近界プルルン奮闘記   作:ドドドドド黒龍剣

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第25話

 

「っ!」

 

「あ、ウチはもう終わりやで」

 

 誰がどれだけ落ちているのかが分からないクソみたいな状況、せめて誰が落ちたかぐらいは報せてほしい。

 これもまた改善点の1つ……いやでも、落とされた事が分からない状況での戦闘の方が臨場感があって実戦に近いか。

 ツインテールの少女に遭遇するとルルベットは臨戦態勢に入るのだが、自分はもう既に落ちてしまったと割れた皿を見せる。

 

「あんた、誰にやられたの?」

 

「ヒ・ミ・ツ……言うてももう残っとるんはレクス達とマイテスと自分らだけや」

 

「そう……残りは僅かね」

 

 少女もといナユから誰に倒されたのか情報を得ると次にどう動くかルルベットは考える。

 ナユの言葉が本当ならばレクス達が最後に残った相手である……真正面からレクスと勝負し、ぶつかって勝てるかと言えば自信は無い。それだけレクスは強い、一度模擬戦の様な物をやったから分かるがあいつ手の内を隠している。なにをかはわからないがなにかを隠している事だけは確かだ。そしてそれは訓練では使ってきていない……多分確実に息の根を仕留めるからとかそんな感じだから使ってこないのだろう。

 

「どうする?」

 

「まぁ、そうだな……」

 

 ナユがレクス達と言っていたのでレクス以外にも見えた、あの那須与一の闘志を持っていた奴が居るという事だ。

 那須与一が見えたという事は弓兵、つまりは銃撃をメインに戦っている……レクスメインで那須与一がサポートをする。至ってシンプルだがレクス並の実力者ならばそういうシンプルな作戦の方が効くのだろう

 

「ジョン!」

 

「リーナ……何故ここにいる?」

 

 色々とどうしようかと頭を回転させているとリーナ達がやってきた。

 ガルードは少しだけ困った素振りを見せるのだがリーナが俺に抱き着いてくるのは止めようとしない。別に止めなくても良いことなのだが、何故此処に居るのかを一応は訪ねてみる。

 

「残りの人数がこっちの人数を上回ったから合流をしようと思ったんだ……まずかったか?」

 

「いや……どうだろうな」

 

 ガルードが状況を教えてくれる。

 ロロクというレクスのチームの二刀流の使い手をリーナとガルードが上手く連携をして倒して更にはドツリが落とされている事が分かった。

 残っているのはマイテスとレクスとブンレイの3人……さて、どうするか。向こうが徒党を組んでくるという事はまず無いだろう。そういうことをすればこの試合の趣旨が変わってくるっと

 

「お前等、着けられたな!」

 

「え!?」

 

 色々と考えていたいけれどもその時間すら俺達には与えられない。

 ブルース・リーっぽいのがリーナ達の背後から見えたので槍を構えると建物の裏から俺達と同じぐらいの男性が出てきた。

 

「驚いた、コッソリと着いてきたのによく気付いたね」

 

「面倒なサイドエフェクトを持っているんでな……1人で乗り込んでくるとは愚かだな」

 

「マイテス、お前には悪いがここで倒させてもらう」

 

 4対1の戦い、向こうの戦闘スタイルはブルース・リーが見えることからシルセウスと同じ徒手空拳。

 そうなると1番狙われやすいのは誰かと言われれば俺だろう。槍の間合いを詰められれば、一応は格闘術を鍛えているけれどもまだ本職に勝つことは出来ない……っ!

 

「お前、やってくれたな」

 

「ああ、分かるんだね……レクス達をここに引っ張ってきたのを」

 

 4対1で決して勝つことが出来ない相手ではない。

 このまま普通に激闘を繰り広げれば確実に負ける……のでレクス達をここまで引っ張ってきた。こちらに向かってレクス達がやってきているのが手に取る様に分かる。サイドエフェクト様々だな。

 

「ブンレイさん、フォローを頼んだよ」

 

「了解、おっさんに任せてちょうだいな」

 

 右手に剣を左手に盾の片手剣のスタイルのレクスに……アレは……なんだ?弓みたいなのを持っているブンレイのおっさん。

 持っている弓……ああ、鎧武に出てくるソニックアローに形態が近いな……となるとアレから弾が飛んでくるのか。

 

「てやぁっ!」

 

 レクスは俺に向かって斬りかかってくる。

 この混戦状態の中で槍使いである俺は間合いを詰められると管槍の本領を発揮する事が出来ない……というかトリオン体と槍の相性は地味に悪い。槍は切り裂くよりも殴打に使うのが正しい感じの武器って昔漫画で見た覚えがある。

 木製の棒で管槍の遠心力とピストン運動が加わった一撃の突きは鉄をも容易くへし折るとんでもないのだがトリオン体にヒビを入れるのが限界である…………さて無駄知識の披露目はここまでにして色々と考える。

 

「こんな状況を想定していないと思っているか?」

 

 槍は間合いを詰められればそこまでの武器であるが、間合いを詰められた時の事を想定していないわけがない。

 原作キャラこと米屋が槍の長さを調整する事が出来たように俺の管槍も長さを調整する事が出来る。小太刀ぐらいの短さにまで収縮するのだが、ここでブンレイの矢が飛んでくるのでシールドを展開する。

 

「俺を潰しにかかる気か」

 

「君が一番落としやすいからね」

 

 確実に落とせる駒から落としていくつもりなのだろう……だが、そう上手くはいかない。

 レクスの剣を受け流すと横からルルベットが飛び出してきてレクスに斬りかかるがレクスは左手の盾で上手く攻撃を防ぐ。

 

「ジョン、指示を」

 

「っちょ、今キツい……」

 

 混戦状態の中で指示をルルベットは仰ぐ。マイテスを倒しにかかればその隙を突かれてレクスとブンレイが襲ってくる。

 数の上では有利だが実力ではレクス達の方が上で4対2対1に見えるが実質4対3に近い……考えろ、思考を止めるんじゃない。

 

「おっさんを忘れてもらったら困るぞ、少年」

 

 ブンレイは弓を引いて、弾を撃つ……やっぱりソニックアローだ。

 もしこれが実戦ならば当てに来たのだが、今回は動きを制限する為に当たるか当たらないかスレスレの弾を拡散させた。動きを制限する弾で実戦ならば今ので落ちていた可能性が高い……格上だから、経験値に変えないと。

 

「ジョン、マイテスはオレに任せてくれ!」

 

 どうしようかと思考を張り巡らせているとガルードから提案を受けた。

 カッコよく言ってくれるのはいいけれども勝てる打算は無い……考えろ、考えろ。

 レクスが間合いを詰めてきて、距離を取ろうとすればブンレイが狙撃してくる。フォローに回ってくれるルルベットはレクスとタイマンで勝つことは難しい。リーナを呼び寄せたいけれども、マイテスが邪魔で呼べない。

 マイテスもマイテスで慎重に戦っている。途中でレクス達が襲撃してこないか意識を分割している……まずいな、詰んだか……いや、まだ終わっていない……

 

「【ウスバカゲロウ】」

 

 まだ使っていない手札は残っている。

 短くした状態の管槍で【ウスバカゲロウ】を起動し、レクスに突きを入れる……当然というかこの訓練の為に専用にトリガーを改造していてダメージが通らない様になっているがフィードバックの様なものは受けるのでレクスは仰反る。そこに隙が生まれる。ルルベットは勝負を決めにレクスに突撃をしようとするのだがその前にブンレイの矢が飛んでくる

 

「おっさんの存在を忘れないでほしいな」

 

「なら、この超絶美少女のリーナを忘れないでよね!」

 

「自分で言うのか」

 

 ブンレイの弾にルルベットの皿は命中して割れるが、ここで隙が生まれる。勝ったと思った時ほど油断をしやすいだろう。

 リーナが【カゲロウ】を振るいブンレイの金的にある皿を破壊した。そして思わずツッコミを入れてしまう、自分で自分の事が可愛いとか美少女とか言うのは無いだろう。

 

「ジョン!」

 

 ルルベットが落ちたのでこちらは3人になったがブンレイを落とせたのは大きい。

 狙撃による援護が無くなった……だが、危機的状況には変わりはない。ガルードはマイテスの猛攻を防ぐのにやっとの様なので救援を求めている。俺は槍を元の長さに戻し、マイテスの胸元目掛けて高速の突きを撃つ。

 

「させないよ!」

 

「いや、終わりだ」

 

 マイテスは管槍の先端部分を回避し、管槍の棒の部分を脇でガッチリと挟んだ。

 これはまずいとマイテスは一歩間合いを詰めてくると肘を俺の胸元に向けて打ち込んできて、俺の皿は見事に砕け散る……と同時にガルードが拳銃を発砲し、マイテスの胸元にある皿を砕いた

 

「ここまでか」

 

『終わったら余計な指示をせずに戻ってこい』

 

 俺の戦いはここで終わりだ。

 リーナになにか指示をしようと思ったが、それはさせてくれない様でこの訓練を裏で見守ってる誰かから通信が入る……ガルードとリーナはなんだかんだと上手く噛み合っているのでなんとかしてくれるだろう。

 

「ガルード、フォローに回れ」

 

「ああ」

 

【カゲロウ】の二刀流で早速切り込むリーナ。

 レクスは盾で防ぎつつ、盾の形状を変化させて凹みを作り上げてリーナの【カゲロウ】を挟み込むがリーナは直ぐに【カゲロウ】を手放してレクスの間合いよりも更に詰め寄りレクスの腕を掴んで足を払う

 

「今よ!」

 

 狙うならば今しかない。

 ガルードに体を崩したレクスを撃つように言うとガルードは二丁拳銃を撃ちレクスの皿を割った

 

「ふぅ……勝てたか……いや、違うな」

 

 この訓練、何度か負けに繋がる展開があった。

 そもそもで最初のスターチェ達との戦いの時点でこの訓練が銃手(ガンナー)達に不利だった……ボーダーのランク戦みたいにするんだったら、俺が無理矢理レクスの動きを抑えて俺ごとリーナに斬ってもらうという手立てもあったわけで……この訓練はトリガーに馴れる為の訓練としては有用かもしれないがトリガー使いと戦うのを想定して戦うのには向いていない。

 ボーダーのランク戦のシステムをどうにかしてこちらの世界の技術で再現する事が出来ないかと言いたいが、この世界にはコンピューターが、電気で動く電卓が無い。あるのは電球ぐらい……ボーダーが現れてこの世界に交渉に来てくれる、なんて都合のいい展開にはならないだろう。そもそもで今原作開始何年前なのか知らないし。

 

「あんた、中々やるじゃない。見直したわ」

 

 俺の事を下に見ていたのかルルベットは素直に俺を称賛する。

 しかし今回なにも出来なかったに近い。戦術らしい戦術を出せなかった……俺の指揮能力はまだまだ未熟だ。まだこんなので満足してたらいけない。もっと指揮能力も高めないと……この先を生き抜くことは不可能だろう。

 

「武器さえ違っていたら、もっと上手くやれた……槍一本に固執したせいで余計な手間がかかった……武器の換装を変えれる様に上に提案しないと」

 

 ボーダーのトリガーの様に武器を瞬時に変えれるシステムの開発を上に打診しよう。

 前々から注文しているトリガーと組み合わせればそれなりに強くなる……筈だと願いたい。コレばっかりは実戦経験を積まないとなんとも言えない。

 

「レクス、今回の訓練はこれで終わりか?」

 

「後は今回の訓練に対する不満点や改善点を……ジョン達はイアドリフの文字を書けなかったんだったね。音声認識で出来る様にしておくよ」

 

 はいこれとインカムの様な物を渡される。

 音声認識で文字を入力していくシステムを使ってくれるので俺はボソボソと今回の訓練の改善点や不満点を呟く。

 銃系のトリガー使いにとって今回の訓練はやりにくい。更に言えば近距離での戦闘も何処を狙ってくるのかが分かっている状態なので攻撃が読みやすい読まれやすい状況だ……トリオン体が勿体ないがランク戦をやった方がいい。

 

「大体こんな感じね……ジョンは?」

 

「俺の方も大体終わっている」

 

 リーナもこの訓練に不満点や改善点を言い、音声認識で機械に入力する。改善点等は大体言い終えたのでコレで終わりだ。

 インカムをレクスに返して帰ろうとするのだがレクスが待ったをかけた。これで終わりだというのにまだなにかあると言うんだ?

 

「今日の訓練は特別だったからね、打ち上げに極上の肉を用意したんだ。食べていかないか?」

 

「肉、ねぇ……お前等はどうする?」

 

 ここに来てのノミュニケーションが出てきた。別に肉が希少な物とかそんなわけではない。

 食おうと思えば何時でも食える物だ……だが、レクスの事だろうから上質な肉を用意しているだろう。ルルベット達はどうするのか聞いてから自分がどうするか決めよう。

 

「私はパスよ、甥っ子が家で待っているのよ」

 

「甥っ子がいるのか?」

 

「ええ……姉さんの忘れ形見よ……」

 

 ルルベット、なんか重そうな雰囲気を醸し出しているな。

 帰りを待ってくれる家族が居るからここで飲みュニケーションを取るつもりはないというとレクスはちょっと待ってくれと何処かにいく

 

「若いのに色々と苦労してるんだな」

 

「別に、もう馴れたわ……自分で選んだ道よ、後悔はしていないわ」

 

 甥っ子と一緒に暮らしているルルベット。

 両親や姉、義兄はとうの昔に他界していて甥っ子を食わせていく為にもイアドリフの軍に従属している事を、出来る限り自分が有用な存在だと示す為に努力している。

 

「変な同情はしないでよ、ムカつくから」

 

「そんな暇はねえよ……」

 

 他人に同情なんかしている暇は俺にはない。明日を生き抜くのにやっとな身の上なんだから。

 ルルベットの身の上を知ると意外と苦労しているぐらいの認識……下手な同情はしちゃいけないこと……なんて言える立場じゃないんだよな。なんだかんだでリーナを引き連れているのが俺の非情になれない甘いところだ。優しさと甘さを履き違えている。

 

「おまたせ、肉を切り分けてきたよ。持っていってくれ」

 

「こんなに貰っても食べきらないわよ」

 

 2kgぐらいの肉の塊を持ってきたレクス。ルルベットはこんなには貰えないと断ろうとするのだがレクスはグイグイっと押してくる。

 小さな甥っ子と俺と対して変わらない年齢の女子に2kgの肉の塊は……どう考えても多すぎるな。レクス自身は好意で渡しているのだろうが……まぁ、うん。

 

「俺もここでノミュニケーションを取るつもりはない」

 

 とりあえず俺もここに残るつもりがない意思を示しておく。

 仲良くしておかなければならない場なのは分かっているがイアドリフの住人と仲良くしようとは思えない。なんだかんだで俺達を拐った国なんだ、心を許せるわけがない。

 

「リーナ、お前はどうする?」

 

「ジョンと一緒がいいわ……肉なんて何時でも食べれるし」

 

「……なら、家に来る?」

 

「……は?」

 

 あまりにも突然の提案だったので俺は固まる。今まで黙っていたルルベットから意外なお誘いが来た。

 

「どうせ家に帰っても甥っ子とご飯するだけだし、この量の肉は処理しきれないわ」

 

 だから家に来る?と首を傾げるルルベット。可愛い……じゃなくてどうすべきか。

 チラリとリーナを見るとリーナもどうしたらいいのか戸惑っている。こんな状況になるなんて想定していない。

 

「いいのか?変な奴等を家に招いて……甥っ子がビックリして泣き出しても知らんぞ」

 

 自慢じゃないが子供に好かれにくいと俺は思っているんだ。リーナみたいに容姿に優れてるわけでもないし……甥っ子ビビらないだろうか。

 

「あんた程度で怯えるほど、あの子は臆病じゃないわ……嫌ならいいけど」

 

「…………どうする?」

 

「この場から去れるならそれでいいわよ」

 

 リーナはこの場にはいたくなさそうだな。

 ルルベットの家に行くのも本当ならば不満じゃないだろうか……ここは断るのも手だが……お腹空いてきて思考が纏まらないな。

 

「なら行かせてもらうか……レクス、俺達は別でやっておくから」

 

「はい、君達の分だよ」

 

 肉は要らないと言おうとする前にレクスに肉を渡された。

 向こうはニコニコ顔で渡してきている。純粋な好意で渡してきていて断りづらい……上質なサシが入った牛肉。部位が何処かは分からないが結構高そうな肉である事には変わりない……まさかと思うがコレ、レクスの自腹とかいうオチはないだろうな。尚更断りにくい。

 

「じゃ、行くか」

 

 貰えるものは貰っておいて損はない。配給で貰えるものは質が悪かったりする。

 俺は3kgぐらいする肉とルルベットが貰った2kgぐらいする肉を手にリーナと一緒にルルベットの家に向かった。




感想お待ちしてます

今後の展開

  • そろそろ原作にいけ
  • もう少しオリジナルをやれ。

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