私は親としてはともかく、トレーナーとしては父さんのことは尊敬している。
何せ元とは言えチャンピオンだ。
かつてのホウエンの全てのトレーナーの頂点に立った存在であり、そのパーティの強さは確かなものだった。
そんな父さんのパーティは基本的に交代を多用する。
今のサイクル戦主体のリーグ環境では当然のように思えるかもしれないが、当時はまだまだ居座り型が主流だっただけに、父さんのスタイルはまさに時代の先取りと言っても過言では無かった。
父さんのパーティは割と分かりやすいコンセプトで作られている。
相手に対して勝てるポケモンに交代して、勝てない相手には能力を積み上げて突破する。
基本的にはこれに尽きる。
シンプルなパーティではあるが、それ故に汎用性は広い。
そしてそのシンプルなパーティの根底を支えるのがその『統率』能力だ。
統率能力の高いトレーナーというのはポケモンの底力を引き出す力に長けている。
統率能力とは極論を言えば、トレーナーのためにどれだけポケモンを本気にさせることができるか、ということだ。
父さんは特にその手の力に長けていて、その極致とも言えるのが『パーティの一体化』だろう。
簡単に言えば『味方と交代して場に出る時、味方の能力を引き継いで場に出る』。
こういう効果だ。
同じような効果として『バトンタッチ』という技があるが、自分の上昇させた能力を味方に引き継ぐというのは少し特別な資質が必要とされる。
それをパーティを6体のポケモンの群れではなく、一つのパーティとして一体化させ、6体のポケモンとトレーナーを『繋ぐ』ことで同じ効果を再現してしまうのはちょっと類を見ない技能と言える。
ぱっと見ると異能にも見える能力ではあるが、父さんには異能の力は一切無い。
本人曰くこれはあくまで人とポケモン、そしてポケモン同士の『絆』によって得られる力であって、分類するなら『統率』能力に寄るものでしかないのだそうだ。
残念ながら今の私にそんな力は存在しない。
パーティを仲間であると認識することはできるが、それでも父さんの言う『絆』というのが私には良く分からない。
それでもサイクル戦が主体となる環境において、この手の能力があればどれほど強みとなるか、なまじ分かってしまうが故に余計に欲しかったのは確かで。
だからこそ、
「キューちゃん!」
「はーい! またまた私、登場ですよ~!」
“とっきゅうびん”*1
積み上げたものを引き継いで、回す。
ただ普通に交代するだけでこれができるのは現状のパーティにおいてキューちゃんしか存在しない。
あの日ワイルドエリアで偶然出会っただけのキャモメが、何の不思議かこうして私のパーティに絶対に欠かせない存在となっていることに苦笑してしまう。
私は父さんのように『交代時無条件で』同じことはできない。
それでもキューちゃんがいればこのパーティは回るのだ。
だからこそ、キューちゃんへの交代は慎重にならなければならない。
今このパーティでキューちゃんが真っ先に『ひんし』になると一気に交代という選択肢が難しくなってしまうが故に。
キューちゃんいれば回る、ということは逆に言えばキューちゃんが『ひんし』になれば一気にサイクルが壊れるということであり、どう動かすか、それを考えるのがトレーナーの役目という物だ。
本当はバトン役をもう一匹くらい入れることができれば安定感も増すのだが、先も言ったが『バトンタッチ』のような技は少しばかり特殊な能力が必要になる。
このガラルで手に入るポケモンで、尚且つ私のパーティコンセプトを考慮した上でそれを覚えることができるポケモンとなると選択肢はかなり少なかった。
自分と相手を『繋ぐ』ことで能力の上昇を共有する力。
キューちゃんは性質的にその『繋ぐ』ことが得意らしい。
よく飼い慣らされたペリッパーが手紙などを運んでいるが、種族的性質なのかキューちゃんが特にそういうことに特化しているのかは分からないが、キューちゃん本人は技としての『バトンタッチ』を覚えないが裏特性として同じような効果を持たせることができた。
ウーちゃんから『ぼうぎょ』と『とくぼう』を1回。
ガーくんが『ぼうぎょ』を1回。
能力の上昇幅は大よそ5割とされている故に、今のキューちゃんは相当に硬いことは確かだ。
問題は、クコの出してくる次のポケモン。
「いくぞ、ヒーちゃん」
クコが投げたボールから飛び出したのは。
―――ォォォォン!
「ニドクイン」
ニドキングを水色に染めたようなポケモン……ニドクインだった。
* * *
場に出ると共に咆哮を上げたヒーちゃん(ニドクイン)が対面の擬人種の少女を睨みつける。
ヒーちゃんとオーくんはまだニドランだった頃に捕まえて一緒に育ててきたからか、非常に仲が良くポケモンのタマゴもいくつか作っている番だ。
それが原因か、育てている中で中々ユニークな裏特性が生まれた。
“うけつがれるおうざ”*2
先に立って戦うオーくんが敗北した時、次に出るヒーちゃんにその力は受け継がれる。
「ヒーちゃん」
対面の相手は見た目からして推定だがペリッパー、となると『ひこう/みず』タイプ。
故にこちらの最大火力を初手で叩きつける。
そう考えて。
「キューちゃん!」
“ぼうふう”
ソラの同時の指示。だが向こうに『おいかぜ』が吹いている分、こちらが出遅れる。
ペリッパーの少女が大きく両手を広げると同時に風が流れを変える。
その両手を叩きつけるように前へと振り下ろすと同時に、気流が荒れ狂う暴風となってヒーちゃんを襲った。
“あらしのはこびや”*3
吹き抜ける風が揺り返すように戻って来て、その勢いのままにペリッパーがソラの元へと消えて行き、そのままボールに戻る。
交代された、それに気づくがすでにこちらは指示を出している。
「交代、ガーくん!」
投げ放たれたボールから飛び出したのは、先ほどのアーマーガア。
確かアーマーガアは物理的なダメージには滅法強かったが、逆に特殊攻撃には物理ほどの耐久は無かったはずだ。
ならば先ほどの『だいげきしん』のダメージと合わせて行けるか?
“ウェアパワー”*4
“かみなり”
ヒーちゃんがから放たれた強烈な雷撃がアーマーガアへと襲来する。
咄嗟にアーマーガアがその両の羽を交差させてガードするが、電撃がその身を焼き―――。
“あらしのよろい”*5
両の羽に纏った風が雷撃を分散させる。確かに直撃したはずの攻撃はその威力を大きく減じ、アーマーガアはその一撃に耐える。
「な、に?」
今のヒーちゃんの火力ならば確実に倒せる一撃だった、だが耐えられた。
そのことに驚くが、けれど同時にソラならこれくらいやるか、と思い直す。
「ヒーちゃん!」
すぐさま次の指示。
確かに耐えはしたかもしれないが、それでも先の『だいげきしん』のダメージと合わせてすでにアーマーガアは『ひんし』寸前なのは間違いない。
ならば次の一撃で倒せる、そんな確信の元トドメの一撃を命ずる。
「ガーくん!」
だがソラとてむざむざ倒されるわけにはいかない、とアーマーガアへと指示を放ち。
“グラビティチェンバー”
“はんじゅうりょくのつばさ”*6
上から押し潰す重力の檻と下から突き上げる反重力の翼がアーマーガアを揺らす。
上から下からと押し付けられた圧に、アーマーガアが態勢を崩し、立て直しにほんの僅かな時間を要する。
1秒あるかないか、その程度の極僅かな時間。
けれどポケモンバトルにおいて、その1秒は明確な差となる。
“ウェアパワー”
“かみなり”
先に技を出したのはヒーちゃんだった。
放たれた雷撃が再びアーマーガアを襲う。
二度目の雷撃にいくらアーマーガアだろうとこれは耐えられたない。
確実に『ひんし』になる、そんな予想をして。
―――クラァァァ!!
耐える。
いや、正確に言えば限界はとっくに超えている。
それでも耐えている、やせ我慢、あとほんの一押しで倒れる。
『きあいのタスキ』や『がんじょう』などと同じ、まさに
それでも『ひんし』状態でないならば攻撃は出せるとばかりにその両の翼を開き。
“キョダイフウゲキ”*7
“カラスのわるぢえ”*8
“ゴッドバード”
猛スピードで迫る黒鉄の鎧を纏った烏の両翼がヒーちゃんを打ち抜く。
鈍器で殴られたかのような鈍い音を発しながら、トラックにでも跳ねられたかのような勢いでヒーちゃんが吹き飛ばされる。
「ヒーちゃん」
吹き飛ばされたヒーちゃんに、内心で悲鳴じみた声をあげながらその姿を見やる。
かなりダメージを受けているのは間違いない。傍から見ていただけでも尋常ではない威力だったのは分かった。
果たして、立てるのか?
そんな疑問を吹き飛ばすように、よろよろとだがヒーちゃんが起き上がる。
―――クォォォォン!
自らを鼓舞するように、私にまだまだ大丈夫だとアピールするかのように、ヒーちゃんが咆哮を上げる。
我慢強いのは分かるが、トレーナーの目から見ればかなりダメージを受けているのが見て取れる。
それでも。
「やれるか? ヒーちゃん」
そんな私の問いかけに、ヒーちゃんがノッシノッシと音を立てながらフィールドへと戻って応える。
ふっと笑って。
「なら、いくぞ、ヒーちゃん」
そうしてバトルが再開され。
「ヒーちゃん!」
「ガーくん!」
“クロガネのつばさ”
“かみなり”
先手を打ったのはアーマーガア。すでに『ひんし』直前の体に鞭を打ちながらヒーちゃんへとその翼を叩きつけ。
けれど直前に未完成ながらも技を放ったヒーちゃんの小さな電撃がアーマーガアの体にトドメを差し。
互いの意地を張った一撃に、今度こそ両者が『ひんし』となる。
これで状況は4対5。
けれど回数制限のある札を二度切ったこちらのやや不利と言ったところ。
思考する。思考する。思考する。
切れる札はあと四度が精々だろう。
つまりソラの『おおあらし』の中で『じゅうりょく』状態にできるのがそれだけ。
オーくんとヒーちゃんは比較的『じゅうりょく』状態無しで戦える手札ではあったが、残りの四体、特に後半三体は『じゅうりょく』が無ければ大半が機能しなくなる。
『じゅうりょく』無しでも戦えなくはないが戦力的には半減と言ったところ。
今回ソラはかなり本気で来ているのは分かる。
つまりまだ見ていない残り三体もかなり強力なポケモンであると推定するならば。
必要なのは必殺の状況だ。
例え『じゅうりょく』状態に上書きしても、ソラが交代してしまえば狙いはずれる。
交代先を叩けるとしてもまず被害が軽くなるように交代するだろうから。
こちらの『じゅうりょく』状態への上書きが回数制限付きなのはソラもまた異能者なのだから分かっているはず。
こちらの残弾も大よそ把握されていると考えて良いはずだ。
となれば、残弾一発につき一体、確実に取れる状況が必要だ。
順序を組み立てる必要がある。
4対……いや、3対1にまでできれば数の利で勝てる。
ここまで完璧に異能を封じ込められた以上、厳しい展開なのは間違いないが、それでもまだ勝ち目は残っている。
ならばやれることをやるだけだ。
ソラの思惑を躱しながら、こちらの思惑をソラに押し付ける。
それができれば勝てる。
自分よりも経験が豊富らしいソラに対してそれがどれだけ難しいことかは百も承知だが。
それでも勝ち目が残っているのに諦めるなんてことはトレーナーなら絶対にあり得ない。
ならばそのための手札はいくらでも尽くすし、やり方を変える必要があるならばいくらでも変わるだけだ。
故に。
「さあ、やるぞ、ダイちゃん」
三体目。
本来のバトルならば絶対にやらない手を打つ。
即ち。
放たれたボールから飛び出したのは。
見よ、これが『専用個体』の振り切れっぷりだ(
【名前】ガーくん
【種族】“あらしの”アーマーガア/原種/専用個体
【レベル】120
【タイプ】ひこう/はがね
【性格】わんぱく
【特性】あらしのよろい(『おおあらし』の時、自分の能力が下がらず、直接のダメージ以外を受けなくなる。特殊攻撃で受けるダメージが半減する。)
【持ち物】とつげきチョッキ
【技】ゴッドバード/クロガネのつばさ/とんぼがえり/まもる
【裏特性】『カラスのわるぢえ』
自分の持ち物の効果が1.5倍になり、不利効果を受けなくなる。
相手を直接攻撃する技を繰り出す時、自分の『ぼうぎょ』を『こうげき』の数値にしてダメージ計算する。
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【技能】『キョダイフウゲキ』
天候が『おおあらし』の時、『ひこう』タイプの1ターン溜める必要がある技を溜めずに使える。この効果は場に出る度に一度だけ使える。
【能力】
『ストームライダー』
天候が『おおあらし』の時、自分と同じタイプの技の優先度を+1する。
天候が『おおあらし』の時、自分と同じタイプの技が相手の特性に関係無く攻撃できる。
当初裏特性『道具の効果2倍』だったけど、さすがにチョッキ一つでとくぼう3倍の特性で特殊技のダメージとかやばすぎでは?? と思って倍率下げた。
まあそれでもとくぼう2.25倍のダメージ半減だが、ガラル編は場に出てすぐに火力上げてくるチートとかテンションで火力が上がるチートが横行してるので最終的には良い感じの倍率に落ち着くと思う。
まだジムチャレ始まってないのでテンション値とかエキサイトグラフ導入してないからあれだが。
因みにこのテンション値とかの新システムは『ダイマックス可能なスタジアム』限定で効果が発揮される。応援効果とかも同様ですね、まだ出てないけど。
名前】ヒーちゃん
【種族】ニドクイン/原種
【レベル】110
【タイプ】どく/じめん
【特性】ナルシスト(自分の技で相手を倒すと『とくこう』ランクが1段階上がる。)
【持ち物】なし
【技】ヘドロウェーブ/だいちのちから/ふぶき/かみなり
【裏特性】『うけつがれるおうざ』
味方の『ニドキング』が『ひんし』の時、『ぼうぎょ』『とくこう』『とくぼう』ランクが上がる。
味方の『ニドキング』が『ひんし』の時、『ニドキング』の持ち物を自分の『持ち物』に変更する。
味方の『ニドキング』が『ひんし』の時、能力ランクの変化を2倍にする。
【技能】『ウェアパワー』
追加効果のある攻撃技を出す時、追加効果が発動しない代わりに威力が1.3倍になり、道具の反動ダメージを受けなくなる。自分と異なるタイプの攻撃技を使う出す時、技の威力を1.5倍にする。
ニドキングで荒らしてニドクインで倒す。倒せば火力倍率ドン!
みたいなコンセプト。なのでニドキング外したり、強制交代で先に引きずり出されるとただのポケモンになる。特性はまだ技能で補えてもそもそも道具もってないので普通に出すより弱いかもしれない。
因みにニドキングと違って回復持ってないからダメージ与えればいつか倒せるけど、こいつに回復性能持たせるのはさすがにバランス壊れるラインだから。こういうのはレギュレーションに引っかかる。状況が整うと単体で完結しちゃうからね。
ガーくんが許されるのはエースポケモンだからです(
ガラルにおいてエースポケモンはレギュレーションの縛りが緩い傾向にある。
だって一番派手に戦って活躍するポジだしね。
世界観的に言うと、制限かけて地味になると人気商売的に辛い。
メタ的なこと言うとみんなワンパターンにキョダイマックスするからし、最終的なデータはダイマ前提なとこあるから3ターン過ぎると戦力が落ちる。
あと『能力』枠はレギュレーショの範囲外みたいなとこある。能力は基本的に生来の気質や持って生まれた自前の力だしね。それ規制するとそもそもその種族は出せないみたいなとこある。
というわけで能力がぶっ壊れやすい伝説はパーティに入れれる数自体に規制が入る。