入れてくださった方々、ありがとございます。
これからも精進してまいります。
さて、土日連投すると言いながら定時の12時に投下できずに、じゃあ18時にしようと思ったら半分までしか進まず、20時にリベンジと思ったらギリギリ間に合いませんでした。
大変お待たせ致しました……。
なお、今回のお話を執筆するにあたり、4話に若干の修正が加えられております。
主に時系列の整理です。
どのタイミングに戻ったのかを曖昧にしていつでも良いようにしていましたが、方向性が固まったのでその部分の修正です。
次回の更新から火木土日の12時で更新していきます……。
平日に書き溜めるのです……。
「……」
「……むむむ」
「……救いはありますかぁ……?」
「……え、何。この空気……」
薄暗い部屋の中、どうやって光っているのか分からない怪しい光を放つ水晶玉を囲む四人の人影。
向かい合って座っているのはスズカとフクキタル。それぞれの後ろに立つようにシャムとメイショウドトウだ。
四人のウマ娘たちがこの怪しい水晶玉を囲んでいるのは別におかしな理由ではない。
先日の件でスズカの不調が気になったフクキタルがぜひ占わせてほしいと頼み込んできたのだ。
紹介先の病院の診察はまだ少し先なのと、占ってもらえば気持ちが楽になるかもしれないと言うことで、スズカは休みの日に一度占ってもらうことにしたのだった。
シャムには折角なのでフクキタルの占いを見てもらおうと思って連れてきているのだが、初見では困惑必須の雰囲気に困惑しきりである。
さて、そうしているうちに占いの結果が見えてきたのか、フクキタルが小さく唸りながら水晶玉を凝視し始めた。
後ろからドトウも心配そうに覗き込んでいる。
「むむむ……」
「救いはぁ……救いはあるのですかぁ……?」
「……」
ドトウの問い掛けにフクキタルは暫く黙り込んだ後に──。
「……ダメです」
苦虫を噛み潰したような顔で心底嫌そうにそう呟いた。
その表情からは出来れば言いたくなかったと言いたげな様子が伝わってくる。
「ど、どういうことよ……。何がダメなの?」
「救いは無いのですかぁ……?」
占い結果に不安を感じたのか、シャムが恐る恐るフクキタルに尋ねる。
フクキタルは首を振って、水晶玉から顔を上げてスズカの方を向いた。
「何をどう占っても大凶しか出ません。……私の口からとても言えたことじゃありませんが、次のレース──神戸新聞杯は回避した方がいいかも知れないです」
「……そう」
「い、いや。でもたかが占いだし……」
「その通りです。当たるも八卦当たらぬも八卦、全てはシラオキ様のお導きのままです。スズカさんが結果を聞いても尚、レースに出るというなら止めるつもりはありません」
顎に手を当てて悩むスズカ。
それを見て、シャムが慌てて両手を振りながら慰めようと言葉を口にする。
フクキタルも頷いて、また水晶玉を見つめながらそう告げる。その顔は依然として険しいままだった。
「だけど、フクキタルの占いは当たる。そうよね?」
「そんなところで信用しないでくださいよぉー……」
じぃ、と見つめながらフクキタルの占いの腕を認めるスズカに暗い顔を手で覆うフクキタル。
だから言うのが怖かったのだ。彼女なら自分の言う通りにするかもしれなかったから。
「私だって神戸新聞杯出るんですよ!? ライバルを占いにかこつけて蹴落とそうとしてるかも、とかは考えないんですか!?」
「フクキタルはそういう事する子じゃないって、私は信じてるから」
「うぐぅ! スズカさんの純真な瞳が私に刺さるっ! 確かにそういう気持ちは微塵もありませんがっ!」
キラキラとした瞳で真っ直ぐに見つめられてしまえば、流石のフクキタルも目晦ましを受けたように仰け反って目を逸らすしかなかった。
そうしてワイワイと二人で姦しく騒いでる横でシャムとドトウが顔を寄せ合う。
「……ところで、これほんとに回避した方がいいとかあるの?」
「うぅ~ん、どうでしょう……フクキタルさんは占いに対してはとても真摯なウマ娘なのでぇ、結果自体は本当に大凶だと思いますぅ……」
「……どんな不幸が起こるって言うのよ……」
「絶対に回避した方がいいとは言わなかったのでぇ、重大な事故になるとかは無いと思いますぅ……」
例えば、レースに出ても絶対に勝てないとかでしょうかぁ、とまではドトウは口にしなかった。
余計な事は言わないに限るし、それはウマ娘の勝ちたいという欲求の否定に繋がるからだ。
フクキタルが結果を言うのを心底嫌がっていたのも、もしかするとそういう事なのかもしれない。
あの子は優しい子ですからぁ、と思いながら、ドトウはフクキタルの方を見やる。
二人はまだ水晶玉を挟んで話し込んでいる途中だった。
「それで? 何かラッキーアイテムはあるの?」
「うーん、それがさっぱり見えないんですよ……。こんなこと初めてです」
むん! むん! と水晶玉に念を送るフクキタルだったが、その時、異変が起こった。
──バキン。
突如、机の上に置かれていた水晶玉が真っ二つに割れたのだ。
まるで何かの力に耐え切れなかったかのように呆気無く、そして容易く割れたそれを見た四人は固まる。
「え、何。どういうこと……? 怖いぃ……」
「ふ、不吉すぎます……。今までこんなことなかったのに……」
「す、救いは無いのですかぁ……?」
「……」
皆が困惑して割れた水晶玉を見ている間、スズカは無言のままじっと水晶玉を見つめていた。
自分への占いで占いの触媒が砕けることの意味は。
暫く目を瞑り、上を向いて一度深呼吸をする。
それから、口を開いた。
「フクキタル……私、神戸新聞杯に出るのを止めるわ」
「……えっ」
スズカがぽつりと溢した言葉に最初に固まったのはシャムだった。
残りの二人も遅れて固まる中、スズカは小さく笑った。
「だって、フクキタルの占いが大凶で、その上こんなことが起こるんだもの。これはきっと走るなってことよ。それに今の私が出ても、きっと……」
「そんなことないっ!」
「っ!? シャムちゃん!?」
悟ったような顔でスズカがぽつぽつと言っている途中で、突然シャムが吠えた。
「スズカは走れるわ! だってそうでしょ! 貴方はサイレンススズカなんだから……!」
「シャムちゃん……」
涙目になりながらスズカを睨むシャムにスズカはそれでも表情を変えない。
「ごめんなさい、シャムちゃん。……やっぱり、あの時から走るのが怖いのよ」
「っ、スズカ……この、あんぽんたん!」
「あっ、あんぽんっ……!? ちょっと、シャムちゃん!?」
うわーん、と泣きながらテントを飛び出して行ったシャムをスズカは追いかけようと手を伸ばして、しかしそのまま下ろしてしまう。
「ごめんなさい……シャムちゃん……」
その手をぎゅっと抱き締め、耳を垂らして顔を伏せるスズカ。
それを見ながら、テントの隅で二人が身を寄せ合ってひそひそ話し合う。
「えっとぉ……私たちは何を見せられているのですかぁ……?」
「こういうのは深入りすると手を噛まれますよ。置物になるのです……」
「……フクキタルとドトウさんもごめんなさい。急にこんなことを言ってしまって……」
そうして息を殺す二人だが、狭いテントの中で気配が殺せるわけも無く、スズカに見つかって謝罪をされた。
フクキタルは一つ深い溜息を吐くと机の前に戻り、割れた水晶玉を気を付けながら鞄に仕舞い込み始めた。
「それがスズカさんの決めたことなら何も言いません。ですが、スズカさんもシャムさんとちゃんと向き合ってあげてくださいね」
彼女、貴方の話をする時はすごく楽しそうにしてましたから、と続けて、机の上を片付け終えると鞄を肩に掛ける。
ドトウも慣れた様子で後片付けを済ませ、フクキタルの隣に立つ。
「それに、まだ走らないと結論を出すには早いと思いますよ。……先程、水晶玉が割れる直前にようやく見えた貴方のラッキーアイテム、それはニンジンです」
「ニンジン……」
「そうです。もっとも、それが言葉通りかは分かりませんが。ささ、商売道具も壊れちゃいましたから今日は店仕舞いですよ」
「分かったわ。……ありがとう、フクキタル」
「良いんですよ。私とスズカさんの仲じゃないですか」
フクキタルにラッキーアイテムを教えられ、半ば追い出される形でスズカは占いテントを出た。
寮へ戻る道を歩きながら、自分の左脚を見る。
あれから何度一人で走っても、加速すればする程に思い出すあの悪夢。
それを乗り越えてまで、自分は走れるのだろうか。
──その瞳には、まだ迷いが揺れていた。
占いとは日々を生きる人々の希望を計る物である。
苦しんでいる者がそれにすら否定されてしまったのなら、その者は一体何を心の支えにすればいいのだろうか。
少女は決意した後も、まだ揺れていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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