近界プルルン奮闘記   作:ドドドドド黒龍剣

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第16話

 500日目

 

 ジョンに今日が私達が拐われてから500日目だと教えてもらった。500、言葉にすれば短いけれど1年と約5ヶ月、思い返せば色々とあった。ジョンから500日の記念にとメモ帳を渡されたので日記にしようと思う。英語じゃなくて日本語を覚えるために日本の文字で書こう。

 

 最初の日、家族と食事に出掛けた帰り道にトリオン兵に拐われたのを今でも覚えている。

 あの時はなにがなんだか分からなくて、気付けば見知らぬ場所で見たことが無い私よりも年上の人達が20人ぐらい隔離されていた。

 

 いったいなにがあったのか、よく分からなくなった私は誰かに話を聞こうとしたけれど言葉が通じなかった。

 顔からして周りにいないタイプの顔付きで別の国の人達で言葉すら通じないのは当然で誰も彼もなにされるか分かったもんじゃないから怯えていて、私はあまりの怖さに手当たり次第に話しかけていて、たまたまジョンが言葉を喋れた。

 

 あの時は本当に大変だった。

 ジョンは冷静になってたけど、本当は慌てていてトリオン体とはいえ殺し合うとは思わなかった。

 

 当時、逆らった人達はもうこの世には居ない。名前も出身地も知らない。お墓の1つでも作って上げたいと思うけれどなにも知らない、ただ私達と同じ時期に拐われたことしか知らない。ジョンはアロマの1つでも焚いておけば良いと言っていた。

 

 今までの出来事を振り返ってみても、私が生き残れて今日こうして日記を書けるほどの余裕を手に入れたのはジョンのお陰だと思う。

 

 だから、改めて「ありがとう」と言ってみるけどジョンは「ああ」と反応が薄い。

 私みたいに可愛い女子に対して、その反応ってジョンはその手の感情があるのかしら?そもそもで私をどう思っているのかしら?

 

 自分が1人でも誰かを助けた優越感に浸っていたいから助けたって言っていて、それが嘘か本当かは分からない。

 少なくともジョンは自分が1人になってしまうとダメになっていくのが分かっている。だから、私と一緒に居る。だから、私が明るくしないといけない。

 

 けど、1つだけ問題がある。私もジョンも未だに互いの本当の名前を知らない。

 ジョンは自分の事をジョン・万次郎だと言っている。昔の日本人で、うちの国に漂流した人で、今の自分がまさにそんな感じだと言っている。外国じゃなくて異世界だから、ジョンの方がスケールは大きいわ。

 

 どうしたら本当の名前を教えてくれるのか、聞いてみたら「今のところは教えるつもりはない」らしい。

 何時かはジョンの名前を知って、呼んでみたいと思うけれどそれは無理なのかもしれない。それはとっても悲しいわ。

 

 

 501日目

 

 

 私達には畑が与えられている。

 主に海外に売るために食糧用の畑で、私達がイアドリフに拐われて直ぐに与えられた。

 

 そんな畑を耕したのだけれど、今日は何時も使っている畑とは違う場所を耕した。

 ジョンが言うには新しく米を栽培するらしく、もう既に死んでしまってこの世に居ない人達の土地を活用するみたい。

 

 色々と難しい説明を受けたけど、要約すると米を植えるための準備をする。

 塩水が入ったカップに米の種を入れて、浮かび上がったものを捨てて浮かばずに沈んだ物だけを畑に投げ入れず、別のプランターに入れた。

 

 後はある程度の草になるのを待つだけで、その間に私は土を掘り起こす。

 途中で死んでしまった人達の土地で整備されていない。新しい畑は思ったよりも広くて、私とジョンだけでどうにかなるのかと心配をしていたけれど、助っ人がいた。

 

 クガ親子。ユーマとユーゴさんが畑を手伝ってくれた。

 ジョンと勝負をして負けたからやっている様でもう一回、勝負しようとジョンに言うユーマ。ジョンは戦うことがそんなに好きじゃないのかハッキリと「嫌だ」と言った。そしたらユーマは「負けるのが怖いの?」なんて言う。

 

 ジョンが負ける筈が無いのになにを言っているのかしら?

 一瞬で敗北したのを忘れたのか聞いてみると「次はおれが勝つから」なんて言い出す。次もジョンが勝つと言えば何故か大きなため息を吐く。私、ジョンの名誉の為に頑張ってるのになんでため息を吐くのかしら?

 

 もう一回、やれば勝つのは分かっているけど勝負するつもりは無いジョン。

 このまま言われっぱなしはジョンの名誉もあるし、助けてもらった私が情けない人に助けてもらったと言う不名誉な事にもなる。ユーマはジョンばかりを見ているけれど、私だって強いのよ。

 

 ジョンがその気にならないから代わりに私がと言うとジョンに額をつつかれる。

 一秒でも早く米を栽培する為に雑草を抜いたり土を耕したり、水を用意したりとなにかと忙しいのに遊んでいる暇はないと怒られた。結構本気に怒っていて、今まで米が食べれていない反動だったと、さっき謝ってきた。

 

 日本人って米を食べるのが当たり前らしいけど、毎日食べてる物が食べれないのは余程辛いみたい。私みたいに主食が決まってなくて色々と食べてる人もいればジョンみたいに米を毎日食べている人もいる。世界って不思議に溢れているんだと感じた。

 

 米を早く食べたそうにしているジョン。

 米と言えば、やっぱりSUSHIを食べたいのかと聞いてみれば呆れた顔で「こんな辺鄙な国で生の魚なんて食べたら、なにがあるか分からないだろう」と言った。そもそもでイアドリフは大きな川があっても海が無いから魚自体が少なくてマグロ?だったかしら、その魚は無いって言っていた。

 

 じゃあ、なにか食べたい物はあるの?と聞いてみれば恥ずかしそうに「おにぎり」と答えた。

 おにぎりってライスボールで、黒いよく分からないのを巻いてるアレよねと聞いてみたらそうだと頷く。

 

 もうちょっと豪華な物を食べたくならないのかしら?と思ってたら顔に出ていたのか「日本人は困ったらおにぎりを食べとけばなんとかなる」と教えてくれた。それだけ故郷の味が恋しいのね。

 

 

 502日目

 

 

 何度言ってもジョンが絶対に勝利する。

 最初に戦ったときもジョンはユーマに対して余裕を見せていたのに「もう一回」と言ってくる。あまりにしつこいから、代わりにジョンの次に強い私がユーマを相手にすることに。

 ジョンは別にそんな事をしなくていいと言っているけれど、舐められっぱなしが1番ムカつくのよ。

 

 あくまでも試合で本当の殺し合いじゃない。【ミラージュ】に非殺傷設定は無いので、ジョンが普段使っている木刀よりも軽いスカスカな木刀を持ってユーマと向かい合う。

 私はトリオン能力に優れているだけじゃなく、トリオン操作にも優れている。ルミエやジョンはその事を才能の1つだと言ってくれた。正直、こんな才能よりも料理の才能の1つでも欲しいとは思う。

 

 ユーマと向かい合い、武器を構えると開始の合図を告げるユーゴさん。

 開幕すると同時にユーマは飛んでくる。ジョンの時と同じだから、来るのが分かっていて避けることは出来る。問題はジョンの時と違って私が使っているのが木刀だということ。

 

 つい最近、トリガーを開発する権利を得た私達。1から新しくと言われても、私にはイマイチ、ピンと来ない。

 ジョンは色々と考えているみたいだけれど、なにをすればいいのか分からないので、今まで使わなかった剣を使うことに。そしたら色々と判明する。

 

 ジョンは体を使うトリガー以外の【ミラージュ】の様な遠隔操作をするタイプのトリガーを苦手としているけれど、私には苦手分野がない。元々、ジョンの筋トレに付き合っていた分、【ミラージュ】の時よりも素早く覚えることが出来る。

 一回、調子に乗ってジョンと戦ってみたけれど、思ったよりもボコボコにされた。剣を持ってるからって、切ってくるとは限らないって蹴りとか顔を掴まれたりとかレディにすることじゃないと思うわ。

 

 ユーマの急襲を避けて、どうするかを考える。

 剣を握って間もなく、ジョンの様な必殺技の様なものを持っていない。多分、真正面からやっても勝てない。色々とあれこれ考えてみてもそれを実行出来るほどトリオン体を動かせない。

 

 だったら、いっそのこととヤケクソ気味に木刀を投げる。

 流石に木刀を投げたことは予想外だったのか驚き、飛んでくる木刀を弾く為に隙が生まれるユーマ。ここぞとばかりに拳を叩き込んでトリオン体にヒビを入れるとユーゴさんから待ったが入る。

 

 後、もうちょっとで倒せそうだったのにいいところで止めないでほしい。

 そう思ったけど、よく考えればこれは訓練で後もう少しでトリオン体を破壊してしまうところだったわ。ユーマのトリオン体、どれぐらいで再構築されるか分からないから危なかったわ。

 

 でも、私になら勝てると思っていたユーマをギャフンと言わせることに成功したからよかったわ。

 

 

 503日目

 

 

 今日も畑か訓練か防衛任務のどれかだと思っていたけれど、ルミエから急遽呼び出された。

 何事かと思ったら、工事をするのを手伝えとの事でなにを作るかはジョンに教えるとジョンは顔を真っ青にした。

 

 まさか大量殺戮兵器を作る工場を作らされるんじゃとジョンに具体的になにを作るのか問い詰めると水力発電所を作ることを教えてくれた。発電所ってアレよね?電気を作る施設よね?

 聞いた感じ危険性は無さそうだけど、どうして顔を青くするのか分からず聞いてみるとすっかり忘れていた。この世界には部屋を明るくする為に使う灯りを電球に頼っていない。別の技術に頼っている。

 

 動力をトリオンとしている所を今から電気に変える。そうすることで明かりを灯すトリオンを別に使える様になる。

 通常よりもハイスペックなモールモッド等のトリオン兵が今後作られてくる……自分達の利点になる筈なのに素直に喜べない。

 

 工事をすると言っても私達に建築技術はない。ましてや水力発電所なんてどうやって作ればいいのか分からない。

 ルミエが言うには今ある川の上に作るとややこしいから、地下に流れる水脈を掘り起こして新しく井戸の様な物を建設して、その上に水力発電所を作るみたい。最新なのか古くさいのかよく分からないわ。

 

 私達の主な仕事は発電所を建築するための土台を作るために邪魔な岩や砂利を撤去すること。

 生身の肉体なら直ぐに根を上げていたけれど、トリオン体だから重たい岩も簡単に動かすことが出来る。

 

 とはいえ、砂利とかも持っていかないといけないからやることが多い。

 イアドリフ側もはじめての試みだからか手探りでやっているところもあり、途中でジョンに色々と聞いてみたりもしていた。発電所を作るのにジョンが携わっていたから流石と思っていたけれど、ジョンは人知れず頭を抱えて「やってしまった」と震えていた。やってはいけないことをしていると苦しんでいた。

 

 そんなジョンの背中を見て、私はいったいなにをやっているんだろうと深く考えてしまう。たまたま英語を話せて年頃も近かったから一緒になったけれど私自身が出来ることはない。対してジョンはイアドリフに自分を売っている。

 既に大きな差がついていてこのままいけば取り返しがつかない事になって1人になるんじゃないかと恐怖を感じているとジョンが私を抱き締めて「ごめんなさい」と呟いた。

 

 ジョンが大人っぽいけど本当は私よりも2つしか歳が変わらないことを忘れていた。本当はやっちゃいけない事をしている自覚はあり、その罪に苦しんでいた。この時、私が出来ることはジョンの側に居てあげる事だと気付き、ジョンの頭を撫でていると大きな音が聞こえた。

 

 何事かと音がした方向を見ると温かいお湯が……温泉が吹き出していた。

 地下の水脈を探して見つけて掘っていたのは良いけれど、温度は確認をしておらず全員が驚いている。ジョンも驚いている。

 

 水を掘り当てることには成功しているので、当初の目的である地下水を利用した水力発電所は作ることが出来る。けど、温泉をだからそれをそのまま水車を動かすのに使うだけでは勿体無い。

 早いところ温泉をどうにかしないといけないと工事は進んでいったけど、ルミエもこれがあればお湯を沸かす為のトリオンを使わなくていいと色々と考え始める。

 

 幸いと言うか、王都の市街地からある程度近くにある。

 日本のお風呂屋さんみたいなのをジョンは作れないかを提案していた。日本のお風呂みたいに浴槽にお湯を溜めたりしないし、基本的にシャワーだけど、ジョンにはその生活が耐えられないみたい。

 ゆっくりと足を伸ばしてお風呂に入りたいと言っていた。

 

 この温泉がどういう感じの扱いになるかは分からないけれど、イアドリフの貴重な温泉。無駄にはならないと思う。

 

 

 504日目

 

 

 昨日掘った温泉だけど、王都があるところに銭湯を作ることが決まった。日本ってお風呂が世界一大好きな国だって聞くけれど、本当みたい。

 今までシャワーみたいな生活が本当に苦しくて、日本式のお風呂をバンバンと提案していく。ジョンって見えないところでストレスを溜めているみたいで、発散が出来ていないみたいだけれど大丈夫かしら?

 

 色々と提案してるけどちゃんとお風呂として入れるのか成分を分析した結果、お肌に良い成分が多いことが判明した。ここって化粧品とかの美容に関する文明がそこまでだから、こういうところで女を磨かないといけない。

 何故か日本で1番高い山の富士山を壁に描くと執拗に言ってくるジョンは、先ずはお前が実験台としてお風呂に入ってみろと言われたので前を隠さずに堂々と入ってゆったりとする。

 

 お風呂としてはまぁまぁだと言うジョン。そこまで言うと日本の温泉がどんな感じなのか物凄く気になるわ。

 

 お風呂として入って問題が無くて温度も程よいから水やお湯を混ぜなくてもいい純粋な温泉。

 王都の市街地に銭湯を建設することが決まって、料金変わりにお湯を沸かす程度のトリオンを貰うと言うしっかりしたシステムを作っていたんだけど、ここでルミエがジョンに対して無茶苦茶を言ってくる。

 

「温泉を外交に使える様にしろ」なんて物凄く無茶な要求でジョンも「風呂上がりにコーヒー牛乳かフルーツ牛乳でいっぱいやればいいだろう!」なんて変な風にキレるけどルミエは相変わらずで、とにかくやれとの命令される。

 

 温泉を外交に使えと言われても接待で相手を入れる事ぐらいしか思い浮かばないけど、それはダメで、他のにしろと言うのでジョンは温泉で茹でた半熟玉子を出してみるけど、保存が効きにくいからダメだと言われる。

 温泉まんじゅうと言うお菓子を作れればいいのだけれど、饅頭に必要なあんこが何処にもない……さっきからジョンは頭を抱えている。なにも浮かばなかったら、何かしらの罰が与えられるのかしら?

 

 505日目

 

 今日は美味しい1日だったわ。

 温泉に入るのが禁止で外交に使えるものを作れと言われたジョンは小麦粉を温泉で練り始める。

 

 昨日、温泉饅頭が出来ないと言っていたのにいったいどうして、もしかしてチャイニーズ饅頭を作るのかと思っていたけど違った。ラーメンを作っていた。

 

 小麦粉を捏ねて細い糸みたいなのにするラーメン。

 今の今まで作らなかったのになんで急に今になって作り始めるのかと思った。小麦粉と水は最初からあるのに、なんでわざわざ温泉を使うのか聞いてみると「じゃあ、水でやってみろ」と言うのでジョンの隣で普通の水道水を使って小麦粉を捏ねていくのだけれど、ジョンとなんか違う。

 

 ジョンが言うにはラーメンはかん水と言う特別な水が必要で麺が独特の色合いや味をしているのは、そのかん水のお陰だと言う。でも、私達が掘り当てたのは温泉で、私達が入っても問題ないお湯だった。

 その辺りについて聞いてみるとお肌にいい美人の湯と言われるお湯はラーメンじゃなくてチャンポンと言うラーメンの亜種みたいなのに使われる麺を作る時に使う水と成分が似ているらしい。

 よくそんな事まで知ってるわねと感心していると「幕末編でやってたからな」と呟く。これも漫画で得た知識みたい。

 

 麺を作ったのはいいけれど、スープが無いことに気付く。

 その辺りは問題ないと食べれなかったりする屑野菜と鶏ガラを煮込んだ物とひっそりと作った醤油を出すジョン。

 

 匂いに釣られて、ユーゴさんとユーマもやってきてラーメンっぽいのをいざ試食した……私的にはまぁまぁだった。

 ユーマは美味い美味いとスルスルと食べていったけど、ユーゴさんとジョンは微妙そうな顔をしていた。ユーゴさんの知り合いにはラーメン好きが多いらしく、醤油を使ったラーメンが大好物の人が居て、その人と日本のちゃんとしたラーメンを食べた事がある。ジョンもちゃんとしたのだけじゃなくてレトルトのラーメンも食べた事はあるけど、このラーメンは美味しくないとハッキリと言った。

 

 プロの料理人じゃないのに無理してラーメンを作った結果、出来上がったのは微妙な料理だった。ジョンが言うには材料が足りなさすぎるかららしいけど、単純にジョンの技量が低いのも問題だと思う。

 けど、ユーマは普通に美味いと言ってくれて私もまぁまぁで決して食べれないわけじゃない。味を改良する余地はある。

 

 これが温泉を使用した名物でいいんじゃないかとルミエに提出するとラーメン擬きの味が気に入ったのか替え玉を頼む。

 結果的にはこれから色々と材料を仕入れるから改良してみてくれとのことでジョンが作っていた醤油を根刮ぎ取り上げられることで解決した。半年以上掛けて作り上げた醤油を取り上げられたジョンは今、私の隣で泣いている。

 

 時折、忘れかけているけれどこの世界は本当に理不尽ね。

今後の展開

  • そろそろ原作にいけ
  • もう少しオリジナルをやれ。
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