ポケットモンスタースカイブルー   作:水代

36 / 111
インタールード
どら……ドラゴンタイプ、専門? のジムリーダー?


 

 

 ナックルシティはシュートシティのすぐ南、山を一つ挟んだ先にある大都市だ。

 ガラル最大の街シュートシティと距離的に近く、列車の駅が通っていて交通の便が良いこと、またガラルにおいて歴史的価値の高い物品を納めた宝物庫の存在、ジムチャレンジにおいて8番目のジムがあることなどから大いに発展しており、街自体も非常に大きい。

 ただ大都市ながらかつての歴史と伝統を守ってきた街でもあり、そのためシュートシティと比べると近代的な建物は少ない。

 

 またナックルスタジアムの地下にはこのガラル全土に電力を送っている『エネルギープラント』が存在しており、昨年の『事故』によってこのプラント周りとスタジアムの一部が破壊されたためその修復のためについ最近までスタジアムが使用できなかったらしい。

 

「事故?」

「うん、まあ簡単に言っちゃうとムゲンダイナが復活して暴れたんだよね」

「ああ……うん、それは確かに事故ね」

 

 伝説のポケモンなんて最早個で災害に等しい存在だ。

 そんなものが目覚めて暴れ出したのならばまあ確かに事故というしかないだろう。

 

「それにしても、なんていうか……スゴイ街ね」

「建築様式をわざと昔のままにして街自体の景観を保ってるらしいよ?」

「ああ……エンジュシティとかみたいなものね、歴史を売りにする観光都市ならそういうのもアリでしょ」

 

 特にこの街は空港のあるシュートシティの真南だ。

 アーマーガアタクシーを使えばものの1時間もかからないような近い立地にあるのだから、このガラルにしか存在しないアーマーガアタクシーと合わせて観光名所と言っても良いのではないだろうか。

 

「しっかしホントに大きいわね、スタジアム」

「あそこは他のスタジアムと違って地下の『エネルギープラント』含めてマクロコスモス社の施設がいくつも併設されてるから普通のスタジアムより大分大きいんだよ」

 

 街の中央に大きくスペースを取って建てられている『ナックルスタジアム』は見上げれば見上げるほどにその巨大さに圧倒される。

 カナズミにあるデボンの本社ビルだってあそこまで巨大ではないだろうと思うほどに大きく、そして高かった。

 

「うわ、ポケモンセンターが3か所もある……こんなにいるの?」

「東西にあるのはそれぞれの方角から来た人たちが、中央がジムトレーナーの人たちとか、ワイルドエリアを抜けてきた人たちが使うやつだね」

「ホントひっろい街ね」

 

 基本的にポケモンセンターというのは一つの街に一つしかない。

 大都市でもあって精々二つだ。基本的にはそれで十分需要を満たせる、それが三つもあるという辺りがこのガラルという地方がどれだけ金があるのかを示している。

 

「それで、今日ここでポケモンバトルの大会があるの?」

「そうそう、ナックルスタジアムの使用許可がようやく下りたからってナックルジムのジムリーダーキバナさんが主催で『第六回ドラゴンカップ』開催、だって」

「キバナ?」

「ナックルジムのジムリーダーで、ドラゴンタイプを専門……専門? にしてるトレーナーだよ!」

「参戦条件……『ドラゴン』タイプのポケモンを三体以上、ってドラゴンカップなのにドラゴン統一が条件じゃないのね」

「それやるとキバナさんが出られなくなるからね」

「ドラゴンタイプのジムのジムリーダーなのよね?」

「うん、まあドラゴンタイプ専門? って感じだけど、一応そうだよ」

 

 何故か曖昧な笑みを見せるユウリに首を傾げる。

 少し気になったのでスマホロトムで検索してみればガラルのトレーナー名鑑に載っていたので軽く目を通す。

 

「ガラル最強のジムリーダー?」

「強いよ! すっごく……でも、うーん」

「何よ」

「ソラちゃん相手だと致命的なくらいに相性悪いかも」

「はい?」

 

 その言葉の意味を知るのは、その数時間後のことだった。

 

 

 * * *

 

 

 ガラルにおけるポケモンバトルは『興行』である。

 

 この言葉はガラルのトレーナーならば誰もが理解していることであり、けれどガラル以外のトレーナーには中々理解されない言葉ではある。

 結局のところ、これが理解できるかどうか、というのはガラルで一度でも公式バトルを見たことがあるか否か、これにつきるのだ。

 

「「「―――オオオオオオォォォォ!」」」

 

 怒号のような歓声に片耳を塞ぎながらもスタジアムで繰り広げられるバトルに視線は微動だにしない。

 バトルコートの上ではトレーナーの最後の一体がバトルコートに出された。

 それに応えるかのように反対側のトレーナーゾーンに立つ褐色肌の男……ナックルシティジムリーダーのキバナもまた場のポケモンを戻し、入れ替える。

 

 片や飛び出したのは私も知るポケモン……『マッハポケモン』のガブリアス。

 高い火力と素早い動きが人気の『ドラゴン』であり、同時に極めて扱いが難しい種の一つでもある。

 狂暴性が強く、バトルに対する意欲も非常に高い、典型的な使いこなせれば強いを地で行くタイプだ。

 

 そしてもう一方……キバナが出したのは。

 

「ん? 見たことないポケモンね」

「あれはジュラルドンだよ! キバナさんの『エース』だね!」

 

 図鑑機能で検索し、その内容を読んでいると周囲の観客の盛り上がりが一層増す。

 どうやらあのポケモンはキバナの『切り札(エース)』として知られたポケモンであり。

 

「ガブリアス、行くぞ! ダイマックスだ!」

「荒れ狂えよ! オレのパートナー! スタジアムごとやつを吹き飛ばす!」

 

 同時に互いのポケモンをボールに戻した。

 

「え、戻すの?」

「まあ見ててよ……これがガラルのポケモンバトル最大の醍醐味」

 

 ―――ダイマックス、だよ!

 

 二人のトレーナーの腕に巻かれたバンドから赤い光が放たれ……その手に持ったモンスターボールへと収束。直後、ボールがぐんぐんと二周り、三周りと巨大化していく。

 直径が1メートル近くなった巨大なボールを片手で投げるとそこから光が放たれて……。

 

「「「―――オオオオオオオォォォォ!!!」」」

 

 先ほどまえの数十倍はありそうなほどに巨大化したポケモンたちに観客の熱が一層沸き立つ。

 そうして互いのポケモンが放つ大威力攻撃がぶつかりあうたびにに黄色い悲鳴にも似た観客の声援が飛び交う。

 

「なんか、さっきより動きが良くなってない?」

「そうだね。お客さんの声援に押されてポケモンたちもいつもより実力が発揮できるんだよ」

「んな馬鹿な」

「多分このスタジアムの効果なんだと思うよ。野良バトルしてもそういうの無いし」

 

 確かにポケモンも生物である以上、日によって調子の良し悪しというのはある。

 ついでに言えば声援を受けて調子が良くなる、ということもあるがそれでも普段からそのポケモンのことを良く知っているトレーナーですら何となくそうかな、と思える程度の微量な差異であり、今日初めて見る私が目で見て違和感を覚えるほどの差異は生まれない。

 

 もしそれがこのスタジアムの効果だと言うのならば―――。

 

「確かにこれは普通のポケモンバトルだと思ってたら痛い目見るわね」

 

 つまり、これが『ガラルのポケモンバトル』なのだ。

 

 

 * * *

 

 

 『スタジアム』とはその全てが『ダイマックス』ができるようになっている。

 つまり『ダイマックス』に必須の『パワースポット』の上に建てられているのだ。

 その影響の一環なのか、『スタジアム』におけるバトルは『人の意思』がダイレクトで『ポケモンの力』になりやすい。

 

 ただこれは大小の差はあれど通常のトレーナーとポケモンの間でも起こることであり、トレーナーとポケモンの絆の深さによって、ポケモンのポテンシャルを引き出したりできる。

 特にこの手のことは『リーダータイプ』のトレーナーの得意とすることであり、ある意味私の父さんなどはその極致のような存在と言える。

 

 ―――思う心は力になる。

 

 父さんは時折そんなことを言う。

 ポケモンが人を思い、人はポケモンを思う、ポケモンはその思いを力にできる生物なのだ、と。

 『スタジアム』はそんな人とポケモンの思う力に作用して、その効果を増幅してくれる。

 トレーナーですら無い観客たちのトレーナーとポケモンへの『声援』を力としてポケモンに与え、声援に奮い立つポケモンの心にも力を与える。

 

「つまりね、ガラルのプロトレーナーはみんなこの『スタジアム』の力も前提において育成をするんだよ!」

 

 その極致が『エース』ポケモンだろう。

 ニュアンス的には他の地方でも通用するだろうが、このガラルにおいては殊更『エース』ポケモンに対する拘りが強い。

 例えば他の地方のトレーナーに『エース』とは何かを問えば『パーティで一番強いポケモン』や『切り札となるアタッカー』といった感じの答えが返って来るだろう。

 極論だが『エース』と言ってもあくまでアタッカー……攻撃役として極めて優れた一体であり、けれどどこまで行ってもアタッカーの一体でしかなく、相手との相性が悪ければ後続に繋げるために切り捨てることすら考慮される、それくらいの存在でしかない。

 だがガラルにおいて『エース』とはそのトレーナーを象徴するポケモンであり、同時に『絶対に六番目でダイマックスする』ことを求められているポケモンだ。

 

 そのトレーナーのファンにとって、エースが場に出ただけで盛り上がるし、ダイマックスすれば熱狂する。

 その熱狂は『スタジアム』の力でそのままダイマックスしたポケモンの力になる。

 つまり『エース』となるポケモンが後続を一気に抜きやすいシステムになっているようだった。

 だが相手のポケモンを次々倒していけば最後に残るのは相手の『エース』。

 大概の場合、トレーナーの実力が同じくらいなら乱戦にもつれ込んでどちらかの『エース』が出るころには相手の残りも一体か二体くらい、つまりすぐに相手の『エース』も出てくるという状況であり、互いのポケモンがダイマックスして戦うその状況が会場が最も盛り上がる瞬間となる。

 

「会場が最高に盛り上がった瞬間のポケモンの力はすっごいことになるよ!」

 

 とのことなのでかなり強化されるらしい。

 表現が曖昧に過ぎる気がするが、まあ実際数値化できるようなものではないのでユウリの体感での話になるが『五割増し』らしい。全能力が約1.5倍。技や裏特性に関係無くただ場にいるだけで、となると決して無視できないレベルの強化である。

 

「だからお客さんが白けちゃうと大惨事だね」

 

 上手く盛り上げることができれば力となる観客たちも逆に白けさせてしまうと逆のことが起きるらしい。

 空気が冷え込み場のポケモンたちが委縮して力が発揮できなくなってしまうのだとか。

 特にプロトレーナーとしてこれをやってしまうと『興行』的にはかなりマイナスなので、下手するとプロ失格の烙印を押される可能性すらあるらしい。

 

「え、受けループとか害悪型ダメなの?」

「お客さんはみんなバトルの素人だからね……傍から見ててつまんない、って思われるのはダメなんだよね」

「えぇ……それが戦術ってものでしょ」

「トレーナーからすればね! でもそれを判断するのはバトルの素人のお客さんなんだよ」

 

 とんでも無い地方もあったものである。

 まさか地方単位のレギュレーションで戦術まで制限されるとは思わなかった。

 確かにそれならサイクル型が少ないはずだ。要するにくるくるお互いに回すだけの試合ですら観客から見れば一向に展開の進まない退屈な試合とみなされてしまうのだ。

 多少の不利を織り込んでも真正面から殴り合ったほうが『後続』を考えると良いのだろう。

 

「てことは試合の展開まで考える必要があるのね……結構難しいわね」

「うん、他の地方はまた別の難しさがあるかもしれないけど、ガラルもガラルで難しいんだよ」

 

 最終的な勝負を決めるのはお互いの『エース』だ。

 だから試合の終盤、『エース』が出てくるまでにどれだけ相手を疲弊させているか、味方の『エース』を有利な状況で出せるか、というのは問題となるわけだ。

 そしてサイクル戦をしない、ということは基本的に全員が居座ってくるわけで、ポケモンの交代は場のポケモンが『ひんし』になった時だけ、と考えると……。

 

 どのポケモンにどんな戦術を詰め込むか。

 

 そして戦術を詰め込んだポケモンをどの順番で出していくか。

 

 常に試合の終盤を意識してパーティを構築し、展開を組み立てなければ相手の『エース』を倒すより先に味方の『エース』が息切れすることになる。

 

 つまり負けだ。

 

「さすがにこういう制限でのパーティ構築なんて考えたことも無かったけど」

「けど?」

「……楽しそうではあるわね」

 

 そんな私の呟きに、ユウリがふふっと笑い。

 

「楽しいよ、すっごくね!」

 

 今日一番の笑みを浮かべた。

 

 




キバナさんのデータ作ってたら遅くなりました。

いや、おかしいんだ……、もっと前からキバナさんのデータ作ってたはずなのに『できたー!』って思ってみたらダンデさんのリザードンのデータが完成してたんだ(
慌ててキバナさんのデータ作ってた。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。