近界プルルン奮闘記   作:ドドドドド黒龍剣

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第18話

 空閑親子が居なくなってから半年。

 もうすぐ拐われてから2年が経過しそうになり、俺もリーナも大分成長してきた……多分。

 

 なにせ基本的には防衛任務で襲撃してくるトリオン兵を倒し、時折やってくるトリガー使いを殺したりしてるぐらいで強くなったと言う感覚は持っていない。

 こうなるとボーダーのランク戦は原始的な方法だが確実に強くなる方法なんだと改めて理解させられる……。

 

「やぁ、君の事はよく会議に出てるから知っているよ」

 

「……どうも」

 

「そう身構えないで……いや、身構えていた方がいいのかな?」

 

 何時も通り畑を耕したり、飼いはじめたニホンオオカミを調教したりと色々としていると呼び出された。

 俺から出せる知識なんてもう殆ど無いのに何事かと思いイアドリフの軍の基地に向かうと会話もしたことの無い男性がそこにいた。

 

「あんた、誰だ?」

 

 俺達拐われてきた人間はこちらの世界の人間と関わらせない様にしている。

 もし万が一、捕虜として捕まった時に余計な情報を出さない為で目の前にいる男の名前を知らない。

 

「僕はレクス、本隊の隊長を勤めていると言えばいいかな」

 

「!」

 

 また随分と大物が出てきたな。

 もう俺とリーナしか残っていないが、俺達はルミエの部下に当たる。そしてルミエは外務関係でイアドリフでなく外の人間を纏める役割を持っていると聞いている。

 イアドリフ出身の人間で構成されている部隊が本隊であり、目の前にいる男はそんな本隊を統括する軍の戦闘関係のトップとも言える人物だ。

 

「わざわざ末端の人間になにかご用ですか?」

 

 拐われた人間なので俺は奴隷みたいなものだ。

 末端も末端の人間であり、大物が俺に用事があるとはなにか良からぬ事を企んでいるのではと引いてしまう。

 

「色々と説明をしたいが、要点だけ纏めて言うと僕と本気の勝負をしてくれないか?」

 

「本気の勝負、ですか……負けるんで勘弁してください」

 

 俺のサイドエフェクトがレクスの背後にドナルド・マクベインが見える。100戦無敗の片手剣士でとんでもなく強い剣士として歴史に名を残しているぐらいの男だ。

 本隊の総隊長を勤めていると言うことはそれ相応の強さを持っている……有吾さんは神話の神様でレクスはドナルド・マクベイン、いったいどっちが強いんだ?

 

「そうか、戦わなくても負けを認めるんだね」

 

「俺は腕自慢の武芸者でも戦闘好きのバカでもないんでね」

 

 何時かは限界を越えるために大物喰い(ジャイアントキリング)をしなきゃいけないのは分かっている。

 それと同時に引かなきゃ行けない時に引く冷静さも必要で、少なくともわざわざ挑む相手じゃない……強い奴に進んで挑むのも大事だが、挑まないのも大事だ。

 

「そんな事も分かるなら、是非とも剣を交えたいね」

 

「話聞いてた?」

 

 俺はレクスとは戦うつもりは無い。戦う意思ではなく降伏や戦わない意思を見せているのに、むしろやる気を出してくる。人の話を聞いていないのか?俺は一切戦うつもりは無い。今は色々と忙しいんだよ。

 

「聞いているよ、だからこそ戦うんだ……言っておくけど、コレは命令なんだ。君が断ることは出来ない」

 

「っち……」

 

 相変わらずのパワハラっぷり。最近忘れかけていたが、あくまでも自分は奴隷だ。奴隷らしく分を弁えておかないといけない。

 上からの命令は絶対であり逆らうことは出来ない立場である為に渋々戦うことを承諾すると何時もの草原……でなく、なにもない真っ白な部屋へと連れてこられる。

 

「何時もの草原じゃないんだな」

 

 こういう相手は無礼だろうが何時もの口調でいく。

 

「うん、今回はちょっとね」

 

 ピッピッピと持っているタブレットを操作するレクス。

 すると真っ白な部屋の形状が変わっていき、何処かの国の市街地を思わせる場所へと切り替える。

 

「森とか草原とかじゃなくてこの市街地で戦ってほしい」

 

「市街地か……」

 

 別に戦うなら何処でもいい筈なのにわざわざ場所を指定してくるレクス。

 戦うのにはなんらかの理由が或るのだろうが……いや、今は余計な事を考えている場合じゃないな。余計な事は考えるな。

 

「【カゲロウ】」

 

 カゲロウを起動し、トリオン体へと換装をする。

 さて、どうするか。市街地での戦闘は曲がり角とか建物の上空による奇襲とかを警戒しておかなければならないが生憎な事に今回はタイマンだ。これが主人公の三雲修ならワイヤー陣でも作り上げるのだろうが、生憎と俺はそういう小手先の技術は無い。

 

「さぁ、何処からでも掛かってこい……君の実力を見せてくれ」

 

「この野郎」

 

 試す側の住人だからか、余裕を見せつける。戦いにおいて心は乱してはいけないものなのは分かっているが、一泡吹かせてやりたい。

 俺は刀の見た目にカスタマイズしたカゲロウで斬りかかるとレクスはそれに合わせるかの様に受け太刀を取る……コレは中々に厄介だな。

 

「どうした君の力はそんな物なのか!」

 

「まだまだだ……あんた本気を出してないだろう」

 

「本気を出して欲しかったらもっともっと見せるんだ」

 

 確実に戦闘の主導権を握られている。それだけ俺とレクスの間に実力の差があるわけだ。

 ドナルド・マクベインが見えるのとさっきから片手でしか剣を握っていないのを見るにコイツは片手剣の使い手……盾を使わないのは余裕だ。

 

「君は変わった槍を使うそうだが、それを使わないのかい?」

 

「槍はまだ修行中だ」

 

 実戦で使えるレベルにまであるのは剣だけだ。槍を剣で倒すには3倍の強さが居るとか言うが、槍は槍でも管槍だ。

 中途半端な技術を見せるぐらいならばまだ中途半端なものの実戦をこなしている剣術の方がいい……ちょっと技を使うか。

 

「来るか」

 

 鞘にカゲロウを納刀し、居合抜きの構えを取る。

 この技は見たことはあるが実際に使ったことのない技で……通用するかどうか知らないがこういう場で使わないと意味は無い。カゲロウを掴んで振るう。

 

「遅い!」

 

 カゲロウの一閃を完全に見切られ、攻撃を防ぐレクス。

 

「ありがとう」

 

 あんたならば防いでくれる、そう信じていた。

 

「っ、鞘付き!」

 

 レクスはここに来て気付く。俺の振るったカゲロウが納刀された状態のままで刃を剥き出していないのを。

 俺は気付かれると直ぐに鞘の部分を掴んで鞘を動かさずにカゲロウの刃のみを抜刀、カゲロウの鞘でレクスの剣を抑え込む。

 

「双龍閃・雷」

 

 鞘で身動きを封じつつの二段攻撃、これならば届くだろうと思ったがレクスは空いていた右腕を構えるとそこから黒色のシールドを出現させる。

 

「驚いた、まさかこんな技があるなんて」

 

「初見殺しの技を防ぐか普通」

 

 ハイパー明治な世界のなんちゃってな飛天御剣スタイルの実戦的な剣術だが、防がれるのは予想外。

 ドナルド・マクベインかレクスから見えることから盾持ちの片手剣士なのは分かっていた……原作風で言えば攻撃手4位の村上鋼と同じ、いや、向こうはレイガストを握って盾にしていて、レクスのは腕から出ているから似たスタイルといったところか。

 

「これでもイアドリフの中でも5本の指に入る実力者だからね、新参者には負けないさ」

 

「俺はここに来てから約2年は経過してるよ!」

 

 人の事をぽっと出の新人扱いしているが、1年以上はこっちにいる。

 向こうからすればまだまだひよっこかもしれないし、立場上後輩の様な者は出来ないがそれでも長く生きてるつもりだ……周りが多く死んでいってるとも考えられるが。

 

「それは失礼した……君は奴隷だが、お客様じゃない……本気で行かせてもらう」

 

 これは変な地雷を踏み抜いたかもしれない。見えていたドナルド・マクベインがオーラの様な物を纏っている。

 一旦距離を取ろうとするがレクスはそれを許してはくれず、俺との間合いを詰めてきて完全に剣の間合いを取った。

 

「どうした守ってばかりか!」

 

「ナメるなよ」

 

【カゲロウ】で攻撃を上手い具合に反らしてはいるが一撃、一撃が重い。どちらも戦闘用のトリオン体だが、出力の違いは無い筈だ……体を効率良く使えているのはレクス。約2年間、イアドリフで奴隷生活を送っているが、一日の長は向こうにある。小手先の技で翻弄出来そうにはないが……やるしかないんだ。

 

「もらった!」

 

 俺の隙を見つけて斬りかかるレクス。

 段々と攻撃に馴れて来たかその攻撃を防ぐのだが、レクスは両手で握っている剣を左手だけに持ち帰ると右腕をこちらに向かって押し付ける。

 

「インパクト!!」

 

「なっ!?」

 

 盾が胴体に押し付けられると衝撃が走った。一瞬だけ痛みも走った。

 例えるならばそう。ワンピースの衝撃貝(インパクトダイアル)の様な衝撃をぶつけられてしまう。これ自体は全くのダメージにならないがこの衝撃で体が浮いてしまう。

 

「終わりだ!」

 

「ナメるな!」

 

「なに!?」

 

 今まで使わなかったシールドを展開する。ただ単にシールドを展開したとしてもレクスの剣で斬られてしまう。だからもっと有効に活用する。

 

「シールドで腕を止めるなんて」

 

 シールドで攻撃してくる剣を止めるのではない。攻撃しようとして動かす腕を妨害する。

 強烈な切れ味を持っている剣を使っていたとしても振るわなければ使うことは出来ない。振るう腕を妨害すれば刃は届かない。コレが仮にトリオン兵だと問答無用でシールドを割ってくるので対人戦ぐらいでしか使えないと思っていた技だったが、まさか使う日が来ようとは思っていなかった。

 

「君も中々に芸達者だね」

 

「それはどう致しまして……」

 

 攻撃する腕に向かってシールドを張ることで、浮いた体から生まれる隙をどうにかする事が出来た。

 体を元に戻すことが出来たが……どうしたものか……よし、アレをやってみるか。

 

「逃げる!」

 

「え!」

 

 次の手を決意した俺はシールドを背中に展開しつつ逃げる。

 タイマンでの勝負をしているのにここに来ての逃げの一手を取ったことはレクスも意外だと思わず声を上げてしまう。

 

「ちょっと正々堂々と戦いなよ!」

 

「実戦形式の戦いに正々堂々も汚いもなにもない!」

 

 真正面から勝つことが出来ないのは対峙した時から分かっていた。

 勝てない相手は挑まないのが得策だが、それが出来ないのならば別の手を用いる……近距離戦闘メインの奴が真正面から勝利をもぎ取る事が出来ないのは実に情けない事だが、今はこれに縋るしかないんだ。

 

「【ウスバカゲロウ】」

 

「!」

 

 曲がり角を曲がらずに一直線に逃げてレクスとの距離を開ける。

 当然、レクスは俺を追いかけて来る。走って、走って、走り続けて止まる事はないと思わせると振り向いて出来る限りの速度で抜刀。原作で言う旋空弧月を丸パクリして作ってもらった伸びる斬撃こと【ウスバカゲロウ】を決めに行く。

 

「驚いた、カウンターがあるのは分かっていたけど、まさか剣が伸びるなんて……腕が一本持ってかれたよ」

 

「っち、腕一本……だが、これで有利になった!」

 

 左腕を肘のところから切り落とす事に成功したのでレクスの強さが減った。

 使っているのは切れ味抜群の剣で、手で握ることを前提としていて攻撃する時には両手で握っている。左腕1本となればこちらにも勝機はあると構えるとレクスは手をあげる

 

「待った、この試合はここまでだよ」

 

「なに……後もう少しで倒せるんだ。ここで終わりは無いだろう」

 

「このままいけば僕の負けは決まる……逃げに見せかけての伸びるブレードでの不意打ちは見事だったよ」

 

 自身の負けを認めるレクス。負けを認めてくれたのならばそれで構わないと【カゲロウ】を納める。

 

「ただどうせなら真正面に逃げるんじゃなくて途中で曲がり角を曲がったりした方がいい。そうすればこっちは一直線に障害物を飛び越えながら回り込んできて空中での大きな隙が生まれる」

 

「負けた側なのにダメ出しか」

 

「ああ……最初から本気なら僕が勝っていたからね」

 

 自信満々に語るな……とはいえ、序盤に手加減をされて遊ばれていたのも事実だ。最初から全力だと負けていたかもしれない。

 強くなったと思っていたが、それは勘違いだったようだ。上には上が居るとハッキリと思い知らされた。勝負は勝っていた筈なのに負けの気分を味わうとは最悪だよ。

 

「それで俺はあんた達のお眼鏡に適ったのか?」

 

「あ、気付いてたんだ」

 

 この戦いは最初から最後までイアドリフの偉いさん方が何処かで見ている。

 真っ白な部屋でなにもない様に見えるがこんな部屋だからこそ監視カメラの様なものの1つや2つある……全く趣味が悪いもんだ。

 

「君は充分な力を見せてくれた……後、数年もすれば確実に僕を超える強さになるよ」

 

「それで?」

 

「遠征に行ってくれ」

 

「……遠征だと?」

 

 俺を試すという事は何かしらの任務をやるかやらせないかだとは分かっていた。

 しかし、遠征は無さそうだと思っていたので思わず声を出してしまう。

 

「イアドリフは基本的に侵攻はしない国だと聞いているぞ」

 

 地球の人間を攫って奴隷として扱ってはいるものの、基本的にイアドリフは何処かの国とは戦争を仕掛けない平穏主義だ。

 乱星国家で特定の集会軌道を持っていないから従国の様な物を作っても扱いきれないし、資源にも恵まれている……人材はまぁ、微妙だが。

 

「それが厄介な事になってしまってね」

 

 端末を取り出し、立体映像を見せるレクス。3つの球体が浮かび上がる。

 

「実は今、イアドリフは2つの国に囲まれた状態なんだ」

 

「また随分と厄介な事になってるな」

 

 左右がイアドリフでない国、真ん中がイアドリフ。

 俺の記憶が正しければイアドリフは比較的に温厚にしているだけで何処か固定で友好国の様なものは無かった筈だ……外構や外務関係はルミエ担当で愚痴を溢しているのをチラリとは聞いたことがあるぞ。

 

「そう、実に厄介な事だ。もし左右の国が協力をしてイアドリフに攻めてこられたらイアドリフは一巻の終わりだ。だからイアドリフは片方の国とコンタクトを取った。もう片方の国と協力して攻め込まないのを条件にそのもう片方の国を攻めることになった」

 

「まさか、遠征って」

 

「そう。もう片方の国を侵攻して打撃を与えること」

 

 何時かは攻め入る側の人間になるのは分かっていたが、まさかそれが今日とは思いもしなかった。

 

「俺でいいのか?もっと他に居るはずだろう」

 

 俺の実力を買ってくれるのは嬉しいが、それはおかしい。

 ルミエは俺やリーナに外の世界がどうなっているかに関して教えない様に慎重にやっている。あの野郎は地味にビビりな所がある陰険だから俺達が裏切らないかと考えている。遠征なんてもってのほかだ。

 

「書類を交わしての契約でもなんでもない口約束に近い形だから万が一があるかもしれない。だから普段は遠征に行かせないメンツも入れている……君が裏切る可能性も無いわけじゃないが、2年の歳月を掛けて手に入れた生活基盤をわざわざ捨てないだろう」

 

「それはどうかな?余計な事をベラベラと喋るかもしれないぞ」

 

「その時はその時……ああ、安心して。彼女はここに残るから」

 

 汚い、やり方が本当に汚いぞ、イアドリフは。

 遠回しにリーナは人質だと言いやがった……リーナが居てくれなければ乗り越えられなかった事が多々ある。見捨てる事は俺には出来ない……アイツはどう思っているのだろうか……いや、今は生き残る方が大事だ。

 

「しかしいきなり遠征に行ってくれとは急すぎる。閉鎖空間で生活をする訓練や遠征艇の操作なんて知らないぞ」

 

「その辺りの事はまた別の人がやってくれる。君は直接現場に出て暴れてもらいたい。ああ、安心して。緊急脱出機能があるから囚われてもなんとかなる」

 

 人の事を裏切るかもしれないと思っている癖にホントに至れり尽くせりな事だ。

 閉鎖空間で過ごす訓練していないが……まぁ、なんとかなると思っていいのだろうか?あれ、宇宙兄弟とかで結構過酷な訓練だとやっていたぞ。

 

「それでなんだけどどういう風に攻め入ったらいいと思う?」

 

「なんでわざわざそんな事を聞く」

 

「ただ攻め入ったと言っても向こうは納得してくれないかもしれない。マンネリ化している時は君に聞いたらいいってルミエが言っていたんだ」

 

 あの野郎、人を清涼剤かなにかか勘違いしている……有能だと見られているだけマシか。

 まさか攻め入る側になるとは思いもしなかった……人を拐うとか国を乗っ取るとか冠トリガーを破壊するとかの条件の指定は無い……。

 

「いきなり言われても困る。半日だけ時間をくれ」

 

「時間はまだあるけどなるべく早くね」

 

「……ラッド」

 

「ん?」

 

「ラッドに門を開く機能を搭載しておいてくれ。内側から門を開けば奇襲が可能だ」

 

 俺はいったいどれだけの罪を重ねればいいのだろうか。

 近い将来、地球の三門市に門を集束しているボーダーの裏を突くアフトクラトルの裏技を今ここで使う……ああ、俺ってホントに最低な奴だな。

 

「ところでその襲撃しないといけない国ってどんな国なんだ?」

 

「アリステラ……まぁ、そんなに大きな国じゃないから報復の可能性は少ないと思うよ」

 

「……そうか……」

 

 どうやら俺の罪の数は更に増えていくらしい。

今後の展開

  • そろそろ原作にいけ
  • もう少しオリジナルをやれ。
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