“ぼうふうけん”
渦巻く暴風が、吹き荒ぶ豪雨が、『おおあらし』となってワイルドエリアに吹き荒れる。
―――シャァァ!?
吹き荒れる風と雨にエアームドが驚愕の叫びを発し、そうして。
“てっけつ”*1
“ばくげき”*2
舞い散る羽が風に乗って渦巻き、直後に渦巻く嵐の衝撃で羽が爆発する。
予め分かっていたことだけにすぐに風の防壁で防御し、こちらへの被害を最小限に留める。
「雨でかき消されない……『ほのお』タイプじゃない?」
『ボマー』と呼ばれているらしい、ということは前もってクコの電話で聞いていたので、てっきり『ほのお』タイプだと当たりをつけていたのだがどうやら違ったらしい。
この『おおあらし』の中では全ての『ほのお』タイプ技は不発になる。
正確に言えば『ほのお』タイプのエネルギーが『つよいあめ』に飲まれてかき消されるためそもそも技自体が発動しなくなるのだ。
だが発動する……ということはあれは『ほのお』タイプの技ではないらしい。
少し予想外だった。
まあ多分そうなんだろうな、という予想だったので外れていたことが致命的というわけではないが。
ただ捕獲のための難易度がぐんと上がったのは間違いない。
相手の技をこちらの力で止められない以上、真正面からぶつかるしかないのだから。
「ラーちゃん!」
こちらの呼びかけに答えてプテラのラーちゃんがエアームドの上を取る。
「ギャァォォ!」
“せいくうけん”*3
素早い動きでエアームドの上を取ったラーちゃんが威嚇の声をあげる。
特性としての『いかく』ではないためエアームドを怯ませるような効果は無いが、それでも単純に鳥ポケモン……いや正確に言えば『空を飛ぶポケモン』に取って上を取られるということ自体が大きなプレッシャーだ。
「フーちゃん!」
さらに下からガラルファイヤーことフーちゃんを回り込ませる。
上と下で挟み撃ちにしたこの状態にエアームドが一瞬たじろいで……。
「―――ギァァゥアア!」
“エアスラッシュ”
相手の見せた弱みに付け込むかのように、フーちゃんが即座に技を出す。
放たれた風の刃がエアームドを撃つ……がその両翼にガードされて大して効いた様子は見えない。
『ひこう』タイプ技を半減したその様子にどうやらタイプは普通に『はがね』と『ひこう』で良いらしい。
「厄介ね」
良いタイプだ、と思うが同時に厄介なタイプでもある。
『ほのお』と『でんき』以外が全て等倍以下なのに『おおあらし』の影響で『ほのお』技は無効。
となると実質的に弱点は『でんき』だけだが。
「そう言えばいないわね。『でんき』技使えるポケモン」
今度原種サンダーでも探しに行こうか、なんて冗談を考える間も無く、エアームドがお返しとばかりに再びその翼をはためかせる。
“てっけつ”
“ばくげき”
「撃ち落として!」
“エアスラッシュ”
放たれた無数の『羽根』がエアームドの下に位置取っていたフーちゃんへと降り注ぎ、フーちゃんの羽ばたきとともに放たれた風の刃がそれを次々と撃ち落とす。
「ラーちゃん!」
「ギャォォォォァァ!!」
“おおぞらのぬし”*4
“ストーンエッジ”
ラーちゃんの咆哮と共に真下から伸びた岩の刃がエアームドへと伸びる。
咄嗟にそれを避けようとするエアームドだが、その動きを制するかのようにラーちゃんが素早くその行き先を塞ぎ、直後に岩の刃がエアームドの巨体を撃つ。
―――キシャシャシャ!
“はぜるつばさ”*5
『ストーンエッジ』に打たれた衝撃でその翼から羽根がはらはらと抜け落ち、足元に散らばる。
直後に『おおあらし』に巻き上げられ爆発する。爆発の衝撃で思わず片目を瞑るが、乱気流の中での爆発だったので特に被害は無い。
「いくらでも落としなさいよ……全部巻き上げてまとめて吹き飛ばすから」
呟きながらさらに戦況を変えんとボールへと手を伸ばす。
直後。
―――キシュァァァァァ!
“てっけつ”
“くちばしキャノン”
そのクチバシに『エネルギー』が収束する。
収束したエネルギーが燃え盛るかのような熱を持ち、うっかり触れれば『やけど』してしまいそうなほどなそのクチバシではあったが……。
「それは悪手ね」
“せいくうけん”
「ギャォォァ!」
使えるポケモンが限られ過ぎていて一度か二度くらいしか見たことの無い技ではあるが、一応知識としては知っている、それは『ひこう』タイプの高威力技、つまり『せいくうけん』を取られている以上使えない技だ。
エネルギーの収束のため隙を見せた直後に上空からラーちゃんが急襲すれば、一瞬にして収束した『ひこう』エネルギーがかき消され、技が失敗する。
直後。
“ばくげきき”*6
破裂するような音を立てながらエアームドの口の中と羽から炎が噴き出す。
―――キシャァァァァァァァァオォォォ!
悲鳴を上げながらエアームドががくん、と滞空していた姿勢を大きく乱す。
「何、今の?」
推定『はがね』『ひこう』タイプのエアームドだが、使っている技からして『ほのお』タイプの血統*7でも持っているのだろうと予想していた。
だが今のは明らかに不自然な光景だった。
自らの炎が逆流しているようにしか見えなかった。
―――キシュアアアアアアアアアアアアアォォ!
どういうことなのか、そんな思考を打ち切るかのようにエアームドが絶叫し。
“ばくげきき”*8
その全身に纏った『はがね』の鎧が赤熱化していく。
同時にエアームドから感じる『圧』が跳ね上がり―――。
“てっけつ”
“ばくげきき”
“はぜるつばさ”*9
“ばくげき”
放たれた『羽根』が空中にばら撒かれた直後に大爆発を起こす。
その威力は先ほどまでの比ではなく、上空で制空権を確保していたラーちゃんがその衝撃に一瞬態勢を崩すほどであり。
「フーちゃん!」
咄嗟に気流を目の前に現出させて衝撃を緩和して尚耳が痛くなるほどの衝撃が浸透してきた。
すぐに直撃したフーちゃんへと視線を向ければ……。
「ギァァゥアアアアアアアアアアァァァァォォォ!」
“ぎゃくじょう”
“オーラバーン”*10
一瞬にして大ダメージを負いはしたが、レベル差が無かったお陰かギリギリで耐えたらしい。
危険域にまで達した体力に、生命の危機を感じてか全身からまるで炎を噴き出すかのように黒い靄を吐き出しながら怒りに満ちた瞳でエアームドを見つめ。
“スピントルネード”*11
“エアスラッシュ”
羽ばたきと共に鋭い風の刃を無数に放つ。
その数と威力もまた先ほどの比ではなく、『おおあらし』によって増幅された『ひこう』エネルギーを解き放つ。
渦巻く螺旋の軌道によって放たれた風の刃はエアームドへと確かなダメージを与え、悲鳴を上げてエアームドがその高度を急激に下げる。
「今なら」
捕獲できるか?
そんな考えがふと過り、空のモンスターボールを構えて。
―――ギシャアアアアアアァアァァ!
それを投げるより先にエアームドが羽ばたいて高度を上げる。
そうして反撃を警戒する私たちを置き去りに飛び退ろうとして。
“グラビティチェンバー”*12
突如発生した重力の檻にエアームドが捕らわれ、飛んでいることすら許されずに大地に墜落する。
「クコ!?」
「ん……もうだいじょうぶだ。めいわくかけた」
いつの間にか息を整え復帰していたらしいクコの異能によってエアームドは逃げることすら許されずに大地に磔にされていた。
よく見れば全身のあちらこちらから炎が噴き出し、その度にエアームドが苦し気に悲鳴を上げているのが分かった。
「こいつ……不味いわね、クコ、早く捕まえましょう」
「ん、わかった」
その様子にただ事ではないと理解し、ボールを構える。
だがそれを投げるより先にエアームドの全身が輝き始める。
“だ”
不味い、と思うより先にボールを投げて。
”い”
だがエアームドのクチバシで弾かれる。上手く胴体に当てられなかったためボールはエアームドに反応せず。
“ば”
エアームドへと膨大なエネルギーが収束しているのが理解できていたからこそ、顔を顰め。
“く”
ラーちゃんやフーちゃんに指示を出そうとするが、けれど最早それも遅い。
“は”
間に合わない、そのことを理解し、咄嗟に全力で風の護りを作ろうとして。
”つ”
エアームドへと収束したエネルギーが弾けようとして。
「オーちゃん」
クコがボールを投げ、そこから一匹のポケモンが飛び出す。
丸みを帯びたフォルムに呑気そうな顔をした水色のポケモン……ヌオーがエアームドの目の前に立ち。
“しめりけ”
エアームドへと収束したエネルギーがけれど弾ける寸前でぴたり、と脈動を止めた。
* * *
才能とは人にとってもポケモンにとっても不平等である。
そして人もポケモンも同じ、才能のある存在は強くなりやすいし、才能が無ければ弱くなりやすい。
故に野生環境において才能の無いポケモンは淘汰され、才能のある優秀なポケモンだけが残っていく。
ただ。
才能があることが本当に幸福であるかは、また別であった。
最高の才を持ったエアームドがいた。
いわゆる『天才』と呼ばれる存在であり、極めて強固な『ヨロイ』を纏った精錬された純鋼の鳥ポケモン。
本来弱点となるはずの『ほのお』タイプに対して極めて高い耐性を持ち、寧ろ与えられた熱によってさらにその鋼は硬度を増す。
鉄壁の翼を誇る最高位の『よろいどり』ポケモンがいた。
そして。
同じく最高の才を持ったファイアローがいた。
本来ファイアローの『ほのお』はそれほど強くない。ヤヤコマの時にはまだ『ほのお』タイプが無いように、進化を重ねようやく身に着けた『ほのお』タイプは発炎器官のサイズの問題もあってかどうしても他の『ほのお』タイプのような強力な炎を噴き出すほどの力はない。
だがそのファイアローは成長する過程で強力な『ほのお』を発する術を身に着けた。
正確に言えば自らそういう存在に『変異』したのだ。
素早く空を飛ぶことよりもより強烈な炎を噴き出すことを選び、そういう体に自らを適応、変異させたファイアローの特異個体。
結果的にその『ほのお』は同じタイプのリザードンなどにも勝るとも劣らないほどの強力なものとなった。引き換えに飛行能力はやや退化し、他の同族ほど素早く飛ぶことはできなくなったがそれでも代償として得たその炎の力は同種の中でも一際強く、そして異質だった。
そんな両者が出会い、そしてタマゴを作った。
結果的に生まれたのが『ほのお』タイプに対して一際高い適性を持ったエアームドだった。
両親の才を
いや、受け継いでしまった、というべきか。
『ひこう』『はがね』タイプ。
それがエアームドのタイプであり、けれどその体の内には『ほのお』エネルギーを生成する発炎器官を親のファイアローから
『ほのお』タイプでも無いエアームドに体内で生成される『ほのお』エネルギーを扱う術がない。
本来『はがね』タイプとは『ほのお』タイプのエネルギーに弱いのだ。
だが親から受け継いだ……受け継いでしまった『ほのお』に耐性を持つ『はがね』の体は体内に蓄積された『ほのお』エネルギーの浸蝕を跳ね除け……。
結果的にその体内では使うこともできない『ほのお』エネルギーがひたすらに生成され続ける。
根本的な問題としてエアームドには『ほのお』タイプのエネルギーを放出する術が無い。
エアームドという種族は『ほのお』技を覚えない。これは才能などの問題ではなく、体の構造の問題である以上例え種族最高の才を持つエアームドとてそれはどうにもならない話だ。
だが体内で増産され続ける『ほのお』タイプのエネルギーは日に日にその力を増していき、やがてその『はがね』の『ヨロイ』すらも許容しきれないほどの膨大なエネルギーがエアームド自身を蝕む。
自らの力が自らを殺す。
それは才能を
故にエアームドは適応した。
適応し、変異した。
そうせざるを得なかった。
そうしなければ死ぬしかなかったから、そうした。
抜け落ちては生え変わるエアームドという種族の特徴たる『羽根』に体内の発炎器官を直結させる。
そこから無制限に供給される『ほのお』エネルギーは『羽根』の内側にひたすらに溜まっていき……。
抜け落ちた羽は臨界寸前まで供給された『ほのお』エネルギーを含み、衝撃と共に『ほのお』が弾ける。
そうしなければ体内に溜まりきった『ほのお』タイプのエネルギーが自らの体を爆発させる。
故にそれは環境を破壊した。
爆発性の羽根をまき散らし、飛び回った。
そうし続けなければ死んでしまうから。
泳ぐことを止めれば死んでしまう回遊魚のように。
エアームドは飛び続けて。
そうして『ボマー』と呼ばれたバウンティモンスターは誕生した。
オリ設定のオンパレードだけど、両親の血統の話はギャラドスの時にも話したと思うし、今回出てきた『タイプ』ごとのエネルギーに関する考察みたいなのは前に活動報告で書いたので下のURL参照にしてください。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=248655&uid=7917
簡単に言えばポケモンの技ってのは全て技のタイプごとの『タイプエネルギー』を使用して発動している、ということ。
ポケモンは自分が覚えることができる技全ての『タイプ』エネルギーを体内に所持しているがその中でも特に多く所持しているエネルギーがポケモン自身の『タイプ』として発現している、ということ。
この辺だけ分かってれば良い。