは言え滅多に人が襲われることも無ければ人里が近いためすぐに逃げ込めることもあって、キャンパーなどがキャンプをしたりもする程度には安全性が確保されている……まあ何かあっても最悪自己責任だが。

 

 『中間域』は人里から離れ、レベル50を超える手ごわいポケモンたちが増えているためリーグから許可をもらったベテラントレーナーでなければ立ち入ることを許されない危険な領域だ。だが逆に言えば腕に覚えのあるトレーナーならば強いポケモンをゲットするチャンスでもある。それ故、ジムトレーナーたちが時々やってきては手持ちを増やして帰っていくこともあるが、稀に新人トレーナーが迷い込んで酷い目にあって帰って来ることもある。

 

 そして『深域』ではガラルでもトップクラスのトレーナーのみが入ることを許された非常に危険な領域だ。いわゆる『ジムリーダークラス』のみがこの地域に入ることを許されており、監視員すらこの周囲には存在しない。危険すぎて安全性の確保ができないためだ。

 レベル80を超える生存競争を勝ち抜いた強者のポケモンたちがあちこちにたむろしており、生半可の腕で立ち入れば冗談抜きで『事故』の可能性が高く、しかも近くに監視員も居ないため助けも来ないというほぼ絶望的な状況が発生する。それ故この地域に入ることを許されたトレーナーは『覚悟』と『勇気』を持って足を踏み入れることが必要になるガラルにおいて最も危険な地域と言える。

 

 まあ『深域』エリアの周囲はそもそも間違っても人が入らないようにリーグスタッフがしっかりと見張っているし、普通に歩いていればまず間違えて入るような場所ではないらしいので迷い込むなんてことは滅多にないらしいが。

 

「『集いの空き地』の周辺は『浅域』指定されてるところばかりだから比較的安全ってことね」

 

 尚今の情報は全部ワイルドエリアの手前においてある看板に書いてあったことだ。

 注意喚起と共に『何が起きても自己責任で』とか怖いことが書いてあると共に『リーグスタッフの指示には従ってください』という吹き出しの台詞のついたデフォルメされたスタッフの絵が描かれていた。

 

 周囲を見渡せば、これからワイルドエリアに行くのだろう新人トレーナーらしい少年少女や何故かこの空き地にテントを張っているキャンパー、それに入口の監視のリーグスタッフなど様々な人がいる。

 どうやらこの空き地本当にワイルドエリア以外に行き先が無いらしく、ワイルドエリアに用事が無いなら普通はそのままエンジンシティまで列車に乗っていくらしい。ここにいるのはワイルドエリアに用事のある人ばかりのようだった。

 

「っと……そろそろ私たちも行きましょうか、ガーくん」

「ぴぎゅあ!」

 

 入口に簡易的な柵があるがまあここから先はワイルドエリアであるという分かりやすい区切りなのだろう。本気で侵入を防ぐような類の物ではない。

 野生の領域ということもあって、注意は必要ではあるが……。

 

「まあサイユウシティのチャンピオンロードよりは100倍マシね」

 

 ホウエン地方にあるポケモンリーグの所在地、サイユウシティ。

 毎年そこで開かれるリーグ予選を勝ち抜いたトレーナーがリーグ本選へ進むために『チャンピオンロード』を通るのだが……うん、まあ余り思い出したくない記憶だ。

 

 あれでまだマシになったらしい、というのが一番驚きなのだが。

 

 うん……まあこの思い出は記憶の奥底に沈めておこう。

 

ぴぎゅぅ(どーしたの)?」

「何でも無いわ。行きましょう」

 

 あー嫌なこと思い出した、と溜め息を突きながら野生の領域へと足を踏み入れた。

 

 

 

 ココガラというポケモンの特徴を簡潔に説明すると『どんな強敵にでも挑みかかる勇敢な気性』と『機敏に動き相手を翻弄する素早さ』の二つが挙げられるらしい。

 

 実際のところポケモンの能力の一つである『すばやさ』というのは単純な速度のことではないので『すばやさが低い』ことと『素早く動ける』ことはまた別ではある。

 

 そういう意味で確かにガーくんはちょこまか動いて相手を翻弄する機敏さを持っているのは確かなようだ。ただそれが『すばやさ』が高いことに繋がるか、というとまた別の話で。

 

 『すばやさ』というのは簡単に言えば『技を出す態勢を維持しながら動ける速さ』だ。

 

 ポケモンの技とは絶対的に『溜め』が必要となる。

 『でんこうせっか』や『しんそく』それに『まもる』などの『溜め』の短い技は同時に出しても『すばやさ』に関係無く相手より先に出せるのが特徴となる……確か父さん曰く『優先度』とか言っていたか。

 

 この『溜め』には相応の集中が必要となるため、ポケモンは全力疾走しながら技を『溜め』ることはできない。

 つまりある程度余力を残してその余力を『溜め』に割り振る必要ができるのだ。

 

 例を挙げるならガブリアスなど『マッハ』ポケモンと呼ばれているだけあって、その最高速度は目にも止まらぬほどではあるが実際にバトルで技を出す時にはその強大なパワーの制御のためにかなり速度を落として『溜め』に集中する必要がある。

 

 ココガラという種族は確かに機敏に動けるのだろうが。それが『すばやさ』が高いのかと言われるとそれなり、でしかない。

 機敏に動き、相手を翻弄しても攻撃に転用しようとすれば技の『溜め』のためにどうしても速度を落とす瞬間が出て来てしまう。

 

「ガーくん、そこで『つつく』」

 

 それを補うのがトレーナー(第三者視点)の役割である。

 

「ぴぎゅあ!」

 

 草むらから飛び出し襲い掛かってきたポケモンを何度か撃退しているといつの間にかガーくんのレベルが伸びていた。

 それほど強い相手はいなかったはずだが元のレベルが1だけあって伸びは良い。

 とは言え相手のレベルを考えればこの辺りではそろそろ頭打ちになるだろう。

 

「次に行く……前にガーくん」

「ぴぎゅ?」

「『つつく』と『にらみつける』ともう一個何か技があるみたいだけどこれ使える?」

「ぴぎゃぎゃ!」

 

 図鑑解析に任せてみたのだがさすがに一度も使ったことの無い技だけに遅々として解析が進まないためここらで余裕のあるうちに一度使ってみようとガーくんに尋ねてみる。

 任せて、と両の羽をばたつかせるガーくんに頬を緩ませながら次の相手を探し、ちょうど良いタイミングでがさり、と草むらからポケモンが飛び出してくる。

 赤いまん丸な胴体にぴょこんと頭に生えた葉っぱが可愛らしいポケモン……アマカジだ。

 

「よし……今、行って! ガーくん」

「ぴぎゅああ!」

 

 “■■ガ■の■■さ”

 

 直後、ガーくんの両翼が一瞬にして黒く染まり、アマカジを打つ。

 弱点を叩かれた時のような感じはない……だがその威力は確実に『つつく』より上だ。

 ガーくんの翼に打たれたアマカジが吹き飛び、一瞬にして目を回す……『ひんし』だ。

 

「けっこう強いわね」

 

 思ったより優秀な技の予感がする。

 確かめるように図鑑の解析結果を見れば、さすがに一度使っただけに一気に解析が進んでいた。

 

 わざ:■■ガ■の■■さ 『はがね』タイプ

 攻撃後、■■■■■■■■■―――

 

「『はがね』タイプの技なのね……それに何か追加効果があるみたいね」

 

 ガーくんに視線を向けるが、特に何か変わった様子はない。

 ということはデメリットのある技ではないのだろう。

 表記の傾向的に攻撃後に『プラス』要素があるタイプか。

 弱点タイプの『つつく』より素の威力が高いことも考えると結構優秀な技なのではないだろうか。

 

「ただ……『はがね』タイプかあ」

 

 本来ココガラは『ひこう』タイプのみらしいが、うちのガーくんは『ひこう/はがね』タイプだ。

 この違いは私の『専用個体』だから……というよりは。

 

「あのアーマーガアの子供だから?」

 

 『ひこう』関連ならともかく、『はがね』となるとその可能性のほうが高い気がする。

 ということはガーくんは親の特異性を引きついだ『特異個体』でもあり、同時に私の影響を受けた『専用個体』でもある。

 

「育てるのが楽しみになってきたわね」

 

 私の視線を受けて可愛らしく首を傾げるガーくんを見やりながら、この子がどこまで強くなるのか、その未来を想像して笑みを浮かべた。

 

 

 

 




例えタイトルで全てバレていたとしても、■で伏字にする勇気!

タグにもあるように『優先度』と『すばやさ』とか作者の独自解釈で書いています。

こういうのここから先も確実に増えるよ、とは今のうちに言っておきます。

あと今日の更新はこれでお終い……一昨日四話も更新したせいでソシャゲが溜まってるんだ。
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