近界プルルン奮闘記   作:ドドドドド黒龍剣

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第12話

 6キロほどの木刀を貰い、体を鍛える毎日。そんな毎日が数えて120、約4ヶ月が経過した。

 

「全く、少しは手を変えてこようとは思わないのか」

 

 毎日とは言わないが頻繁に襲撃してくるトリオン兵。

 基本的にはモールモッドが相手で自国のモールモッドアピールなのか、角が這えていたり緑色だったり縞模様だったりと少しだけ形を変えて頑張っている。

 独特のトリオン兵はトリガー使いを相手にするのを想定に作られたトリオン兵ことラービットを相手にしたいと言いたいが、自分の力量が分かっていないので下手に調子こくわけにはいかない。足元を掬われる時は掬われるもんだ。

 

「生身の肉体を鍛えはじめて、大分強くなってきたようだな」

 

 いちいち足を切り落とすことなくモールモッドとバンダーを倒したルミエは俺に感心をする。

 生身の肉体を鍛え出したことで今まで以上にトリオン体を使いこなせるようになってきた。

 

「剣しか使えない阿呆だ、俺は」

 

 強くなっていく一方で欠点も見えてきた。

 モールモッドを余裕を持って倒せると言うことでトリガーを交換する権利を得た。

 新しくトリガーを作る権利でなく今あるトリガーから別のトリガーに変える事が出来る権利で、試しに【ミラージュ】に変えてみたものの、上手く使えなかった。

 

「トリオンコントロールはセンスだからな」

 

「るせえ」

 

 本当ならば学校に行く時間を俺は戦闘に費やす事が出来るので、色々と試すことが出来た。

 剣ばかりで第3の手となるトリオンをコントロールする才能(センス)は無かった。一手一手を素早く動いて対処する事が出来ているが、それは体を動かす事が出来ているからで触覚と全く異なる感覚を扱うことは俺には出来なかった。

 

「ジョン、次が来るわよ」

 

 一方のリーナは普通に剣を使えた。

 どちらかと言えばお転婆な性格で体をおもいっきり動かすのが性に合っているのか、ある程度のレベルにまで直ぐに達した。モールモッド等のトリオン兵を簡単に倒すぐらいの強さであり、今のところどちらが強いかは不明である。

 4ヶ月と言う短さで日本語を覚える驚異的な学習能力と元々のセンスが合わさりあってメキメキと頭角を表していっている。

 

「またモールモッドか」

 

 懲りずに現れるモールモッド。

 一回一回距離を詰めてからの一突きが効率が悪く、その内練習しただけ強くなれる銃にでも手を出そうかなと考える。

 俺が向いているのは体を使うタイプのトリガー。狙撃銃は多分、使えないことも無いだろうが性格的には合わないだろう。

 

「待って!反応が複数あるわ!」

 

 モールモッドを倒しに行こうとすると制止するリーナ。レーダーを付けてみると直ぐ近くに生体反応がある。

 目の前にいるモールモッドは車ぐらいの大きさで、レーダーに写る影は直ぐ近くにいる。

 

「珍しい事もあるんだな」

 

 このレーダーの写り方から間違いは無い。

 敗戦状態に近いこの戦線で出てくるのは珍しいと驚くルミエ。

 

「……何時かは来るとは思っていたが、遂に来たか」

 

 俺の腕より短い二本の短刀を握っているジャージっぽい服装の七三分けの男性。

 何時かは戦うのだろうかと思っていたが、防衛任務での対人戦をするのははじめてだ。

 

「ったく、敗けが決まってるのに出てくるんじゃないわよ」

 

「まぁ、そういうなよ。向こうも向こうでなにかしらの成果を上げないと文句が言われるんだ」

 

 この戦いもとい防衛は殆ど達成している。

 日に日に拐われた人間が死んでいっているのを知っているが、それでもちゃんと防衛任務は完遂している。

 それでも前線に人が出てくるのは矜持と言うか上からの命令……なんとも世知辛い世の中だ。

 

「あんたに恨みは無いが、死ぬわけにはいかないんでな」

 

 緊急脱出機能は実用化された。

 とはいえ、それは主に遠征組に配られており、俺みたいな末端の末端にはまだ未実装だ。一応は考えた功績として優先的に実装はしてくれるのだが、ある一定の範囲を抜けたら基地に帰還出来ない欠陥もあるのでイアドリフの何処で緊急脱出をしても問題ないバージョンになったら実装して欲しい。

 

「ジョン、私が」

 

「お前はまず、モールモッドを倒すことを集中しろ……ジョン、相手は二刀流だから気を付けろよ」

 

 相手の武器が剣なので距離を取れる自分がと前に出るリーナ。

 ルミエは先に残っているモールモッドの処理を命じ、俺に忠告をしてくる。

 

「伊庭の麒麟児の八郎だろうがパンフィールドのキニジ・パールと二刀流は昔から強いのが相場が決まってるのは知っている」

 

「誰だよそいつ」

 

 歴史に名だたる有名人だ。

 トリオン兵ばかりを相手にしていて、対人戦はあんまり鍛えていない。それでも俺が頼れるのは今のところ牙突のみ。

 何時も通り右手の牙突での構えを取ると無言で真剣に此方を見てなにかを考えている素振りを男は見せるが、そんなのは関係無い。

 

「一歩、絶刀!」

 

 トリオン体の運動能力にかまけず生身の肉体でも出来る動きをする。

 一歩、また一歩と羽の様に軽く跳んでいき距離を一気に詰めていく。

 

「!」

 

 トリオン供給器官や脳伝達神経の大事な配線と呼べる部分があるのは首から上。そこを少しでも破壊すればトリオン体を維持することは出来なくなり、元の体に戻っていく。

 なんの仕掛けも無しの純粋な右片手一本突きで首元を狙いに行くのだが、二本の小太刀より短い剣を十字に交差して受け流す。

 

「っち!」

 

 相手は人間、今まで戦ったロボットじゃない。

 2つの短剣を滑らせて【カゲロウ】の刃を完全に受け流し、俺の首を狙いにくる。

 

「横薙ぎではやられん!」

 

 俺とてなにもせずに4ヶ月を過ごしたわけじゃない。

 横に薙ぎ払うように腕を振りかぶるということは、腕を大きく動かさなければならない。俺は剣を振るう腕の方角にシールドを出して腕の動きを妨害する。

 

「剣の命は一瞬だ」

 

 この一瞬があれば、倒せる。

 開いている左手を使い男の顔面を掴みにいこうとすると男は口を開いた。

 

「新撰組!!」

 

「っ!?」

 

 今まで黙っていた男は口を開いた。

 戦場で敵と会話なんてバカみたいな真似はするつもり無いので、ずっと無言を貫いていただけあってかその衝撃は大きい。こいつ、今なんて言いやがった。いや、そっちじゃない。

 

「もらった!」

 

 新撰組と言われた時点で俺の気が緩んでしまった。

 明確な隙が生まれてしまった俺の首を左右から男は狙いに来た。後ろに避けても今の距離からじゃ手を伸ばせば攻撃が届く。右に避けても左に避けても攻撃が届き後退する事が許されないのなら、道は1つ。

 

「まだ、死なねえよ」

 

「っぐ!!」

 

 前に進むだけだ。

 後戻りは出来ず、手足を動かしている暇が無いのならば頭を前に動かせば良い。攻撃が当たるよりも前に頭突きを相手にくらわせて大きな隙を生み出す。

 

「終わりだ」

 

 鼻をやられて一瞬の隙を生み出した。

 ここからは俺の番だと、更なる一手を生み出すべく男の顔面を掴んで押していき喉元を貫く。

 

「そんな……」

 

「新撰組の事を知っているなら1つだけ覚えておいた方がいいぞ」

 

 俺が新撰組の格好をしているのは俺が日本人だと周りにアピールするためだ。

 今までこれを見て、新撰組の格好だと気づいた奴はいない。精々侍の格好をしているぐらいの認識で、リーナもそんな感じの反応を見せた。これをわざわざ新撰組と言うならばある程度の事を知っている……だけど、1番大事な事を知っていなかったな。

 

「刀から銃火器での戦争がメインとなっていく幕末で最強と言われた剣客集団、それが新撰組だ」

 

 信長達が銃での戦争が最新だと証明して200年ちょっとのあの頃。

 回転式銃(ガトリング)やアームストロング砲だなんだと言っていたあのご時世に剣で武装した集団がとんでもなく強かったんだぞ。

 

「誠の信念は俺には無いが、強い剣客になろうとは思っている……修学旅行のお土産で買おうとは思っていたがな」

 

 修学旅行の行き先、京都の映画村だったんだよな。

 新撰組のコスプレをしている以上は牙突を使っている以上はおいそれと負けてしまえば、日本を生き残らせる為に必死になった時代の人達の顔が立たない。

 

「やれやれ、自分でアピールしておいて自分で墓穴を掘るとは情けないな」

 

「うるせえよ」

 

 新撰組と言われて一瞬だけ油断してしまった事を笑われる。自分でアピールをしているのに指摘されただけで油断をするのはただの阿呆だ。

 

「ジョン、大丈夫!?」

 

「なんとかなった」

 

 本当ならば勝てるところで余計な事をしてしまって勝つのに一苦労した。

 本来なら勝てる相手で予想外の一手をくらってしまい大きな隙を生み出してしまった。自分でアピールをしているのに、言われただけで固まるとは本当に阿呆だ。

 

「あんた、日本人か?」

 

 自分のミスを反省するよりも前に聞いておかなければならない事がある。

 俺の服装を見て新撰組の格好だと気付いたのならば日本の事を知っている。顔立ちからしてアジア系でもしかしたらと思い聞いてみる。

 

「そういうお前も、日本じ━━」

 

「ジョン、リーナ、離れろ!!」

 

「はっ!?」

 

「え、なになに!?」

 

 会話がはじまったと思ったら、急に慌てるルミエ。

 何事かと思ったらよくよく見れば男には首輪の様な物がついており、ピピピピピと赤く点滅をしている……まさか!!

 

「正気の沙汰か!?」

 

「遠征は命懸けなんだよ!」

 

 いや、マジで命懸けじゃねえか。

 生存本能と言うか嫌な予感は的中し、首輪は眩い光に包まれて……大爆発を巻き起こした。

 

「驚いた。遠征先で捕まったら余計な情報を漏らさないように自害するところもあるとは言うけど、まさかここまでやるなんて」

 

「ここまでなんてレベルじゃないでしょう!!生身じゃない!!」

 

 やられた時の保険なのか爆発を起こした。

 咄嗟の事と余りにも予想外の事で自分のシールドを貼るのが遅れてしまいトリオン体が破壊されてしまった。何だかんだでトリオン体が破壊されるのはコレが初だな。

 

「っ、これは」

 

 爆発は思ったよりも強かった……その筈なのに、腕だけがピンポイントに残っている。

 黒くグログロしく焼け焦げた左腕がポトリと地面に落ちており、気持ち悪さに気分が一気に沈んでいき口元を押さえる。

 

「この手の死体ははじめてか」

 

「ん……っぷ……」

 

 今まで死んでいる人は何人か見た。

 けれども、こういった形で死んでいるのはこの男がはじめてで、胃酸が逆流してくる感じがする。

 

 ……人が死んだ。

 

 今まで何回かあったがこういった形は無かった。

 首の骨をポックリとやられたりして死んでいて、物凄くグロテスクな死に方をしていない。何よりも自分が全く関係無い。

 今回はこの男を斬ったから、こいつを送り出した奴等が負けた奴は容赦しないと切り離したからこうなったわけで間接的に人を殺した事になる。

 

 ここは戦場で、人を殺したり殺されたりが当たり前で今まで死人を見てきたが訳が違う。

 

「うっ……っぐ」

 

「ジョン、大丈夫、じゃないわよね!?」

 

「次が来る。リーナ、ジョンを連れてさっさと後方に下がっていけ」

 

 何とも言えない不快感が俺の中を駆け巡り、限界を迎える。

 必死になって我慢をしようとしても胃の中にある胃酸が無理だと訴えて、逆流して嘔吐をしてしまう。

 

「く……そ」

 

 人が死んだとしても目的を果たすまで、この戦いは終わらない。

 リーナは豪快に俺を俵担ぎし、全速力で駐屯地へと走っていきなんとか危険のラインを越えることは出来た。

 

「ジョン、大丈夫!?How many fingers do you see?」

 

 あまりの慌てっぷりに日本語を忘れて英語に戻るリーナ。

 指を立てて俺の容態を確認してくるのだが視界がボヤけて来て、指の本数が分からない。

 

「なんだ……この程度で終わるのか?」

 

 戦争なんだから、人が死ぬことはおかしくもなんともない。

 それが頭では分かっているのに心では理解できず、頭の処理が追いついていない。精神的ショックで死ぬのかと思うぐらいゆっくりと意識は失われていく。

 

「っ!!」

 

「あ、起きたんですね」

 

 目が覚めると布団の中にいた。

 駐屯地の救護所で眠っていたと言うことは、あの後に俺は意識を失ってしまった。

 

「私が誰だか分かりますか?」

 

「……名前を聞いたこと無いから知らないが、救護所の看護婦なのは分かる」

 

 この場にはリーナがいない。

 また戦場に戻ったのかとゆっくりと腰を上げて、看護婦の指の数を数える……。

 

「右手2本で人差し指と薬指、左手中指と親指……」

 

 また随分と変な聞き方をしてくるな。

 視界が安定しないものの看護婦が出している指は見えているので本数を答える。

 

「なにか体に異常はありませんか?」

 

「……視界がボヤけて見える」

 

 手足に異常はなく吐き気の様なものもなくなった。

 代わりに視界がボヤけて見えている。日々の体調管理を受けているので急激な視力の低下は異常だ。

 

「ちょっと待ってください。視力検査をしますので」

 

 こっちの世界にもあるのか、視力検査のボードを取り出す看護婦。

 目を片手で押さえて、視力が今幾つあるのかと探ろうとするのだが、問題が発生した。

 

「あの、視界がボヤけているのですよね?」

 

「ああ」

 

 視力検査でなにが見えているか、どの方向が見えるのか答えるシンプルな内容だったが1、5まで普通に答えることが出来た。ただ単に視力が落ちたと思っていたのだが、予想以上に視力はそのままで遠くの物をハッキリと見ることが出来ている。

 目が悪くなった筈なのに視力はなんとも言えない、むしろ良好な形で看護婦は困惑をしていた。

 

「ジョン、目が覚めたのね!」

 

「リーナ、か……リーナ?」

 

「どうしたの?」

 

 リーナが救護所に大慌てで来た。

 心配してくれているんだなとリーナを見るのだが、リーナがボヤけている。……やっぱりそうだ。

 

「人を見ると視界がボヤけて見える」

 

 ベッドも視力検査のボードも布団も何もかもがハッキリと見えている。

 それなのに人だけがボヤけて見えており、なにか特別な精神の病気かとなるが人だけがピンポイントにボヤけていく病気なんて聞いたことはない。

 

「失礼ですが、トリオン量は幾つでしょうか?」

 

「トリオン?たしか、9だって言ってた」

 

「すみませんが、これを握ってください」

 

 管のチューブを出す看護婦。

 先端部分が機械と繋がっているので、もしかしたらと思い握ってみるとピーと言った音が聞こえる。

 

「貴方は今、おいくつですか?」

 

「今年で9歳になる」

 

「9……」

 

 因みにリーナは7歳だったりする。

 俺の実年齢を聞いて、もしかしたらと口元に手を置いて考える素振りを見せる。

 

「目を覚ましたみたいだな」

 

 言うべきか言わないべきか看護婦が悩んでいると、ルミエもやってくる。

 

「ルミエ、ジョンの体がおかしいみたいなの!」

 

「ジョンの?見たところ、外傷は無さそうだが……なにが起きている?」

 

「あんたも含めて人間のみボヤけて見えてる」

 

 最初に看護婦、次にリーナ。最後にあんたと来てハッキリと分かった。

 人だけ勝手にボヤけている。俺の意思に関係無く勝手にボヤけているもので、元に戻れと念じていても戻りはしない。

 

「アレイ、容態に異変はないのか?」

 

「あ、はい。特に体に異常はありません。脳波も正常です……その」

 

 看護婦に俺の容態を確認するルミエ。

 目立った外傷はなく、看護婦に確認をすると言いづらいのか口が止まる。

 

「ハッキリと言ってくれ」

 

「サイドエフェクトと思わしき物に目覚めていると思います」

 

 サイドエフェクト。

 優れたトリオン能力が人体に影響を及ぼしてちょっとした特殊な能力の事である。

 例えば人の数倍聴力が強化されたり、完全同時並列思考が出来たり、睡眠記憶が通常と異なって確実に学習したりと、その能力は凄いものから地味なものまでピンきりとある。

 あくまでも人間の身体能力の延長線上の物らしいが、未来を視たりすることの出来るサイドエフェクトはなんの能力の延長戦かは不明だ。千里眼の延長だろうか?

 

「随分とハッキリしないな」

 

「現在彼は私達の顔がボヤけて見えているだけで、なにか見えているわけではありません。視力自体も良好なもので、恐らくですがコレは発展途上のサイドエフェクトだと思われます」

 

「発展途上のサイドエフェクト?」

 

「あくまでも仮説なのですが、彼は目に関するサイドエフェクトを持っています。超技能や特殊体質と同じレベルのサイドエフェクトだと思われますが視覚と密接に繋がっているので体の成長と共に発現するかと思います」

 

「確か、お前9だったな」

 

「今年な」

 

 まだ第二次性徴期は来ていない。

 コレからぐんぐんと身長は延びるので、それにともないこのサイドエフェクトが発現してくる。

 サイドエフェクトって生まれながらに保有しているかそうでないかのものだと思っていたのだが、どうやら成長するに伴い発現するものもあるようだ。

 俺みたいな一例は今回が初で、恐らくは早々に無いもの。さっき人を間接的に殺した精神的ショックも合わさって発現した偶然の産物だと看護婦は言う。

 

「人が見れないだけで、トリオン兵は見れるんだろ……お前にはまだまだ戦ってもらなわないと困る」

 

 サイドエフェクトと思わしきものの発現を喜ぶ暇は無い。

 例え相手が雑魚だろうが、戦って戦って戦って戦って、時には見たことのないトリオン兵に足元を掬われて死にかけて、それでも戦って戦って戦い続けて1年以上の時が経過し、俺のサイドエフェクトがなんなのか分かった。

今後の展開

  • そろそろ原作にいけ
  • もう少しオリジナルをやれ。
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