近界プルルン奮闘記   作:ドドドドド黒龍剣

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第26話

 

「ただいま」

 

「おかえり、ルルベット!……?」

 

 レクス達のバーベキューをの誘いを断りやってきたルルベットの家。

 意外と大きな家で俺やリーナより良い暮らしをしてるんじゃないかと思える。連れ去られた奴隷にはあれぐらいが丁度いいのか。

 ルミエが色々と甘く裁定を降しているが忘れてはいけない。俺やリーナが使える駒だから比較的にマシな生活を送る事が出来ている。

 

「フィラ、怯えなくていいわよ。こいつら私の……私の……なにかしら?」

 

 甥っ子と思わしき男の子がルルベットの元に駆け寄ろうとするのだが俺とリーナが居るからか固まった。

 ルルベットが紹介をしてくれるのだがルルベットにとって俺やリーナが何になるのかを悩んでいる。友達と呼べる程仲が良いわけではないし、仲間と呼べるほど絆があるわけではない。上司と部下という上下関係は一切無い。いや、人権を無視される時が極稀にあるので俺やリーナの方が下である。

 

「同僚が1番しっくりくるな」

 

「この二人は私の同僚よ」

 

 故に俺達は同僚というのがしっくりと来る。

 ルルベットもそれでいいと俺達を紹介し直してくれるのだが甥っ子は警戒している……コレは、俺に対しての警戒だな。警戒されるもなにも何もしていない。警戒される理由がなにかあるのだろうか……姉が取られると思う甥っ子の嫉妬か?

 

「ほら、ちゃんと挨拶しなさい」

 

「フィラです」

 

「あら、礼儀正しいのね。私はア……リーナよ」

 

「ジョン・万次郎だ。ジョンと呼び捨てで構わないぞ」

 

 危うく本名を言いそうになるリーナだが、なんとか堪えて愛称だけ教える。

 俺も本名でなくコチラでの名前を教える……リーナにだけ警戒心を解いている。解せん、別にルルベットを取って食おうと思ってるわけないだろうが。

 

「ちょっと待ってて、水を出すから」

 

「なにか手伝おうか?」

 

 ここでお茶じゃないのが近界の文化らしい。ルルベットに家の奥に案内されたのでなにか手伝う事はないのか聞いてみる。

 

「今日はあんた達はお客さんだからなにもしなくていいのよ……て言っても納得しないわよね。挽き肉を作るから肉をある程度纏まった大きさに切っておいてくれないかしら?」

 

「それなら私にも出来そうね」

 

 ルルベットに頼まれるとリーナが前に出てくる。

 コレは非常にまずい事に……ならないよな?肉をカレーとかでよく見るサイコロ状の大きさに切るぐらいだからリーナでも出来る筈だ。

 まな板と包丁とボウルをルルベットは置いてくれるのでリーナが手に取るのだが両手で包丁を持っている

 

「リーナ、違うぞ……こうやって肉を切るんだ」

 

 このままいけば肉が廃棄の道を辿るかもしれない。

 レクスが用意してくれた上質な肉を捨てるのは勿体ないとリーナの手と俺の手を重ね、一緒になって肉を切る。

 

「あんた、馴れてるのね」

 

「基本的には俺がなにか作ってるからな」

 

 リーナの出身国が英語圏内の国のせいかは知らないがリーナはマトモに料理が出来ない。

 配給される食料から食事の献立を組み立てないといけないので基本的には俺が食事を作っている。最近の子供はしっかりしているので料理が出来て当然とか思っちゃいけない。外国人、料理出来ない人は料理できない。

 

「挽き肉にするとはいえ、もうちょっと綺麗に切りなさいよ」

 

「綺麗にって、挽き肉にするからいいだろう」

 

「こういうのはちゃんとした方が美味しいのよ……貸してみなさい」

 

 リーナから俺に、俺からルルベットに包丁が渡る。

 最終的には挽き肉にするのだからそこまで乱切りの大きさを気にしなくてもいいんじゃないかと思ったが、ルルベットは綺麗に肉を切っていく。

 

「ぼ、ぼくもなにか手伝うよ!」

 

「フィラには危ないからまだダメよ」

 

 俺と一緒に肉を切っている姿を見て嫉妬したのだろうか、フィラは手伝おうと脚立を持ってくるがルルベットはダメという。

 フィラ、幼いけど幾つぐらいなんだろうか……いや、他人の年齢なんてどうだっていいか。それを言えば俺も12でもうすぐ13だし。

 

「後は私がやるからゆっくり寛いでて」

 

 ミンチ肉を作り出す道具に切った肉を入れるルルベット。

 ここからはやることがなさそうなのでルルベットの言うとおりに寛ごうと思うのだがフィラが俺の事を見てくる……

 

「俺の顔になにかついているか?」

 

「!……えっと……ルルベットの同僚、なんだよね?」

 

「まぁ……一応はそうなるな」

 

 基本的には国に向けてやってくるトリオン兵を撃退するぐらいで、誰かと一緒なんてない。あってもリーナとコンビでの仕事だ。

 ルルベットと顔を合わせたのは今日がはじめて……そう、はじめてなんだ。それなのに家に招待されるとは思いもしなかった。

 

「ルルベット、無茶な事はしてない?」

 

「……どうだろうな」

 

 フィラはルルベットの事を心配している。

 甥であるフィラ以外の親族や義兄は死んでしまっており、食わせる為にも食っていく為にもルルベットは軍に従属している。イアドリフの軍に従属すればある程度の食料は配給されるし、お金を貰える……奴隷である俺やリーナには一切給料は無いけれども。俺とリーナの収入源、与えられた農地で栽培した米とか、米を売った金で得た大豆から作った味噌とか醤油とか……ホントに小説家になろう系だな。

 

「まだまだ青いところがある。死に急ぐというか生き急いでいるというか」

 

「やっぱり」

 

「でも弱いというわけじゃない……まぁ、なんとかなっている」

 

 子供になにを話しているんだろうな、俺は。ルルベットは余計な事を言うんじゃないと強く俺を睨みつけてくるが今更そんな視線で怯えるほど肝は弱くはない。

 

「ジョンって強いの?」

 

「弱いよ……弱いからイアドリフで奴隷をやってるんだ……あんまりこの辺に関しては聞かないでくれ」

 

 自分が弱いとか強いとかあんまり考えない様にしている。強さというのは力とはまた別の物とか哲学的な事を考えたくない。

 俺は毎日必死になって生きている。油断すると余計な事を考えてしまう。だから難しい事は考えない、そうじゃないと……辛いから……ああもう、ホントに嫌になるよ。

 

「……なんでここにいるんだろう。なにやってるんだろうな、俺は」

 

 一周回って頭が冷静にハイになったのか今まで考えない様にしていた事がポンポンと浮かんでくる。

 イアドリフに何故居るのだろうか。地球の日本で平穏に暮らしていたのに拐われてしまって……ああ、ホントに嫌になる。

 

「出来たわよ」

 

 フィラに色々と聞かれるので答えていくとあっという間に時間が過ぎた。

 ルルベットは言っていた通りキッシュを作ってきた……キッシュとパイってなにが違うんだろう。どっちもパイ生地を使っているけど……お菓子か主食かの違いだろうか。

 

「……美味い」

 

 キッシュを八等分に切り分けて取り分けていただく。

 ひき肉とチーズとペースト状のトマトが絶妙なまでにマッチしており、普通に美味かった。キッシュなんてもの食べるの始めてだが普通にイケる。ミートパイっぽいのがまた絶妙な

 

「……」

 

「リーナ?」

 

「……口に合わなかった?」

 

 モグモグとキッシュの味を楽しんでいると隣に座っているリーナの手が止まっていた。

 リーナの嫌いな物は食べた感じ入っていない。じゃあなんで手が止まっているのかと思えばポロポロとリーナは涙を流しはじめた。

 

「……It tastes the same as my mom」

 

「え、え……なんて言ってるの?」

 

「お母さんと一緒の味がしているって言ってるんだよ」

 

 イアドリフに来て間もない頃に売られていたミートパイを口にして涙を流していた。故郷の、親の味を思い出してしまい泣いていた。

 7歳ぐらいの子供だからもしかしたらキッシュとパイの違いを分かっていなかったかもしれない。リーナの母親の味はミートパイじゃなくミートキッシュだったのかもしれない。

 

「リーナ、泣くな……泣いても意味は無いんだ。なにも変わらないんだ」

 

「……」

 

 ポロポロと涙を流すリーナ。泣いていたってなにも変わらない、泣いても誰も助けてくれないんだ。

 親の味と言われれば俺も覚えている……でももう食べられる事はないかもしれない。イアドリフに玄界と交渉する価値はあると言って地球に向かってくれないとなんにも出来ない

 

「あんた達は玄界(ミデン)の人間だったわね」

 

「……ああ、そうだ」

 

「玄界ってどんなところなの?」

 

「……いやっ…………」

 

「ルルベット、言葉は選んでくれ。落ち着け、落ち着くんだリーナ……俺達が居るのはイアドリフなんだ。アメリカでも日本でもなんでもない」

 

 リーナの反応を見て地球が、住んでいた故郷がどんなところなのか気になったのかルルベットは尋ねてくる。

 ルルベットに悪意は無いのだろうが、今まで考えない様にしている事を考えさせられる。思い出してももう二度と手に入らないかもしれない。

 とりあえず俺がやれることと言えば震えて涙を流しているリーナを抱きしめて落ち着かせる事ぐらい……でも、本音を言えば俺だって泣きたい。好きで転生者やってるわけじゃないし、好きでこんなところに居るわけじゃない。こんな生活を送っていると平穏な生活がどれだけ幸福だったのかよく分かる……あ〜くそ

 

「お前が余計な事を言うから俺も我慢出来なく、なったじゃねえか」

 

 必死になって我慢しているものが今、弾け飛んだ。

 ポロポロと俺も涙を流す……誰でもいい、助けてほしい……そんな事を口にしないのは俺のちっぽけな男としてのプライドだろう。

 

「なんで泣いてるの?どこか痛いの?」

 

「……うるさい……Shut Up……It wouldn't have happened without you」

 

「っ、リーナ!!」

 

 興奮して感情的になったリーナは憎しみの感情をフィラに向けて、手を伸ばそうとする。

 それはいけない、それをすれば二度と後戻りは出来ないし、やらせてはいけない事だ。フィラの胸倉を掴む前にリーナの手首を掴んで止めに入る

 

「Let go……Without them, I could have lived peacefully and attended school by this time.」

 

 感情的になり日本語で会話をしない。

 ルルベット達が、近界民がいなければ俺もリーナも今頃は平穏に暮らしていて学校に通って友達と笑い合っていただろう。だが、それが出来ない状況にある……全てはこの理不尽な世界のせいだ。

 

「言うなよ……そんなの言うなよ。ルルベット達だって明日は我が身の危険な事をしてるんだ……こんな馬鹿げている」

 

 甘い事を微温い事を言っている自覚はある。悪者を決めて楽になりたい思いもある……けど、それをすれば憎しみの感情に囚われる。

 憎む事が悪いわけじゃない。俺はリーナが思っているほど聖人君子じゃない。憎しみで負の連鎖を繰り返すぐらいならば、耐え凌ぐしかない……転生していてはじめて良かったと思える。子供ならばもっともっと感情的になっていたか感情が死んでいたかのどちらかだろう……もっと、もっと感情を上手く制御出来る様にならないといけない……くそっ。

 

「……泣きなさいよ。大人だって辛い時は泣くものよ……無理に意地なんてはらなくていいわ」

 

「それは出来ない事だ……俺はこの国に対して心は開いていないし、開くつもりはない」

 

 だから見せちゃいけない、弱い部分を……それが虚勢だと、強がりだと言われようが構わない。

 この最後の心まで失ってしまえばそれこそ本当の意味で奴隷に成り下がってしまう。現時点で奴隷みたいなものだけども。

 

「リーナ、大丈夫……じゃないよな。今日はもう疲れたよな、シャワーは浴びずに一緒に寝よう。大丈夫、俺はお前の側に居るからな」

 

「……」

 

 リーナは無言で俺の手を強く握った。今日はもう疲れた、涙を流して肉体的にも精神的にも辛くてウトウトしている。

 今日はもうコレまでだなとトリガーを起動してトリオン体に換装しリーナをおんぶする。

 

「泊まっていきなさいよ、部屋なら余ってるわ」

 

「いや、やめとくよ……家には帰りを待ってる狼がいるし……それに人の暖かさを感じたくない」

 

 泣いても意味は無いんだから泣く必要は何処にもない。イアドリフの日常の1ページを肌で感じるとポロポロと堪えていたものがこぼれ落ちてしまう。ルルベットには悪いが一線を引いておかなければならない……ホントに油断出来ないギリッギリのところを歩いているな。いっそのこと何処かで精神崩壊した方が楽なんだろう……子供じゃない分、早々に心は壊れないか。こういう時はガキだった方がよかった。

 

「……ジョン」

 

「なにも聞かないしなにも言わないよ……泣くなら泣いとけ」

 

「……ジョンは泣かないの?」

 

「俺はとっくの昔に涙は枯れ果てた……でも、リーナはまだ枯れ果ててないだろう」

 

 リーナは涙を流す。さっきみたいに興奮をしていない、ポロポロと静かに涙を流していく。

 さっきは泣くなと言ったのに泣いとけって言っている……俺もなんだかんだ情緒不安定だな。リーナの前だからカッコつけておかないといけないって心の中で思っている。リーナが居なければ今頃は泣き上戸並みに涙を流している……リーナがいるから……依存してるな、まったく。

 

「ただいま」

 

「おかえり」

 

「おかえり」

 

「ただいま」

 

 部屋に帰ってきたのでとりあえずは言っておく、リーナは馴れたもので普通に返事をしてくれる。こういう何気ない日常は大事だ。

 部屋に戻ってくると飼っているニホンオオカミことミブが飛んできて、俺に擦り寄ってくる

 

「ただいま、ミブ」

 

「ワン!」

 

「こら、リーナが寝ようとしているんだ。吠えるな」

 

 オンブしているリーナをベッドの上に降ろす。ミブは俺が中々に構ってこないのか吠えるので軽くチョップを入れる。

 リーナは……目を閉じてゆっくりと呼吸を整えている、眠りにつこうとしているな。

 

「ジョン、何処に行くの?」

 

「何処にも行かねえよ」

 

「嘘……ミブを連れて散歩に行くんでしょ。私も……」

 

「リーナはゆっくりと休んでくれ……今日は色々とあったんだからさ」

 

 ベッドから離れようとするとリーナがパッと目を覚ます。こういう時のリーナはとにかく敏感なので眠らせるのが1番だ。

 俺は側にいるとリーナに言い聞かせて手を握る。リーナはゆっくりと目を閉じて眠りに落ちる……完全に寝るのに30分ぐらい掛かるから、30分はこの状態をキープ、その後にミブの餌やりと散歩……シャワーも浴びたいから寝るまでに1時間ぐらいかかる。夜ふかしは成長の妨げになるからしたくないがこれぐらいやっておかなければ俺の精神が安定しない。

 

「ジョン、寝ないの?」

 

「お前が寝るのを待っている……ゆっくりでいいから眠るんだ」

 

 俺が中々に布団に入ってこないのでリーナはパッと目を見開く。

 リーナは俺に布団に入ってきてほしそうにするがコレばかりは譲る事は出来ない。リーナは強く俺の手を握るので俺もリーナの手が痛まない程度の力を込めて手を握ると今度こそリーナは眠りに落ちた。

 こういう時にサイドエフェクトは便利だ。リーナが眠りに落ちた事でリーナが持っている闘志が見えなくなる。リーナから溢れている闘志が見えなくなる=リーナは眠りに落ちたというのがよく分かる

 

「……どうすればいいんだろうな」

 

 なんとか人並みの生活を送ることは出来ているが現状、行き詰まりを感じている。

 手柄を上げてなんとかして俺達が優秀で有能であるとアピールをしたいが事件らしい事件は起きない。時折、トリオン兵がやってくるからそれを討伐したりするだけだ……事件が起きなければなにも変わらないというのはなんとも言えん。

 このまま平穏であってほしいと思う反面、もっと上に成り上がって地球に帰る手立てを見つけたい……その為にはボーダーの存在が必要不可欠だ。玄界にもトリガー使いが、トリガーを使う団体が居ると分かれば交渉する価値があると見出してくれる。

 ただ問題があるとすれば今が原作開始何年前かということ。アリステラに若い頃の忍田本部長が居たという事と遊真の年齢から逆算して……6,7年ぐらいだろうか……この時間を無駄にしてはいけないな。

 

「仲間、か……」

 

 1人ではどうすることも出来ないのが現状だ。だから仲間を作らないといけない、が……どうすれば仲間が出来るのか俺には分からん。

今後の展開

  • そろそろ原作にいけ
  • もう少しオリジナルをやれ。
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