近界プルルン奮闘記 作:ドドドドド黒龍剣
「ここだ……少し待っていろ」
「…………」
レグリットに連れられてやってきたのは嫌な思い出しか残っていないなにもない真っ白な一室。
手錠を嵌められた状態でレグリットはリモコンを取り出すと手錠の鍵を解錠した。それと同時に俺の尻を蹴って部屋の中に無理矢理入れる。別にそんな事をしなくても普通に入るのだが今回俺は攫われてしまった人の1人になっておかなければならない。イアドリフの連中と仲良くしている姿を今は見せることは出来ない。
「Bạn cũng đã được đưa đến đây?」
レグリットが去ると1人の男性が話しかけてくる。
しかし残念な事に使っている言語が日本語でも英語でもない……トリガーを使えば一発でなにを言っているのか分かるのだが、生憎な事にトリガーを取り上げられているのでなにを言っているのかさっぱりである。
「I can't speak english I can only speak Japanese」
英語は喋る事は……多分出来るだろう。伊達に4年間リーナと一緒に暮らしていない、日常会話ならなんとかなる。
ただ今回はその英語力を披露する場ではない。あくまでも純粋な日本人という設定を守らなければならない……なにをやっているんだろうな、俺は。言葉が通じないのが分かった男性は何処か諦めた様な表情をしており落ち込む。
「流石にスゴいのはいないか」
グルリと一回転をして閉じ込められている人達をサイドエフェクトで見る。
この中に優れた即戦力の闘志を持った人物はいない。大抵は獣畜生のオーラが見えるだけで歴史上の偉人や神話の生物は出てこない……まぁ、即戦力になる人間なんて早々にいてたまるかという話だ。
「日本語、日本語で喋りませんでしたか!?」
あ、やべえ。油断していた。思わずボソリと呟くと俺と同じぐらいかそれか少し歳上の女が俺に声をかけてきた。
日本語で喋りかけているというのと容姿からして完全に日本人……?……闘志を見ることが出来ない?……素では闘志を見せない猛者かなにかだろうか。
「ああ、お前も攫われたのか?」
「はい。塾の帰りに振り向くと四足歩行の変な生き物がいて……」
俺の時と似たような状況で攫われているな。
同じ気持ちを共感出来ることは嬉しい……例え自分が今悲惨な状態で、立ち位置であろうとも。まともに話をする事が出来るのが分かると彼女はホッとしている。わけがわからない場所に言葉も通じない人達と一緒にいる。精神的に掛かるストレスは尋常じゃない……リーナも似たような気持ちだったんだろうな。因みにだがリーナは今は防衛任務中である。この特殊な仕事はリーナでは任せきれないので俺一人で遂行している。
「自己紹介がまだだったわ。私は水無月葵」
「俺はジョン・万次郎だ」
話せる相手がいて多少心が安らぐ状態になると自己紹介をする。
向こうは心を開いてコミュニケーションを取ろうとしているのだがこちらは嘘の名前を教える。ホントの名前は極力使わない様にしている……リーナですら俺の名前を知らない
「ジョン……日系のハーフかなにかですか?」
「似たようなものだ……俺の身の上の話よりも、これからを考えよう。……コレはなんの集まりだと思う?」
「何処かの国が私達を拉致した……という線が大きいように見えますが、ここにいる人達は言語が皆バラバラで意思疎通が取れていない。何処かの国というよりまるで宇宙人に攫われたかの様です」
「葵は宇宙人に拉致されたと?キャトルミューティレーションされたと思ってるんだな」
「そうとしか考えづらいの、ここにいる人達は何一つ統一性が無い。宗教、人種、言語、どれも当て嵌まらない」
葵は頭は切れる方のようだが流石に近界民関連は知らないので困惑している。
ここにいる連中の法則性と言えばただ1つ、ある一定以上のトリオン能力を有しているということだ。それは葵にも当てはまる……ただそこにまでは至っていない。ヒントを与えるつもりはない、教えようが教えまいが後で嫌になる程に知るのだから。
「どうやらストレスを大分溜め込んでいる様だな」
「あれは、さっきジョンを連れてきた……」
何時までこの状態が続くのか、タコ部屋で閉じ込められている連中がピリピリしているとレグリットが現れた。
さっき現れた人間がまたやってきたと一同の視線はレグリットに向くと1人の男性がレグリットに声をかける。
「¿Que tipo de lugar es éste? ¿Quién eres tú? ¿Cual es tu propósito?」
「ふむ……」
恐らくはレグリットが何者かここが何処か目当てがなにかを尋ねている。
レグリットは今はトリオン体だ。俺達の時は一度に大量に色々な言語で質問をしてきたせいでトリオン器官を通じての言語の対話が出来ずに日本語でなに言っているのか分からない状態だが今回は違う。
レグリットの出方について見ているとレグリットは拳銃を取り出し、質問をしてきた男の直ぐ真横に銃をぶっ放した
「な!?」
「その質問に対する答えはこうだ……お前達は我々の定めた基準を満たしている。故に他と違い生かした、生き残る事が出来た。おめでとう」
「意味が、意味が分かりません!!ここが何処で貴方が何者なのか目的はなんですか!身代金目当てですか?」
「
ルミエの時とは違ってポンポンとレグリットは話を進める。
葵は説明を求めるがレグリットはそんな事はお構い無しだと部下と思わしき者達を引き連れて腕輪型のトリガーを沢山持ってきた。
「そこの男、こっちに来い」
俺を指名するレグリット。なにをさせるつもりだと近付こうとするのだが葵が俺の服の裾を掴んでいる事に気付く。
やっと見つけた話し合える人が拳銃をぶっ放すヤバい人間に連れて行かれるとなれば誰だってそうなる
「大丈夫だ……向こうはなにかしらの目当てがある。ちゃんと言うことを聞いておけばなにも問題無い」
「でも」
「逆らう方が危険だ……俺になにをさせるつもりですか?」
「……トリガー起動と言え」
あくまでも素知らぬフリをする。ここから何をするのかは大体の予想がつくのだがあくまでも素知らぬフリ、初対面のフリをして装う。
腕輪型のトリガーを嵌めてトリガー起動と音声認識で起動させると生身の肉体からトリオン体に変わった。生身の肉体とは違うと印象付ける為にか青色のジャージの様な物に服装が切り替わっている。
「……これはいったい」
トリガー技術が未知の物なので葵は受け入れる事が出来ていない。
とりあえずは他の人達にも腕輪型のトリガーが配られていく。
「トリガー起動と言えばいい」
どうすればいいのか悩んでいるとレグリットは丁寧に説明する。
与えられたトリガーをトリガー起動と音声認識で起動させると外国人達は生身の肉体からトリオン体に換装した。さっき俺が生身の肉体からトリオン体に換装するところを見ているとはいえ生身の肉体から別の肉体に切り替わると違和感の様なものを感じるだろう。
「どうやら全員、行き渡った様だな」
トリオン体に全員が換装し終えるとレグリットは声を出す。
言葉が通じていると一部の人達は驚くのだがレグリットはそんな些細な事を気にせずにリモコンの様な物を取り出して立体映像を映し出した
「今からお前達には支給された【カゲロウ】を用いて殺し合え……なに、安心しろ。今のお前達は生身の肉体ではなくトリオン体になっている。怪我をする事は無い」
立体映像には何時かの攫われてしまった時のはじめての戦いの日の映像が映し出される。
そこには既に死んでしまっている海外の方が映し出されており【カゲロウ】を用いての戦闘を行っていた。
トリガーの翻訳機能と映像を見せることでこれから自分達がなにをするのか分からされた一部の人達は青い顔をする。生身の肉体でないとはいえ、今から殺し合いをするのだから嫌でも顔が青くなる
「你为什么这么做?」
「なに、タダとは言わない……お前達の今後を左右する戦いだ。温かい布団で寝たければ、シャワーで汗を流したいのなら、綺麗な服を着たいのならば勝ち残れ」
戦う意味を聞く中国人っぽい人の質問にレグリットは答える。
ここで勝ち残らなければ今後の暮らしに大幅に関わってくる……まぁ、既に部屋と農地を貰っている俺には関係の無い話である。
「Tôi không muốn làm điều đó」
「お前達に拒否権は無い。既にコレは決まったことで命令だ。この戦闘訓練の結果次第で今後の身の上が決まる」
「……すみません、ちょっといいでしょうか?」
「なんだ?」
「この服装を変えたいです。黒と白のストライプ模様に切り替えてください」
ここで俺がやれることと言えば、少しでも自分が有能ですよ感をアピールする事だ。
戦うのは例によって何時もの森か廃墟地のどちらかだろう。迷彩柄にしたいと言った時はルミエに却下されたので恐らくは今回も出来はしないだろう。
「ほぅ……いいだろう(おい、目立ちすぎるな)」
口で許可しつつ俺に念話での通話を取るレグリット。
「(そんな事を言われてもコレが1番の道なんだよ。俺の時も同じことをした)」
「(お前が悪目立ちしすぎると若い芽を摘む可能性が高い、程良くしろ)」
「(それは無理な相談だな。どいつもこいつも素人だ)……葵、お前も変えないのか?」
レグリットに注意はされるのだが、生き残る為に自分は有能だのアピールタイムを忘れてはいけない。
葵にも今しかアピールする瞬間はないんだぞと遠回しに言うかの様に服装の入れ替えを伝える。
「そうね……私もジョンと同じく青と白のストライプ柄にしてください」
「……トリガーを寄越せ。少しだけ待っていろ」
葵も俺と同じくストライプ柄の服装に切り替えることを選んだ。
レグリットは少しだけ考える素振りを見せた後に手を出してくるのでトリオン体から生身の肉体に切り替え、渡された腕輪型のトリガーを渡すと部下と思わしき人物にトリガーを持っていってもらう
「お前達は今の内に【カゲロウ】に馴れておけ」
俺と葵のトリガーを弄っている間に他のトリガーを支給された面々は【カゲロウ】を手に取る。
何処からどう見てもただのビームサーベルで実際のところはそんなものであり伸びる機能である【ウスバカゲロウ】や剣先の形状が変化する【トウロウカゲロウ】といった機能は一切搭載されていない。
しかしここで問題が発生する。戦闘訓練を行いたくないのかレグリットの言うことを聞きたくないのかは知らないが【カゲロウ】を持った外国人がレグリットに向けて構える。
「やめておけ、お前達では私には敵わない」
「Si 3 personas atacan desde 3 direcciones, el arma no se puede prevenir」
2丁拳銃なので3人で挑めば問題ないとする外国の人。
そうだと言葉が通じた他の外国人達が【カゲロウ】を構えて突撃するとレグリットは目にも留まらぬ速さの早撃ちで3人の外国人を撃ち抜くとトリオン体が破壊された外国の人達は緊急脱出機能を用いて何処かに消え去った。
「私に挑むのは勝手だがここが何処だか分かっていて挑んでいるのか?勝手のわからない場所で無駄な事をすれば今の様に犬死するだけだ、馬鹿な真似さえしなければこちらも手荒な真似はしない」
「あ、あのっ。撃たれた人達は何処に行ったんですか!?」
「……お前が知る必要は何処にもない」
葵は緊急脱出機能により消え去った3人の外国人達について尋ねるがレグリットは答えない。あえて答えない事により恐怖心を煽る。
多分だけど何処かの牢獄か、こことは違う別の部屋に飛ばされている……逆らったとはいえ、イアドリフが出したトリオン基準値を満たしているので早々に殺すことはしない。仮にしても黑トリガーを作るのに使われる。
「さて、準備が出来たようなのでそろそろいかせてもらうぞ」
何処かに飛ばされた事について葵は怯えている。怯えるのをやめろなんて事を俺は言えない。
言われた通りにストライプ柄にトリオン体を改造し終えたのでトリガーを再び手にしてトリオン体に換装する。レグリットについてこいとついていけば何時もの森、ではなく廃墟地に足を運んだ。
「5分後に合図のブザーを鳴らす。それまでに各自、好きにしろ……ただし逃げたのならば問答無用でトリオン体を破壊する……外に狙撃手は何人も配備してある」
レグリットが手を振り下ろすと俺達のすぐ近くに弾が飛んでくる。
狙撃手が潜んでいるな……息を潜めていても闘志を潜めることは出来ない……そこそこの腕の奴等が潜んでいるな。
これから戦闘訓練を開始すると言われると俺は廃墟地に足を運ぶ……さて、どうしたものだろうか。
「待って、待ってください!」
「なんだ、着いてきたのか」
トボトボと廃墟を歩いていると葵が俺を追い掛けてきた。1人で行動しろとは言われていない。手を組むのは有りだが、それは俺の口から言わない。
「ここまで来たらもう戦うしか道は無いんだ。今更嫌だなんだと言っても意味は無い」
戦わない道は何処にも存在しない。ここでまだやりたくないと駄々をこねるのならばこの訓練開始の合図と同時に斬り殺す。
ここにいる連中よりも俺の方がハッキリと強いと断言する事が出来る。【カゲロウ】1本とはいえ数年積み上げてきたものがある。
「それは分かっています……」
「なら、やることは決まりだ。お前を倒す……優秀な成績を残しておかないと今後の生活に関わってくるらしいからな」
「手を、手を組みませんか?」
「手を組む、ね……」
「はい、ここで無駄に争うよりも互いに協力して生き残りましょう」
「最後はどうするつもりだ?」
「っ、それは……」
俺と手を組んで協力しようと葵は提案してくるが、問題は最後だ。
最後に残るのは俺と葵になったのならばどうするつもりだ?潔く腹でも切るつもりか。
「最後の事は最後になって決める、か……お前は人を斬る事が出来るのか?生身の肉体とは違う別の肉体みたいだが、それでも斬れるか?」
手を組むと提案してきたのは葵だが問題は葵が人を斬る事が出来るかどうかだ。
俺やリーナはなにも問題無く人を斬ったり撃ったりする事が出来るどころか生身の肉体を撃ち殺す事も出来る。人を斬る事が出来ないと葵が答えるのならば俺は葵を切り離す。ここで斬る事が出来ない撃つことが出来ない人材は不要だ。
「……斬れると思います」
「思います、か……ギリギリになって躊躇ったりしたら俺は容赦なくお前を切り捨てる。使えないと分かればお前ごと叩き切る」
人を斬るなんて事をやったことがないので斬れると葵は断言する事は出来ない。
サイドエフェクトで闘志を見れば揺れ動く心を見抜くことが出来るのだが何故か葵の闘志を見ることは出来ない。言葉から本気なのは分かるが……何故だろう。闘志を見ることは出来ない
「ありがとうございます……」
「お礼は生き残ってからだ…………はじまったな」
戦闘訓練開始のブザー音が鳴り響く……この訓練をやるのは久々だ。今回はリーナが居ない、居るのは素人の葵だけだ。
サイドエフェクトで闘志を見て、恐らくはタイマンで俺が負ける相手はいない。管槍じゃない剣だが、早々に負けることはない。【カゲロウ】だけでシールド無しの条件下だが多対一でも勝つ自信はある。
「ど、どうします?」
「そうだな」
このトリオン体にはレーダーが備え付けられている。
手の甲を翳すとレーダーの様な物が展開していく……割と直ぐ近くに1名いる。俺達の様に手を組む事が出来ていない奴か
「数の利を活かして多対一で1人ずつ狩る……手を組んでる奴等は極力避ける」
「でも、これは時間制限がありませんよね?」
「ああ……先ずは1人だけの奴等を狩る、そこから次の段階に移行する」
慌てない、動じない。心も頭もクールにする。9歳の頃の自分ならば絶対に無理だっただろう。4年間積み上げたものが今活かされている。
葵を先頭に俺はレーダーで1人になっている奴のところに向かった。
今後の展開
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そろそろ原作にいけ
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もう少しオリジナルをやれ。