近界プルルン奮闘記   作:ドドドドド黒龍剣

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第14話

 まず、はじめに大豆を一晩水に浸す。

 次にその大豆を柔らかくなるまで煮込み、ミキサーで擂り潰すのだがミキサーが無いのですり鉢で擂り潰す。

 擂り潰した大豆に麹を入れるのだが、米が無いので代わりに麦で出来た麹を入れて布で被って時折かき混ぜながら数日放置して白い物が出来れば麹の完成だ。

 そして水1リットルに対して200グラム程の塩を入れた塩水と一緒に容器に入れて容器ごとシェイク。

 

 最初の1週間は毎日かき混ぜる。

 

 次の1週間後から2ヶ月の間は2日に一度かき混ぜる。

 

 2ヶ月目から三日に一度かき混ぜる。

 

 3ヶ月目以降からは1週間に一度かき混ぜる。

 

 半年、10ヶ月ぐらいすれば大豆を入れている容器が発酵して黒々しくなる。

 黒々しくなった大豆を擂り潰した物を布に入れて三脚に吊るして、汁を点滴の如く垂らしていく。

 

 この吊るした際に垂れていった汁こそが醤油である。

 正確に言えば、この時点では生醤油で、この醤油を80℃程で20分程熱した物が市販されている醤油……の筈だ。

 

「こっちの方はどうだ」

 

 作り方はと言うか材料は一緒だ。

 

 一晩中水に浸した大豆を指で潰せる程に煮込んで擂り潰し人肌の温度になったところで麹と塩を混ぜる。

 

 それを団子状にした物を容器に入れる。この団子は途中で潰してもいい。

 

 更にそれを容器に蓋をして密閉空間に入れて塩が入った袋を重石にして風通しのいい冷暗所で半年ほど寝かせる。

 

 

 これが主な味噌の作り方である。

 

 

「……なにやってるんだろうな」

 

 空閑親子の入国審査を終えてから数日が経過した。

 リーベリーから入荷した貝殻の粉のお陰で酸性の土は中和されてなんとか大豆を育てることが出来たので、味噌と醤油を作った。学校で一度だけ習ったことと家庭科の教科書だけでよく此処まで出来たなと自分に感心をしつつなにをやっているんだろうと思う。自分が作っている物ややっていることが小説家になろうに出てくる主人公と似ている。

 別にその事で嫌になると言う気分は無いのだが、なんとも言えない気分はある。後、この醤油と味噌が思ったよりも出来なかった。醤油がもうちょっと取れるかと思ったが1リットルちょっとしか取れなかった。

 

「お、良いもの作ってるな」

 

 取りあえずはと照り焼きチキンサンドでも作ってみるかとキッチンを借りて調理をしていると空閑親子がやってくる。

 

「どうも」

 

 空閑親子と俺達は同じ部隊に配属された。

 余所者は余所者と一緒になるのが道理だとか適当な事をルミエは言っていたが、多分イアドリフの情報をやりたくないからだろう。

 

「いい匂いがしますな」

 

 三3三の顔をして俺を見てくる遊真。

 ジュルリとヨダレが垂れ落ちており、視線の先には俺ではなく俺の作っている料理がある。

 

「……少しだけならやるぞ」

 

 どうせ食べるのは俺だけなんだ。

 貴重な醤油を無駄にしたくはないが、此処で俺だけのだと強欲さを見せるのもなんか違う。

 包丁を火で軽く炙った後、パンに切れ目を入れてその中に割いたレタスと照り焼きチキンを入れる。

 

「全く、食い意地だけは1人前だな」

 

「一切れだけなら、ありますよ」

 

「おっと、悪いな」

 

「親父も食い意地は1人前だな」

 

「馬鹿、食い意地以外にも一人前だよ」

 

 どっちも食い意地の張った親子だよ。

 空閑親子が食べているのを横にフライパンや調味料等を片付ける……。

 

「それでなにかご用ですか?」

 

 この親子が食い意地の這っているだけの親子じゃないのは分かっている。

 わざわざ俺に会いに来たのは照り焼きチキンを作っているからな訳じゃない。食事はちゃんと上から配給されているんだから。

 

「少し聞きたいことがあってな」

 

「……誰だって言いたくない事の1つや2つ、ある」

 

 有吾さんは俺がイアドリフの人間じゃない事を見抜いている。

 イアドリフにはない醤油を使って照り焼きチキンを作っているのだから、余程の阿呆じゃなければこの世界の住人ですら無いことに気付くだろう。ハッキリとその確証を得ていないのと、どういう経緯で流れ着いたかのかが気になるのだろう。

 

「今の生活に、やっと馴れてきたところなんだ」

 

 だからと言って、ベラベラと話すつもりは無い。

 何度も危ない目に遭って、無茶振りをされて、周りの人間を犠牲にして、それで必死になって成り上がろうとしている。

 味噌と醤油作りもその成り上がりの一環だ……一度に大量生産出来ないので今のところは個人的に使うように納まっているが。

 

「……そうか」

 

 この言葉に嘘はなく、本心から言っている。

 遊真の様に自らで連れていってるのでなく、連れ去られた身で覚悟もなにも出来ていない子供がこういう姿を見せられると流石にショックを受けるのか、見せていた余裕が少し無くなる。

 

「だったら、一人言を言わせてくれ」

 

「どうぞ、ご自由に」

 

 一人言ならなにを言っても構わない。

 

「アリステラ、デクシア、メソン、この3つの国はとある国と繋がっている。3つの国の何れかと繋がればその国との繋がりを持つことが出来る」

 

「……」

 

「そこの国はまだまだ発展途上だが、独自の技術を持っていて何処の国よりも資源に満ち溢れている。そことの同盟を結べば国の繁栄に繋がる」

 

「……What I'm going to say is soliloquy」

 

「!」

 

 遠回しにボーダーの事を紹介してくれる有吾さん。

 今の段階からボーダー相手に貿易をすれば俺達は帰れるかもしれないが、はいそうですかとはいかない。

 リーナを相手にしていたお陰で多少は流暢になった英語を今此処で出す。

 

「Don't use triggers if you're thinking of us」

 

 急な英語には対応することは出来ないのか、トリガーを起動しようとする有吾さん。

 こちらの世界仕様のトリガーじゃないのか英語が対応しているっぽいが、そこでトリガーを使うのは俺にとっては逃げの一手のようなもので使われると正直な話、不愉快だ。

 

「悪い、英語は少し苦手なんだ」

 

 有吾さんにも英語でお願いをしようと思ったが、英語は不得意なようだ。

 色々と世界を渡り歩いて博識の様だが、この手の一般教養は乏しいのか。

 

「むっ、ジョンがなにを言ってるか分からないな……分かるか?」

 

 横で話を聞いている遊真も英語はちんぷんかんぷんなので隠れているレプリカに訪ねる。

 

「It ’s a soliloquy.……独り言ですよ、独り言」

 

 有吾さんに向かって言っているわけじゃない。

 あくまでも俺が勝手にベラベラと喋っているだけで、それをどう受け取るかは別だ。たまたま耳に入ってしまっただけかもしれない。

 

「……It's a lie if you say you don't want to go home……けど、帰り方が分からない」

 

 家の住所はちゃんと覚えている。通っていた学校も住所も自分の本来の名前も、なにもかも覚えている。

 日本にポンっと放り出されても家の住所を言って保護してもらえばなんとかなる……普通ならばだ。俺は迷子になっていたとか、そんな感じじゃないけど。

 

「こんなの何処でもあるとは言わないし、言いたくもない……くだらない同情は1番傷つける」

 

 もう既に越えてはならない一線は越えてしまっている。

 人は殺したし、殺された仲間もいる。緊急脱出機能や電気による文明の切っ掛けを与えてしまった。今こうして味噌や醤油を作っているのだって後戻り出来ない事だ。

 

「ジョン、It's time for training」

 

「この子は……」

 

 はじめてリーナと出会う有吾さん。

 如何にもな外国人の顔付きを見て驚き、そして納得をする。どうやって英語を覚えたのか、その答えが目の前にある。

 

「ジョンの彼女かなにかか?」

 

「……違うわよ」

 

 遊真がストレートに聞いてきて一瞬だけ喜ぶ素振りを見せるも、直ぐに否定するリーナ。

 俺みたいなのがリーナの様な美少女の彼氏なんて出来ない……状況が状況だけに、そう言った事を言ってられない。

 

「それさっさと食い終わったらキッチンを出てくださいよ」

 

「今からトレーニングをするのか?」

 

「……まぁ、そうです」

 

「だったら、オレも一緒に」

 

「……ヘタな同情が1番キツいんですから、やめてくださいよ」

 

「……すまん」

 

 自分からなにか出来ることは少なく、せめてもと戦う術を教えようとする有吾さん。何時もならば喜ぶのだが、俺達に同情をしているのが丸見えなのでそこは強く拒む。子供を重ねて見てしまっているのに気付いた有吾さんは申し訳なさそうに謝る。

 

「親父、オレじゃなくておれ達だろう……訓練するんだろ?だったら、一緒にやろうよ」

 

「……お前とはやり方が違うんだよ、やり方が」

 

 遊真はその辺りに気付いていないのか、俺達を誘ってくれる。

 気さくに誘ってくれることは嬉しいのだが、そもそもで鍛え方が違う。俺は遊真にイアドリフから支給されている木刀を渡す。

 

「重っ!なんだよ、これ」

 

 リーナが持ってきた木刀を渡すと驚く遊真。

 

「特注の木刀だ……通常よりも遥かに重い」

 

 イアドリフに特注で作らせた5キロ以上する木刀での素振り百回。数日に一回休みのペースでやっている。

 修学旅行で購入出来る木刀と違い、真剣よりも更に重い重さを持った木刀の為に腕が尋常じゃない程に痛い。素振りを日課にしてから一年以上経過しているが、全然馴れていない。剣を振ると同時に遠心力で腕が持っていかれそうな感じだ。

 

「これトリオンで出来てない木刀だろ?なんでわざわざ」

 

「生身の肉体を鍛えるためだよ」

 

「生身の肉体を?」

 

 トリオン体なら、この木刀の重みを感じないだろう。

 トリオン体を自在に扱えるようになるためには生身の肉体を鍛えておいて損は無い。後、シンプルに体を動かしておかないといざというとき大変になる。BBFで生身の運動能力が高いのに機動力が低い人とか弱い人とか普通にいるからそこまでのものでもないんだが。

 

「地球ではそれが普通なんだよ」

 

 なんでわざわざ生身の肉体を鍛えているのかイマイチ分かっていない様子の遊真。

 俺の行動を一纏めにすれば地球ではそういったやり方が主流だからやっているとしか言えない。生身の肉体とトリオン体は別なのだからトリオン体の使い方を覚えればいいと言われればそこまでだ。近界のやり方も悪くはないのだが地球ではこれが主流だ。

 

「それに俺にはこういうやり方しか向いていない」

 

 ルミエから自分専用のトリガーの開発権限が与えられたのだが、幾つか問題があった。今の今まで剣一本で戦っていたので、近距離の体を動かして戦うタイプのトリガーとの相性は良かった。ただトリオンを操ることはヘタクソだった。

 トリオン操作がヘタクソだった為に体を使わない系のトリガーは向いていないと開発陣営に言われ、取りあえずはと他の武器から始めることにした。

 

「お前達、普段どういう特訓をしているんだ?」

 

「……まぁ、色々とやってる」

 

 どうせ此処で強く拒んだとしても、付いてくるのが目に見える。

 深く関わるなと一線を敷いてみれば、その線を乗り越えてくることはせずに居てくれるので取りあえずはとキッチンを移動し、何時も訓練をしているお馴染みの森に連れてくる。

 

「今日はなにをするの?」

 

「何時も通りの訓練をするだけだ」

 

 交通安全のお守りに入っていた五円玉に糸を垂らして、木の上に吊るす。

 俺の胸元までの長さがある先端に爪楊枝の様な物が付いた棒を取り出すとリーナが少しだけゲンナリとした表情をする。

 

「もっとこう、派手なのとかアクション的な訓練をしたいわ」

 

 今からやる訓練は至ってシンプルだ。

 棒の先端部分に付けている爪楊枝を五円玉の穴に差し込む。口にすれば簡単だが、思いの外難しい。

 

「斎藤道三はコレをやっていた」

 

「誰よ、それ」

 

「日本の武将だよ」

 

 とはいえ、歴史とか戦史を学んでいる人以外にはピンと来ないだろう。

 槍を突いて五円玉の穴を狙いにいくのだが、これが結構難しく思いの外苦戦をする。

 

「むぅ、地味だな」

 

 その光景を横から見ていた遊真は少しだけ退屈そうにする。

 わざわざ森に移動したのに、地形を生かした訓練をするのかと思えば五円玉の穴に爪楊枝を通すだけと地味な訓練を見せられればそうなるのは当然と言えば当然かもしれない。

 

「だったら、一度やってみろよ」

 

 人の訓練に文句があるならば、やってみればいい。

 俺と遊真では体格差がそこそこあり、遊真は自分ほどの大きさの槍を持たされるがコレぐらいはちょうどいいだろう。

 

「じゃあ、お言葉に甘えて……ふっ!……あれ?」

 

 曲げていた腕を伸ばし、手のひらから滑らせるように一突き。

 結果は五円玉の横を通り過ぎるだけで穴に掠りもせず、簡単な訓練だと思っていた遊真は首を傾げる。

 

「見た目よりかなり難しいぞ、こいつは」

 

 簡単に出来ると思っていた遊真に笑う有吾さん。

 ちゃっかり自分はやらないようにしているのは難しいことを理解しているからだろう。

 

「こんな訓練、よく思い付くな」

 

「有吾さん達がどっち側かは知らないが、こっちの世界にはこっちの世界で積み上げた物があるように向こうの世界でも積み上げた物があるんだよ」

 

 トリガーを使った戦争を地球ではしていない。

 代わりにやっていたのは重たい数kgの鉄を装備した戦争で、積み上げていった戦術が沢山ある。俺はトリオンを用いた戦いの訓練は素人同然だが、そうでない戦争の知識なら人並み以上にはあると自負している。

 

「それに技術のインフレに勝つにはコレしか道はない」

 

 神の国と呼ばれるアフトクラトルのラービットは黒トリガーの能力を擬似的に再現していた。トリガー開発が進んでいる。

 イアドリフには一個も黒トリガーが無く、戦闘用のトリガーの開発もあまり進んでいない。代わりに剣などのシンプルなトリガーの使い手が優れている点があるものの、トリガー技術は劣っている。だからこそ、外国の技術を取り入れようと言う考えになるんだろう。

 

「ならさ、おれと勝負しようよ」

 

「勝負だと?」

 

「ジョンの言う積み上げた物がどんなものか気になる」

 

 俺との戦いを望む遊真。

 

「断る」

 

 原作の空閑遊真は物凄く強い部類に入る強さを持っている。

 しかし、それはあくまでも原作が開始するまでの間に戦場を渡り歩いて色々と経験を積んだからであり、今の段階では原作開始時の様なある程度、完成された強さを持っていない。

 俺のサイドエフェクトはオーラを神仏や歴史の偉人に具現化するもので、有吾さんはギリシャ神話の神が見えるが遊真からはドーベルマンぐらいしか見えない。ある程度は父親に訓練をされているが、今のところは程度が知れているレベルだ。

 

「負けるのが、怖いの?」

 

 分かりやすい煽りをしてくる遊真。

 

「ジョンが負けるわけないじゃない!!あんたなんかボコボコよ!」

 

「お前は乗るな」

 

 挑発をされてるのは俺なのに、乗ってしまっているリーナ。

 これぐらいの事で怒ってしまうのはチョロいとしか言いようがない。

 

「第一、どうやって勝負するつもりだ?」

 

 何時緊急出撃するか分からない状態だ。

 トリオン体を破壊すれば俺は半日、リーナは20時間ぐらいトリオン体を再構成に時間が掛かる。ボーダーの様に死なないけど死んだ状態が再現できるゲーム感覚の戦いが出来ない以上、変な事は出来ない。

 

「おれがこの木刀を使うから、槍を使ってみてよ」

 

「……お前、正気か?」

 

 わざわざ使う武器を指名してくる遊真。

 槍を相手に剣で挑むとか、基本的な戦術を知らないんだろうか?槍は剣よりも強いと定石があるし……

 

「お前、この木刀を使いこなせるのか?」

 

「生身なら無理だけど、トリオン体なら簡単に持てるよ」

 

「……そうか」

 

 何よりも、遊真の方が圧倒的に不利だ。

 原作を見る限りは遊真は小柄さを生かした素早い戦闘で敵を翻弄したりしている。俺の木刀は特注品で通常よりも遥かに重く、現在遊真が使っている短剣の二刀流とスタイルが異なる。

 

「俺が戦う理由は無い」

 

 腕試しとかの理由で私闘をするつもりはない。

 なんらかのメリットがなければやる気は起きない……あくまでも俺の戦いは生き残る為のものであり楽しむ為の物じゃない。

 

「だったら、おれが負けたらなんでも言うことを聞くよ」

 

「……俺が負けた場合はなにもないなら受けてやる」

 

 メリットしかない勝負なら受けてやるが、こんなところでデメリットのある勝負はしたくはない。

 本音を言えばやりたくないがなんでも言うことを聞くと言っている。だったら、もう一個注文を上乗せする。

 

「それでいいよ」

 

「すまんな」

 

「別に、俺が了承した事だから問題ないです」

 

 明らかに好奇心で俺と戦おうとしている遊真。

 まだ子供なので子供的な理由で戦いを望んでいるので有吾さんは申し訳なさそうにする。

 

「ジョン、ボッコボコにしてやりなさい!」

 

 はいはい。




タイトル毎回考えるのめんどい

今後の展開

  • そろそろ原作にいけ
  • もう少しオリジナルをやれ。
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