ポケットモンスタースカイブルー   作:水代

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tips:バウンティー
一言でいえば賞金首。例えば警察機構などが指名手配犯や犯罪グループの構成員などの身柄や情報に対して懸賞金を掛けたりする。この懸賞金をかけられた人間を賞金首などと呼んだりもするわけだが、トレーナーの場合、これがポケモンにかかっていることがある。
例えば環境を多く乱すようなポケモンは基本的にポケモンレンジャーが捕獲、ないし最悪討伐するわけだが、ポケモンレンジャーでは太刀打ちできないような超強力なポケモンが発生したり、手に負えないほどの大量発生などが起こった場合、これらはポケモン協会に協力を要請された地元のジムリーダーなどが『駆除』することになる。だがジムリーダーだっていつでも手が空いているわけでもないし、或いはジムリーダーですら手を焼くような相手が生まれる可能性もある。そういう時にそれらのポケモンに対して『懸賞金』が発生し、賞金首のポケモンが誕生する。
基本的にバウンティー、というと人間のほうを指し、バウンティモンスター、というとポケモンのほうを指す。


今日の天気は晴れのち爆撃①

 轟音。

 爆音。

 破砕音。

 

 本日の天気は晴れのち爆撃なり。

 

 とでも言おうか。

 

「アホかぁぁぁぁぁ!!」

 

 雨あられと降り注ぐ爆撃に絶叫しながら走る。

 何が、何で、どうして、こんなことになったと頭の中で何度も問答しながら頭上を見上げながら直撃しそうなものだけは咄嗟に風で逸らしていく。

 『おおあらし』でも使えれば……と思わなくも無いが、渦巻く気流に爆弾が乗せられてどこに飛んでいくか分からないというのは逆に怖すぎる。

 というか『おおあらし』は自分と相手を中心として渦巻く気流を作り出す、つまり降り注ぐ爆撃の雨に、そんなもの使えばあっという間に自分の周囲を爆弾に囲まれることになるので却下だ。

 

「ラーちゃん! フーちゃん!」

 

 手持ちの中でも飛行能力に優れ、攻撃能力も高い二体のボールを空に放り投げて解放する。

 飛び出した二体が私の指示を受けてソレに攻撃しようとして……。

 

 “はぜるつばさ”*1

 

 攻撃の衝撃を受けて、その翼から散った羽が……()()が飛散し、地面に落ちた衝撃で爆発を起こす。

 

「おま、おま、ふざけんじゃないわよ!」

 

 バトルコートならともかく、こんな野生環境でそれをやられるとトレーナーすら巻き込む。

 咄嗟に風で逸らしながら()()()()()()()()()を引っ掴んで飛び退る。

 爆風に揺られながらも風の防壁で防御していたお陰か、大したダメージにはならずに済んだ。

 

「クコ、大丈夫?」

「はきそう……めがまわる……」

 

 視界が安定しないクコの言に、問題無しと判断して再び走る。

 トレーナーは体力勝負なところがあるのでポケモンだけでなく私自身も結構鍛えているのが功を奏してかこうして逃げることに成功しているが、どうもクコは見かけ通り、というべきかその辺あまり鍛えていないようですでに体力の限界を迎えているのか、息切れを起こしていた。

 背負う……という選択肢も考えた、私とクコの体格にほぼ差はないとは言え人一人背負ってアレから逃げ切れるか、と言えば。

 

「仕方ないわね」

 

 足を止める。

 元より逃げ切れるものではないし、そもそも私たちはここに何をしに来た?

 こいつの登場が余りにも唐突で逃げるしか無かったのも事実だが、それでもここまで散々にやられたのだ、そろそろお返しの時間だろう。

 

「クコ、ここで待ってて」

 

 相手の一発目、奇襲の一撃をクコが咄嗟に防いでくれなければ私もクコも生きてなかったかもしれない。

 あれを防いでくれた、というだけでクコの仕事は十分過ぎる。

 奇襲のせいでこちらの態勢が整わずにばたついてしまったが、今ここに至ってようやく相手へと向き合う。

 

「お前はもう、自然に居て良い存在じゃないわね」

 

 私たちが逃げてきた道筋を辿るような爆撃の跡。

 そしてその爆撃が降り注いだ場所は抉れ、燃え、破壊され尽くしている。

 こんな自然の破壊者がいつまでもワイルドエリアに住み着いていては大惨事にしかならない。

 

「ここで捕まえさせてもらうわよ」

 

 呟き……心の中で撃鉄を落とす。

 

 “ぼうふうけん”

 

 風が渦巻く。

 

 雨が降り。

 

 嵐が生まれる。

 

「落ちなさい……【ボマー】」

 

 ―――シャアァァァァ!!

 

 呟きに反するかのように、ソレが叫び―――。

 

 バウンティモンスター【ボマー】

 

 そう呼ばれる怪物が翼を広げ空を駆ける。

 

 それが戦いの始まりだった。

 

「何でこんなことになってるのかしらね」

 

 動き出す怪物を見やりながら思わず漏れ出た言葉。

 

 その理由を説明するには半日ほど時間を遡る必要があった。

 

 

 * * *

 

 

『そら、ひまか?』

 

 朝一番に電話がかかってきたと思ったら、開口一番にそんなことを言われた。

 先日の大会から明けて翌日。大会を観ていただけではあったが、色々と得るものがあったのでそれを元に今日からまた育成に時間を取ろう、と決めた矢先の話。

 昔と違い、現代のトレーナーとは『職業』だ。当然ながら今やっていることはつまり『仕事』だ。

 故に基本的に仕事を優先する、大抵のトレーナーがそうだろう。

 

 だからこそ本来ならば『忙しいから』と言って電話を切るのが筋だろう。

 

 かかってきた相手が相手でなければ。

 

「またいきなりね、クコ」

 

 そもそもこのガラルにおいて私のスマホの番号を知っている人間はそう多くはない。

 クコはその多くは無い知り合いの中の一人であり、同時に私の数少ない友人でもあった。

 

「何か用?」

『すこし、てつだえ』

「手伝う? 何を?」

『ほかく』

 

 それから要領を得ない端的な会話を続けて分かったことを繋げる。

 

「要するに、最近ワイルドエリアの奥地で強力なポケモンが環境を荒らしているからこれを捕獲して欲しいとポケモンレンジャーから要請があった、ってことで良い?」

『あってる』

「うーん、まあ別に手伝うのか構わないけど、なんで私?」

『いいこ、くれた、おかえしだ』

 

 いいこ、というのは多分以前にリシウム経由で渡したギャラドスのことだろう。

 そのお返し?

 

『つかまえたら、そらにやる』

「え、良いの? そういうのって」

『じむりーだーのすいせんならいい』

 

 確かにそういうケースがあるのは知っているので納得できる話ではある。

 ただ、そもそも捕獲するポケモンとは一体どんなポケモンなのか。

 特に私の場合、いわゆる『統一パーティ』というやつなので何でも良いとは言えない部分がある。

 それを問えば。

 

『とりぽけもん』

 

 そんな答えが返って来る。

 抽象的な答えではあるが、どうやらそれ以上のことはまだ分かっていないらしい。

 ただ空を飛んでいるようで、さらに翼があるポケモン……恐らく鳥ポケモンだろうということ。

 

 それから―――。

 

「ふむ……」

 

 現在の手持ちの数はガーくん、キューちゃん、ダーくん、フーちゃん、リーちゃん、アーくん、ウーちゃん、ラーちゃん、チーちゃんの9体と、今はホウエンに返しているがまた呼び戻す予定のアオを含めて10体。

 新しく捕まえるとなると……11体目。

 

「ギリギリ、かしらね」

 

 私の育成能力だけで言えばややキャパシティオーバー気味ではあるが、リシウムが『ひこう』ジムの育成施設を貸してくれているので11……ないし12体くらいまでならどうにかなるだろう。

 そう考えればまだ増やすのはアリと言えばアリ。

 

「まあパターンを増やすのは良いことね」

 

 当たり前だが、固定パーティというのは対策されやすい。

 幅が狭いパーティも同様。だからこそ多くのポケモンを用意するというのは大事なことだ。

 対策されにくいパーティ、というのは年間を通して何十と戦いを積み重ね、その度に情報を露出してしまうプロトレーナーにとって最も大切なことなのだから。

 

『つかまえたら、しょうきんでるぞ』

「賞金? どういうこと?」

『ばうんてぃーもんすたー』

「……ああ、そういう」

 

 バウンティー、つまり賞金首。

 余り一般的な言葉ではないが、まあぼんやりと意味は分かるだろう。

 ただトレーナーとそれ以外だと意味合いが割と違ったりする。

 

 トレーナー以外だと指名手配犯などの情報や身柄に警察機構が懸賞金をかけている人間を指して言うのだろうが、トレーナーの場合、ポケモンレンジャーが野生ポケモンの捕獲、或いは……討伐に対して懸賞金をかけているポケモンのことを言う。

 ここ十年ほどでできた制度であり、ポケモン協会が存在するならだいたいどの地方にもある制度なので私も知識としては知っていた。

 

「でもこのガラルで、ていうのは珍しい気がするわね」

 

 基本的にこのバウンティモンスターというのは二種類あって、『どうにかしなければならないがジムリーダーが動くほどのことではない』場合と『危険過ぎてジムリーダーですらどうにもならない』場合だ。

 

 前者は大量発生などの強さは求められないが、とにかく数が必要になる場合。

 

 後者は変異種や特異個体などのとにかく強さが求められる場合。

 

 とは言えプロトレーナーの中でもトップ層に近いジムリーダーですらどうにもならないような相手が早々生まれるわけも無いし、ジムリーダーですらどうにもならないような相手が一般トレーナーでどうにかなるわけがない、という問題もあるのだが。

 ただ他地方のジムリーダーというのはリーグ傘下にあってもあくまで個人経営なので協力する義務はあっても強制はできない。

 故にジムリーダーがどうしても手が離せない案件など抱えているとバウンティーモンスターという形式で一般に捕獲を呼び掛けたりするケースが多い。

 

 だがガラルではジムリーダーは……特にマイナージムのジムリーダーはリシウムに初めて会った時の一件を思えばそういうバウンティになるようなモンスターの『駆除』も含めて仕事の一環でやっていると思っていたのでバウンティモンスターがいる、というのは少し意外な話だった。

 

『わいるどえりあは、つよいポケモンがうまれやすい』

「まあ確かに、今時あそこまで自然の色が濃い場所も少ないわよね」

 

 強いモンスターというのは過酷な環境でこそ生まれる……正確に言えば過酷な環境を生き延びるために必然的に強くなる、或いは強い個体だけが生き残る。

 そして生き残った強い個体同士が戦い、争い、負けた個体は環境を追い出され別の環境に入る。

 

 例えばの話。

 

 ワイルドエリアの『深域』から『中間域』に迷い込んだら……深域での争いに負けたとは言え強さの桁が一つ違うような怪物なのだ、当然環境が乱れに乱れる。

 そして『中間域』の環境が乱れれば当然その影響は『浅域』にも現れる。

 そして『浅域』へ現れた影響はさらにその先の人の街まで及び……。

 

 そうなる前に環境を乱す要因を『駆除』しなければならなくなる。

 

「それで、どこに行くの?」

『わいるどえりあ』

 

 恐らくそうだろうと思っていた予想のままの答えに納得し。

 

『しんいき』

 

 続けて呟かれた言葉に目を見開いた。

 

 

 * * *

 

 

 ワイルドエリアの『深域』はこのガラルにおける特級危険地帯だ。

 『深域』内における野生ポケモンの推定レベルは()()で80以上。

 このガラルにおけるトップトレーナーたちのみが足を踏み入れることを許された禁断の領域である。

 

「良いの? 私も入って」

「じむりーだーのきょか、あればいいぞ」

 

 そう言ってこちらを向き直ったクコが私を指さして。

 

「きょかする……これでいい」

「適当ね」

「なにかあればわたしがまもればいい」

「……ま、そーね、何かあればお願いするわ」

 

 別に守られるほど弱くはないと思うが。

 まあ心遣いには感謝しておくとする。

 

「しかし、なんというか雰囲気が違うわね」

「ぴりぴりする」

 

 ナックルシティから南に出れば『ナックル丘陵』。さらにそこから進めば『砂塵の窪地』へとたどり着く。風のせいか前方を見やれば巻き上げられた砂のせいで視界が悪い。

 だがその影響か、余計に感じる。足を踏み入れた瞬間から、ぴりぴりとした野生独自の緊張感のようなものが。

 

「おっかないところね」

 

 この緊張感はなんというか、地元の『チャンピオンロード』を思い出す。

 あそこもまた恐ろしい野生の坩堝と化しているのだが、同じくらいこの場所も恐ろしい雰囲気が漂っていた。

 

「そら、みろ」

 

 『深域』に足を踏み入れ、少しの間探索を進める。

 ここに至るまでに野生のポケモンとの遭遇は無かった……のだが。

 

 つい、とクコに袖を引かれるので視線を向ければ、そっと奥のほうを指を差す。

 その先に居たのはバンギラス。

 どうやらまだこちらには気づいていないようだが……。

 

「避けていきましょう」

「そうだな」

 

 極力余計な戦闘は避けていくべきだろう。

 他と違いこの領域のポケモンとの戦闘は相応にこちらも疲弊する。

 『深域』は潜在能力こそ劣れどダーくんやフーちゃん、リーちゃんたちが野生だった時と同じかそれ以上のレベルを誇る強者たちの楽園なのだ。

 目的のポケモン以外とは極力戦わず消耗を避ける必要がある。

 クコと互いに認識のすり合わせができていることを確認しながらさらに慎重に進む。

 

 そうして。

 

「……ん?」

 

 ふと視界の端に何かが見える。

 視線を向ければひらり、ひらりと舞い散る『羽』が見えて。

 

「あれは……」

 

 興味を惹かれ、『羽』へと近づく。

 空から落ちてくる羽がそうして地面へと落ちて……。

 

「そらっ!」

「なっ?!」

 

 咄嗟に手を引かれるのと羽が弾け飛ぶのがほぼ同時だった。

 思い切り手を引かれ、尻もちをつくとちょうどその真上に影が差す。

 後ろに倒れて尻もちをついたせいか視線は真上を向いていて……過る影の姿をはっきりと捉えた。

 

「ク……コ、上っ!」

 

 私の言葉にクコがばっと上を向いて……。

 ひらひら、と無数に舞い落ちてくる羽を見やり、顔が青ざめる。

 

 あれ全部が先ほどのように爆発すれば……。

 

 その予感に背筋に寒気が走り、咄嗟に風を呼び出そうとするがどう考えても間に合わない。

 不味い、不味い、不味い……迫りくる死の気配に歯を食いしばり。

 

「うきあがれ!」

 

 “はんじゅうりょくのつばさ”

 

 どん、とクコが片手で大地を叩くと同時に舞い落ちてくる『羽』がふわりと一瞬浮き上がり、その場で滞空する。

 直後に吹き荒れた風が全ての羽を薙いで攫って行く……と同時にその衝撃で羽が爆発を起こす。

 一つ、二つと爆発すれば衝撃が連なっていき連鎖的に全ての羽が爆発を引き起こす。

 その衝撃たるや真下にいる私たちが大地に張り付けられるほどだった。

 

「く、こ!」

「もんだい、ない」

 

 追撃は無い。

 それを確認すると同時に起き上がり、クコの手を取って起こす。

 だがそんな私たちを逃がすまいとさらに上空からソレは翼を広げ―――。

 

「走れ!」

 

 私の咄嗟の叫びに呼応するかのように、クコが走りだす。

 私もまた走りだしながら背後に舞い落ちる羽の数々を見やり背筋を凍らせる。

 

 それからその羽の主へと視線を移せば。

 

 鋼鉄の体に赤い羽根の持ち主。

 

 よろいどりポケモンと称されるの『だろう』ソレを見やる。

 

 エアームド。

 

 姿形だけで言えば、確かにそう呼ばれるポケモンだった。

 

 私だって知っているし見たこともある。

 

 全長が5メートルを超す巨体で無ければ、だが。

 

 

 

*1
相手からの攻撃でダメージを受けた時、相手の場の状態を『ばくだん』状態にする。




こんな攻撃どっかで見たことある?

き、キノセイジャナイカナア。

空から爆弾降らすようなポケモン作りたかったんだ。

最初はコイルとかフワンライドとか爆発してくれそうなやつら落とす、って案もあったんだが……気づいたらこうなってた。

というかファンタジー世界でこういうのだそうとするとどうしてもバゼ……なんとかさんになる。
本当はどういうことができるかをイメージして、イメージだけ作ってから能力とか決めたんだけど、気づいたらやっぱりバ……なんとかウスさんになってる(
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