・待機中……
・待機中……
・待機中……
・キチャ!
・キターー!!
『おはこんハロチャオー!』
・ハロ……じゃない!?
・ハロ……ん?
・なんか聞いたことあるそれwww
・それ他所の地方のストリーマーのやつwww
『なんちゃって。改めまして皆さま、ハローワールド! ノ×3チャンネルのお時間です!』
・ハローワールド!
・ハローワールド!
・へ、へろーうぉーど?
・すまねえ、異世界語はさっぱりなんだ
・↑純正ガラル語だが?
・↑そもそも地方共通言語翻訳機能ついてんだよなあ……このチャンネル
・何も無かったかのように進めてるが開幕のは一体なんだったんだ(
『はーいどうも皆さん、シノノメです。え、開幕の……ああ、同じストリーマーのお友だちの挨拶が面白かったので試してみたんですが、知ってる人もいるみたいですね。まあここは私のチャンネルなので具体的な名前は出しませんが』
・ナ……の人
・ピクニック好きの人
・頭にコイルつけてる人
・なんで他所の地方のストリーマーと友人に
・パルデアのストリーマーとどこで知り合ったんだマジで
・ヒント①:姉
・ヒント②:でんきタイプジムリーダー
・ヒント③:配信者
・それはもうほとんど答えでは()
『当たらずとも遠からずですね。まあそれはさておきまして、今回のチャンネルは毎年恒例の……はい、これですね(ドドン)*1、【今年一押しのチャレンジャー!!】です!』
・キチャ!
・ドドン!
・デデン!
・毎年の楽しみ
・似たような企画とか番組も多いけど主のが一番好き
・シノノメちゃん毎回毎回よく無名……でも実力派、みたいな微妙なライン見つけてくるよな
・そもそも他のチャンネル主の推しとかセミファイナルまでたどり着くことすら珍しいのに毎回全ジム突破してるチャレンジャー見つけてくるのホントスゴイ
・今年こそはシノノメちゃんの推しはチャンピオンになれるのか
・いや無理では(某チャレンジャーを見ながら
『いやーそうなんですよね、私の一押しのチャレンジャーさんって毎年毎年セミファイナルまでは進むんですが中々勝ち抜けない……厳しい世界ですよね』
・ホントそれ
・まあシノノメちゃんの場合、優勝候補からあえて外れた選手選んでるのもあるが
・なんでわざわざ? 普通に優勝候補押したらダメなん?
・↑企画の内容的に優勝候補にはもっと有名どころのメディアが密着してるから
・まあシノノメちゃんも個人勢としては視聴者かなり多いんだけど……
・他の大手企業勢もいればそもそもテレビマクロという大御所もいるので(
・弱小の悲哀感ある
『でもでも! 皆さん、今回の一押しは期待大ですよ!!! セミファイナル……どころかファイナルトーナメントも勝ち抜いてくれると思ってますので!』
・言うじゃん
・シノノメちゃんがそこまで言うチャンレジャーっていたっけ?
・え、今回のセミファイナル優勝者なんてもうすでに決まったようなものでは?
・ダ……なんとかさんいる時点で
・そもそもなんであの人出てるの???
・元チャンピオンェ……
・なんでや! ネズさんだってワンチャンあるかもしれんやろ!
・↑↑↑一応チャンピオン交代したから今のダンデさん一応はただのリーグトレーナーだからちゃんとチャレンジリーグのほうの枠なら一応出れるんだよ、一応制度上は
・一応って何回いってんだw
・でも言いたくなるのは分かるw
・え、まさか今回の一押しってダンデさん?
・いやいや、そんな分かりやすいとこシノノメちゃんが行くか?
・でも逆にそれ以外だとそのチャレンジャーダンデさんに勝てるってこと?
・いやいやまさかそんな……
『はいはーい、混乱するのは分かりますが落ち着いてくださいね。まあ実際のところ私の期待も増し増しな感じはあるのでひいき目分も加えてってことで納得しておいてください。なにせ私そのトレーナーのファンなので』
・ファン宣言www
・ファンなのでwww
・え、マジで誰?
・シノノメちゃんがファンとか言ってるの初めて聞いた気がする
・↑去年ユウリ選手のことファンになりそうって言ってたよ
・↑本人がかなり積極的に情報発信するから一押しし辛いって残念がってたけどね
・↑最初はユウリ選手のこと一押ししようとしてたらしいしな
・見る目は確か
・え、じゃあ去年のユウリ選手と同じくらい期待できる?
・マジで誰?
『はいじゃあまあ皆さん今年の一押しが気になるとのことなので早速行ってみましょう! 今回の一押しチャレンジャーは……』
* * *
―――すみませんが一回目の放送だけはゲストとして参加してください。
そう言われてふわふわと宙に浮かびあがりながら配信をするスマホロトムへと視線を向ける。
基本的にシノノメの配信……『ノ×3チャンネル』というのは
まあ密着取材の形式上こちらに不利益なものを映す場合もある。その辺を配慮すると溜め撮りして定期的に動画編集、それを投稿というスタイルになるようだ。
今回の企画に関して生放送となるのは基本的にはジムチャレンジ……つまりジムリーダーとのバトルの際のみ、というのは聞いている。
ただし今回のこちら側の趣旨として『ファン数を増やす』というものがある。
つまり最初に顔を売っておくことが重要となるのでシノノメの依頼もまた理があると納得した。
『はいじゃあまあ皆さん今年の一押しが気になるとのことなので早速行ってみましょう! 今回の一押しチャレンジャーは……』
そんな言葉と共にシノノメからの目配せ。
それを合図としてスマホロトムの前に出ていく。
『遠くホウエン地方からのチャレンジャー! ソラ選手です!』
「どうも、ホウエンから来たソラよ、よろしく」
そんなシノノメの言葉に当たり障りのない挨拶を返しておく。
まあプロトレーナーの中にはキャラクター性で売るようなタイプもいるが、残念ながら私はコミュニケーション能力が低いことは自覚しているので余計な反感さえ買わなければ良しとする。
隣でシノノメが私を一押しするアピールを述べているがそれを流し聞きながら無難に挨拶できたことに内心でほっと一息。
ビジネスライクですら話せないほどコミュ障というわけでもないがネットの向こうの不特定多数の人間に対して流暢に話せるほどコミュ強でも無いので実はあれだけの挨拶ですら多少の緊張があったのだ。
そう考えると配信者として途切れることも無く話をし、配信全体の推移も気にしながら進めているシノノメは凄いものだと感心するしかない。
『はい、では次のコーナー行きましょう! 題して【一押しの自慢のポケモン】です!』
そうこうしている内に次の出番になる。
簡単に言えば手持ちのポケモンを一匹紹介するという趣旨だ。
出したポケモンは当然衆目に曝されるわけだが、それでも私がゴーサインを出したのは単純にどうせ次のジム戦で暴れさせる予定でどうせ情報は抜かれる、というのと先に出しておけばそれだけ印象付けられるからだ。
というわけで出すのはこの子だ。
「おいで、スーちゃん」
告げて、ボールを投げた。
* * *
「はーい、おかーさん!」
・ふぁ?!
・ようし゛ょだああああ
・きゃわ
・おかーさん?
・お母さん?
・トレーナー的な意味での親だよ、多分
・美少女が画面に三人並んでる
・ええ目の保養じゃ……
・尊い……
・つか今ボールから出て来たよな
・擬人種かこの子
飛び出してきた少女を見てコメント欄が騒がしくなる。
『可愛い子ですね! それではソラさん、この可愛い子について教えてもらってもいいですか?』
「ええい、離しなさい……誰がお母さんよ、ちょっと。えっと、この子はトゲキッスのスーちゃんよ。見ての通り甘えたな子だけど実力は確かよ」
・抱き着いてる
・きゃわ
・全身全霊でお母さんに甘えてる
・めちゃかわ
・美幼女が美少女に抱き着いてる
・尊い……
・百合の花が咲いてる
・てかトゲキッス?
・それにしてはなんか色が……
・え?
・え、まさか?
『あの、ソラさん? この子、トゲキッスにしては全体的に配色が……』
「え、っとうん、そうね。まあお察しの通り、色違いってやつね」
『ええっ?!』
・マ?
・ふぁ?!
・色違いとかくっそレアじゃん
・色違いの擬人種とか初めて見たわ
・尊い……
・↑さっきから尊いしか言ってないのお前か
・どこで見つけてきたんだよそんなレアもの
『ホントに珍しいですね、ジムリーダーでも色違いなんて持ってる人少ないですよ?』
「まあ、それは確かにね。私も色違いなんてこれが初めてよ」
『でも色違いって普通とは異なる個体が多いって聞きますけど、この子もそうなんですか?』
「そうね、この子……トゲキッスって本来は『ひこう』『フェアリー』タイプなんだけど、スーちゃんは『フェアリー』タイプの代わりに『でんき』タイプを持ってるわ」
・ふぁあああwww
・つまりでんき/ひこうタイプ?
・そんなトゲキッス聞いたこともねえよ?!
・マジで特異個体じゃん
・特異個体は育成が難しいって聞くが……
・てか次のジムルリナさんだったっけ
・あーだから紹介したのか、もしかして
『コメントでもお察しみたいですが、ソラ選手の次のチャレンジはバウタウンのルリナジムリーダーです! トゲキッスちゃんのタイプが『でんき』ということは活躍が見込めそうですね!』
「ええ、次のジムチャレンジでメインに据える予定だからこの子への応援もよろしく、ほら、スーちゃんも」
「んー? あー! よろしくー!」
・あ~かわえんじゃあ~
・可愛い(確信
・可愛い(超確信
・尊い……
・とうとみがふかい
・応援します
* * *
「はい、配信終了です。お疲れ様でした、ソラさん!」
「ええ、シノノメもお疲れ様」
配信を終え、スマホロトムがシノノメの元へと戻って来ると、すぐさま画面に視線を落とし先ほどまでの配信の成果を見やる。
「視聴者数9000ってとこですかね、さすがに毎年この企画だけは跳ねますね」
「9000って多いの?」
「個人勢としては十分だと思いますよ。さすがに企業がバックについたいわゆる『箱売り』だと当たり前みたいに1万超えますけど」
「はこうり?」
「えーっとまあ多少語弊があるかもしれませんがブランドみたいなものですね。逆に個人勢は誰でもなれますがブランドが無いのでコツコツ名前を売っていくしかないんですが本当に誰でもなれちゃうので普通に売ってても周りに埋没しちゃうから余計に伸びないんですよね」
「そうなのね」
なるほど、と内心で納得する。
確かに以前にユウリと見た動画サイトには数多くの動画が並んでいたが、あれだけ並んでいては埋没してしまうのも無理は無いのだろう。
そう考えればシノノメの配信を9000人の人間が見ているというのは相当なことなのだろう。他にも多くの配信がある中でシノノメを選んで見ている人間が1万弱いるということなのだから。
「普段の配信だと5000いれば良い方なんですが、やっぱりジムチャレンジってネームバリューが強いですね、あとソラさんのお陰で例年より反応が良い感じですよ」
「私?」
「ええ、やっぱり女性……それも若い世代だと動画受けがいいですよ、ソラさん自身お綺麗ですから。あとはまあ私自身顔を出して配信する都合上男性ファンのほうが多いですしね」
「そんなもの?」
「やっぱりこういうコンテンツって未だに男性ユーザーが多い印象ですね。なので女主……失礼、えっと女性の配信者のほうが伸びやすい感じです」
動画配信一つとっても色々深いものだと考えながらも一つ嘆息。
「けどまあ今日来た人が私を応援してくれるかどうかは……私次第ね」
「そうですね、私がこうして人を集めたところでその意思まで決定できるわけではないですので。最後はソラさん自身の『魅力』を視聴者の人たちに伝える必要があります。勿論私もそのお手伝いをさせていただきますが」
生放送外でメインでやるらしい動画配信はそのための準備のようなものらしい。
「動画配信でソラさんというトレーナーの存在をアピールさせてもらいます。そうすればジムチャレンジで自然とソラさんにも注目が集まるはずです。後は……」
「私がバトルで魅せることが必要、ね」
そういうことです、とシノノメが頷く。
まあそういうのはこちらの領分の話だ。
色々と予想外や予定外は重なったが。
「任せなさい」
遠くに見えるバウスタジアムを見やりながら、不敵に笑みを浮かべた。
挿絵つけてるけど、あったほうが良い? 無いほうが良い?
-
あったほうが良い
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ほどほどで良い
-
無い方が良い