ここターフタウンジムにおけるジムミッションとは『スタート地点から転がって逃げる大量のウールーを追い立てて最奥のゴールまで連れていく』というものだった。
途中に妨害役のジムトレーナーたちもいたのだが、正直このルールだと追いかけながら一方向に突風を吹かせるだけでウールーたちがゴールに向かって転がっていく気がする。まあさすがにそれはズルいだろうからやらないが、それを抜きにしてもウールーたちはこちらが追いかければ素直に反対側に転がって逃げていくように訓練されているようなので後は群れの方向さえ調整できればそう難しい話ではなかった。
途中ワンパチがウールーを追い立て邪魔しようとしていたが、それだって本気で失敗させようするような類のものではない。
何とも簡単に突破してしまった部分はあるが、そもそもジムチャレンジの趣旨的にこのジムミッションは『お遊び』部分なのだ、ジム側だって本格的にこんなところで脱落するようなトレーナーがいるとは思わないだろう。
もっとも後半に行けば行くほどこのジムミッションも難易度が上がっていくらしいのだが、それでもジムミッションがクリアできずにリタイアしたトレーナーというのはいないらしいので大丈夫だろう、そもそもトレーナーとしての実力に何か関係あるのかと言われれば多分無いだろうし。
基本的にジム挑戦は一日に複数のチャレンジャーが挑戦する。
まあ当然だろう、チャレンジャーは今期で言うならば70人を超えているのだ、一日に最低でも十人程度は
なので日程としては午前中に十人前後のチャレンジャーがジムミッションに挑戦する。
私は順番的に真ん中くらいだったのでさほど朝早くも無く、遅く過ぎることも無く程よい時間にジムで受付し、準備をし、ジムミッションを終わらせた。
そして午後からはジムミッションをクリアした順番にチャレンジャーたちがジムリーダーに挑戦することになる。
のだが。
「え?」
ジムに挑戦中のチャレンジャーたちの様子は常に撮影され、テレビ等に放映されているのだが、ジムミッションを終えてターフスタジアムのロビーに戻るとちょうど大画面モニターにジムミッション中のチャレンジャーの様子が映っていた。
午後のバトルまで時間があったので少し眺めていたのだが、まさかのジムミッションで躓くトレーナーたちが数人いたのに目を丸くする。
何でこんなものに失敗するのか首を傾げるが、よく見ると失敗しているのは推薦枠……つまりトレーナーになったばかりの新人だった。
「視野が狭いわねえ」
目の前のウールーをとにかく全力で追いかけて、群れ全体の動きを考えていないので群れが散り散りになって、それをさらにおいかけて余計に四散して、その悪循環にはまってしまっていた。
特に群れがバラバラになると追い立て役のワンパチがやってきて全体の動きがさらに複雑化する、そのせいでもうにっちもさっちもいかなくなってしまってのリタイアだった。
後は同じように群れをバラバラにしてしまってそれを追いかけている内に体力切れで走れなくなって……と言ったパターンもあった。
「こっちは論外ね」
トレーナーとはただ立ってポケモンに指示を出しているだけ、と思われがちな職業ではあるが、実際のところかなり体力勝負なところがある。
まあ立って指示を出しているだけ、というのも間違いでは無いのだがポケモン同士の激しい技のぶつかり合いに精神を削られながら、敵と味方の動きを注視し、よく観察し、次の動きを予測し、それに対してこちらの動きを決定する、と言った風に平均して僅か十五分前後の短い試合時間の中で常時頭の中で思考がフルに回転している。
体は動かさずとも頭は常に動かし続けるので心身が消耗する、それを体力で補って試合終了まで持たせているのだ。故に体力が無いトレーナーというのは途中で集中が切れて指示ミスを連発してしまうようになる。
故に論外だ、としか言い様が無い。プロとして体力が無いトレーナーなんていうのはあってはならない無様だから。
* * *
ジムリーダーとのバトルの前に昼食を取っておく。
先も言ったが、ポケモンバトル……特に
故にしっかりとエネルギー補給しておかなければバトル中に息切れしてしまうのだ。
運営側であるリーグ委員会もそのことをしっかりと理解しているためか、午後からのジムリーダーとのバトルに参加するチャレンジャーはスタジアム内の食堂で無料で昼食を提供していた。
「味も悪くないわね」
ターフタウンは農業が盛んな地域だからか、全体的に野菜類が多めの食事だった。
大量生産の大雑把な味付けかと思ったが、さすが原産地だけあってか野菜を使った料理の研究もしっかりされているのか中々悪くない味付けだった。
ふと周囲を見渡すとやはり
まあ今は一人分の食事をちまちま食べている彼らもこの後のジムリーダーとのバトルで食事量の重要性を痛感するだろうし、今年一年プロとして揉まれれば、来年には三、四人分を平然と食べるようになっているだろう。
まあそれはさておきだ。
掻き込むようにして食事を詰め込み、飲み物で流し込んでから手元のスマホロトムを起動させる。
家でやったらシア母さんに怒られそうな食べ方だが、試合前ということで許してほしいものだ。
とにかくスマホを使ってターフスタジアムのジムリーダーヤローの情報を頭に入れていく。
すでに昨日までに情報を集め、まとめた電子メモを作ってあるのでそれを見るだけだ。
ヤロー。
現在のガラル地方『くさ』タイプジムのジムリーダー。
『くさ』タイプジムは今現在のガラルにおけるメジャージムの一つであり、担当となるのは一番目であり、ターフスタジアム。
専門となるタイプは先も言ったが『くさ』。
戦闘スタイルはガラルらしい居座りスタイル。
ジム戦の順番というのは基本的にジムリーダーの実力順と言われているが、ヤローの場合性格的にチャレンジャー相手に全力が出し切れないので初戦に配置されていると言ったほうが正しい。
つまりジムリーダーとしての実力的にはそれなりのものがあるらしい。
その証拠にここ数年の間メジャーリーグから一度も落ちたことが無く、ジムチャレンジの最初の関門としての地位を築き上げている。
まあそれだけあってプロリーグで活躍している映像も多くあり、資料にはそれほど困らなかった。
それで、肝心の戦術についてだが……。
「独特だわ……」
最初に言っておくが、ヤローは『異能トレーナーではない』。
これは映像越しにだが何度も見たし、何だったら開会式で一度直接見ているので間違いない。
8タイプジムリーダーの中で異能使いは2人だけだ。その中にヤローは入っていない。
だがヤローの戦術は『極めて異能使いのそれに近い』。
というより、これは『メジャージムリーダー』共通のものだろう。
クコやリシウムも同じガラル地方ジムリーダーであるにも関わらず、彼女たちには無くてヤローたちに存在するもの。
そう、スタジアムだ。
基本的にスタジアムでは『ダイマックス』が使用できる。
大半の人がそれを知っているし、
実際私もガラルに来て、ユウリやリシウムたちに教えてもらうまで知りもしなかった。
『ダイマックス』ができる、ということはそこは『パワースポット』であるということ。
つまり大地の下を流れる『エネルギー』が噴き出す地点ということだ。
それはもっぱら『ダイマックス』という見た目にも分かりやすい使い方をされることが多いが、けれどその『ダイマックス』だって結局は『パワースポット』の使い道の一つでしかない、ということだ。
分かりやすく言えば『メジャージム』のジムリーダーたちはこの『パワースポット』から溢れ出す『エネルギー』を利用する技術を所有している。
これは普段から自分たちの担当するスタジアムを利用して修練を積むことができる『メジャージム』の特権と言える。
そしてこれは『パワースポット』から噴き出す『エネルギー』を安定するように設計から考えられて作られたスタジアムでしか使用できない。
つまりワイルドエリアに乱立するパワースポットでそれをしようとしても『エネルギー』が噴き出したり止まったりと出力が安定せず、使えないのだ。
逆に言えばスタジアムの『パワースポット』は出力が安定しており、比較的扱いやすい力となっている。
さらに『ねがいぼし』等この『エネルギー』を集積、利用する術もすでに知られている。
その結果、『ダイマックス』以外にもこの『エネルギー』を利用しようとするのは当然と言えば当然なのかもしれない。
つまりそれがジムリーダーの『技能』となる。
さらにもう一つ考えるべきことがある。
それが『スタジアム』自体への『エネルギー』の利用だ。
* * *
ジム戦において、難易度調整の一環としてバトルフィールドの環境に手に入れるというのは実のところ十年以上前からあちらこちらのジムで行われている。
基本的にジム戦において挑戦者とジム側どちらが有利かと言われると挑戦者に決まっている。理由としては簡単でジム戦におけるジムリーダーの手持ちというのはほぼ固定されている、というこれに尽きる。
逆に挑戦者は何度でも挑戦できて、ジムリーダーの手持ちを対策するような面子を組める。
となるとジムバッジを賭けたバトルの難易度が低くなるのではないか、という声は以前からあったのだ。
そのためにジム施設を改装し、バトルフィールド自体にジム側が有利になるような仕掛けをしてトレーナー自身の咄嗟の判断力や応用力などを見るようにするジムが増えた。
例えば『みず』タイプジムならバトルフィールドが足場を残したプールだったり、『ほのお』タイプのジムならば常時フィールドが『ひのうみ』状態になっていたり、と効果は様々だ。
本来それらはフィールドにそういう風にギミックとして作る、要するに種も仕掛けもある類のものなのだが。
このガラル……というかスタジアムだとその手のものがないのだ。
本当にただの芝を敷いただけのはずのグリーンコートで、何故か『フィールド効果』が発動する。
つまりこれも『パワースポット』から放出されるエネルギーを利用したものらしい。
今現在のガラルのポケモンバトルにおいて『ダイマックス』は最早決して手放せないものであるが故にその『ダイマックス』の原因となる『パワースポット』及びそこから放出される『ガラル粒子』について全力をあげて調べるのは当然と言える。
その成果の一つがジムリーダーたちの技術であり、スタジアムにおけるフィールド効果なのだろう。
さて、前置きが長くなったが、ターフスタジアムの『スタジアム効果』とでも呼ぶべきものは大まかに二つ。
『くさ』タイプポケモンの耐久力の増加。
『くさ』タイプの技の威力の増加。
シンプルに強く、そして厄介なものだった。
さらにここにヤロー自身の『技能』が追加される。
直接戦ったわけでは無いので多分こんなものだろうという想像も含まれているが、とにかく細かい手数が多いタイプだ。元々『くさ』タイプ自体正面切って戦うようなタイプでないが、それでもヤローの細かい技術の数々に支えられてガラルらしい正面からのぶつかりあいに耐えることができるようになっている。
『くさ』タイプと言えば変化技で相手を翻弄するようなタイプが多いが、ガラルでそれは受けが悪いためか使用するポケモンも基本的にはアタッカーが多いようだった。
私の使う『ひこう』タイプ統一パーティを考えればタイプ相性の面で有利なのは間違い無いだろう。
だがガラル地方のリーグ形式を考えれば統一パであることが絶対的な有利になるか、という部分には疑問を覚える。
つまりチャンピオンを目指すにあたって最も障害となるのがジムリーダーであるという点だ。
このガラル地方では意図的にタイプ統一パーティがトップ層に居座っている。
つまりチャンピオンカップ優勝を目指すトレーナーにとって戦う相手は大半が統一パーティになるのだ。
これが有利タイプなら良い、だが不利タイプならどうだろう。
タイプ相性で負けているから、というだけの理由で勝敗が決定的となるならばそれはチャンピオンへの挑戦権が運次第ということにしかならなくなる。
タイプ相性の有利不利が無くなることは決してないだろうが、けれど相性不利に対する対策は統一パーティを使うならば絶対にしているはずだ。
つまり、相手が『くさ』統一だからと言ってこちらが『ひこう』統一で楽勝、なんて展開にはならないだろう、ということだ。
仕事が忙しすぎたり原神イベントがやること多すぎたり、ナヒーダが可愛すぎたり、グラブルやってたり、仕事がくっそ忙しかったり、ガンゲイルオンラインアニメ見て面白かったので全巻読破してたり、ナヒーダが超可愛かったり、ブルアカが忙しかったり、仕事がやばいくらい忙しかったり、ナヒーダが可愛すぎてガチャ引きたい欲が爆発してたり、してたので更新が遅くなりました。
挿絵つけてるけど、あったほうが良い? 無いほうが良い?
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