夢枕でソラちゃんにさっさと更新しろよって怒られたので新年初投稿です。
シノノメのイベント初配信を終えてそのままバウタウンへ。
最初にポケモンセンターで宿を確保したらバウスタジアムへと向かう。
ジムチャレンジの手続きを済ませればすでに結構な人数のチャレンジで予約が埋まっているらしく五日後の挑戦となった。
当然与えられた五日の時間を無為に過ごすことはできない。
ジムチャレンジの期間はチャレンジャー全員に平等に与えられている。
だがその与えられた期間をどう使うかはチャレンジャー個々で決めることだ。
当然ベテランのトレーナーならセミファイナルトーナメント、さらにその先を見据えた動きを取るだろうし、余裕を見せていれば後で泣きを見るのは自分自身なのだ。
ユウリと戦うためには……このガラルという一つの地方の頂点に立つ幼馴染の元へとたどり着くまでには、一度だって負けている暇など無いのだから。
* * *
センターの個室、机の上に広げられた資料を見やりながら思考を巡らせる。
当然考えるべきは直近の相手……バウタウンスタジアムのジムリーダールリナだ。
「まず確定なのはダイマックスエースとしてカジリガメ」
前回戦ったヤローは公式戦で2種類のダイマックスエースを使うタイプだったが、ルリナはダイマックス枠にカジリガメしか採用していない。
推薦枠ではあるがリーグ2年目、実質チャレンジ枠として扱われている自分が相手ならばまず間違い無く本気のエースが出てくる。
これで1枠は確定。
前回と同じく3番目のジムまでは3対3のバトルとなるので残り2枠。
公式戦で使用されたポケモンで候補に挙がるのが7,8体ほど。
それなりに頭がキレて、育成がそこそこできて、特異な能力を持っていたり純粋に強力だったりするポケモンを集めている……典型的なリーダータイプのトレーナーだ。
前回のヤローのような育成が得意というタイプではないので候補自体はそこまで多くはない、が。
「どれも一長一短……長所も短所もありって感じよね、だからこそどれを出してきてもおかしくはない、のだけど」
リーダータイプとしては少し珍しくフレキシブルに手持ちを組み替えるタイプだ。
戦術もメインは『あめ』を中心とした天候戦術だがそれに固執しているわけでもなく、『あめ』抜きでも普通に戦ったりもしている。
どうにもダイマックスエースのカジリガメ以外固定化された面子がいないのではないだろうか。
そう考え、同時にそれが思考の差異の問題なのだと気づく。
例えば私のパーティならばキューちゃんなどのサイクル戦におけるクッション役は必須になって来る。
だが居座りを6体並べ基本的にサイクル戦を拒否するガラルのスタイルの場合戦術はある程度個々で完結させておくものであり、その中に一握り程度の連携を入れておけば全体的な戦術としては機能するのだろう。
3対3の少数同士の戦いではその傾向は顕著だ。
最悪天候など投げ捨てて殴りに来る可能は十分にあった。
「そうするとどれもこれも候補になり得るのよね……」
この場合どうやっても考えが絞れない。
だが3対3のバトルにおいて互いの選出はかなり重要だ。というかバトル時のプレイングより選出で大半の勝敗が決まってしまうが故に適当に3体並べて、とはいかない。
「となると相手の出方よりもこちらのやり方を押し付けていくべきかしらね」
こちらで選出が決まっているのはスーちゃんだけだ。
スーちゃんのスタイルはガーくんにかなり近いので必要な能力やタイプなども考慮していくとキューちゃんはありかもしれない。
「けどキューちゃんの場合、相手を倒せるだけの火力が問題よね」
うんうん、と頭を悩ませていると扉がノックされる。
誰だろうかと一瞬考えてけれどよく考えれば一人しかいないことに気づいて入室を促せば予想通りにシノノメが室内に入って来る。
「すみません、ソラさん、投稿予定の動画のことで少し確認があったんですが」
風呂上りなのだろう頬を蒸気させながらラフな格好でやってきたシノノメが机の上の資料を見やり首を傾げる。
「あ、見たらまずかったですか?」
「ダメなら片づけてるわよ。別に良いわ、ただの公式試合の資料だし」
「えっと……ああ、ルリナさんのですね」
へーとほーとか呟きながら資料を見やるその視線はどこか真剣で、少なくとも内容をしっかりと理解していることが察せられた。
「シノノメは……トレーナー、ってわけじゃないのよね?」
「……えっ? あ、はい。そうですね、私はリーグには所属していませんね」
この場合のトレーナーとはプロとしてリーグに所属するリーグトレーナーのことだ。ただポケモンを所持するだけならともかく、現代においてトレーナーと明確に呼称されるのはプロである場合が多くなっていた。
「その割にトレーナーとしての知識が豊富なのね」
シノノメとはまだ今日一日の付き合いでしかないが、この自分より少し年上の少女がトレーナーでは無いにも関わらずトレーナーとしてのあり方を自然と身に着けていることが見ていて分かる。
リーグトレーナーはその生き方がトレーナーとしてのそれになってしまうがために一般の人間からすると奇異、或いは異様に見られることもあるのだがシノノメはその辺りの理解が非常に深い。
例えば動画一つとってもこうしてきちんと出して良い物悪い物を確認に来るのもそうだ。
恐らくトレーナーではない一般の配信者ならば『この程度のことでどうして』と思うようなことでもプロトレーナーにとっては問題となることもある。
そういう認識の差異がシノノメからは感じられない。まるでプロトレーナーを相手にしているかのように。
「あはは……まあ姉の影響、ですかね」
そんな感想を告げればシノノメが少し照れたように頬をかく。
「それにチャンネル内ではトレーナーの情報を扱うことが多いですし、毎年この企画でトレーナーさんと接する機会もありますので、他の配信者さんたちよりは慣れている部分もあると思います」
聞いた話によればシノノメチャンネルの主な内容というのはポケモンバトル関連の情報配信が主となるようだ。
トレーナー同士のバトルというものは上に行くほど高度な次元で殴り合うことになる。一場面を見た時にそこに詰め込まれている情報量の半分も一般人では見抜くことができないため例えば受け潰し戦術などを見た時、一方的に攻めている側がいつの間にか負けている、などという感想を覚えるらしい。
シノノメのチャンネルではそんなバトル中の高度な駆け引きや戦術的意味合いなどを直近のプロトレーナー同士の公式バトルの動画を見ながら解説する、というような内容が多いらしい。
非トレーナーながらそれが結構的確であり、一般人にも分かるように表現や語句に工夫があり、個人勢ながらそれなりの人気を博しているのだとか。
まあ地元ホウエンでもサイクル戦を見て『交代ばかりで何をやっているのか全く分からない』という意見はそれなりにあったらしいのでそういう解説動画というのはそれなりに需要が多いらしい。
「でもそう考えるとトレーナーでも無いのに随分とバトルに精通してるのね」
幼少よりトレーナーとしての生き方を選択した私が言うのもなんだが、基本的にプロトレーナーとしての知識というのはプロトレーナーになるわけないならば使わない、或いは使えないことが多い。
勿論育成知識など他にも使える知識が全く無いわけではないが、普通に生きていく分にはそんなものなくともどうにでもなる。
故にリーグに所属するわけでもないのにトレーナーとしての知識に精通している、というのは中々に不可思議だったりする。例え身内にトッププロたるジムリーダーがいるのだとしても、だ。
―――もしかしてシノノメって……。
そんな感想がふと浮かび上がってきたが、浮かび上がった言葉をそのまま飲み込む。
別に自分とシノノメは親しい友人でも無ければ彼女の家族というわけでも無いのだ。
ただシノノメが思っている以上にトレーナーとしての知識が深いように感じる。
だからこそ少し気になって問うてみた。
「ねえ一つ聞いてみたいんだけど、次のルリナ戦で最初に出てくるポケモンってこの中ならどれだと思う?」
ジムリーダールリナの去年一年の間に使われているポケモンたちの資料を並べてシノノメに見せる。
そんな問いにシノノメが私ですか? と驚いたように目を丸くしながらけれど資料を真剣な目で見やりながら、やがてその中から一つを指さす。
「これですかね」
選ばれたのは―――。
「ドヒドイデ? 先発で?」
『ヒトデナシ』ポケモン『ドヒドイデ』。
タイプは『どく』と『みず』。特徴としては『ぼうぎょ』と『とくぼう』が非常に高く、生半可な攻撃では『どくどく』と『じこさいせい』だけで受け潰される。
反面シンプルな
問題はルリナのドヒドイデはこれまで……少なくとも去年一年間のデータを見た限りでは一度も先発には登用されていないということ。
それは即ちドヒドイデが先発用に育成されていない、ということではないのか?
その辺のことを語った上で何故ドヒドイデなのか、その理由を問うてみれば。
「そうですね……ガラルにおける公式バトルって最初の一体が割と大事なんです。先にやられちゃうと相手が勢いに乗ってしまいますから。だから最初の一体目はそれを込みでメリットが大きい……例えば天候の始動役なんかですね、を出すか、そうでないなら基本的には簡単には倒れない耐久力にリソースを割り振ったポケモンを出す場合が多いです」
なのでルリナの先発は『ペリッパー』か『グソクムシャ』が多い。
『
もしくは高い耐久力と火力を持ち、特性で撤退して有利な相手に変えることのできるグソクムシャか。
だがシノノメはそのどちらもが違うと言う。
「でもソラさんが相手の場合、『ひこう』タイプ統一というのはもう分かっていると思うんです」
「絶対の確信があるわけではないでしょうけれど……まあ可能性としては高いと思われているでしょうね」
まだ私がこのガラルで公式戦をしたのはヤロー戦一度だけだ。
他は全て個人間でのバトルだったり野生のポケモンとのバトルだったりしてしっかりとした情報としては残っていない。
だがまあ一つの地方のジムリーダーほどの伝手があれば去年のホウエンでのバトルの様子なども入手できるだろうし、ヤロー戦と合わせて私が『ひこう』統一で戦っているのも大よそ察せられるだろう。
「となると『ひこう』相手にグソクムシャは出し辛いですよね。弱点を取られますし、何より打点*3が無いですし」
そう言われてグソクムシャのデータを図鑑で表記させる。
『ひこう』の弱点は『でんき』『いわ』『こおり』の3種。
この中でグソクムシャが覚えることができる技を調べていく。
勿論特異個体などもあるので図鑑に表記されているのは『一般的な個体が覚えることのできる範疇』でしかないが、ルリナの使用するグソクムシャが特異個体かどうかは分からないがタイプ的には通常と同じ『むし』『みず』なのは分かっているので技幅*4などは基本同じと考えて良いだろう。
これでルリナがブリーダータイプの育成を得意とするトレーナーなら予想外の一手などもあったかもしれないが、どちらかというと統率を主にしたトレーナーであるからそれも無いだろうし。
「確かに……一番強い技でも『いわなだれ』が精々ね」
ポケモンが自分と同じタイプの技をより高い威力が放つ『タイプ一致』の理論はすでに知られているが、逆に言えば自分とは異なるタイプはそれほど威力が出ないということだ。
『いわなだれ』は強力な技だがどちらかというとダブルバトルなどで使用される類であり、シングルならば『ストーンエッジ』というより強力な技の存在があるため使用率は低い。だがその『ストーンエッジ』をグソクムシャが覚えない。
さらに『こおり』技ならば『ふぶき』や『れいとうビーム』もあるが、これらの特殊攻撃技をグソクムシャは得意としていない、となると確かにシノノメの言う通り打点が無い。
いくら耐久力が高くとも打点が無いアタッカーなど起点作り*5に使われるだけだ。
「これが6:6ならばですが3:3において1体あたりの役割は非常に大きいです。となると役割を持てないグソクムシャは抜いていいと思います。その上で、ですがペリッパーは実はバウスタジアムではあまり使われていません」
「えっ?」
その言葉に改めて資料を見直してみれば、確かに公式試合においてペリッパーが使用されているのは『バウスタジアム』以外でばかりだ。『バウスタジアム』でバトルが行われている時はだいたいの場合グソクムシャが出ている。
「どうして……あ、スタジアムの効果」
その理由を考えて、すぐに気付く。ガラルにしかない『場所』についた補正を。
「そうですね。バウスタジアムのスタジアム効果は『みず』タイプの技を使用した時、天候を『あめ』にします。といってもそう長く降り続くわけではないですが、『みず』技を主体に使っていくことでほとんど途切れることなく『あめ』を振らせ続けることもできるわけです」
「確かにそうなると『あめ』の始動役としてのペリッパーの採用価値は下がるわね」
こうして話を聞いてみれば確かにドヒドイデの先発というのは十分にありそうだった。
同時にガラルの主流である『居座り』スタイルのバトルというものに自分がまだ馴染んでいないという事実に気づかされる。
「ふーん」
「え、えっと……どうしましたか?」
同時に長くガラルに住み、その文化に慣れ、かつトレーナー的思考、及び事情にも詳しいシノノメという協力者の存在の重要性も。
「いえ、仲良くやっていけそう、って思っただけよ」
「……あはは、そう言ってもらえると嬉しいです」
「取り合えず助かったわ。お陰で大よその組み立てもできた」
「はい。なら後はファンとして本番に期待させていただきますね」
ファンとして、そんな言葉に少しだけ気恥ずかしさを覚える。
「まあ……見てなさいな」
だからそんなぶっきらぼうな返ししかできない自分に少しだけ呆れた。
データはまだ出さないけどところで『打点』とか『起点』とか割と対戦用語連発してるけどこういう用語集どっかに作ろうかなあ……。
挿絵つけてるけど、あったほうが良い? 無いほうが良い?
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あったほうが良い
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ほどほどで良い
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無い方が良い