近界プルルン奮闘記   作:ドドドドド黒龍剣

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第13話

 サイドエフェクトが発現してから一年以上経過した。

 一応は拐われてから何日目なのかをやってはいるものの、正確な日付を計算したことは無い。計算したところで此方の世界と暦が違うので、合わせるのがめんどくさい。

 

 第二次性徴期を迎えて生身の肉体がぐんぐんと大きくなっていく側で俺のサイドエフェクトも成長してきた。

 最初はボンヤリとしていた人の姿は段々と形をハッキリと見れてきた……変なものが見えてきた。

 ある人は二足歩行の豚、ある人は鼻に輪を着けた牛。ある人はゴリラ。ある人は狐。ある人は蛇とその人の守護霊的なのが見えるようになった。

 原作で他人のオーラ的なのが色で見えるサイドエフェクトを持っている天羽がいたが、俺のサイドエフェクトはそれに似ている。その人がどんな人なのか動物で例えて見える。

 具体的に誰がどれくらい強いか、所謂戦闘力を数値化出来ない現状俺のサイドエフェクトは案外使えると分かった。鶏やヤモリと言った余り強くない動物はそんなに強くはなく、獅子や熊などの動物はそれなりの強さを持っている。

 初見の相手がどれくらいの強さなのか分かるのは物凄い便利なサイドエフェクトだ。

 

「ジョン、お前には今日から新しい仕事をしてもらう」

 

 そんな中、新しい仕事がやってくる。

 今日も防衛かトリガー開発の意見を出すのかと思えばルミエが言いはなった一言に少しだけ驚く。

 

「俺にこれ以上、なにをさせようと言うんだ?」

 

 現在、耕した畑から採取した大豆で味噌と醤油を作っている。

 基本的には休みの日しかなにかをすることは出来ず、味噌と醤油は取りあえず半年ぐらい待たないといけない食料品で、意外とこの生活と合っている。

 毎日とは言わないがイアドリフの防衛任務以外になにかと意見を出せと無茶振りをされては原作知識を悪用した結果、この国では緊急脱出機能が備わったトリガーが当たり前となった。

 一時期、トリオン兵にやられてしまう残念な実力を持った拐われた人達はポンポン死んでいたが、緊急脱出機能のお陰で死者が出なくなった。俺は緊急脱出機能が他国に知れ渡らないか本当にヒヤヒヤしている。

 

「前に言っていたパスポートだったか?そのシステムが採用されたんだ」

 

「あ~……」

 

 自分が使える奴だとルミエに証明するために、日本とか地球にあるシステムをとことん売った。

 その中でパスポートのシステムを言っていた……かもしれない。なにせ色々と適当な事を言っていたので覚えていない。

 顔写真と名前を国に登録をしさえすればなにかがあった時に対応することが出来るとかなんとか色々と言ったのを思い出す。

 

「詳しい事は歩きながら説明をする」

 

「そうか」

 

「ルミエ、私は?」

 

「リーナは何時も通り防衛だ」

 

 出来ればリーナも一緒に居て欲しかったが、上がそう判断してしまっているので俺しかいけない。

 常に俺と一緒が当たり前になっているので些か不満そうな顔になるが、遊びにいくわけではない。

 

「パスポートを作れって話なら他を当たってくれよ」

 

「まさか。お前に機械をさわらせても無駄だよ」

 

 パスポートに必要な個人情報を登録云々をしてくれと言うのなら無理な話だ。

 その事を言えばルミエは違うと笑って1から説明をしてくれる。色々と長々しく、わからない用語が多数あったので要約すると入国の際に行われる審査員をしてほしいとのこと。

 この国に流れてくる傭兵紛いや旅をしている奴等が、この国に居ても大丈夫かどうか、危険な存在じゃないかどうかを見極める為に一役を買ってくれと言う。

 

「俺はそういった心理戦は苦手だ」

 

「別に相手の心を読んでなにを企んでいるのか見抜けと言っているんじゃない。危険かそうでないか判断してもらいたいだけだ」

 

「俺の仕事はあくまでも国を守るために戦うことだぞ?」

 

「これも戦いだ……本当に強い奴は戦わずして勝つと言うだろう。なに、今回はちゃんと報酬としてトリガーを作る権利を用意している」

 

 やっとか。

 長い間、【カゲロウ】一本で頑張ってきたが、剣一本だと限界がある。銃の一つでも持たせて欲しいのだが、ルミエは1つの事がちゃんと出来ていないのに新しい武器を使ったところで器用貧乏になるだけだとトリガーを変えることすら許してくれなかったが、やっと許可は降りた。

 

「貴方はなにをしにイアドリフへとやって来ましたか?」

 

 やっとの許可に喜びを見せるのは、まだ早い。

 国が他国との貿易に使っている施設に行くと何十名もの移籍者がおり、入国審査をはじめる。

 

「私は商人で、色々な国々を回り商売をしております」

 

「商人ですか」

 

 1人目からめんどくさそうなのを引き当てた。

 商人だと分かると顔色を変えてしまうのはいけないことなので、顔色は変えないものの少しだけ硬直をしてしまう。

 

「私は主に各国特有の農作物の苗や種を売り渡っており、その作物の育て方等の技術も売っております」

 

 ここが国の中枢の人間にアピールする場だと感じたのか、問いかける前に言ってくる商人。

 先ずは名前をと思ったのだが名前よりもなにをしているのかを知っていた方がいいのでこのまま続けようと思う。

 

「では、イアドリフへやって来たのはなにかを売るためにですか?」

 

「はい!イアドリフの土地柄を知り、私が手に入れた種や苗を農家に売り更にはこの国特有の植物等を入荷するつもりです」

 

 迷うことなくスラスラと俺の問いかけに答える商人の男性。

 なにかを売りに来たのであって、なにかを売ると決めたわけではない……。

 

「一応聞きますが、現在なんの植物の苗や種を有していますか?ついでなのでなにかアピールしていいですよ」

 

「はい!先ずはこちら、イチオシの商品です。成長する前に狩り取り米の磨ぎ汁で煮て灰汁を抜き取ればとても美味しく頂け、成長した物は細工品の材料の1つに使える竹と言う植物です!」

 

 意気揚々として語りだし、出てきたのは緑色の若竹とタケノコ。

 竹自体がこの世界では珍しい、と言うか見ないもので普通ならば目を輝かせるところだ。俺も竹が手に入るのならば欲しいなとは常々思っていたところだ……だが、しかしこの男を信頼していいかどうかは別物だ。

 

「イアドリフでは米は栽培されていません」

 

「でしたら、こちらの稲穂をお使いいただければ」

 

「ちょっと見せてください」

 

 食べ物としても道具としても竹が使えることは重々承知している。

 だが、それを細工する技術と調理するための道具は無い事を教えると向こうも売れると思ったのか今度は米をアピールする。

 

「脱穀したやつはありますか?」

 

「こちらが脱穀したものです」

 

 稲穂のまんま渡されてもどういった品種かわからない。

 脱穀して精米が完了したものを見せてもらうと細長いインディカ米でなく少し丸みを帯びたジャポニカ米だった。

 

「これの育て方、知っているのか?」

 

「ええ、先ず普通の畑でなく田んぼと言われる水に使った畑を用意します」

 

 俺が興味を持ってくれたと意気揚々と語る商人。

 米の耕す方法はこちらの世界でも大体同じ方法で、手順を間違えなければ念願の米が食える。米があればオムライスや炒飯と言った米系の料理を食べられる……。

 

『それで、この男はどうなんだ?』

 

 米についての説明を熱心に聞いているとルミエから通信が入る。

 商人との商談はルミエ達にとって割とどうだっていい。その辺りはまた別の機会で、今はこいつが危険な存在かどうかを見ている。

 

『……関羽が見える』

 

『誰だそれは?玄界の生き物か?』

 

 改めて商人の持っているオーラの様な物を見ようとするのだが、何時もと違っていた。

 何時もだったらゴリラだ蛇だなんだと動物が見えるのだが今回見えていたのは人、しかもただの人じゃない。三国志に出てくる関羽が見える。

 確か関羽は商売の神様だ、この男は商人で世界を渡り歩いている。世界を渡り歩く強さと商人としての商売の上手さが掛け合わさって関羽が見えるのだろう。男に髭は無いけれど。

 

『歴史上の偉人で、商売の神様だ』

 

『人なのに神なのか、変わっているな』

 

 別に人から神様になるなんて珍しくないだろう。こっちの世界も向こうの世界も似たようなことはあるんだから。

 

『なにか悪巧みをしようとする感じじゃないけど、売っている商品には気を付けないといけない』

 

 世界を渡り歩いて商売をしているのは本当だろう。

 売っているのは農作物、技術、知恵。下手な物を売れば自分の命に関わってくるのを分かっている。

 

『なら、通しても問題ないか』

 

『問題無いけど、購入したりするのは少しだけ待って欲しい。竹を全面的に押してきているけど、竹を購入する事は危険だ』

 

『そんなに危険なのか?』

 

『生命力が半端じゃなくて1m以上の地中深くに根っこを作る……とにかく、一定の量だけ入荷しておいた方がいい』

 

「詳しい商談は上から来ますので、こちらの方で話は通しておきますね。後でパスポートと言う手帳が交付されますので、くれぐれも無くさないように。無くした場合はイアドリフへの入国を拒否されます」

 

「はい、分かりました」

 

 1人目から商人と重い奴が来たがなんとか乗り切った。

 まだ中学生ぐらいの子供に与える仕事じゃねえぞと精神的疲労を感じながらも俺は次々と入国審査をこなしていく。

 さっきの商人が例外的なだけで、基本的には傭兵だったり根無し草で放浪している人だったりと危険な要素を含んだ人達が多かった。

 

「次の方、どうぞ」

 

 俺のサイドエフェクトで視るのが合っているかは分からないが、今のところは危険な人物はいない。

 この調子で俺のサイドエフェクトの有用性を示して地位を向上しておかなければと次の人を呼び出す。

 

「すまないが、うちは親子で息子がまだ幼い。二人まとめてやってはくれないか?」

 

 ひょっこりと次の人が顔を覗かせる。

 親子連れとは珍しい。2人だろうが3人だろうが纏めても問題無いので大丈夫ですと答えると親と一緒に子供の方が入ってきて俺は固まる。

 

「ほら、自己紹介しろ」

 

「はじめまして、くがゆうまです」

 

「……」

 

 見た目は原作よりも更に幼い。

 けれど、モジャモジャした黒い髪と童顔でハッキリと分かり、子供の方が自己紹介をした途端にそれは変わる。

 原作主人公の1人である空閑遊真とその父である空閑有吾がイアドリフへとやってきた。

 

「っと、オレも名乗らないとな。遊真の父の有吾だ」

 

 固まってる俺に気付いたか、それともまだ気付かずにいるのかマイペースで話を進める有吾。

 こっちは初対面でこんな顔だったのかと驚いているとおかしいので出来る限りのポーカーフェイスを貫き、話をする。

 

「空閑さんは何処の国の人ですか?」

 

 空閑有吾は他人の嘘を見抜くサイドエフェクトを持っている。

 詳しくはあんま覚えていないが、文字とかでの嘘は見抜けない……とはいえ、文字とかでの会話をすれば怪しまれる。一先ずは出身地を聞いてみる。

 

「オレは日本出身だ」

 

「……そうですか」

 

 玄界の人間と言わず、あえて日本と言うワードを使う有吾。

 俺が新撰組の格好をしているのは気付いており、ニヤけているのが分かる……俺をコスプレかなんかだと思っているのか。

 

「有吾さんは日本と言う場所、出身ですが何故にイアドリフに?」

 

「色々と見て回りたくてな」

 

「成る程、ですがお子さんを連れてくるのは如何かと……この年頃の子供なら学校に通っているのが普通です」

 

「学校ねぇ……」

 

 あえて俺はボロを見せる。近界に勉学を学ぶ場所はあれども学校と言うものは無い。

 それを知っていると言う事はと空閑有吾に色々と考えさせる間を与える。表情を変えずに学校を知っていることはと手に取るように分かる。

 

「ところで随分と変わった格好をしているな」

 

「ええ、新撰組と言う剣客集団の衣装を模した物なんですよ」

 

「そうかそうか……」

 

 あえて自らボロを出していくスタイル。

 空閑有吾が日本人ならば一度はその名を聞いたことはあるだろう。それ聞いて反応するかと思っていたが、相手は嘘を見抜けるプロだ。俺は本当の事しか言っていないのでサイドエフェクトは引っ掛からない。

 

「むぅ、さっきから親父ばかりに質問しておれにはなんか無いのか?」

 

「そうですね……何処か1つの土地に根付きたいとは思いませんか?」

 

 原作が始まる9年ほど前まで空閑有吾と共に近界を渡り歩いていた遊真。

 所謂転勤族よりも転勤を繰り返し続けており、何処かの地に足をつけると言った事はしていない。基本的には戦場を渡り歩いているなんともバイオレンスな生活を続けていた。

 

「う~ん、仲良くなった奴と会えなくなるのはツラいけど、この生活、馴れてるからな」

 

 それが当たり前で失うことはそこまで辛くは無いと言う遊真。

 俺の方が歳上なのに随分と肝が据わっているんだなと感心しつつ、他に遊真に聞くことはないかを考えてみるが思い付かない。

 

『その親子が戦場を渡り歩いているのは事実だ……お前の眼にはなにが見える?』

 

 これ以上は質問しなくていいのか、ルミエから通信が入る。

 幾ばくかの会話で空閑親子の人となりを理解したようでその本質を俺に尋ねるのだが、俺は答えない。

 

『なんだっけな……』

 

 最初の商人の時と同じで人が見えるには見えるのだが、関羽みたいにある程度の歴史にハマった者ならば分かる偉人じゃない人が見える。

 石膏像で頭に羽みたいなものが這えていてアスクレピオスの杖を握っていることからギリシャ神話の神だ。俺がそういう風に見えていると言う事は俺の知っているものなんだろうが名前が思い出せない。

 

『神話に出てくる神様なのは分かるんだが、名前が思い出せない』

 

『また神様か。今度はなんの神様だ?』

 

『商人とか旅人の守護神で体育技能とか色々とあった神様だ』

 

『おい、普通は一個か二個ぐらいだろう。なんだその神様は』

 

 そんな事を言われても、ギリシャなんだから仕方があるまい。

 なんだったらうちの国には八百万も神がいてそれぞれがそれぞれを司っているんだ。唯一神教徒には分かるまい。この世界に神がいるかどうかは別だけども。

 

「貴方はこの国の内情を探って他所の国に情報を売り渡しに来たスパイですか?」

 

「その時、その時だ」

 

 そこでハッキリとNOと言わないのがなんとも男らしい。

 空閑親子がイアドリフに対してハッキリとした敵意を持っていないことが判明したので入国を許可する。

 

「後でパスポートを作りますのでトリオン体でなく生身の肉体でお願いします」

 

「パスポート?」

 

「オレ達の国籍や生年月日が記された身分証明書の事だ……まさか近界に来てまで、作るとは思ってもみなかった。君の発案か?」

 

「……違います」

 

「……そうか」

 

 嘘を見抜くサイドエフェクトを空閑有吾は保有している。

 俺は今、ハッキリとその通りだと言う嘘をついた。その事について空閑有吾はなにも言ってこない。わざわざ新撰組の格好をしてパスポートなんて作っているなんて相当な訳があるのだと察してくれた。

 

「次の方、どうぞ」

 

 空閑親子が来たので、もしかするとボーダーの誰かが来るのかもしれない。

 そう思ってしまったが、それ以降は原作に登場する誰かが出てくることはない……もしかしたら既に原作が始まっているのかもしれない。そうなると元の世界に戻るのは割と絶望的である。

 

 この日に30人近くの入国者を審査。

 変わったオーラを持っているのは最初の商人と空閑有吾だけで後はまちまちと言ったところ。流れの傭兵でも強い奴と弱い奴に分かれていて、一騎当千の強さを持っているのは空閑有吾だけだった。

今後の展開

  • そろそろ原作にいけ
  • もう少しオリジナルをやれ。
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