本作品を手に取っていただき、本当にありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
さて、土日なので連投連投連投ゥ!
話がスッ飛び気味のような気もしますが、必要課程なのでヨシ!(現場猫
「それで?」
「ほ、本当にこんなつもりじゃなかったのよ……」
夜、寮に戻ってきたシャムはスズカによって部屋に連れ込まれ、床に正座させられていた。
スズカはベッドに腰掛け、むすっ、とした表情で彼女を見下ろしている。
テーブルの上にはシャムとフクキタルの見舞いの品が置かれているが、まだ手は付けられていなかった。
そして、床に正座させられているシャムは、捕食者に睨まれた獲物の様にプルプル震えながらスズカの一挙一動に神経を張っていた。
これ以上スズカを怒らせるわけにはいかない。まだ死にたくなかった。
どうしてこうなったのか。話は少し前、寮に帰ってきたところまで遡る。
⏱ ⏱ ⏱ ⏱ ⏱
『え? 同じ部屋?』
『うん。スズカと同じ部屋よ』
『どういうこと? フクキタルと同じ部屋じゃなかったの?』
寮まで戻ってきたスズカは、玄関でシャムに聞かされた話に固まった。
さっきまで自分が思っていた話と違う。どういうことか。いや、とても嬉しくはあるのだが。
シャムを壁際に追い詰めて重ねて問うと、いとも簡単に吐いた。
ちなみにフクキタルは雲行きが怪しくなったことを悟って既に退散済みであった。
『違うわよ。本当はフクキタルと同じ部屋のつもりだったんだけど……あっ』
『……なんですって?』
うっかり口から滑り落ちてしまったシャムの言葉に、スズカは自分でも分かるぐらいに心が冷えるのが分かった。
なるほどなるほど。結局、自分が考えていたことをこの目の前にいる可愛い可愛いポニーちゃんはしようとしていた訳だ。
そう思うと、自然と口から冷え込んだ声が飛び出していた。
その声に壁際に追い詰められていたシャムはカタカタカタと震えだす。
『あ、あの、スズカ? ……スズカさん?』
『シャムちゃん。ちょっとお部屋でお話しましょ?』
『はい……』
スズカに首根っこを掴まれ、ドナドナされていくシャムを見送った寮長フジキセキは後にこう語ったという。
──栗東寮で一番怒らせてはいけないウマ娘は誰かって? そりゃあ、サイレンススズカだね。間違いないよ。
⏱ ⏱ ⏱ ⏱ ⏱
そうして今に至り、自室でシャムはスズカに正座させられているという訳だった。
目の前にいるスズカは恐ろしく冷たい表情でゆっくり口を開く。
「そうね。でも、私はシャムちゃんと一緒で良かったと思っているわ。それで?」
「……で、でも。ここは……」
「でも? ここは? 何?」
少し口を開くだけで飛んできた、ちょっとでも舐めた答え方してみろ、トぶぞ、と言わんばかりの冷え切ったスズカの声にシャムは震え上がった。
どうしてダメなのかを言うのは容易い。だが、言ったところで納得してもらえるのだろうか。
しかし、言わないともっと大変なことになりそうなので、シャムは腹を括った。
「ここのベッドは……本当なら先約があるのよ」
「先約……?」
ぴくり、とスズカの眉が動く。少しだけ話を聞いてくれる気にはなってくれたようだ。
そのまま無言で続きを促すスズカに、シャムは心の中で安堵した。
「ここは、スズカにとって大事になる人が来るところなの。だからね……」
「今の私にとっての大事な人はシャムちゃんなのだけど? だから何も問題ないわね?」
「そんな恥ずかしくなるようなことをさらっと言わないでよ!」
「……シャムちゃん?」
「ひっ」
突然の告白のような言葉にぎゃおん、と吠えたシャムは、次の瞬間に絶対零度まで冷え込んだスズカの目線に射貫かれて縮こまった。
それからしばらくの間、冷や汗を流し、目線を泳がせながら何をどう言うべきかずっと考えたシャムは、一つの結論を導き出した。
「スズカ」
「何?」
声を掛ければ未だ冷たい声のスズカに対し、シャムは意を決し、とある姿勢を取る。
両手を床に付き、正座をしたまま腰を曲げて姿勢を低くする。
額は床に擦り付けて、これで完成だ。
「元々は他の部屋に行くつもりだったなんて言って、本当に申し訳ございませんでした……!」
──所謂、土下座の姿勢である。
もうこれで許してもらうしかない。
いずれこの部屋でスズカと寝食を共に過ごすはずだったウマ娘に心の中でも土下座しながら、シャムはこれでもかと言うほどに額を床に押し付けた。
そもそも欲を出して下界にまで降りてきた時点で、どこかでこうなることは分かっていたはずなのだ。
それでもシャムがフクキタルの部屋を選び、少しでも傍観者で居ようとしていた理由。
「……私の行動で未来が余計に変わるかもしれないことが、怖かったの」
──それは、当事者になることへの迷いと恐れがあったからだ。
(私はスズカと違って異質な存在。本来この時代に存在してはいけないウマ娘なのに……)
ウマ娘の歴史に割り込んだイレギュラーたるシャムは、自身の介入によって行き過ぎた影響が出ることが恐ろしかった。
だから、レースもあまり乗り気ではなかったし、出来るだけ影響を少なくするために他のウマ娘との交流も避けるつもりだった。
寮ですら一人部屋を希望したほどだった。結局、空きのあるスズカかフクキタルの部屋を選べと言われたが。
「でも、昨日のスズカを見て、そんなこと考えてる場合じゃないって気付かされた」
だが、きっと全てが遅いのだろう。
シャムという存在が現れた時点で、未来の行きつく先は誰にも分からなくなってしまっていたのだ。
「こっちに来てまだ二日しか経ってない。けれど、そのたった二日だけで世界は変わってしまった」
どうせ流れに巻き込まれることになるのなら、いっそのこと身を任せて流れた方が良い。
そう思って、最終的には部屋割をスズカの方に回してもらったのだ。
これが話の顛末である。
そこまで話したところで、もう一度スズカに頭を下げた。
「ごめんなさい、スズカ……」
「……」
反応が怖くて顔を上げられずにいると、ふとスズカからプレッシャーが消えるのを感じた。
それからそっとシャムの頬を両手で包んで持ち上げられる。
顔を上げた先には、柔らかな笑みを浮かべるスズカがシャムを見つめていた。
「話は分かったわ。シャムちゃんが色々と考えてくれていたことも」
「スズカぁ……」
「気にしなくても良いのよ? その子がどんな子かは分からないけれど、きっとそうやって思い悩むのは、その時になってからでも遅くはないと思うの」
それに、とスズカはくす、と笑って続ける。
「いざとなったら片方を二段ベッドにしてもらいましょ? そうすれば、シャムちゃんもその子も悩まなくて済むわ」
「スズカぁ……!」
涙目でスズカに抱き着くシャム。そこに居たのは女神様ではなく、一人のか弱いウマ娘だった。
その頭をスズカは優しく撫でる。手に伝わる温かさが、確かに彼女がここに存在していることを証明していた。
「さ、お話はこれぐらいにして、お風呂に入ってもう寝ましょう?」
「……ん」
身体を離し、シャムの手を引いて立ち上がらせる。
これからは二人で未来を掴みに行こう。この子となら、きっと出来ると信じているから。
少女は誓う。必ず栄光を掴み取ると。
行く手に立ちはだかる苦難も、隣に立つ少女が居れば乗り越えられると。
少女は誓う。必ず栄光を掴み取らせると。
例え自分の存在が歪で異質な異分子だとしても、隣に立つ少女を支え続けると。
全国1億3千万人のスペスズ派の皆様、誠に申し訳ございません。
筆が進み、気が付けばお話がこのようにコロコロ転がりました…。
設定は投げっぱなしにはなりませんので、石を投げるだけでご容赦ください…。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想や誤字脱字等ありましたら送ってくださると今後の糧と励みになります。