ポケットモンスタースカイブルー   作:水代

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誕生日一月ずつずらしました、よく考えたら『仕込んだ日』を考えると7月はおかしいことに気づいた。


番外編① 私に足りなかったもの(シリアス)/元チャンピオン新しい決め台詞に悩む(シリアル)

 

 倒れ伏した最後の一人をボールに戻しながら、拳を握りしめて歯がみする。

 反対側のバトルコートで同じように……けれどまだ戦える状態のポケモンをボールに戻しながらソイツは安堵の息を漏らす。

 

 それがこの勝負の勝者と敗者を如実に示していた。

 

「こんのぉ……!」

「っぶね! 本当に危ないなあソラは……」

 

 たった数か月の差である。

 確かほんの三ヵ月。

 

「~~~!!! 次は絶対勝つわ、絶対だから!」

「いーや? 次もオレの勝ちさ」

 

 そのたった三ヵ月の差は一年の差となって、その一年の差は絶望的なほどの差となった。

 

 

 

 『準トレーナー規制』によってリーグ協会統括範囲内地域におけるトレーナーが正規トレーナーとなるための資格を得るためには『12歳以上』である必要がある。

 そもそも正規トレーナーとして認められるための『トレーナー資格』が無いと何が問題か、と言われると『公式試合への参加権』を持てないことだ。

 『公式試合』の定義は『その地方のポケモンリーグが主催となって行われるポケモンバトル』全般であり、一番身近な例としては『リーグ公認ジム』における『ジムバッジ取得を賭けた試合』となる。

 

 そして現在の地方間統一リーグの規約により、どの地方におけるポケモンリーグにおいても年に一度の『地方リーグ戦』*1に参加するためには『公認ジムのジムバッヂを最低8個』所持していることを条件としているので、実質的に正規トレーナーであることもまた条件化している。

 

 そしてややこしい話なのだが『トレーナー資格』を取れるタイミングというのは『12歳になった日以降』なのだが、地方リーグ戦自体は毎年地方ごとに定められた月から予選が開始され、本選が開始される。

 そして地方リーグ戦の参加受付自体は年中行われているのだが、予選組み合わせ決定後の申請は翌年の参加へと強制的に回される。

 

 そして私、ソラの誕生日は6月。

 

 そしてホウエンリーグの予選開始は5月。

 受付自体は4月いっぱいとなっている。

 

 つまりそういうことなのだ。

 

 

 * * *

 

 

 一番身近だった友達を挙げるなら私は誰よりも先にユウリの名を挙げるだろう。

 ホウエンで他に友人が居なかったわけでも無いが、一番古くから付き合いのある幼馴染であり、友人全てを数えても一番仲が良いと確信できる親友でもある少女だ。

 

 とはいえユウリは数年前に引っ越しをするまで、バトルのバの字にも関心の無い少女だった。

 

 逆に私は昔からポケモンバトルに熱中していて、12歳になれば必ずトレーナーになると決めていた。

 

 そんな私の一番のライバルを挙げろと言われるとそれは……。

 

 ()()()()()()でもある少年の名を挙げるだろう。

 

 ユウキ、という名のその少年は私の父さんの弟……つまり関係性的には私の叔父になる。

 

 ただ同じ年の3月に生まれたユウキと6月に生まれた私とではたった三ヵ月程度の差であり、子供からすればそれはほとんど誤差でしか無かったので、物心ついた時からよく一緒に遊んでいたし、私からすれば叔父というよりほとんど兄弟だった。

 

 物心ついた頃からユウキもまたポケモントレーナーを目指していた。

 

 元よりお爺ちゃん……センリがトウカシティジムのジムリーダーであり、ホウエン地方でも最強クラスのジムリーダーとして鳴らしていたし、父さんに至っては元チャンピオンだ。母親の一人、シキもリーグ優勝経験者として名の知れたトレーナーだったこともあり私の家は基本的にポケモンバトルというのは身近にあったと思う。

 

 そういう経緯もあって、私やユウキは同じようにポケモントレーナーに憧れ、そして互いをライバル視していた。

 

 幼い頃、何度となくバトルの真似事をしていた。

 ポケモンを育てるということを学び、従えることを学び、そして戦わせることを学んだ。

 今の私のいくらかはその時の……ユウキとのバトルとの経験で出来ているといっても過言ではない。

 ああ、それはきっとユウキも同じだったのだろう。

 

 基本的にその頃の私とユウキの戦績は互角だった。

 互いに勝ったり負けたりをしながら本番は正規トレーナーになってから。

 そんな約束をしたりもして。

 

 ―――どこで差がついてしまったのだろう?

 

 と考えてみれば。

 そんなもの最初からだったのだ。

 たった三ヵ月。

 けれど覆すことのできない三ヵ月。

 3月生まれのユウキ、6月生まれの私。

 その三ヵ月のズレはそのまま『トレーナー資格』を取るまでのズレだ。

 

 ユウキは正規トレーナー資格を取ると同時に最速でジムを攻略し月末の『ホウエンリーグ』への参戦を決定した。

 私はその時まだ11歳だ……ジムバッジを手に入れる資格も、『ホウエンリーグ』に参戦する権利も持たない。

 テレビの向こうで戦うユウキの姿をただ見ることしかできなかった。

 

 6月になって、私もまたトレーナーになった。

 ジムバッジを集めて、リーグに参戦するだけの権利は得た。

 

 ()()()()()()()()

 

 それでもまあ憧れていたポケモントレーナーの世界に飛び込んだのだ……来年のリーグに向けてパーティを作り、育てた。

 

 そして。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 * * *

 

 

 翌年のリーグに参加した。

 目指す相手は私の最もよく知る相手であり、私の最大のライバルだった少年。

 予選本選と腕の立つトレーナーたちもいたがその全員をぶち抜いて本選優勝を決める。

 

 その後に続くのは『四天王』とのバトル。

 誰も彼もとんでもない強敵だ。

 というか、四人目にシキ母さんが入っているのは反則だと思うが……まあそれでも、勝った。

 

 そして挑んだチャンピオン戦。

 

 結果は知っての通りだ。

 

 勝っていればそもそもガラルくんだりまで来ては居ない。

 ただその負け方が問題と言えば問題で。

 

 久々に戦ったライバルは私よりも一回りも二回りも強くなっていた。

 

 たった三ヵ月の差で逃した一年越しのリーグ挑戦。

 激戦を潜り抜け経験を糧としたライバルはチャンピオンとしてその力をさらに増していて。

 

 ―――勝てないと思った。

 

 今のままでは勝てないと思った。

 何かが必要だった。その何かが分からないまま無為に時を過ごして……。

 

 そんな時に、ユウリから手紙が来た。

 

 急なことではあったが、切っ掛けを求めていたのもまた事実。

 

 まあ勿論……久々に連絡のあった親友に会いたいと思ったのも本当だが。

 

 ユウリからの提案を聞いた時、二つの矛盾した想いがあった。

 

 嫌だと思った。

 このまま……ユウキに負けたまま他地方リーグに移籍などまるでユウキに勝てなくて逃げるようではないか。少なくともユウキに勝つまでは、そんなのは考えたくない……そう思ったのも事実。

 

 好都合だと思った。

 このままではユウキに勝てないのではないか。今の何か足りないままで、何が足りないのか分からないままにがむしゃらに挑むより環境を変えてみれば視点も変わって足りない何かも見つかるのではないか……そう思ったのもまた事実だ。

 

 最終的にはユウリの提案を飲むことになったのは知っての通りだが。

 

 

 ―――未だに足りない『何か』は見つからない。

 

 

 それでも。

 

 

 ユウリと戦えば、親友との約束を果たせば。

 

 

 何か変わるかもしれない。

 

 

 何か見つかるかもしれない。

 

 

 そんな不安と期待が私の胸の内にあった。

 

 

 

 * * *

 

 

「やっは~お姉ちゃん」

 

 昼下がりの午後。

 シュートシティの一角に店舗を構えるガラル一帯にチェーン店を展開する某有名喫茶店。

 表のテラス席を抜けて店内へ、そのさらに奥まった席へと案内されたユウリはそこにいた少女を認めて笑みを浮かべた。

 

「あら、思ったより早かったわね、ユウリ」

「今日は朝からソラちゃん居なくて暇だったしね~。それでそっちは……」

 

 少女の座るテーブルの反対側に座り、コーヒーカップを傾けながら思考に耽っている見覚えのある男性にユウリが思わず首を傾げ。

 

「ダンデさん?」

「ん? やあ、ユウリ。この間ぶりだな!」

「っと……それで、何でダンデさんがここに?」

 

 名前を呼ばれ、男……ダンデがユウリの存在に気づくとニカッ、と人好きのする笑みを浮かべる。

 よいしょ、と少女の隣に座りながら向かいに座るダンデに問いを投げかける。

 

「それは勿論、オレがリリィ君に相談を持ち掛けたからだ!」

「まあそういうことね……今その相談とやらを聞いてたわけだけど」

 

 少女……リリィが嘆息する。

 

 何だか珍しい姿、とユウリは思った。実際、リリィはいつだって泰然としていてキラキラと輝いていて、そして誰よりも家族であるポケモンを愛している少女だったから、それが物憂げに溜め息をついているような姿は初めて見たかもしれない。

 けれどそんな姿すらも目を惹かれてしまうのだから、美人というのは得だなあ、と思う。

 

 まあそうでも無ければトップアイドルになんてなれないのだろうが。

 

 リリィ。

 

 このガラル地方における現在の『()()()()()()()()()()()()()()()()』である。

 だがそれ以上に有名な名前が一つ。

 

 『ガラルの白百合』。

 

 今や世界規模で知らぬ人間のほうが少ないとされるガラル地方出身の『アイドル』である。

 同時にこのガラル地方の現チャンピオン……つまりユウリの従姉にあたる、というのは余り知られてはいない事実でもある。

 まあ実際に顔を合わせたのはガラルに来てからが初めてだったので、ホウエンに居た頃は母親から聞いていた話の上でしか知らなかった相手なのだが。

 

 仲は……悪くない、いや寧ろ良いと思っている。

 

 歳もそう離れていないし、同じ性別でファッションなど趣味も似通っている。

 何よりポケモントレーナーという共通点もあるし初めて顔を合わせた時から仲良くさせてもらっている。

 去年のジムチャレンジ期間中、ポケモンの育成という点ではかなり世話になった。多分リリィが居てくれなければチャンピオンになれなかったかもしれない、と思う程に。

 というか今でもジムの施設を借りたりしているし、世話になりっぱなしだ。

 

 だから今日も朝からこの喫茶店に来て欲しいと言われてほいほいやってきたわけだが。

 

「それで今日は何の用件だったの?」

「ダンデさんの相談の件で、私だけじゃなくて他の人の意見も聞きたいって思ってね」

 

 少し困ったように苦笑しながら追加でドリンクを注文するリリィに便乗して新商品のスムージーを頼む。

 荷物を席に置いて机に寄りかかると、ダンデへと視線を戻して。

 

「それでダンデさんの相談って?」

「うーん、それがね」

「勿論、チャンピオンタイムに代わる、オレの新しい決め台詞についてだ!」

「え、そこ?」

 

 ダンデがわざわざリリィに相談し、リリィが自分を呼ぶほどのことなのだから余程重要な案件なのかと少し身構えていたのだが、飛び出してきたのは全く予想の外の話だった。

 

「いや、でも結構大事か……」

「そうなのよね、意外と大事なのよね」

「いやいや、かなり大事なことだよ」

 

 ダンデがチャンピオンだった去年までの間、チャンピオンとしてダンデはガラル中を沸かせるスーパースターだった。

 いや、実際のところ、今でもまだその人気は健在であり、こうして三人で集まっているのも結構注目されたりするのだが、それはさておき。

 

 チャンピオンダンデと言えば『これ!』と言われるものが二つある。

 

 一つが両足を軽く開き、左手の親指と人差し指、中指を立てながら腕をまっすぐ上に伸ばす『リザードンポーズ』と呼ばれる独特の構え。

 

 これはいわゆる『決めポーズ』と呼ばれるものであり、見た目にも分かりやすい無敵のチャンピオンダンデの特徴としてガラル中で老若男女問わずに大流行した。

 

 そしてもう一つがエースであるリザードンを出す時などに告げる所謂『決め台詞』。

 

 ―――お見せしよう、真のチャンピオンタイム!

 

 チャンピオンダンデが本気で勝負を決めにかかる際……エースのリザードンをキョダイマックスさせる時などに良く言う台詞であり、直後に起こるインパクトと合わせて耳に残りやすい台詞でもあり、こちらもガラルで流行した。

 

 実際のところこれらは『魅せプレイ』と呼ばれる領域の話であり、実際にこれがあるから強いとかこれが無いから弱いとかそんな話では全くない。

 多分他の地方でこんな相談をしても軽く流されるのがオチなのだろう、が。

 

 このガラルにおいては全く話が違って来るのだ。

 

 先も言ったがリザードンポーズと決め台詞はガラル中で大流行した。

 つまりそれだけ多くの人々がチャンピオンダンデの魅力にとりつかれたということでもあり、同時にダンデのファンがそれだけ多くいる、ということでもある。

 逆に言えばダンデの一挙手一投足はガラル全土に影響を与えることが可能である、という証左でもある。

 ダンデを応援するスポンサー団体からすればこれだけ美味しいトレーナーも居ないだろう。

 

 ガラルリーグに所属するトレーナーは全員がプロトレーナーである。

 

 ガラルのポケモンバトルが『興行』の意味合いの強いものである以上、観客を沸かせることのできるトレーナーこそが正義であり、観客を白けさせる試合をするトレーナーは絶対的な悪だ。

 そんな風潮にあって、根強いファンがいるトレーナーというのはそれだけプロとして『強い』。

 逆に言えばファンの少ないトレーナーは実力以前の問題としてプロとして『弱い』のだ。

 

 ある意味ガラルのプロトレーナーとは芸能人に似ている。

 

 人気が出なければこのガラルリーグにおいては居場所が無い。

 人気が出なければそもそも公式試合に出場することすら難しい。

 人気が出なければ資金も足りなくなる。

 

 手っ取り早く人気を出すコツは強いこと。そしてそれ以上に『派手』であることだ。

 人気の指針となる観客たちは基本的にバトルの素人なのだから、素人の目で見て分かりやすいということは大事なのだ。

 

 そう『決めポーズ』や『決め台詞』とは即ち、そのトレーナーを象徴する姿や言葉であり、同時にファンにとってそのトレーナーを指し示す意味でもある。

 

 この台詞はこのトレーナーのもの、というイメージを定着させることがファンを作るための第一歩であり、逆に言えば決め台詞の一つも無いようなトレーナーでは()()()()()()()のだ。

 

 恰好のつかないトレーナーではテレビ映えしない……つまり人気も出ない。

 

 つまり決め台詞とは人気の元とも言えるこのガラルのポケモントレーナーにとって非常に重要なものなのだ。

 

 ついでに言うならば。

 

 他地方はともかくとして。

 

 このガラルリーグにおいてのみ。

 

 ()()()()()()()()()()()()()のだから余計に、だ。

 

 

 

*1
各地方で開かれるポケモンリーグチャンピオンへの挑戦権を賭けた公式試合。リーグと銘打たれているがだいたいの場合はトーナメント形式。地方によってはリーグ形式の場合もある。




ユウキ君は三世代ルビーサファイアエメラルド、及び六世代オメガルビーアルファサファイアの男主人公の名前ですね。
なんで今出てくるの? とかについては今作全く関係ない話なのでドールズのほう読んでください。

リリィちゃんはあれですね。ツイッターでイェッサン可愛いヤッターしたので登場の運びとなった別作品主人公ちゃんですね。
正確には元作品は擬人化設定の無いドールズ時空とは別世界なので設定だけ流用したオリキャラだけど。

https://syosetu.org/novel/242349/

リリィちゃんについて詳しく知りたい人はこっち読んでください。





めっちゃ俗な話だけど、ポケモンという世界を現実的に解釈してみた話として。

実機においでポケモンは基本的にどれだけ捕まえても『金』はかかりません。ボール代くらいはかかるかもしれないけど、『育成費』はかかりません。
でも現実においてポケモンとは『生物』です。ペットと家族の中間くらいの立ち位置だと思ってるけど、本気で家族だと思ってる人もいればまあペット、或いは道具のように思ってる人もいる。
けどどっちみち共通するのは生きている、ということ。
つまり生きている以上、社会で生きるには『金』がかかります。

例えばの話、カビゴンって図鑑説明によると「一日400kgは食べないと気が済まない」らしいですが、これって一般家庭で賄えますか???
どんだけポケモンフーズが安くても限度ってものがあるだろ、って話。
ついでに言えば実機だと当たり前のように6体パーティ作ってるけど、それぞれのポケモンの食費×6+トレーナーの生活費。
フルパーティにかかる金って結構なものだと思うわけですよ。
で、それをトレーナーとの戦いで得た『賞金』だけでどれだけ賄えるか、って話。

めっちゃ当たり前だけど、一日に熟せるバトルの数とかって限られてる。
ついでに言えばそこで得られる賞金の額なんてたかが知れてる。
さらに言えば旅するための移動費、消耗品などの生活費、衣服の代金とかもあるだろうし。
そこにさらにトレーナーとして傷薬系の代金、ボールの費用、その他色々。
たった一日育成や移動に回すだけで六体分の生活費は毎日積み重なっていく。

一見するとトレーナーの強さと金って無関係に見えてけどやっぱり『強さを追い求める』ためにはまず前提として『金』がいるんですよ、トレーナーって。
その金はどっから出てくるんだ? ってなるとやっぱりガラルにおいて『強い』だけじゃダメなんですよ。いや寧ろ強いトレーナーであることよりも『人気のある』トレーナーであることのほうが重要なんです。

というのが作者が現実的に考えるとこうなんじゃないかな、っていう解釈で作った世界観。
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