ポケットモンスタースカイブルー   作:水代

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タイトル回収。


ジムリーダーは見た! ガラルの空に浮かぶ謎の飛行物体の正体とは?!④

 

 

 バウンティモンスターとなったポケモン……ストリンダーは悲劇から誕生した存在だった。

 それは本を正せば数年前、当時まだ新人だったトレーナーが奇跡のような偶然でゲットした色違いのエレズンだった。

 色違い、いわゆる特異個体の一種として認識されており、通常の種とは体色が異なることから見た目からして分かりやすく、けれどその希少性の高さから滅多にお目にかかれるものではない。

 

 そんなレア個体をゲットしたトレーナーが自身の運に浮かれながらも立派に育て上げ、やがてエレズンはストリンダーへと進化する。

 

 そしてトレーナーの頭から新人という言葉が取れる頃。

 

 一角のトレーナーとして頭角を現していたトレーナーはついにこのガラルにおいてプロトレーナーとして必須のアイテム……ダイマックスバンドを手に入れる。

 手に入れたなら使ってみたくなるのが人の性というものだろう、だがダイマックスというのはどこでもできるわけではない。人の領域でそれができるのはスタジアムくらいであり、スタジアムでバトルをする時はすでに本番……どこかで使い勝手を試したい、と思うのはトレーナーとして当然のことだった。

 

 だったらどうするのか。

 

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 その発想に至ったのは、まあ仕方のないことだったのかもしれない。

 実際のところ、同じ発想でワイルドエリアで時々現れるダイマックスポケモンに同じくダイマックスで戦うトレーナーの姿というのはそれなりにいるのだ。

 だからそのトレーナーの考えは決して間違いではなかった、はずだった。

 

 たった一つ。

 

 ストリンダー本人すら無自覚だった『才能』こそが悲劇の原因となった。

 

 

 * * *

 

 

 荒れ狂う『おおあらし』によってひとまず降り注ぐ毒の雨を凌ぎなら、さてここからどうするか、と考える。

 

「ユウゼン、そっちはストリンダーが確認できる?」

「見えません、けどこの毒の雨は間違いなくストリンダーの体液ですぅ! つまり近くにいるのは間違いないはず……」

 

 未だに毒の雨は散発的に降り注いでいる。

 

 つまりこの雨の届く範囲内にキョダイマックスしたストリンダーが存在するということなのだが、影すら見えない、どころか音すら聞こえないというのはまだ距離があるということだろうか。

 

「どうする? 一旦引くというのも選択肢だと思うけど」

 

 いきなりの予想外の状況。

 なんとか立て直せたから良かったが、それでもこの状況は想定されていなかったのは事実だ。

 野生環境でのバトルというのは一つのミスが命取りになる可能性を孕む、いきなり想定外の状況に陥った以上一度引いて態勢を立て直す、というのも決して間違いではない。いや寧ろ正着と言える。

 ユウゼンも先ほど口走っていたが、『どく』タイプや『はがね』タイプなどこの環境をものともしないポケモンを従えたジムリーダーを連れてくるのも正解の一つだろう。

 

 ただ。

 

「いえ、行かないと不味いですぅ」

 

 行きたくない、と本心では思っている様子で片手で顔を覆うユウゼンがそれでも首を振る。

 

「この『深域』はエンジンシティに近すぎますぅ……この状況で野放しにするにはあまりにもリスクが高いんですよぉ」

 

 そう言われて頭の中で地図を広げてみれば、確かにこの『深域』からエンジンシティまではかなり近い。

 勿論100メートル200メートルという話ではないが、人の足でも1時間かからない程度……つまり全長20メートルを超す巨大ポケモンが真っすぐ突っ込んで来ればあっという間の距離でしかない。

 特にこの辺りは道を遮る川も無ければ迂回を強要する湖も無い。山は寧ろ向こう側だし『深域』からエンジンシティまではなだらかな草原が広がるだけで万一ストリンダーが突っ込んできた場合にその動きを止めるものが何も無いのだ。

 

「つまり、進むしかないのね、この毒の雨の中をかき分けて」

「そうなりますぅ……せめてこの雨さえなんとかなればポケモンたちで探すこともできるんですが……いや、待ってくださいねぇ」

 

 自ら語りながら何かに気づいたようにユウゼンは急ぎ腰のホルスターから一番手前のボールを一つ取り出し。

 

「おいで、ピカさま」

「ピカピーカ!」

 

 投げたボールから飛び出してきたのは一般的にも良く知られているポケモン……ピカチュウだった。

 すたっ、と軽い着地を決めたピカチュウがすぐに周囲をきょろきょろと見渡して状況を確認し、ユウゼンへと振り返る。

 

「はい、とってもピンチなんですよぉ、なのでピカさま、ストリンダーが発する『でんき』タイプのエネルギーを感知できませんか?」

「ピカァ? ピーカー!」

 

 ユウゼンのお願いにすぐ様頷き、尻尾をピンと立てるピカチュウを見てその手があったか、と気づく。

 デデンネなどが顕著なのだが『でんき』タイプのポケモン同士ならば互いに電波のようなものを飛ばし合って意思疎通ができる。逆に言えば『でんき』タイプのポケモンにはそういうものを感じ取る器官がある。

 この力があれば今もどこかで暴走しているのだろうキョダイストリンダーの位置を探せるはずだ。

 

 そうして。

 

「ピカ?」

「ピカさま?」

 

 何かを探知したのだろうピカチュウがけれどどうしたことか不思議そうに首を傾げて。

 

 

 

 ()()()()()()

 

 

 

「っ!!? ユウゼン!!!」

 

 咄嗟に隣に立つ少女の手を引っ掴み、素早く後退した。

 それだけでは全く距離が足りないので、ジャンプで浮き上がった自らの体を風を生み出してユウゼンごと吹き飛ばす。

 稼げたのは2,3メートルほどの距離。けれどその距離が両者の命を助けた。

 

 直後。

 

 

 ()()()()()()()()()()()

 

 

 * * *

 

 

 キョダイマックスとダイマックスの違いとは何だろうか?

 

 それは多くのガラルの研究者が考えてきた命題である。

 ガラル特有のポケモンの巨大化現象……ダイマックス。

 それが実は『身体の巨体化』ではなく『空間の拡張』によって起こされた錯覚的現象であることは大よそ知れ渡っている。

 つまりダイマックスというのは極論で言うならばポケモンが巨大化しているのではなく巨大化しているように見える現象であり、ポケモンの体自体には何ら変化はない……はずなのだ。

 

 だがキョダイマックスポケモンは明確に元の個体との差異をもたらしている、その違いはどこから来るのか。

 

 その謎に関して一つの結論が出たのはここ数年の話。

 

 歴史的に見れば本当にごく最近結論づけられた話題なのだ。

 

 とはいえこれ自体は仕方ない話だろう。

 なにせダイマックス自体大昔から起こっていた現象ではあるがそれが明確に知られたのはマグノリア博士がそれを発表した数十年前、ガラルの人々が意図的にそれを利用し始めたのがここ二十年も経たない内の話なのだ。

 

 ダイマックスバンドというマグノリア博士の研究が生み出した一つの成果。

 

 そしてパワースポット上に建てられたスタジアムというマクロコスモス元社長にして元リーグ委員長ローズによって作られた施設。

 

 この両者の力が無ければ未だにガラルのトレーナーはダイマックスという巨大な力を持たなかったかもしれない。

 

 話はそれたがとにかく『ダイマックス』の研究というもの自体がまだ始まって半世紀と経たない未熟な分野であることは間違いなく、けれど同時にローズ社長率いるマクロコスモスという巨大企業とマグノリア博士という優秀な研究者のお陰でその分野は急速に発展していった。

 

 その末に一つの結論が出る。

 

 ダイマックスを発動するために必要なのは『ガラル粒子』。

 このガラル粒子はダイマックス時に見られる可視化された赤い光であり、同時にそこには大きなパワーが秘められたエネルギーなのだ。

 そしてキョダイマックスポケモンとは、キョダイマックスとは、このガラル粒子に特に適応し、ガラル粒子から得られるエネルギーによって自らを適応変化させ一時的なフォルムチェンジを可能としたポケモンたちである。

 

 つまりガラル粒子のエネルギーを取り込み、糧とすることに特化した才能を持ったポケモン、と言い換えてもいいかもしれない。

 

 ポケモンという適応、進化する不思議な生物にガラル粒子という莫大なエネルギーを注ぎ込んだ時、それを許容し、その莫大なエネルギーを扱うために体へと自らを一時的に適応、変化させた状態。

 

 つまりそれこそがキョダイマックスである。

 

 

 だからそれは間違いなく『才能』である。

 

 

 本来ならば……他のポケモンならばきっとそんなことにはならなかっただろう才能。

 

 『キョダイマックス』の才能とでも言えば良いのか。

 

 先も言った通り、キョダイマックスすること自体が才能であり、だからこそキョダイマックスする才能自体にも多寡がある。

 具体的に言えばガラル粒子から注ぎ込まれるエネルギーをどの程度自らに適応させることができるか。

 その巨大なエネルギーをただ奮うだけならただのダイマックス。

 自らに取り込み、一定以上の適応を示せばキョダイマックス。

 

 そしてさらに深く、強く、適応し続けることで同じキョダイマックス状態でもその強さは異なって来る。

 

 そのストリンダーは余りにも才能が高すぎた。

 

 例えばキョダイマックス状態の持続時間に関しても出力が絞られているはずのスタジアムだろうとそのストリンダーならば通常の倍以上の時間キョダイマックス状態を維持し続けることができただろう。

 通常よりも少ないエネルギーでもキョダイマックスを維持できるのは結局のところガラル粒子の『エネルギーの変換効率』とでもいうべきものが高いからだ。

 

 そして同時に許容できるエネルギーの量も他の個体より圧倒的に高かった。

 

 だからそれを全てをひっくるめてキョダイマックスの才能、とでも呼ぶべきそれを持ったストリンダーが、ワイルドエリアの特に上振れしてしまった絶大なエネルギーを受け止めた時、果たしてどうなるか。

 

 先も言ったが、他の種族ならば決してこんなことにはならないのだろう。

 そして同じストリンダーでもそれほどの才能を持つ個体は他にはいなかったからこそ同じことが起こらなかった。

 

 種族と才と、全てが奇跡的に噛み合ってしまった結果。

 

 一匹の怪物が誕生した。

 

 

 * * *

 

 

 空から落ちた巨体が生み出した二人の小さな体躯はあっさりと吹き飛ばされる。

 けれどすぐ近くの岩場にぶつかってその勢いは殺される、代わりに体を強く打ち付けたが、両者ともに咄嗟に頭だけは守っていたのですぐに起き上がる。

 

「いったい! ですねぇ」

「っ、ユウゼン、構えなさい」

「ってぇ! ピカさま! 生きてますよねぇ!?」

 

 落下物の真下にいたはずのピカチュウへユウゼンが悲鳴染みた声を挙げるが、すぐ近くに素早く避難していたらしいピカチュウの姿を見つけ安堵の息を漏らす。

 そうしてようやく落下してきたその巨体へと目をやり……見開く。

 

「でっっ!?」

 

 思わず言葉に詰まってしまうほどの巨体がそこにあった。

 全長20メートル超どころではない、30メートル……否、40メートルを超すほどの巨体。

 そして全身がガラル粒子に染まったかのように赤紫色に染まっていた。

 そこにいたのは、怪物染みてキョダイなストリンダーだった。

 

「色違い個体!?」

「こんな化け物がエンジンシティの傍にいたなんて……」

 

 だがそれ以上に気になることが一つ。

 

 怪物は落ちてきたのだ。

 上から降りて来たわけではなく。

 背中から落下し、衝撃に呻くその姿は明らかに自らの意思で落ちたわけではない。

 

 否、そもそもストリンダーに空を飛ぶ力はない。

 

 だとするならば一体何故?

 

 そんな疑問を二人が抱いた、直後。

 

「ピカピィ!」

 

 そしてそれに真っ先に気づいたのはピカチュウだった。

 

 目の前に巨体に気を取られた二人とは別に、『でんき』タイプのエネルギーを感知できるピカチュウだけが()()()()()()()()()()()()()に気づいたのだ。

 声を挙げたピカチュウの警告にはっとなった二人が振り返り、上を向くピカチュウの視線を追って。

 

 

 

 ―――()()を見る。

 

 

 

「「は?」」

 

 

 

 呆けたような声を出しながら両者が目を見開く。

 

 ふわふわとソレは空に浮かんでいた。

 

 暗く赤黒い雲に覆われた空に浮かぶ鈍色の巨体はガラル粒子の影響からか僅かに赤く染まり。

 円形の頭頂部に突き出たアンテナからは電波が迸る。

 左右に一つずつ供えられたU字のマグネットのような手はグルグルと回転し。

 中央に燦然と輝く赤い瞳が地上を睥睨した。

 

 かつて話題になったUFO(謎の円盤型飛行物体)を彷彿とさせるそのフォルムを二人は知っている。

 

 じばポケモンジバコイル。

 

 ガラル粒子の力を得てダイマックスした巨体が二人を、そしてキョダイストリンダーを見下ろし。

 

 ジバコイルが。

 

 否。

 

 バウンティモンスター【アンノウン】が。

 

「―――ッ!!!」

 

 威を放った。

 

 

 




二週間くらい体調不良でどうも調子出なかったのと、最近ウマ娘の二次読み始めたら結構面白くて読み漁ってたら気づいたら四月に……ドウシテ……ドウシテ(明白

挿絵つけてるけど、あったほうが良い? 無いほうが良い?

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