沈黙の栄光   作:ノービス

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作者さん!? GWで余裕があったんじゃ無かったんですか!?
どうして20分も遅れてるんですか!?
しかも投稿前に急遽書き直しまでしたんですか!?
どうして……。


第14話「はじめてのきんとれの後に」

【ポラリス】のメンバーになってから早速シャムのトレーニングが強化された。

 今までは自主練としてストレッチやランニングがメインだったが、チームに所属した事でしっかりとしたトレーニングメニューが組まれる事になったのだ。

 まず、プランクと呼ばれる膝と足先だけで身体を持ち上げて支える体幹トレーニングから始まった。

 一度走りを見た茜から、

 

「走る動きに無駄がよぉけありすぎて重心が取っ散らかっとる。まず真っ直ぐ身体を立てて走る為の特訓や」

 

 と言われ、30秒1セットの10セットがシャムに課せられた。

 シャムは3セットも持たなかったが、崩れ落ちるとお腹の付近に敷かれたイボイボマットの大量のイボが腹部へ突き刺さる。

 ゆっくり下ろせば然程痛くないそれでも、急に身体をその上に落とせば当然刺激は強くなる。イボが突き刺さったシャムは情けない声を上げてプランクを再開していた。

 

「懐かしいのやってんな……」

 

 スズカが横目に見ながらランニングをしていると、並走していたリョテイが話しかけてきた。

 スズカの方は、逃げながらも途中で息を入れるためのペースコントロールの練習だ。

 コースをぐるっと回りながら、どういう所で息を入れたらいいのかを身体に染み込ませている。

 

「茜の姐さんが見張ってるからマットの上から逃げられないし、途中で崩れたらそのセットは1からカウントし直しだ」

「とんでもないわね、あのトレーニング」

「あれ毎日やるとその内セット数が増えるんだ。スズカもやってみるか? 軽くトブぞ」

「わ、私は遠慮しておくわ……」

 

 やや遠い目つきになったリョテイを見て、首を振って断るスズカ。

 自分は走り方が大変綺麗なので必要ないと言われたのは幸いだった、とスズカは思った。

 

 

 ⏱ ⏱ ⏱ ⏱ ⏱

 

 

 シャムにとっては地獄だったプランク10セットが漸く終わり、次の地獄へ案内される。

 次は共用のトレーニングルームの一室で行うトレーニングである。

 最初に渡されたのは合わせて100kgの重りが付いたバーベルだった。

 

「え、これどうするの……」

「まあ見てな。手本見せてやるよ」

 

 リョテイが手本とばかりに背中を伸ばしたままお尻だけ落としてバーベルを掴むと、そのまま上に真っ直ぐ背筋を伸ばすようにバーベルを持ち上げる。

 それをまたゆっくりとお尻を落として、脛の辺りまで来たらまたゆっくりと持ち上げて見せる。

 所謂デッドリフトと呼ばれるウェイトトレーニングである。

 バーベルをガコン、と音を立てて置いたリョテイは額の汗を拭ってシャムに向かって言う。

 

「茜の姐さんから預かったメニューによると、こいつの目標は30回10セットだな」

「は? 死ぬわよそんなの!」

「ウマ娘の身体は柔じゃないから死ぬ気でやれば何とかなるらしいぞ。ま、あくまでも目標であって、絶対やり切れって訳じゃないから途中でヤバそうなら止めてやる」

「噓でしょ……!」

 

 今回は初めてだからこれ巻いてろ、とリョテイにコルセットを巻かれたシャムは威圧感を放つバーベルの前に立つ。

 ごくりと唾を飲み込む。これをいきなり30回? 無理に決まっている。

 しかしやらねばリョテイが噛み付いてきそうだったので、シャムは覚悟を決めるしか無かった。

 

「やってやろうじゃないのぉー!」

 

 それから暫くの間、トレーニングルームから断続的に悲鳴が上がったのだった。

 

 

 結局、シャムはデッドリフト2セットで音を上げ、ベンチにぐったりと横になっていた。

 ぼーっとしていると目の前にボトルが差し出される。

 

「お疲れさん。ほら、これ飲みな」

「ありがと……」

 

 リョテイからボトルを受け取り、中身のスポーツドリンクをごくごく飲む。

 身体に染み込んでいくようでとても美味しかった。

 

「よし、じゃあ次のトレーニングだな」

「え、やだっ!」

 

 一息ついた様子を見ていたリョテイは頷くとシャムを引っ張り立たせようとする。

 シャムは抵抗しようとしたが、敢え無くリョテイのパワーに負けてベンチから引き摺り出された。

 

「つっても、基礎はちゃんとやっとかねーと本番負けるぞ? 特にいきなりシニアに出ようって言うんだから、なおさらだ」

「分かってるけどぉ……一気にやると死んじゃう……」

「使う筋肉分けてるから何とかなるって。アイシングも終わったらちゃんとしてやる」

 

 そう言ったリョテイに引っ張られて座らされたのはチェストプレスのマシンだ。

 確かにある程度鍛える部分がばらけているとはいえ、つまり全部こなすと全身筋肉痛になるのが直感できた。

 

「や、やだぁ……無理ぃ……」

「負荷は軽めに50kgだ。20回10セットで勘弁しといてやるよ」

「むぅぅりぃぃぃ!」

 

 無理でもやれッ! とリョテイに吠えられ、シャムは泣きながらマシンを動かし始めた。

 また、トレーニングルームに悲鳴が上がった。

 通りすがったウマ娘たちは、「何だ、何時もの【ポラリス】の鬼トレか」とさして気にもしていなかった。

 

 

 ⏱ ⏱ ⏱ ⏱ ⏱

 

 

「ただいまぁ……」

 

 地獄のようなトレーニングを終えて、体中がプルプル震えているシャムはやっとの思いで部屋に帰ってきた。

 服を着替える暇も惜しいまま、ベッドに身を投げる。その衝撃だけで激痛が体中を走った。

 

「ぎにゃあ!」

「お帰り、シャムちゃん。頑張ったわね」

「あっ、あっ、あっ。だめっ、今それ効くっ、あっあっ」

 

 死んだ蛙の様にぴくぴくしているシャムの頭を撫でるスズカ。

 撫でるだけでも筋肉痛に響いているのか、シャムは呻き声を上げていた。

 その情けない声を聴いていたスズカは、何故かゾクッとした。

 良く分からないまま、湧き上がる衝動に任せてうつ伏せで倒れているシャムの腰に跨ると、背中を上から順番にゆっくりと解すようにマッサージしていく。

 勿論そんな事をされては堪らないのはシャムの方である。

 

「あぎゃぁぁっ! 駄目ッ! ほんとだめっ!」

「駄目なのはシャムちゃんよ。ちゃんとマッサージしておかないと、明日に残っちゃうから」

「ふっ、ぐぅぅぅ! あ、ああっ!」

「静かにしないと、他の子たちに迷惑掛けたら駄目よ」

「むぐぅぅぅぅ!」

 

 一揉み入れるだけで悲鳴を上げるシャムの顔を枕に沈めて、両手で抱えさせる。

 さっきよりは大分マシになったのを確認すると、マッサージを再開した。

 それから全身をマッサージし続け、無事終わった頃には、シャムは息も絶え絶えで悲鳴すら上げられない有様になっていた。

 

「お疲れ様、シャムちゃん。結構マシになったんじゃないかしら」

「すずかぁ……あとでおぼえてなさいよぉ……」

「あらあら、怖いわね」

 

 枕から顔を覗かせて半目で睨んでくるシャムに、くすり、と笑みを向けるスズカ。

 今この時の優勢は目に見えて明らかだった。シャムは溜息を吐いた。

 そこへ伸びるウマ影。一度離れたはずのスズカがまた戻ってきたのだ。

 

「ぴっ……! 今度は何する気……!」

「えっ? シャムちゃんが動けないなら一緒に寝ても抵抗しないかなって」

「何されるの私……!」

「何もしないわ。最近シャムちゃんを抱き枕にしてないと悪い夢を見るから……」

「ゆ、夢見を盾にされた……!」

「シャムちゃんは、私が悪い夢で苦しむのと私に抱き枕にされるの、どっちが良いのかしら?」

「その言い方は卑怯よ……!」

 

 灯りを消してからするりと潜り込んで抱き枕にしてくるスズカに、シャムは一切の抵抗が出来なかった。

 何なら抱き枕にされた事で全身の筋肉が悲鳴を上げている。

 幸せそうに眠るスズカに対して、シャムは筋肉痛に悶えているしか無かった。

 

 翌日、トレセン学園ではお肌ツヤッツヤの絶好調なスズカと、それとは対照的にシャムが目に隈をこさえて足取りをプルプルさせながら並んで歩いているのが各地で見受けられたのだった。




基礎トレは基本にして究極である。
何をするにしてもまず基礎トレである。
それからでなければ、スタートラインには立てないのだ。


アンケートへの回答ありがとうございました。
結果を鑑みて次の更新からは、基本12時、間に合わなければ18時、それ以降は臨機応変に対応する形で行こうと思います。

ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想や誤字脱字等ありましたら送ってくださると今後の糧と励みになります。
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