近界プルルン奮闘記   作:ドドドドド黒龍剣

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第27話

 

 あれから更に1年経過した。俺は13歳に、リーナは…11歳になった。

 剣を知らねば槍は握れぬ、槍を知らねば剣を握れぬ。

 兵法書か漫画かは知らないがそんな格言っぽい名言を見た記憶がある。ホントに何処で見たかは覚えていないが、内容だけは覚えている。

 こんなくだらない事を覚えるぐらいならば電化製品の作り方を、石神千空並の知識を蓄えておけば良かったと後悔する事は拉致られてから何十回も思ったことだろう。そもそもで転生している時点で色々とおかしい……どうせなら転生特典で石神千空並の知識を寄越せよ。剣の才能とか槍の才能とか努力でカバー出来るが知識はある種の才能が必要なんだぞ。

 

「……開始してくれ」

 

 農地の作業も今は待つのが作業な為に水やり以外でやることは特にはない。雑草とか抜くのもいいが本職を忘れてはいけない。

 俺は攫われてしまった奴隷だ……奴隷らしい生活は送ってなくもない気もするがそれはそれである。今よりも下位で奴隷らしい生活を送るのは勘弁願う。

 暇な時間が出来ればなにをするか、訓練しかない。剣も槍もある程度の腕前になったので次に鍛えるのは銃の腕だ。

 俺にはトリオン操作の才能が無いので【ミラージュ】を使うことは出来ない。故に中距離以上の距離で戦うには体を動かして体で覚える銃しか道はない。

 

「っ!」

 

 2丁拳銃でなく1丁の拳銃をクイックドロウする。

 目標は野比のび太、あいつ冗談抜きで射撃のセンスがおかしい。列車の劇場版の際に撃った弾がぶつかった衝撃で空中を舞っている空き缶に5発の弾を命中させるとかホントにどうなっているんだ。実際に試してみたが3発しか撃ち込めなかったぞ。

 

「アレは減点でも撃つ」

 

 訓練の内容は至ってシンプルだ。飛んでくる的を撃つという至ってシンプルなルールだ。

 ただし全ての的を撃ち抜けばいいわけじゃない。時折的の代わりに人の顔が描かれたパネルが出てくるのでそれは撃ってはいけない……但しルミエの憎たらしい顔なので躊躇いなく撃ち抜く。あいつのあんちくしょうな顔を見るとこの上なく腹が立つ。

 

「っと、いけねえ」

 

 利き手である右手に握られている拳銃だけしか使わないのはいけない事だ。

 威力と速度に設定を割り振っている拳銃と威力は無いがその分多く弾が打つことが出来る突撃銃(アサルトライフル)を持っている。これも使う。飛んでくる的に発砲すると蜂の巣が出来る。今のところは順調だが、まだまだ未熟なのが分かる。

 今度は複数の的と顔が交互に同時に出てくる。コレは味方が近距離で戦っているのを想定した状況であり、味方に誤射をせずに相手にだけ弾を当てる……のだが、俺の腕はまだまだ未熟な為に弾が顔のパネルに弾が当たる。

 

「さて、どうするか」

 

 飛んでくる的に弾を当てる事は出来ているがまだまだだ。

 ここからどうやって上を目指すか、銃の腕前を鍛え上げるのか……ここから更に狙撃銃も覚えないといけない。何時死ぬのか分からない身なので時間に余裕はない。現状、中距離以上の攻撃に俺は弱い。リーナがフォローしてくれるが戦いになれば常に1人と思わなければならない。

 

「ここにいたか」

 

 一通りの的を撃ち終えるとルミエが現れた。こういう時にやってくるのは大抵ロクな事じゃない。

 嫌悪感を剥き出しにしてみるもののルミエの薄ら笑いは消えることはない。俺の事を完全に見下しているから、下に見ている奴に嫌われても心は痛くも痒くもないんだろう。

 

「今日は休みの筈だろう」

 

「休み?なにを言ってるんだ、お前達にはそんなものは存在しない。トリオンの回復の間であって休みはないんだ」

 

 息を吐くかの様に毒を吐くルミエ、こんなのは日常茶飯事なのでいちいち気にしていたらキリが無い。

 なにをしに来たのか尋ねるとルミエは着いてこいと言ってくるのでルミエに着いていくと何時ぞやの王宮と思わしき場所、でなく無駄にデカい豪邸に辿り着いた。商売をしている市場の地域にならば足を運んだりするが無駄にデカい豪邸が立ち並ぶ住宅街は足を運ばない、足を運ぶ理由がそもそもで無い。

 

「ここは何処のどなたの住宅だ?」

 

 豪邸ということは良い暮らしが出来る身分の人間が住んでいる。

 また会ったこともない国の重役と会合をさせられるのだろうか?ハッキリ言って俺は政は向いていないんだぞ。もう出せる知識といえば……なんだろう。娯楽系の知識か?……特撮ならばアホみたいに知識があるぞ。

 

「シャーリーの家だよ」

 

「……なに?」

 

 シャーリーといえば1年ほど前に会った俺よりちょっと歳上なお姫様だ。

 王宮に暮らしているんじゃなかったのかと言いたくなったが言葉を飲み込み屋敷に足を運ぶと給仕と思わしき人物が頭を下げた。

 

「お待ちしておりました」

 

「どうやら待たせてしまったみたいだな……言われた通り、ジョンを連れてきたよ」

 

「彼が、ですか……どうぞこちらに」

 

「ああ、オレはここで……これから色々と忙しくなるからな。案内してくれ」

 

「はい、かしこまりました」

 

 給仕がルミエを案内しようとするがルミエは断り俺を給仕に押し付ける。

 ここでルミエとはお別れ……コイツと一緒にいると色々とストレスを溜め込むので別れる事が出来たのはいい。給仕の人に案内をしてもらうと庭に出て、そこにはシャーリーがいた。

 

「ジョン、久しぶりだな」

 

「これはこれはどうも。私の様な身分の低い人間をこの様な場にお呼びいただき感謝いたします」

 

 シャーリーは私を出迎えてくれる。闘志を剥き出しにしていないので純粋に俺を歓迎してくれるが油断は出来ない。

 とりあえずこういう場所に来たのならばそれらしい態度を示しておく。するとシャーリーは困惑した表情を取った。

 

「そ、そんな事をしなくてもいいぞ」

 

「いえいえ、貴方様は末席とはいえ王族の身。対して私は文化も文明も異なる地球から攫われた奴隷、どうあがいてもどう逆立ちしたと対等になることは出来ません」

 

 あくまでも奴隷と王族……時折忘れそうになるのだが、コレが本来あるべき姿だ。

 そういう態度を取られたくないと優しさを持っているが、俺はこうしておきたい。こっちの世界の住人とあまり仲良くはしておきたくない。

 

「わざわざこんな奴隷を呼び出してなにか御用でしょうか?」

 

 とりあえずは本題を尋ねる。

 こっちも暇じゃない。テトリスとかを作った件に関しての報奨はとうの昔に得ている……まぁ、リーナは中々に部屋に出ていってもらえないが。

 

「一緒にお茶を飲まないか?」

 

「……」

 

「そう警戒しないでくれ……毒や怪しい薬は使っていない。ただ、その……玄界がどんなところなのかを教えてほしいんだ」

 

「ふざけるな、寝言は寝て言え」

 

 シャーリーなりのコミュニケーションなんだろうが俺の怒りの琴線に触れている。

 玄界の事を教えてくれと攫っている国の機関の中枢を担う人材がどの口を持って言えるのか……ホントに何様のつもり、いや、お姫様だったか。

 

「4年も地球に居ないんだぞ、記憶も段々と薄れてきてる」

 

 嘘である、ちゃんと地球に居た頃の記憶は覚えている。ただ他人には教えたくない。

 俺にとっては掛け替えのない思い出であり、それを喜々として他人に語るなどしたくはない……ここでは■■■■でなくジョン・万次郎という名前で生きているんだ。

 

玄界(ミデン)の人間は玄界の事を地球と呼ぶのか」

 

 シャーリーに対して嫌悪感を向けているがこの程度の事には馴れているのか動じない。

 逆に俺の発言から地球を地球と呼んでいると納得した表情になっている……めんどくせえ。

 

「帰っていいか?」

 

「それはダメだ、折角お茶会の準備をしたというのになにもしないのは勿体ない」

 

「俺は茶会なんて似合わねえ事はしたくは…………」

 

 別にこの場から部屋に帰ったとしてもなにも問題はない、精々姫様が悲しむぐらいだろう。

 それなのにやたらと俺を足止めするかの様な動きを見せてくる。そもそもで何故俺だけ呼ばれたんだ?基本的にはリーナとセットで呼ばれる筈なのに……なにか裏があるな。

 

「……微妙な味だな」

 

 裏があるのが分かれば飲みたくもない紅茶を飲む。

 日本人なので緑茶とか麦茶の味はちゃんと分かるが紅茶の味は俺には分からない。そもそもで食の文化が違う。ケーキらしき物があるので口にするがこれまた微妙。日本人は舌が肥えすぎてるというが確かにその通りだ。まだスーパーで売られてる100円のケーキの方が美味しく感じる。

 

「玄界のお茶はそんなに美味しいのか?」

 

「知らん……俺は静岡県民じゃない」

 

「シズオカケンミン?」

 

 お茶に関して詳しくは知らない。基本的にはティーパックの茶葉を湯で沸かした物しか飲まない……そう考えるとお茶が恋しくなる。

 余計な事を言えばシャーリーに情報を与えてしまう。こちらからなにも言わない方向で、聞かれたから受け答えする形で慎重になって言葉を選ばなければならない。

 

「ジョンは最近、目立った事はしていないが順調なのか?」

 

「俺は目立ちたがり屋じゃねえ……順調にやっている」

 

 なにか目立った事をしていると思っているのか、このお姫様は。

 電気を作って電球を作って緊急脱出機能を作って味噌を作って醤油を作ってトリガーを作ってもらって……作ってばかりだな。

 

「最近じゃ銃にまで手を出している……トリオン操作がヘタクソだからそこで打ち止めだ」

 

「銃だけにか?」

 

「くだらねえ洒落を言ってるんじゃねえよ」

 

 何一つ面白くもなんともない。ここ最近、笑う感情すらも死にかけているから余計にイラッと来る。

 八つ当たりは良くない事なのでこれ以上は何も言わない。

 

「銃は事前に弾道処理をした弾を撃つ物だ。銃を構えて引き金を引くだけの至ってシンプルな動作で鍛えれば鍛える程に腕は上がっていく」

 

「……トリオン操作の才能が無い以上は銃に頼るしかない」

 

 つくづく自分という人間が中途半端なのが分かる。

 もう少し手柄を上げれば更にトリガー開発を……いや、そもそもでトリガー工学に関する知識を持った人を仲間に引き込まないといけないから無理か。そもそもで仲間を作る方法が……。

 

「随分と仲良くしている様だな」

 

「あ、先生」

 

 嫌な事を考えていると1人の女性が現れた。見知らぬ顔で何者かは分からないがシャーリーは知っている様で座っていた椅子から立ち上がった。

 先生、ということは軍の人間だろうか……いや、どうだっていいか。

 

「お前が噂に聞くジョン・マンジローか?」

 

「マンジローじゃない、万次郎だ……人に名前を尋ねる前に自分から自己紹介はするつもりはないのか?」

 

 万次郎のイントネーションがおかしいので訂正をしつつ女性を睨みつける。

 

「それは失礼した。私はレグリット、主に重役の子息達の教官を務めている」

 

「……だから先生か」

 

 また随分と偉いようで偉くない地位がイマイチよく分からない人が出てきたものだ。

 重役の子息達に色々と教えているということは多方面に渡り様々な知識や知恵、技術があるのだろう。

 

「ジョン・万次郎だ、万次郎と呼ぶな。ジョンと呼んでくれ」

 

「先生、どうしてここに?」

 

 向こうが自己紹介をしてきたのでこちらも自己紹介をする。万次郎呼びは好きではない、マンジローと呼ぶ人多いし。

 シャーリーはどうしてここに来たのかを尋ねるとリグレットは俺に視線を向けてくる……闘志を剥き出しにしていないが……めんどくさいな。

 

「なんでも変わった槍を使っていると噂を耳にしてな……どんな槍なのか見せてくれないか?」

 

「それは命令か?」

 

 槍について尋ねてくるので確認を入れておく。

 ピクリと眉が動き闘志が剥き出しになる……吉田松陰か。重役達の子息を鍛えているから英雄を鍛えている英雄になる……ケイローンじゃないのがまたなんとも微妙なところだろう。

 

「命令でなければ出さないと?」

 

「俺は奴隷だ。命じられた事しかやらない」

 

「……そうか。ならば命令だ、お前の槍を出せ」

 

「……トリガー起動」

 

 命令とあらば仕方がない。トリガーを起動してトリオン体に換装すると管槍を出現させ、レグリットに渡す。

 

「ジョンの槍さばきは中々のものです……特に突きの速度と練度は桁違いで」

 

「ふむ……シンプルだが面白い構造になっているな」

 

 ふん!と管を経由して高速の突きを放つレグリット。俺に当たると危ないので距離を取る。

 

「コレは自分で考えたのか?」

 

「まさか……管槍は祖国で500年前に作られて……確か、現代では消火活動の道具に応用されている」

 

「500年……流石はトリガーを用いずに文明の発展に成功した玄界(ミデン)、といったところか」

 

 面白いものを見せてくれて感謝するとレグリットは管槍を返してもらう。

 ただそのまま返してもらうのもあれなのでパフォーマンスだと回転させながら突く管槍だからこそ出来る技術を見せると目つきが変わった。闘志が揺らいでいるわけではないが……なんだろうな。なにかを隠している事だけは確かなんだろうが

 

「そうだ、ジョン。折角だから先生に銃の手ほどきを受けてはどうだろう?」

 

 色々と考えていると閃いたという顔をするシャーリー。

 

「なんだ銃も使うのか?」

 

「最近、手を出し始めたそうです……先生は色々と武器を使えるがその中でも銃の腕に長けている。ジョン、先生の指導は厳しいがその分確実に」

 

「嫌だね」

 

 シャーリーはレグリットに銃を教わるべきだと提案をしてくる。

 レグリットからは吉田松陰が見える。吉田松陰は桂小五郎や高杉晋作等の偉人を教え子に持つ……腕は本物だろうが俺は教わるつもりはない。

 

「俺はここの連中からものを教わりたくない……お前もそうだがここの連中は大嫌いだ」

 

「っ……」

 

 くだらない感情なのは理解している。頭を下げれば伸び悩んでいる銃の腕の欠点を改善する方法を教えてくれるかもしれない。

 だが、それでも俺にだって譲れないものはある。ここの奴等に対して心は開きたくない。なにも思いたくない、虚無でありたい。嘘偽りなく本心で答えるとシャーリーは悲しそうな顔をする。お前に対して心を開いていると思ったか?大間違いだ。俺が気を許してるのはリーナだけで、そのリーナは甘えん坊なところがあるから気を置く事は基本的には出来ていないんだ。

 

「そうか……教えてほしくなったら何時でも教えてやる」

 

「随分と軽いな」

 

「なに、今のでその管槍の大まかな構造は把握する事が出来た。なにも難しくない、槍に1本の管を備え付ければいいだけでエンジニア達に負担を掛ける構造ではない量産が可能な武器だ……今後のイアドリフの標準装備になる可能性を秘めている。そう考えれば銃の指導は安い使用料だ」

 

「……1つだけ言っておく。管槍はそう安々と使いこなせる物じゃない。剣を知らねば槍は使いこなせないし、槍を知らなければ剣を使いこなせない」

 

「いい言葉だな……玄界の言葉か?」

 

「本かなにかで見た記憶がある……何処かは分からない、忘れた」

 

 ホントに何処で見た知識なんだろう……謎だ……まぁ、いいか。

 

「それで、なにを隠している?」

 

「……なんの事だ?」

 

「惚けても無駄だ。特になにかをやったわけじゃない気紛れを起こしたわけでもない、王族様がわざわざ俺を呼び出して茶会を開くなんてなにか裏があるんだろう……」

 

 尚、俺に惚れたという選択肢は最初からない。

 モッサリとした見た目の俺を吊り橋効果抜きで好きになる人間なんて早々にいない。仮に居たとしても今ならば闘志を経由して他人の好意や好感度も分かる。

 

「なにを言っているんだ、今回は私が玄界がどんなところなのか気になったから呼び出しただけで裏もなにも」

 

「姫様……貴女にはなにも知らされていないだけです」

 

「え?」

 

 純粋な好意で俺を呼び出したと主張しようとするシャーリーだがレグリットは諦めたのか一息吐いた。

 シャーリーはなにも知らされていない……この性格や王族の末席に座っている事から多分上層部の嫌われ者とか目の上のたんこぶ的な存在だろうな。

 

「現在、イアドリフはとある国と離れていっている……ここまで言えば分かるだろう」

 

「……まさか……」

 

「ああ、イアドリフは数年ぶりに玄界(ミデン)へと近付いた。何をするかは言うまでもない」

 

「…………そうか」

 

「吠えないのか?」

 

「今、頭の中がしっちゃかめっちゃかになっている。冷静でいられない」

 

 色々と言いたいことがあるのだが自分が奴隷だという事を忘れてはいない。イアドリフに対して文句を言ってやりたいが言ったところでどうする事も出来ないのが現実なんだ……。

 シャーリーが俺を気に入って呼び出すのを計算した上で俺の足止めに使ったな。万が一遠征艇を奪って地球に逃げ込まれない様にする為に……クソっ、また犠牲者が増える……ああもう、余計な事を考えたくねえ。

 

「命令だ、今から私の仕事を手伝え。マンジロー」




感想お待ちしています

今後の展開

  • そろそろ原作にいけ
  • もう少しオリジナルをやれ。
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