近界プルルン奮闘記 作:ドドドドド黒龍剣
「…………落ち着かないな」
リーナから最大の贈り物を受け取って半日ぐらいした頃に準備が出来た。
トリオンのチャージも直ぐに完了し、更には星々を移動する訳ではないのでそこまでトリオンを食わない。流石は近界民、地球とは技術が違うと言いたいが1番言いたいのは気分が落ち着かない。
そりゃそうだ。閉鎖空間での訓練なんてしたことない。宇宙飛行士とかのちょっと特殊な職業でもない限りは閉鎖空間での生活なんかを訓練していない。攫われてからは基本的に体を動かしてる時が多く、こういったなにもしないと言うのが新鮮だ。
こういう感覚なのはダメな事だと俺は思う。常在戦場を目指しているわけじゃないので肩の力を抜く時には抜ける様にしておかなければならない。
「どうした、気分が落ち着かないのか?」
ソワソワしている事にベイグは気付く。
「閉鎖空間での訓練をなんもしていないのに加えて今回が初の襲撃する側だ」
「そうか……どんなものであろうとはじめては怖い。そういう時は大事な人の顔を思い浮かべればいい。大事な人との大切な時間……オレの場合だと恋人のアクレと一緒に食事をしている時だ」
本人なりの励ましを送ろうとしているのだろうが、結果的には惚気話になっている。
見た目が老けてる方で既に中学生ぐらいの容姿をしているがまだ中学にすら行っていない年齢なんだぞ。
「そうそう。帰ったら美味い物を食うんだって意気込むんだ」
「それは
ドツリも飴を舐めながらどうすればいいのか教えてくれる。しかしそれは下手をすれば死亡フラグだった。
「美味しい物って言うがイアドリフの食事、そんなに美味しくない」
「ふっ、ラファのプレーンオムレツを食ったことが無いから言えるんだ。腰を抜かすほど美味いぞ」
「そうだ。アクレのピーチパイは
「日本だとちょっと金を出せばそれ以上の物が食える」
何気にリア充なドツリとベイグ。
彼女の手料理こそ1番だと言うがこっちの世界に暮らして約2年。まだまだ右も左も分からず文字も読めなかったりするがコレだけはハッキリと言える。
「日本の飯をナメんじゃねえぞ」
世界三大料理はトルコ、中華、フレンチとなっているが日本の飯はそれよりも美味い。
他の国の料理をパクって日本風にアレンジをしていると言われればそこまでだが、それでもその辺の店で食える物と比較しても日本の飯は世界一美味い。
「そういや、お前は
「……ラーメンだな」
「ラーメン。ああ、温泉の湯を使った麺料理か。別に特段美味い訳じゃなかったけどな」
「こっちの世界じゃそれが限界なんだ」
最近になって木の灰を使えばより良い麺になることを知れたが、1番の要である鰹が無い。
そもそも魚に詳しくないので鰹がどんな見た目なのかイメージ出来ない……鰹節に至ってはどうすればいいのかわからん。燻すのは確かなんだろうが。
「お前達、無駄話はもうおしまいだ。さっさとコレを付けろ」
メシ話にヒートアップが掛かるかと思いきやシルセウスが止めに入った。
なにやらVRと思わしき機械とゲームのリモコンっぽいものを手に持っており、俺達に渡してくる。
「ちょっと待ってくれ。俺はこういう機材は扱えない」
「これはそんなに難しい物ではない。子供でも簡単に操作が出来る物だ」
「そうそう、おれでも操作出来るんだぜ」
VRのゴーグルの様な物を嵌めるドツリ。
これは俺もやらなきゃいけない展開だとゴーグルをセットしてみるがなにも見えなかった。いったいどういうことだとゴーグルを外して尋ねてみようとするがベイグ以外はゴーグルを装備していた。
「目当ての物を見つけれなければオレ達の負けだ」
ピッピッピと機械を操作していくベイグ。
これは言うとおりにしておいた方がいいともう一度ゴーグルをつけると視界は相変わらずの真っ暗だった。与えられたリモコンの様な物に触れてはみるものの、うんともすんとも言わない。
「トリオン兵、出動」
ベイグがそう言うと視界が切り替わって、俺がなんの装置を使っているのか分かった。
コレはトリオン兵を遠隔操作するリモコンだ。原作でも似たような形状の装置が出ていたのから多分同じ物なのだろう。
「俺の考えた作戦と違うんだが」
俺の考えた作戦は俺達が実際に現場に出て暴れながら例の場所を探す筈だ。
「なにもお前の作戦を全て認めたわけじゃない。成功率を上げるならばこうしてトリオン兵を遠隔操作して探した方がいい」
「……まぁ、そうか」
シルセウスにそんな事を言われたらなにも言い返せない。
実際のところ、俺の作戦の中での不安要素としてそれが見つからないと言う可能性もあったわけで事前にこうして調べれるなら調べた方がいい。
とはいえ、それを事前に言ってもらえなかった事に関しては若干ショックだ……いや、そもそもで俺にリモコン操作をさせない為だろうか。
「……割と普通のところだな」
「気をつけなさい。アリステラは大国じゃないけれど、それでも充分に驚異的でそれなりの実力者が居るわ!」
トリオン兵を経由してのアリステラの光景はのどかな国だった。今からこんな所に災厄を撒き散らすのは心が痛むが、そうしなければ俺達の明日が手に入らない。
「ジョン、貴方は適当に動き回って撹乱しなさい。その間に私達が探すわ」
「ったく、捨て駒か」
使い捨ての兵であるトリオン兵。倒されてもこちら側は痛くも痒くもないので躊躇いなく切り捨てる。
俺のする仕事はとにかく相手を誘導する事だが、こちらの世界にも当然の如くトリガー使いがいるわけで剣を持った男にあっさりと切られる。
「今だ!」
「え?」
初めての操作でトリガー使いをぶっ倒せとか無茶があると言いたくなっているとベイグが機械を操作する。
何してんだよと思っていると視界が眩い光に包まれる……そう、これは所謂自爆である。
「トリガー使いを1人倒すことが出来たぞ!」
ベイグの野郎、敵を一人一殺させる為に自爆機能を搭載したトリオン兵を使わせやがったな。
使い捨ての駒だからって何でもかんでもやりやがる……こうでもしないと格上や同格の国には勝てないのか。
「ジョン、次のトリオン兵だ!今の自爆機能を見て前衛は下手に手出しは出来ない。シールドで時間を稼げ」
「シールドって、どうやって出すんだ!?」
「何時もの様に念じろ」
俺に新しいトリオン兵を配給する。
先程と見た目が同じトリオン兵で剣を持ったトリガー使い達は手を出すのを躊躇っている。攻撃すれば残存するトリオンを全て爆発に変えるトリオン兵なんて近距離から相手にするのは得策じゃない……ああ、さっきの爆発で生身の肉体に戻ったトリガー使いが倒れている……!
「おい、なにをしている!シールドを展開して時間を稼げ」
「いや、こっちの方が効率がいい」
命令通りに動かない俺にベイグは驚くがこっちの方がいい。
俺はトリオン兵を操作して爆発にやられて生身の肉体に戻ったトリガー使いをガッシリと掴む。
「成程、これなら攻めてこないな」
シルセウスは俺の取った人質に納得をする。
ボーダーのトリガーには流れ弾対策として安全装置がついているらしいが、こっちの世界で行われているのはマジの戦争でありそんなものは一切付いていない。仲間を人質として扱う卑劣極まりない作戦だが効果的であることには変わりはない。
『離せ、離しやがれ!』
必死になって俺から逃れようと藻掻く。生身の肉体でトリオン兵に勝てるはずもなく、男の抵抗は虚しいものに終わる。
トリガー使いの男を人質に取ったことで戦況は僅かだが変化をする。銃撃手達中距離以上の戦闘をメインとしている奴等はヘタに攻撃する事は出来ない。ヘタに攻撃をすれば自爆をしてトリガー使いを殺してしまう可能性がある。近距離戦闘メインの剣使い達もだ。
「時間は出来る限り稼いでいるつもりだ……まだ見つからないのか?」
「無茶を言うな。探し始めたばかりで最低でも後数分は掛かる……っ!」
「おいこら、撃ち落とされてるじゃねえか」
俺が上手く揺動している間に探す手筈だったがシルセウスの操作する空中を飛ぶトリオン兵は破壊された。
俺が下手に攻撃出来ない状況を作ったから代わりにシルセウスのトリオン兵を倒すのに力を割いたか……変なところで欲張ったせいでミスったか。
「見つけたぜ」
次のトリオン兵を送り込まれるのかと思っているとドツリは笑った。どうやら目当ての所を見つけてくれたようだ。
となると俺の出番ももうおしまいかと思っていると視界が再び眩く光り出した。
「お、おい、なにやってんだよ!目当ては見つけたんだぞ」
なんの迷いもなくトリオン兵を爆発させたベイグ。
既にこちらが目的を果たしているにも関わらず殺しを実行した。
「今回の仕事は敵の国であるアリステラに遺恨を残すレベルで痛手を負わせることだ。お前の立案した計画に気付かれない為にも1人殺しておけば注意はそちらに向く」
「っ……」
あくまでもやっていることは戦争なので情けは一切かけない。
今回は相手の国に恨みを抱かせるレベルでの侵攻をする……それは頭では理解していたつもりだが、心では理解しきれていない。
「そう落ち込むな。お前の立案した作戦は間違っていない……胸をはれ」
「そういう問題じゃねえよ」
人が死んでいくのに慣れてきた筈なのに、こんなにあっさりと死ぬのを見てしまうと気分が下がってしまう。
無理矢理拉致されて戦争に加担しているという自覚が最近薄くなっていた証拠だろう……もっともっと気を引き締めないと。
「それでどうする。今すぐに行くのか?」
沈んだ気分を持ち直しているとシルセウスは次を話す。
今回、作戦を立案したのは俺だが最終的な決定権を握っているのはドツリにある。
「いんや、少しだけ間を置く。警戒は厳重になるかもしれないけど、そうなればあの場所への警備が手薄になる……俺達には緊急脱出機能がある。出先での多少の無茶は可能だ……なによりこいつがな」
「……今すぐ出来る」
「そんな顔色の悪い奴を連れていけるかよ。時間をくれてやるから気持ちの整理をしろ」
どんだけ悪い顔をしているんだろうか、俺は。
今やった方がいいかもしれないのに俺を優先してくれるドツリには感謝をしなければならないが……気持ちの整理をしなければならない。
「お前は人を殺した事があるか?」
目を閉じて肺の中の空気を全て吐いているとベイグが聞いてきた。
「……直接はまだないな」
トリガー使いと何度か戦った事はある。
情報漏洩を防ぐ為に自爆装置を持たされてたなんて事があったものの、直接自分の手で人を殺した事は無い……そんなもん無い方が良いに決まっている。
「なら今回が初になる可能性があるのを頭に入れておけ。これは遊びじゃない、戦争なんだ」
厳しい非情な一言を俺に突きつける。
そう、戦争なんだ……死人が出るのは極々普通な事だ。卓球でだって死人が出るんだ……くそ。
「手を洗うか?」
「そんな事をしても意味は無い」
俺を気遣ってくれたのかシルセウスは手を洗うことを聞いてくるがそんな事は意味は無い。
俺の手には血が付いていない……トリオン兵は爆発してしまったし、完全犯罪の成立だ。死体すらまともに残っていないのだから。
「作戦を実行するなら早く進めてくれ。チンタラ時間をかけてしまう方が精神的に来る」
気持ちを落ち着かせようにもやることがない。
閉鎖的な空間に居る為に余計に精神的に来る……俺って遠征向いていないタイプの人間なんだろうか……それはそれで困るな。
「そんな状態の人間を戦場に行かせるわけにはいかない。脱出機能があろうとも無駄に戦力を浪費するだけだ」
俺の状態を俺よりも分かっているドツリは首を縦に振らなかった。
こんな状態で戦うよりも気持ちを落ち着かせて戦えか……気持ちを落ち着かせる方法なんて俺は知らない。
「ゲームでもあったらな」
「トランプならあるぞ」
気持ちを切り替えるのならばなにかゲームでもしたい。
思わず呟いてしまうとシルセウスがトランプを取り出すが今はトランプをやりたい気分じゃない。
「テトリスかぷよぷよの落ちゲーがやりたい」
「てとりす?ぷよぷよ?」
なんだそれと頭に?を浮かべる。
そういえば何時だったかルミエも地球だったらどうやって暇を潰すか聞いてきた事があったな。今ならハッキリとぷよぷよとかテトリスとかボンバーマンとかで暇をつぶしてると答えれる。
Dr.STONEで落ち物ゲーのプログラムは至ってシンプルとか言ってたし、ぷよぷよとテトリスはルールが至って単純だからトリガー技術で再現する事が出来るはずだ……オセロを作るんじゃなくてテトリスを作るとか何処のなろうだよ、俺は。
「少し仮眠を取る」
「なら、目を覚ました頃に襲撃を開始する。それまでは各自英気を養う、でいいか」
「ああ」
「それで構わないぞ」
ドツリの案をベイグとシルセウスは賛成し、一先ずは休息を取ることにした。
この間にも警備が頑丈になっているんじゃないかと思うが、それはそれでこちらの本来の目的を果たす事が出来るので丁度いい。
「……ルミエに頼んでみるか」
なにかの本で読んだので記憶が曖昧だが、食肉用の生き物を殺すことで殺しに対する耐性を身に着ける事が出来る。
多分なんかの漫画の知識だろうが、生き物の命を奪う事で耐性を身に着ける事が出来るのならばやっておいて損は無い筈だろう。帰ったらルミエにやらせてくれと言っておこう。リーナもやっておかないと同じ目に合うかもしれない……やれって言ったらああだこうだ言ってくるんだろうな。
休もうとしている筈なのに気付けば余計な重圧の様なものが増えていっている。何時もの事だが閉鎖的な環境にいるせいで通常の何杯もストレスが掛かってしまう……こんちくしょう。
「うし、じゃあ作戦の確認だ。先ずはシルセウスとジョンが出て場を荒らして敵の本体を足止め、その間に門を開く機能を備えたラッドを農地に向かって飛ばし、そこからおれが塩をばら撒き荒らす……ホントにコレでいいんだよな」
作戦を決行する直前になって疑い出すドツリ……正直俺も行けるかどうか微妙なところがある。
「地球の昔の言葉にこんな諺がある。敵に塩を送る」
「なに!?
あ、やべ、勢いに任せて適当な事を言ってしまった。
シルセウスは完全に敵に塩を送るを破壊工作の意味だと勘違いをしているが訂正はしない。兵糧攻めは古来の戦でも当たり前の如く行われたものだから。
「さぁ、行って来い。脱出機能があるから思う存分に戦え」
そんなこんなでトリオン兵と共に門を潜ってアリステラの大地を踏み込む。
今まで出てくるのを迎え撃つだけだったのが、まさか襲う側になるとは思いもしなかった。今回の戦績が良ければ、もしかするとまた遠征をさせられるかもしれない……ああ、くそ、考えるのはやめだ。
「オラァ!」
取り敢えずトリオンで出来た爆弾を出来るだけ遠くにぶん投げる。
いきなりの襲撃に市街地に出入りさせないようにしている近衛兵達もワンテンポ反応に遅れる。
「(派手な動きは程よくしろ。無理に攻めるんじゃない)」
俺の行動を横で念話を通じて注意するシルセウス。そういえばシルセウスはどんな戦い方をするのかを聞いていなかった。
この遠征に選ばれるという事は相当な実力者なんだろうと思っているとアリステラ側もモールモッドを数体出してきた。
「敵襲だ!」
「トリガー使いは2名だ!」
大声を出して報せを届ける近衛兵達。
こちらもモールモッドが居るのでトリオン兵同士の戦いならばこちらの方が分がある。俺が電球の開発に成功したから市街地等に使われる灯りの殆どが電気に切り替わって、その分のトリオンをトリオン兵に注ぎ込んで通常よりも強い個体が出来ている。
「私がいく」
近衛兵と思わしき奴等が俺達目掛けて突撃をしてきた。
持っている武器が槍なので【ウスバカゲロウ】でも使って倒そうかとするとシルセウスが突撃をした。
「はやっ」
走りのフォームの矯正とか色々とやってそれなりの速度で走れる様になったのに、それを遥かに凌駕した速度で走る。
なにか裏があるなと狙撃や射撃に警戒をしつつ【カゲロウ】でモールモッドを切り裂いていると驚くものが見えた。
「捻り貫打突」
腰の入ったいい拳で相手をぶん殴ると貫通した。
トリオン体を使っての格闘技って、原作で言うところの遊真の黒トリガーと同じ戦闘スタイルを取っている……。
「(お前、トリオン体が普通じゃないな)」
「(ああ。私はシールドと脱出機能以外のトリオンをトリオン体に注ぎ込んでいる。その為に通常より遥かに高い性能のトリオン体で近接格闘が可能だ)」
原作で言うところのガイストに近いのだろうか。シルセウスがトリオン体だけで戦えるのは素直に凄い。
あっという間に叫んだ近衛兵達を倒す……
「殺さないのか?」
「私は無益な殺生は好まない」
「その割にはベイグのやり方になにも言わなかったな」
「それはそれ、これはこれだ」
あくまでも戦争だから時には有益な殺生を認めるつもりか。
戦争をしている奴等は狂気を感じると思っていると増援がこちらに向かってやってくる。
「!」
もしかしたら、万が一、だったらいい。ここに来るまで俺は何度も何度も思った。
まさかそれが本当に実現するとは思いもしなかった。
「なっ!?」
俺の目が、俺のサイドエフェクトが正しければその男から虎の様な闘姿が見える。
その顔は若いがハッキリと分かる……後にボーダーの本部長となる男、忍田真史がそこにいた。
今後の展開
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そろそろ原作にいけ
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もう少しオリジナルをやれ。