メジロドーベルの実装を願いながら初投稿です。
さて、早いもので9月はもうすぐ終わりを告げ、G1目白押しの10月が始まろうとしていた。
スペシャルウィークがトレセン学園に編入してから約1か月弱が経つ。
漸く学園生活に慣れてきた所で、スペシャルウィークは次のステップに進もうと考えていた。
「私、そろそろチームに入ろうかなって思うんだ」
「おー、スペちゃんやる気だねぇ」
食堂のテーブルを一緒に囲んでいるクラスの友人達にそう言ったスペシャルウィークは、大きなにんじんハンバーグを箸で丁寧に割ってからその一欠片を掴む。
それを口に頬張ると、ジューシーな肉汁とニンジン入りデミグラスソースのコクと甘みが絡み合って、つまり大変美味しい。
その様子を楽しげに見ながらセイウンスカイが感心したように言う。
寮で同室になった時に彼女の夢を聞いていたセイウンスカイは、彼女が夢を叶えるための一歩を踏み出そうとしたのだと知った。
「私もそろそろ入っておこうかなぁ」
「セイちゃんはどこが良いとか決めてるの?」
「んー……」
自分で言い出したものの、どこが良いのか、という所まではあまり考えていなかった。少し考えてみる。
まず、自分の好きにさせてもらえる所が良い。のんびりしていても怒られないのがベストだ。
しかし、そんな自分に都合の良い理想のチームがあるとは思えなかった。
実際に探してみないと分からない事ではあるのだが、実の所、探すのも若干面倒臭かった。
「のんびりできそうな所が良いかなぁ。まあそんな所はそうそう無いと思うけど。それで、スペちゃんの方はどうなのさ?」
「私はサイレンススズカさんとかマチカネフクキタルさんが居るチームに行きたいなぁって」
理想を言葉にした所で、逆にスペシャルウィークの方へ水を向けてみた。
もぐもぐとハンバーグを咀嚼していたスペシャルウィークはごくん、と飲み込んでから、んー、と首を傾ける。
あの神戸新聞杯で見た、サイレンススズカの圧倒的な速度とマチカネフクキタルの針のように鋭い末脚の競り合い。
その光景が今でもスペシャルウィークの心の中に焼き付いて取れる事は無かった。
あの二人は同じチームだろうか? それとも違うチームだろうか。
もし違っていたらどっちに行けばいいんだろう、とスペシャルウィークは悩んだ。
「スペちゃん。
「流石グラス、準備が良いデス! ……アレ? でもついこの間、改訂版が出た気が……アウッ!?」
「エル? どうかしましたか?」
「ナンデモアリマセンデス」
「エルちゃん!? 大丈夫!?」
「だ、大丈夫デース……机の脚に指をぶつけただけデス……」
そこへ救いの手が差し伸べられた。友人の一人であるグラスワンダーが1冊の本を差し出してきたのだ。
もう一人の友人のエルコンドルパサーが何か言おうとしていたが、直後に脚を押さえて呻きだした。
大丈夫か、と声を掛けると何でも無いという風に手を振ってきたので、スペシャルウィークはそれを信じる事にした。
隣のグラスワンダーがそれを見ながらにっこり笑っていた事に気が付いたのは、セイウンスカイだけであった。
面倒臭いなぁ、と思った矢先、グラスワンダーのにこやかな笑みがこちらへ向けられ、びくっ、と小さく肩が跳ねた。
(余計な事は……言わなくても分かりますね?)
無言の圧力に小さく何度も頷くセイウンスカイ。虎の尻尾は誰だって踏みたくないものだ。
返事を見届けたグラスワンダーは満足そうに頷くと、食べ終わった食器を横に除けて目の前で本を開いた。
残りの三人はその後ろに回り込む形でその本を覗き込む。
名立たるチームやウマ娘達の名前が連なる中に、やがて目当ての名前を見つけた。
【リギル】
サイレンススズカ
【ポラリス】
マチカネフクキタル
「そんなぁ……」
スペシャルウィークは絶望した。どっちに行けばいいのだ。
頭を抱えるスペシャルウィークの耳元に、グラスワンダーが唇を寄せて囁く。
まるで悪魔の囁きの様に。
「スペちゃん。今度、リギルの選抜レースが開かれるんです。良ければ出てみませんか?」
「えっ、それってサイレアグゥ!?」
「あらあら。エルったら大丈夫ですか? お腹が痛いならお手洗いに行ってらっしゃい?」
「ハ゛イ゛……」
スペシャルウィークの反対側に居たエルが何かを言おうとした所でまたしても呻き声を上げる。
グラスワンダーから放たれる無言の圧力についに屈し、その場を離れていった。
それを見て、うげぇ、となるセイウンスカイだった。ウマ娘って怖い。
「それで、どうでしょう? リギルはトップチームの1つですから、トレーニングも他よりは充実していますよ?」
「うーん……【ポラリス】の方も気になるけど、グラスちゃんがそこまで言うなら一度受けてみようかな? サイレンススズカさんにも会いたいし」
「ええ、ぜひ来てくださいね」
(グラスちゃん……ムーブが強者過ぎるよ……)
グラスちゃんにそこまで勧められるなら、とリギルの選抜レースを受ける事にしたスペシャルウィークを見て、セイウンスカイは諦めたように項垂れ、深い溜息を吐いた。
「じゃ、じゃあ、選抜レース頑張ってね、スペちゃん……私はもう少し悩んでみるよ……」
「うん! セイちゃんも見つかると良いね!」
「あははー……そうだね……」
こんな所にいつまでも居たら次は我が身である。
セイウンスカイは食べ終わった食器を手に持って、そそくさとテーブルを離れた。
後日、スペシャルウィークはリギルの選抜レースでエルコンドルパサーに2着で敗れ、その上、サイレンススズカは移籍済みだという話を聞いてガックリと肩を落とすのだった。
夢を持つ少女は、駒を1つ進める。
その駒は果たしてどんな役目を果たすのだろうか。
出会いの時まで、あと少し。
遅くなって申し訳ありません。
前後編に分けて次回は多分チーム決定編です。
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※5月28日追記
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