一般的にダイマックスとはダイマックスバンドを所持したトレーナーがパワースポットの上で発動させることができる効果だと知られている。
けれど実際にはダイマックスバンドが発明される前からガラルの各地にはパワースポットは存在しており、そこでキョダイ化するポケモンたちは幾例も存在していた。
野生環境におけるダイマックス、つまりこれが『ワイルドダイマックス』と呼ばれている現象である。
通常のダイマックスとの差異点としてパワースポットから放出されるエネルギー噴流が上振れした時、ガラル粒子が大量に可視化される周囲が赤く染まるほどの莫大な量のエネルギーが放出された時にそのパワースポットの上……だいたいポケモンが巣を作っているのでそこにポケモンがいた時に起こるので、いつそれが起こるのか、というのが基本的に決まっていない。ダイマックスバンドのようにエネルギーを溜めて置いて好きなタイミングでそれを使って、ということができないのでポケモン自身すらエネルギーを持て余すことが多い。
また最大の特徴としてエネルギー噴流の上振れが終わるまでダイマックス状態が継続されるという点がある。通常のトレーナー戦におけるダイマックスは大よそ三回ほどの行動によって蓄積されたエネルギーを放出しきりダイマックスが解除されるのだが、ワイルドダイマックスは上振れしたエネルギー噴流の影響によって常にダイマックスのためのエネルギーが供給され続けるためエネルギー噴流が終わるまでは何度技を発動させようとダイマックスし続ける。
またダイマックスに対して一定以上の『適性』を持つポケモンは一定のダメージを負った時に抱く『危機感』から無意識的にパワースポットからのエネルギーを吸い上げようとし、放出量を増量させる。この時増量したエネルギーをポケモン側は吸収しきれずに結果的に吸収しきれなかったエネルギーの『残渣』とでもいうものが空間に充満する。
空間に充満したエネルギー残渣は結果的にダイマックスポケモンに対して飛んでくる相手ポケモンからの技に込められた『タイプエネルギー』を大幅に減衰させ、その威力を大きく落とす『バリア』のようなものになる。
このような特徴からワイルドダイマックスしたポケモンは非常にタフで知られるのだが、この残渣が空間にどんどんと満ちていくとやがて臨界に達し、蓄積され続けた莫大なエネルギーによって一気に巣の外まで弾き飛ばすことができる。(実機で4回『ひんし』になるゲームオーバーになることに対する説明。『ひんし』の回数=時間の経過と解釈する)。
ただしエネルギー残渣が『タイプエネルギー』を減衰させる時、減衰した『タイプエネルギー』がエネルギー残渣と結び付き、別種のエネルギーに変化し、空間に残る。これは本体となるダイマックスポケモンが『吸収できない』エネルギー種であり、これが空間に充満し続ける、つまりエネルギー残渣が消失した時、パワースポットとダイマックスポケモンとの間に『蓋』のようになってダイマックスのためのエネルギーの吸収を大きく阻害することになる。結果、ダイマックスポケモンはこの別種のエネルギーが周辺空間から抜けていくまでの間その力を大きく制限されることとなり、急激に弱体化する(実機におけるバリア破壊時の解釈)。
「覚悟は良いわね?」
「はぁ……分かりましたよぉ」
ユウゼンと二手に分かれて駆けだす。
二体の怪物が激突する戦場まで少し距離はあるが派手な技のぶつかりあい、何よりもダイマックス、キョダイマックスの巨体のお陰で位置が分からないという心配はまるでなかった。
「ソラさん!」
少し脇見しながらも移動し始めた矢先、反対側に飛び出したユウゼンの声が届く。
「攻撃の前に一旦スマホ確認しといてもらえますぅ?」
一体何のこと? と聞こうとして、けれどそのまま走り去っていくユウゼンにはこちらの返答を待つ様子も無く、どういうことかと首を傾げながらもそのまま走り出す。
そんなことをしている間にもどっかんどっかんと轟音が鳴りやむことは無く、なんとなし気を急かされている気になった。
「しかしさっきからあれだけバチバチにやりあってるのに、呆れるほどにタフね」
ここからでもジバコイルとストリンダーが派手に技を撃ち合っているのが見える。
だがタイプ相性的にどうしてもストリンダーが劣勢のようだった。
ジバコイルもそれを理解しているのか、降りしきる『どくのあめ』を気にも留めずに強気に攻めている。
「ダイサンダーにダイスチル……それにダイアタック」
走りながら二体が使っている技を確認するがジバコイルのほうは『ダイサンダー』や『ダイスチル』、ストリンダーのほうが『ダイサンダー』に『ダイアタック』とまあ大よその予想通りではある。
「ダイアタックって確かノーマルタイプの技を覚えていると使えたわよね」
ダイアシッドを使わないのは……覚えてない、というよりは効かないことを学んだと考えるべきか?
いくら暴走中とはいえその程度は理解できるのだろうか……いや、できないと考えるよりはできると考えて行動すべきだろう。
となればストリンダーの技は『でんき』技、『どく』技、『ノーマル』技の主に三種類だろうか?
野生のポケモンなら五つ目の技が飛んできてもおかしくはないので警戒は怠らないようにすべきだろうが、ひとまずこの三種類が主な攻撃手段、それと変化技一つくらいあってもおかしくはないと考えるべきだろう。
ジバコイルのほうが『でんき』技と『はがね』技……それ以外全く使う様子はないが、タイプ相性を考えればこの二つで大半の相手はどうにかなるのだからそれ以外を必要としなかった、というのはありそうだった。
「事前にストリンダーと聞いて準備は済ませておいたけれど、ジバコイルがいるとなるとまた話が変わって来るわね」
『おおあらし』によって『でんき』タイプの技はケアできるので『どく』タイプ対策に『はがね』タイプを持つガーくんや特性によって実質『はがね』タイプと同等の耐性を持ったムーくんを連れて来たのだがガーくんだとジバコイル相手に有効打が無い。逆にジバコイルからの攻撃にガーくんへの有効打も無さそうなので泥沼の争いが始まる気しかしない。
「まあユウゼンと二人で数で押すのがベターかしらね」
そのためにもまずはさっさとダイマックスストリンダーを倒さなければならない。
ジバコイルとの戦闘でこちらに気づかれていないので、初手に限れば先手を取れると考えていいだろう。
「手持ち全員で一斉に……とか出来たら良いんだけど」
残念ながら一人のトレーナーが複数のポケモンで同時に技を出させようとしてもだいたい技同士が途中でぶつかって相殺してしまうのがオチだ。
ダブルバトルなどもあるが、あれはあれでそれ専用に訓練を受けているポケモンたちであるし、シングルバトル専門の自分とはまた違う能力が必要とされる。
トリプルバトル専門のトレーナーなど最早曲芸に近い。
父さんなら……また話は別なのだろうが。
『絆』を結んだポケモン限定でテレパスに等しい相互理解を成し得るあの人は、普通に指示するだけでトレーナーの意図をポケモン側が理解して勝手に位置調整をしてくれるので六体のポケモンを一斉に操るなどという意味の分からないことができる。
「私じゃ三体が限界ね」
幸いにして相手は巨体だ。頭、胴、足元と大雑把に狙わせることで技の軌道を被らせないようにすることはできる。
「問題は距離ね」
一度収めた『おおあらし』を展開するだけの準備はすでに出来ている。
だが『おおあらし』の射程範囲というのは通常のポケモンバトルならばともかく、この広いワイルドエリアでしかもキョダイマックスした超巨体のポケモンを収めようとするとかなり近づく必要性が出てくる。
「広げることは……まあ無理ね」
正確には可能だが持続するのに必要な力が跳ね上がる。
嵐を広げるには基本的に規模を拡大するしかないのだが、拡大すればそれだけ出力が跳ね上がる。
出力が足りないのではない、寧ろ大きすぎて私が耐えられないのだ。
「動かずに数秒だけ、というならまだしもバトルしながらなんて無理だわ」
跳ね上がった出力はそれだけ私自身の負担となって跳ね返って来る、残念ながらそれに耐えながらバトルできるほどの強さは私には無い。
異能ならばともかく、私のソレは本来人が扱える代物ではないのだから。
「覚悟決めるしかないわね」
あんな巨体を相手にするのはさすがに初めてだが……まあホウエンのチャンピオンロードを通るよりはマシな話だろう。
目前に迫る巨体を見やりながら未だにジバコイルへと派手にぶつけ合う技の余波をかわしながらあと少しという距離まで近づく。
「っ、あれじゃどれくらいダメージを負ってるかなんて分からないわね」
理性が飛んでいる様子のストリンダーを見やり、嘆息する。
全体的に押され気味なので戦闘時間を考えてもダメージの積み重ねはあるのだろうが、暴走状態の影響か痛みを気にした様子も無く戦っているせいで積み重なったダメージがどの程度なのかを伺うことはできなかった。
できればこれで倒れて欲しい、そんな願望を抱きながらホルスターから三つのボールを取り出し……。
ブルン
一瞬震えたスマホロトムに体を硬直させ、すぐに隠れる。
「このタイミングで?」
そういえばユウゼンが先ほどスマホを確認してくれ、と言っていたのを思い出す。
「一体何の意味が……」
あるのか、そう告げようとしてスマホに届いたデータを見やり、目を見開く。
数秒、思考が止まるほどの驚愕の波が押し寄せ、再びぶつかりあった二体の響かせた轟音で我に返った。
「うっそでしょ、これ」
二度、三度、画面を見直し、その度に身を隠した岩場の影から二体を見やる。
そこに表示されていたのはデータだ。
たった今目の前で派手に激突する二体のポケモンの
さらに数値化された能力値に残存体力……タイプエネルギーの総量値や残量値すらも。
何度も確認し、実物を見て、そこに書かれていた内容が大よそ間違いではないことを理解し。
「嘘でしょ、これ」
出てきたのは同じ言葉。それほどまでに信じがたい内容がそこにはあった。
何せどう考えてもこれは『たった今』作られたデータだ。
こんなものが事前にあるなら確実に渡されているだろうし、そもそもユウゼンはあのジバコイルの存在を前提としてなかったし、ストリンダーですら『らしき存在』と確定されていなかったのだ。
なのにその詳細なデータが……ポケモン一体の全てをシステマチックに表記したデータがそこには羅列されていた。
「これがユウゼンの異能、ってことなのかしらね」
ユウゼンから異能者の気配はしなかったが、こんなこと他にどうやったら可能なのか分からないのでそうとしか説明できない。
「どこまで信じたものか」
ユウゼンに信用が無い、とは言わないが鵜呑みにして見落としがありました、間違いがありましたなんてことが起こればその時支払う対価はそのまま命に直結するのだから当然慎重になる。
半信半疑とはいえ半分も当たればこのデータがとてつもないアドバンテージであることは間違いなく……。
「良いわ……やってみましょうか」
左右にボールを握りしめ……投げた。
* * *
ユウゼンのデータを信じるとするなら、まず絶対にやってはならないのが『どく』状態になること。
どうやら『汚水を飲む』というストリンダーの生態を利用してか『どく』状態の相手を攻撃することでその『どく』を吸収して回復できるらしい。
あの巨体のタフさで回復能力などもたれてはたまったものではない。
この時点で出せる選択肢が『はがねのよろい』によって『どく』を受けないムーくん(エアームド)で一体。
『はがね』タイプを持つガーくん(アーマーガア)で一体。
そして場に出た瞬間に『みがわり』状態になれるリーちゃん(ガラルフリーザー)で一体の計三体に絞られる。
そして考慮すべきことがもう一つ。
ここがワイルドエリアであり、ダイマックスポケモンがいるということはパワースポットであるという点。
つまり、こちらもダイマックスできる、ということ。
「ガーくん、キョダイマックス!」
ダイマックスバンドからエネルギーを供給され巨大化したモンスターボールを投げる。
ボールから光が飛び出しそれが形を作って……巨大化していく。
「ラァァァァァァァァ!!!」
ガーくんが放つ地に響くような低い鳴き声にさすがのストリンダーとジバコイルも気づき……。
「ピィィィカァァァァァァァ!!!」
ストリンダーとジバコイルを挟んで向こう側でガーくんの巨体を合図としてユウゼンのまたダイマックスをしたらしい……キョダイなピカチュウが声を挙げた。
さすがのストリンダーとジバコイルも突然背後に現れたキョダイなポケモンたちに一瞬どうするか、選択を迷い……その間にもこちらはすでに動いていた。
「リーちゃん、足元狙って! 直後にムーくんは腹、ガーくんは最後に大きいのを頭へ!」
こちらの指示でストリンダーの左右へと回り込んでいたリーちゃんとムーくんが動き出す。
「フォォェェェ!」
“いてつくしせん”
リーちゃんの目から放たれた紫色の光がストリンダーの足へと当たる。
『エスパー』タイプのその技は『こうかはばつぐん』となってストリンダーの足元を揺らす。
「キシャシャシャー!」
“ばくげきき”*1
“ばくげき”
ストリンダーが揺らいだ瞬間に被せるようにムーくんが追撃を放つ。
『はがね』タイプのエネルギーが凝縮された爆弾がストリンダーの腹部で爆発し、轟音と共にその巨体を揺らす。
そして―――。
「ラァァァァァァァァ!!!」
“スピントルネード”*2
“ キ ョ ダ イ ハ リ ケ ー ン ”
羽ばたくガーくんの巨大な翼が巻き起こす風が唸りを上げてストリンダーを襲う。
螺旋を描くように渦巻く気流が槍となってストリンダーを突き刺し、ついにはその巨体を吹き飛ばした。
のけぞるようにして仰向けに倒れたストリンダーの巨体が大地を破壊しながら地響きを立てる。
弱点をついたリーちゃんの攻撃、火力だけなら手持ちの中でトップクラスのムーくんの攻撃、そしてキョダイマックスしたガーくんの攻撃を立て続けに受けたのだ、先ほど見たユウゼンのデータを信じるならば十分に致命の一撃となったはず、だが……。
“ワイルドキョダイマックス”*3
ストリンダーが起き上がる。その巨体故にどうしても動作がゆったりとしたものだったが、だからこそ余計に蓄積されたダメージの程が判りにくい。
だがまあ……こちらの予想の半分……いやさらにその半分といったところか。
「これが野生のダイマックスポケモンの厄介さなのね」
野生環境におけるダイマックスポケモンはトレーナーの手によってダイマックスされたポケモンとはまた異なる性能を有するというのは知識としては知っていたが、確かにこれは厄介だ。
簡単に言えば野生のダイマックスポケモンというのはある程度ダメージを受けた時に『バリア』のようなものを身に纏うのだ。
万全の時には存在しないそれは痛手を受けた時にダイマックスポケモンの危機感によってパワースポットからのエネルギーの『吸い上げ』能力が大幅に増強された結果発現する。
ガラル粒子で真っ赤になるほどに迸ったエネルギーの残渣が歪んだ空間に漂い、ポケモンの技に込められたエネルギー値を減衰してしまう。
結果的にこの状態のダイマックスポケモンに与えられるダメージは通常の半分程度になってしまうのだ。
さらにユウゼンのデータを信じるならば目の前のキョダイストリンダーは特に『ダイマックス』に対する適性が飛び抜けている……つまりパワースポットから引き出せるエネルギーの総量が高く、エネルギー残渣……つまり纏うバリアの影響も大幅に上昇しているらしい。
結果的にあのストリンダーに与えられるダメージは直撃した状態と比べると大よそ1/4と凄まじい減衰が起こってしまうようだった。
「これでも一撃で耐久力を根こそぎ奪うくらいのつもりだったんだけど……自信失くしそうだわ」
まあそれでも―――。
「次で決めさせてもらいましょうか」
厄介なんて言葉では語り尽くせないストリンダーの能力を前に、ニヒルな笑みを浮かべた。
ちょこっとだけストリンダーのデータのお漏らし
【種族】“毒電波”ストリンダー/原種/特異個体
【レベル】95
【タイプ】でんき/どく
【特性】どくでんぱ(音技の威力を1.5倍にし、『でんき』『どく』タイプを追加し有利な相性でダメージ計算する)
【持ち物】くろいヘドロ
【技】どくづき/オーバードライブ/ばくおんぱ/どくどく
【裏特性】『クレイジーノイズ』
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『どく』状態の相手を攻撃した時、相手の『どく』状態を解除して自分をHPを最大HPの1/6回復する。
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【技能】『キョダイカンデン』
『でんき』タイプの技のタイプ一致補正を2倍に変更し、技が命中した時30%の確率で『どく』状態にする。
【能力】『ベノムレイン』
戦闘に出ている時、毎ターン開始時と終了時に確率30%で相手を『どく』状態にする。
直接攻撃をするか受けた時、相手を『どく』状態にする。
『ワイルドキョダイマックス』
『キョダイマックス』状態になり、自分のHPが最大HPの3/4以下の時に受けるダメージを半減する。
『キョダイマックス』状態の時、HPを2倍にする。
『キョダイマックス』状態の時、自分の出す技をダイ技に変更でき、『????』を出すことができる。
『????』
????
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【備考】
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巨大個体:『HP』が1.2倍になるが、『すばやさ』が3/4になる。
ギガダイマックス:『キョダイマックス』状態になった時、相手から受けるダメージが半分になる。全能力ランクを上げ、HPをさらに1.5倍する。ダイ技、キョダイ技の威力が1.2倍になる。
備考欄の『巨大個体』とかは特異個体の特異性部分。能力というより種族値傾向ですね。
『ギガダイマックス』は現状このストリンダーだけが持ってる『ダイマックスの才能』。
もしかしたらダンデさんのリザードンがノリで持ってくるかもしれない。いや、でも持たせると強すぎるか……?
因みにデータ傾向としてはこんなアホみたいな耐久力は『4倍弱点持ち』だからまあいいか、と思ってるけどもしこいつが捕獲されて誰かが出してきても絶対に『抜群ダメージを軽減する』みたいな効果は持たせない……レギュレーション違反待ったなし……まあジバコはやってるけど(
挿絵つけてるけど、あったほうが良い? 無いほうが良い?
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あったほうが良い
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ほどほどで良い
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無い方が良い