「噛み合ったわね」
ヤローから受け取ったバッジを卓上ライトにかざしながらポケモンセンターの一室で息を吐き、今日のバトルを振り返りながら出た感想がそれだった。
全体的に選出が噛み合った、というのが一番の印象。
結果だけ見れば3-0の圧勝。
ただし初手がムーくんでなければあのルンパッパの耐久力を一撃で吹き飛ばせただろうか?
ワタシラガもダーくんがあっさり突破してしまったようだが、ほぼ完封に近い状態で倒したはずなのに持ちこたえられ一手動かれた。
その結果次に出てきたアップリューの戦力が大幅に上昇してしまったと言える。
ガーくんという物理に強く、『くさ』タイプに相性の良いダイマックスエースがいたため撃ち合っても勝てただろうが、あの耐久力と火力を考えると相手できる手持ちは限られてくる。
全体的には偶然にも最適解をぶつけ続けられたために勝てた、といったところ。
『くさ』統一相手に『ひこう』統一でぶつかる、という本来相性がかなり良いはずなのに、である。
「ジムリーダーの実力が思ってた以上ね」
このガラルのリーグ制度において他リーグにおける『四天王』と呼ばれる存在がいないことは分かっていた。
つまりこのガラルにおいてチャンピオンの下にはジムリーダーが来るのだ。
そのせいかジムリーダーに求められる実力が他地方より一段階高いのだろう、と予想する。
ジムチャレンジ用にあれで『加減』された強さなのだ。
「あれで最初のジムリーダー……か」
一応私は『チャレンジ枠』というリーグ所属二年目以降の枠に入っているのでジムリーダー側のレベル制限は取っ払われている、とは言え後半ジムほど制限が解除され強くなることは間違いなく、その全てが私と相性の良いジムというわけでも無い以上、これからのバトルの厳しさは増していくばかりと考えるべきだろう。
「もっと強くならないと……」
幼馴染と約束した場所にたどり着くためには、チャンピオン戦へと進むためには新進気鋭のチャレンジャーたちも、熟練のジムリーダーたちも、全てなぎ倒していく必要があるのだから。
とはいえ強くなりたい、と言って簡単に強くなれるのならば誰も苦労はしない。
強くなりたい、そう願うのはプロトレーナーならば誰だって同じなのだから。
「手っ取り早いのは新戦力を入れる、かしらね」
今いる手持ちたちの育成は一通り終わっているので残りのジムチャレンジの期間を考えても二体、ないし三体くらいまでならば育てることは可能だろう。
ただガラルリーグで使用可能で『ひこう』タイプが入る、という条件を付けると選択肢はぐっと少なくなってしまう。
「けど『ぼうふうけん』を考えないなら『ひこう』タイプに縛る必要はないのかしら?」
とも考えたが、能力のことを抜きにしても私はどうも『ひこう』タイプか『ドラゴン』タイプと抜群に相性が良いのでそっち側に寄せていったほうが良いだろう。
父さんは『感情を持ち意思疎通できるならどんなポケモンとでも仲良くなれる』とかいう意味の分からない魅力……或いはカリスマ性があるが、私にはそんなものはないのできっぱり諦める。
「『ドラゴン』タイプはありと言えばあり、だけど」
実際『ドラゴン』タイプというのは種として強力なポケモンが多い。
通常の種として強力なポケモンを上げていけば半分以上はドラゴンタイプで埋まるだろうと思えるほどに。
「ただ統一性は無くなるわよね」
タイプの統一性ではない、パーティ全体の統一性だ。
今の手持ちたちによる戦術や入れ替えの連携を崩してまでそれらを入れる必要があるだろうか?
「例えばディーディーのやつとか入れたとして」
ディーディー。
家族……と呼んでいいのかは分からないが他人と呼ぶには近しい存在。
七人の母親たちの一人、シキ母さんの手持ちのサザンドラのクロが作ったタマゴから生まれた
サザンドラというポケモンの中でも一際強力な種、そして擬人種という生まれながらにして保証された才覚。当然ながらポケモンバトルにおいてもその才能はいかんなく発揮される。
性格に難のあることを除けば或いはアオに届くかもしれないほどに。
「バカでアホでおくびょうヘタレドラゴンだけど強いのは強いのよね」
分かりやすいほどの特殊アタッカーだ。実際ダーくん(ガラルサンダー)の育成はあれがコンセプトになっている。
最速で強力な一撃を放ってさっさと引く。ダーくんが私の力ありきでやってることをあのヘタレドラゴンは単体でやってしまうのだから『てんさいはだ』というのは恐ろしい。
まあとにかくあのヘタレのような強力なドラゴンタイプのアタッカーを入れたとする。
「回せる……かしら?」
今の『つむぎかぜ』と『さかさかぜ』の組み合わせなら回せなくも無い。
ただ『ぼうふうけん』の時のような多大なメリットがあるようには思えないのも事実だ。
「どうもガラル地方で『すばやさ』は重視されてない気がするのよね」
リシウム、クコ、ヤローとガラル地方のジムリーダーと3人戦ってきたわけだが、どうにも速攻アタッカーというのがいない気がする。
リシウムのネギガナイトしかり、ヤローのルンパッパしかり、クコに至ってはパーティ全体がそうだ。
基本的に一発耐えて殴り返す、というのがこのガラルの基本なのだろう。
言ってみればプロレスのような、『見映え』を気にしたスタイル。
故に必要なのが『高火力』と『高耐久』であり、そこに『速度』は必要にならない。ないし、技の出の早さ(優先度)でそこをカバーしてしまうのが基本なのだろう。サイクルを必要としない居座りが基本なのもそれを増長している。
クコが言っていた『あっていない』とはまさにその通りで。
『耐えて殴り返す』が基本のガラルのプロの舞台で、『上から叩いて優位に立つ』が基本の私の戦術は根本的な部分が噛み合っていないのだ。
相手は先手を取られても良いのだ、中途半端な火力は耐えて殴り返して倒す。そうして1対1を交換し続けても6体目を先に倒せば勝ちなのだから。
つまり私に求められるのは『高耐久を上から貫く超高火力』か『相手の高火力を耐え抜いて二度目の攻撃を出せるだけの耐久力』のどちらかになる。
「できなくは……無いでしょうね」
高火力の分かりやすいイメージはまさしくダーくんだろう。
先手で高火力を撃ってすぐに引っ込む。
耐久で言えばガーくん(アーマーガア)が一番イメージに近いだろう。
私の『おおあらし』を纏ってダメージを軽減する。技の直撃さえ避ければ威力は削がれるのだから相対的に耐久力は上がっている。
その生きた見本が実家にいるのだからイメージもしやすいし、やり方を聞くこともできるだろう。
尤もあそこまで理不尽な能力にはならないだろうが……何なのだろう、弱点タイプ半減の上、全ダメージ常時半減って。
ただ両方やろうとするとできなくはないがレギュレーションに引っかかるだろうことは簡単に予想できる。
となるとどっちか片方、或いは個別に仕込むか。
どの道育成プランの練り直しだ。
いや、それ自体は良いのだ。育成なんて常に新しいものを求めて更新し続けるくらいでなければ。
パーティ編成が陳腐化してしまえばあっさり対策されて詰むのがプロの舞台なのだから。
「それにもう一つ、気になることがあるのよね」
ヤローとのバトル中に『思ったより受けるダメージが嵩んだ』『思ったより与えるダメージが低い気がする』そんな誤差のような狂いがあった。
恐らくあれがユウリやクコたちの言っていたものなのだろう。
ガラルのトレーナーの間では『テンション』と呼ばれている。
要するにポケモン自身のやる気、奮起、興奮状態とでも言うのか。
以前にも言ったがガラルのメジャージムは『スタジアム』でバトルを行う。
この『スタジアム』はパワースポットの上に立っており、その影響でバトルに様々な効果をもたらす。
その一つが『テンション』だ。
ポケモンの技の効果で自分の能力を上げるものがあるが、それと似たような効果があり、テンションが高まるほどに全ての能力が上昇していくらしい。
とはいえ技の効果ほど劇的な上昇ではないらしく、最初は誤差程度にしか感じないものらしい。
だが実際にバトルしていればその誤差程度の僅かな差が勝敗に直結することもあるというのは良く分かっているはずだ。
つまりこちらも『テンション』を上昇させる方法が無ければ一方的な不利を強いられることになる。
他にも観客からの『注目度』や『客席全体の盛り上がり』によってもバトル中にポケモンの強化があったり無かったりするらしいのだが、さすがに今回のような3対3のバトルでは見れるようなものではないらしい。
ユウリたちから概念としては教えられているし、実際ガーくんにはそのための育成もしている、のだが本当にあっているのかいまいち分からない。一度も発動していないのだから当然と言えば当然の話。
「どうにかして見れないかしらね」
だがジムチャレンジでそんなもの簡単に見れるはずが……。
「いや待ちなさい、ちょっと待って」
そうだ、思いだした。
確かこのガラルに『観客を味方につけるのが抜群に上手いトレーナー』がいて、しかもそのトレーナーがジムチャレンジに参加していたはずだ。
「元ガラルリーグチャンピオン」
無敵、無敗、最強。
かつて多くの称号を冠し、多くのトレーナーの尊敬を集め、ガラル中を熱狂させたカリスマチャンピオン。
「ダンデ選手」
或いは彼ならば、その可能性は十分にあった。
* * *
「はいはーい? こちらユウゼンちゃんの電話ですよぉ?」
ターフタウンは言ってはなんだが田舎町だ。
そのため夜になると一気に静けさを増し、夜闇が一帯を包んで一気に視界も悪くなる。
要注目のチャレンジャーのジムチャレンジを見届け、何だかんだとその後のチャレンジャーのバトルまで見ていたらすっかり遅くなってしまっていた。
夜の間はアーマーガアタクシーもやっていないので残念ながら自転車を漕いで戻るか、ここで一泊するかの二択。
勿論ユウゼンの選択は後者である。この暗闇の中を自転車漕いでエンジンシティまで戻りそこから列車に乗ってシュートシティまで……となると帰る頃には日付が変わっているのは目に見えている。
だったら今日はポケモンセンターで一泊して明日の朝にアーマーガアタクシーに乗って帰宅しても大して変わらないだろう。
そんなことを考えながら夜道を歩いているとスマホロトムに着信が入る。
着信相手は……。
「どうかしましたか?
元チャンピオンにして現ガラルポケモンリーグのリーグ委員長ダンデだった。
「はい? また迷子? はあ、いつものですね。ああ、はい、ネズさんと逸れた……はあ、そうですか。え? ワイルドエリア深層で暴走状態のポケモン? バウンティー認定?」
嫌な予感がひしひしとする。
「いやいや、なんで私ですか? え、相手がでんきタイプ? だったらじめんタイプのジムリーダーにでも頼めば……え、不在? 他に仕事? えぇ……いやまあそれは仕方ないのかもしれませんが。それなら委員長がやっても。え、逃げられた? しかも見失った? 探してたら余計に迷った???」
顔を覆いたくなる有様である。
「分かりました……分かりましたから、行きます、行けば良いんですよね。ひとまず委員長を回収しに行きますよぉ。バウンティーの行方はジムトレーナー使って探しておきますからぁ」
通話が切れると同時に頭を抱える。
「えぇ……まーた厄介ごと。トレーナー戦ならともかく野生のポケモン相手だと私って相性すっごい悪いんですけどねぇ」
基本的にユウゼンの能力は情報収集に比重が大きく偏っている。
なのでルールのあるトレーナー戦ならともかく、うるせえ知ったことかさっさと死ね、が基本の野生のポケモンとのバトルは相性が悪いのだ。
誰か強力な助っ人とかいないだろうか。
そんなことを考えながら歩いているとポケモンセンターの入口が見えてくる。
「はぁ……今日はもう後シャワー浴びて寝るだけの予定だったんですけどねぇ」
急過ぎる話だが、マイナージムリーダーはこういう時に良いように使われるのが仕事の一つなのだから仕方ない。
溜め息をつきながらポケモンセンターをそのまま通り過ぎようとして。
センターの自動扉が開き、一人の少女が姿を見せる。
「……あ」
その少女の姿を見やり、その顔を見て、それが昼に見た顔だと思いだし。
「い」
目を丸く開き。
―――誰か強力な助っ人とかいないだろうか。
先ほどの自分の思考が頭の中で反芻され。
「いたああああああああああ!!!!?」
飛び出した絶叫に、少女が驚いた表情でこちらを見た。
というわけでジムリーダー線が終わったら次は野生のボスバトルだ。
ところでガラル編で実際に出す予定はないけど、もし出してたらこんなことになってたよ、的ディーディーくんのデータがこちら。
【名前】ディーディー
【種族】サザンドラ/擬人種
【レベル】120
【タイプ】あく/ドラゴン
【性格】おくびょう(中二病ヘタレドラゴン)
【特性】きけんよち→てんさいはだ(基礎ポイントの効果が2倍になる(内部処理:基礎ポイント2でステータスが1あがる→合計255増やせる))
【持ち物】こだわりメガネ
【技】あくのはどう/りゅうせいぐん/ラスターカノン/だいちのちから
【裏特性】『†超☆暗黒魔王竜絶咆哮†』或いは『ヘタレのとおぼえ』
相手を倒した時、自分の『テンション値』を最大まで上昇する。
特性『きけんよち』が発動した時、『テンション値』を0にして『すばやさ』ランクを最大まで上昇させ、特性が変わる。
特性『きけんよち』が発動した時、技を繰り出した時に味方と交代する。
【技能】『†究極神魔滅殺破†』或いは『ヘタレブラスター』
自分と同じタイプの攻撃技を繰り出す時、タイプ一致補正を2倍にし、アピール度の上昇を2倍にする。
【能力】『†魔神顕現三位一体†』或いは『みつくびりゅう』
自分の技の威力を半分にするが、技を三回発動する。
【備考】ネーミングセンスがアレ。
因みに『みつくびりゅう』の効果で『りゅうせいぐん』使うとC-2が3回かかるけど、基本トレーナーがシキちゃんなので……(ドールズネタ
性格は臆病なグリームニルくん(グラブル感)みたいなやつ。
ソラちゃんも散々言ってたけど、それはそれとして『てんさいはだ』(6V専用オリ特性)の示す通り6V個体なのでマジモンの天才ではある。性格以外は優秀なやつ。性格以外は。
因みに裏特性等の名前が二つあるのは前者が本人のセンスで、後者がディーディーくんのヘタレドラゴンぶりを知ってるシキちゃんやハルトくんが『これだよねー』って半笑いしながらつけたやつ。
Q.ところでシステム的にステータスに『漢字』は使われない仕様のはずなんだが、なんでキミ当然のように漢字使ってるの?
A.中二病だから(答えになっていない答え
挿絵つけてるけど、あったほうが良い? 無いほうが良い?
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あったほうが良い
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ほどほどで良い
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無い方が良い