ポケットモンスタースカイブルー   作:水代

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ジムリーダーは見た! ガラルの空に浮かぶ謎の飛行物体の正体とは?!アフター

 

 

「うへえ……マジですかぁ」

 

 トドメの一撃を持って行ったとはいえ、あのタフネスの塊みたいなジバコイルを僅か2手で倒し捕獲してしまったソラに愕然とする。

 少なくともユウゼンでは6体全員使ったとしてもあのタフネスを削り切れる気がしないので余計にだ。

 

 まあそれも相性次第というべきだろう。

 

 少なくともソラのプテラが『じしん』を使えなければもっと苦戦していただろうことは予想に難くない。

 いや、それにしたってソラが『エレキフィールド』を強制的に散らしたお陰なのだから、やはりこれはソラが凄いというべきか。

 

「やっぱゲームとは違いますねぇ」

 

 全てが『システム』という名の規格の範疇に収められた実機とは違い、現実となったこの世界ではこういうイレギュラーな存在が時折現れる。

 そういうところが恐ろしくもあり……だからこそ楽しいのだが。

 

「とは言え、こういうのの相手はやっぱりクコさんに頼むべきですねぇ……」

 

 まあ本当にいざ、という時、あのジバコイルのような類をどうにかするための切り札は……無くも無いのだが。

 

「苦手なんですよねぇあれ使うの」

 

 ついでにあれはユウゼンにとっても諸刃の剣に等しい。

 

 さらに言えば、残念ながらユウゼンはそれほど『指示』が上手くない。

 いざ、という時に1秒未満の咄嗟の判断を迫られれば判断を誤る可能性が高く、そして野生のポケモン相手のバトルというのはそういう判断を迫られる場合が多い。

 というより価値観が未だに実機に縛られているというべきか。

 

 トレーナー相手のバトルならばそれでもなんとかなるのだが……。

 

 例えばソラが何故ガラルフリーザーとガラルファイヤーをジバコイルの上空に位置取らせたのか、ユウゼンには分からなかった。

 結果的にそれはジバコイルの注意を上に引き付け、下のソラの安全とそして後出ししたプテラの攻撃のための隙へと繋がったわけだが、それは結果が出て初めて気づけたことだった。

 

 実機において『位置』なんて要素は存在しない。

 

 技を選択すれば必ずポケモンはその技を出すし、技の威力は常に同じだし、直接攻撃だろうが遠隔攻撃だろうが順番を決めるのは『すばやさ』と『優先度』だけだ。

 急所を引くかどうかは乱数、或いは急所率の問題だし、そもそも先制攻撃だとかバックアタックだのというシステムも実機ポケモンには存在しない。

 

「トレーナー相手だと割と実機の感覚に近いんですけどねぇ」

 

 基本的にトレーナー相手にバトルするならゲームと同じ感覚でやれる。

 それはユウゼンの特殊過ぎる能力がもたらす『数値化』された視界がもたらしてくれる恩恵と言える。

 だが野生のポケモンというのは実機のようなシステムに縛られた動きをしてくれない。

 最善と最適解を求めたところで非効率で非常識な動きに翻弄されるのがオチでしかない。

 

 そういう意味では。

 

「慣れてます、よねぇ?」

 

 ソラの動きは野生のポケモン相手のバトルに慣れているように感じる。

 同じデータを持っているはずのユウゼンには思いつかないような手法でポケモンの虚を突き、あっという間に崩してしまう手法、そして一度握った手綱を手放さず捕獲まで一息に詰めてしまう手腕。

 

 最早ガラルのワイルドエリアのような自然環境保護地区のある環境でなければ早々身につかないはずの対野生、対自然の動きはどう考えても昨日今日の一朝一夕で得たものではなかった。

 

「地方を旅でもしてたんですかねぇ?」

 

 プロトレーナーが拠点を構えて対トレーナー戦のために集中的にポケモンを育成するのが当然のこの時世に一体どんな経験をしてきたのだろうか、ユウゼンには見当もつかなかった。

 

 そんなことを思いながらストリンダーとジバコイル、二体の入ったボールを手に佇むソラを見やる。

 周辺で暴れていたストリンダー、そして恐らくこの周辺を縄張りとしていたのだろうジバコイル、両者を捕獲したことで深域にも関わらず野生環境特有のひりつくような感覚が無い。

 にも関わらずソラは動こうとはしないことに首を傾げ、近づいていく。

 

「ソラさん?」

「え……あ、ああ、ユウゼン」

「どうしましたかぁ?」

 

 傍にまで寄って声をかければ、少しぼんやりとした様子でソラが振り返る。

 はて、何かあったか、と内心で疑問を覚えつつ様子を見ていると。

 

「何か妙な感じしない?」

「妙な感じ、ですかぁ?」

 

 言われて周囲を探ってみるが特におかしな気配はない。

 首を振って見せれば、そう、と一つ嘆息し。

 

「なんというか、首筋にチリチリと静電気が走ってるような感じかしら」

 

 首元に手を当てさすりながら自分でも言語化しきれない感覚を抱えた様子でソラがもどかしそうな表情をしながら首を傾げる。

 

「ジバコイルと戦ってた時から感じていたのよね。ジバコイルの発している磁力のせいかと思っていたけど……」

「ジバコイルを捕獲しても未だに感じる、と?」

「そうね……」

 

 周囲を見渡しながら違和感の原因を突き止めようと視線を凝らすソラに、少し考え。

 

「ではぁ、少し周囲の探索をしてみましょう」

「……良いの?」

「まあ、はい。今回の騒動で周辺の状況がどうなったとかそういうのも、まぁ見ておく必要もありましたのでぇ」

 

 本来の流れならストリンダーとジバコイルを捕獲した時点でユウゼンたちは街に戻って後はポケモンレンジャーに引き継ぐ、という流れだったがまあこちらで周辺を軽く回っておくくらいはやっても問題はないだろう。

 

「……そう、じゃあ少しだけお願い」

「りょーかいですぅ」

 

 どうにも気になって仕方ない、という様子のソラに苦笑しながら感覚頼りに歩きだすソラの後ろをユウゼンはついて歩いた。

 

 

 * * *

 

 

 河原か何かのように大小様々な石や岩が転がっていて非常に歩きにくい岩場地帯を感覚頼りに歩いていくと、少しずつだがチリチリと首筋に走る小さな静電気のような感覚が強くなっているのが分かる。

 

「もうすぐ、ね」

 

 思いがけず零れ出たそんな台詞が示すように見えてきたのは『ポケモンの巣穴』だった。

 技で掘ったのだろう穴の周囲に石ころを積み上げて壁を作った簡素な巣穴。

 

「ん-……何もいない、ですかねぇ?」

 

 ユウゼンの言葉通り、特に何かいる様子も無い。

 ワイルドエリアに時々見つかる主のいない巣穴だ。

 

「いや、いるわね」

「……えぇ?」

 

 そう確かに見た限りだと何も居なさそうなのだがソラの感覚がここだ、と最大限に叫んでいる。

 穴の中をしっかりと確認する、が確かに何も無い。

 感覚的にはこの辺りだ、と確信できる、だが具体的にはどこ、というのが分からない。

 じゃあと周辺を調べてみるが、やはり何も無い。あるのは石と岩ばかりだ。

 

「うーん」

「見つかりませんねぇ? もう諦めますかぁ?」

 

 ユウゼンと二人して探すがやはり見つからないのでユウゼンがそんなことを聞いて来る。

 確かに何でこんなにも気にしているのか、と言われると自分でも分からない。

 チリチリとした感覚が未だに首筋にある。それが不快なのか、と言われると別に不快というわけではないのだ、ただ漠然とした違和感があるだけで。

 無視してしまえば、と思わなくも無いのだが……。

 

「もう少しだけ待って……これで最後にするから」

 

 呟きながらそっと右手を突き出して。

 

「―――吹け」

 

 一つ呟けば轟、と風が吹き荒れる。

 出力はそれほど上げていないので髪を揺らす程度だが、風で地表を撫でる感覚がソラにソレを教える。

 

「……見つけた」

「え?」

「リーちゃん」

 

 ホルスターから一つ取り出したボールを投げ、フリーザーを呼ぶ。

 さらにフリーザーに巣穴の周りに積み上がったいくつもの石と岩、それらを念力(サイコキネシス)によって一つずつ浮かして横にどけていく。

 一つ、一つと除けていくたびにその下に僅かな空間があることが見えてきて。

 

「あったわ」

「……ほわぁ」

 

 そこに大きな岩と岩の隙間にできた空間から姿を覗かせる、半分土に埋まったように転がる『タマゴ』があった。

 

 

 * * *

 

 

「これ、よく潰れませんでしたね?」

「この岩と岩で上手く隙間を作ったんでしょうね……うん、間違いない、これだわ」

「このタマゴの親は……ああ、ストリンダーとジバコイルの戦いで避難したんですかねぇ」

「酷い話……とも言えないのよね、野生環境だと」

 

 もしくはこのタマゴを守るために果敢に立ち向かって散っていったか。

 どちらにしてもこのタマゴの親は今ここには居ない、それが全てだった。

 

「こういう場合、タマゴってどうするの?」

「そうですねぇ……問題無さそうなら自然のままにしておく、んですがぁ。ほっといたら間違い無く死にますよねぇ」

「でしょうね」

 

 もし親が逃げていた場合、いつ戻って来るのかも分からない。いや、そもそも本当に戻って来るのかも分からない。

 もし親が戦っていた場合、ここにいないという時点でそういうことなのだろうと予想がつくし、その場合結局親は戻って来れない。

 

「まあ何のポケモンのタマゴかは分かりませんが一先ずポケモンレンジャーのほうで預かって、孵化したら自然に返す、がベターですかねぇ」

「……そう」

「もしくは、ソラさんが引き取りますかぁ? プロトレーナーが責任もって引き取るならぁ、まあそれもありですねぇ」

 

 そういうユウゼンに一瞬答えに詰まる。

 

「うーん、この子が何のポケモンかにも寄るのよねえ」

 

 基本的にソラのパーティは『ひこう』タイプで統一されているので、それ以外のポケモンを入れるつもりは現状だと無い。

 ただ何となくこのタマゴが気になっているのもまた事実で。

 

「どうしようかしら?」

 

 なんて呟きながら半分土に埋まったタマゴを掘り起こす。

 殻のついた土をさっと拭ってやり持ち上げた……瞬間。

 

「ん?」

 

 吸いつくような妙な感覚。

 

「ん??」

 

 何か以前にも似たようなことがあったような。

 そんなことを考えている間に。

 

 ぴき、と何かが割れるような音がした。

 

「え?」

「えぇ?」

 

 ぴき、ぴき、ぴき、と音がするほうに視線を落とせばそれは腕の中のタマゴから聞こえて来ていて。

 見ている間にもタマゴに亀裂が入って、それがどんどんと広がっていき。

 

 そうして。

 

「あぅ~」

 

 白いワンピースに身を包み、くすんだクリーム色の髪をした赤ん坊くらいのサイズの子供がぱっちりと金に染まった目を開きソラを見つめ。

 

「おかーさん!」

 

 笑みを浮かべた。

 

 

 * * *

 

 

「もしもし? あ、委員長、ようやく繋がりましたよぉ」

『はは、すまない! あちらこちらと忙しくてな! それで、例の件かな?』

「はい、まあ色々ありましたがストリンダーの捕獲完了しましたよぉ」

『そうか! それは良かった!』

「はいはい、それとですねぇ、まあその色々に関連しますがぁ……【アンノウン】ってバウンティーいたじゃないですかぁ」

『ああ、あの各地で発電所に襲来したという……』

「はい、例のストリンダーと激しくバトルしてたのでぇ、両方捕まえましたよぉ」

『本当か?! なるほど、それは助かる話だ。マクロコスモスも例の一件があったとは言えガラルの生活を支えている重要な企業だからな、これで彼らにも良い報告ができる。ああ、それとストリンダーのほうもバウンティー認定されたから併せて賞金が出る、受け取ってくれ』

「あ、いや実はぁ、私じゃ戦力的に不足だと思いましてぇ。協力をお願いしたトレーナーがいるので賞金のほうがそちらでお願いしますねぇ」

『了解した。しかしでんきジムのジムリーダーたるユウゼンくんが頼るほどのトレーナーか、俺の知ってる相手かな?』

「知ってるんじゃないですかねぇ。ほら、チャンピオンがホウエンから呼んだっていうあの例のぉ」

『ああ! ソラくんか! 会ったことは無いが、ユウリから話は聞いてるぜ、そうか、彼女にはこちらからも礼をしておかないとな!』

「それなんですがぁ……」

『ん? どうかしたのか?』

「リーグ委員長のジムチャレンジ初戦はいつになりそうですかぁ?」

『俺の? そうだな、一週間以内には行こうと思っている、ネズのやつも今日突破したらしいしな!』

「二人して何やってんだか……ああ、いやいや、実はソラさんからですねぇ、ガラル特有のアレについて教えることを報酬していまして、委員長のバトルが多分一番分かりやすいと思うのでぇ、挑戦する日を教えて欲しいなぁと」

『ふむ……そうか、アレに関してか、てっきりユウリが説明しているものだと……ああ、ユウリもガラルに来てまだ日が浅かったか。確かにアレに関しては俺が一番分かりやすいかもしれない……よし、分かった、なら詳しい日程が決まったら連絡しよう! 是非ソラくんも連れてきてくれ。俺のバトルをお見せしよう!』

「じゃあ近日中にお願いしますねぇ……今ソラさん、新しくゲットした子の世話で大変みたいなので後で話は通しておきますぅ」

『お、ワイルドエリアで新しくゲットしたポケモン……子? 世話? ん?』

「それじゃあ」

『お、おお? うん? ああ、え?』

 

 




一応予定していたソラちゃんパーティ最後の一体。
何のポケモンか分からんかもなあ……。

挿絵つけてるけど、あったほうが良い? 無いほうが良い?

  • あったほうが良い
  • ほどほどで良い
  • 無い方が良い
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