近界プルルン奮闘記   作:ドドドドド黒龍剣

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第3話

「やぁやぁ、おめでとう」

 

 俺以外が全員倒された為に戦いは終わった。

 森から元居た場所に連行されていくと1番最初に出た笑みが胡散臭い男が拍手を送られる。

 1番になるなんて早々に無いことで、喜ばしいことだが男が送っている拍手が酷く濁った音に聞こえる。

 

玄界(ミデン)の人間は戦ったことのない人間が多いけど、君は中々にやるね。剣一本だけだと出来ることが決まっているのに、よくやったよ」

 

「……」

 

「そう嫌そうな顔をしないでくれ。素直に称賛しているんだよ?」

 

「そんな胡散臭い笑顔を浮かべられても困る」

 

 さっきまで殺しあいみたいな事をしていた。

 その事についてよくやったと褒められても嬉しくはない。もっといいところで褒めてほしいが、少なくともコイツはごめんだ。

 

「君は落ち着いているね……いや、落ち着きすぎかな?」

 

「なにが言いたいんだ?」

 

「どんな言語かは知らないが慌てふためいたりする奴等が多く居たのに、君だけはやたらと静かだと思ってね……まぁ、訳の分からない言葉で色々言われたりするよりは何億倍も増しだからいいけど」

 

 遠回しにお前は怪しい、警戒はしていると言ってやがるな。

 とはいえ、既に戦闘用と思わしきトリガーを取り上げられており俺に出来ることは少ない……。

 

「色々と聞きたいことがある」

 

 ハッキリとした上下関係はあるものの対話と会話は成立している。

 今まで気にしないでいた事を色々と聞く機会だと訪ねようとすると待ったをかけると言わんばかりに手を伸ばして口を塞ぐ素振りを見せる。

 

「此処が何処だとか何者とかそういった事は答えるつもりは無いよ」

 

「少しぐらい言う間をくれよ」

 

「違う違う。教えるつもりはあるよ。ただ単にその辺りは明日からみっちりと教えるだけだ。なにせ此処は所謂別世界の一種で君が暮らしていた世界とは大分違っている」

 

「……随分とご丁寧だな」

 

 拐われた奴等に対して1から説明をする時間をくれる。

 普通ならば馬車馬の如くこき使うのだろうが、俺に関しては丁寧に扱おうとしている節がある。

 

「当たり前だ。君は勝ち残ったんだから、これぐらいの待遇はするだろう」

 

「……勝ち残ったから、か」

 

「そうだ……まぁ、言葉すら通じないから他が勝っても意味は無さそうだけど」

 

 今後の待遇を決めると言う事はそういう事だったか。

 俺が勝ったことで俺にはどういう世界でどういう状況かを聞くのと知ることが出来る権利が与えられる……。

 

「他はどうなってる?言葉が通じてない人達ばかりだったぞ」

 

 結局のところ、日本語で喋っていたのは俺だけだった。

 コイツらが喋れるのは現状、日本語だけで文字による会話は恐らくは不可能だろう。そいつらに対してはなにをする?そもそもで負けた奴等に対しての待遇が分からない。

 

「言葉は通じなくても、頭を弄る事は出来る」

 

「っ……」

 

「そう驚かないでよ。何処の国でもやっているよ」

 

 ワールドトリガーの原作で記憶操作や記憶封印措置なんて単語が出ている。

 現代の医術がどれだけ優れているかは知れないが、多分記憶を弄ったり封印したりなんて現代の医療技術を駆使しても無理だ。となるとトリガーを用いた超技術か。

 

「俺の待遇は詳しい事を聞けるのと頭を弄らない……ビリだった奴等はどういう扱いを受ける?」

 

「さっき言った様に頭を弄って都合の良い駒にする。中途半端な順位は嗜好品をある程度、制限する。果物や蜂蜜とかの甘い食べ物は数が少なくて配給しにくいからね。滅多な事じゃ口に出来なくする」

 

 おい、それ何処の福本作品の地下帝国だ。

 

「後は部屋とかだね。君にはちゃんとした一室を与えるけども、他は二人一組の部屋で2段ベット使わせたりとか、ビリの奴等は5段ベットの蛸部屋とか、ああ、真っ先に攻撃してきたバカはもう消しておいたから」

 

 だから、何処の福本作品の地下帝国だ。チンチロで金を巻き上げろと言うのか。

 改めて俺の待遇と負けた奴等の待遇を聞いて少しだけホッとする。もし負けていたのならば、この男とこうして対面する事すら叶わずに言葉が通じない相手と一緒に生活をしなければならない。

 

「質問、上に上がる事って出来るのか?」

 

 このままいけば近界の何処かの国の兵士として育てられる。

 嫌だと言って逃げれる事じゃない。そうなればどうやって生き抜くかを考えなければならない。待遇がある程度は良いとしても戦時中の日本兵よりも質の悪い。これから戦争の毎日であり、どうにかするには成り上がるしかない。

 

「君がそれ相応の価値を持っているのならば、上はちゃんと見てくれる」

 

「あんたが評価するんじゃないのか?」

 

「オレも評価するけど、オレだけが評価しない」

 

 この男もまた国に仕える社畜の様なものなのか。

 まぁ、たった1人の評価でコロッと上に成り上がれるほど、異世界は甘くはないか……なろうとかだったら、コロッと上に成り上がれるんだがな。現実は小説よりも厳しいと言うことだ。

 

「それで、他に言いたいことはあるか?」

 

 俺以外の敗北していった奴等が具体的にどうなるか知った。この国の事とかトリガーに関する詳しい説明は明日から教えると知った。俺が今後の暮らしは比較的にましな生活を送れると言うのも知った。上に上がる方法も知った。

 これ以上は聞くことは無さそうだが、男はまだなにか無いかと聞いてくる……後、聞いてないとなると、こいつの名前ぐらいだが、聞きたいってほどでもない。

 

「オレと会話を出来る時間は限られている。時間は無駄にしたくない」

 

「……」

 

 これ以上は聞くことは無い。向こうからも言うことは決まっている。なら、会話は成立しない。

 終わらせら方がいいのに、わざわざ終わらせずにいるのには意図があるものだと考える。

 

 いったいなにを話せば良いんだ?名前を聞けばいいのか……いや、違うな。

 

「俺を拐った時に鞄はなかったか?」

 

 今はアピールタイムだ。

 戦績以外でのアピールタイムの時間で、この男に自分の価値を示さなければならない。戦力として使い物になるかどうか分からない今、やれることをやるしかない。

 俺は学校の帰りに拐われた。ランドセルを背負っていた記憶はあり、拐われた時にコイツらが持っていったかもしれない。

 

「鞄か……確か拐った時に、皆色々と荷物を持っていたな。どれが君のか分からないし、トリガーらしき物は無かったし返してほしいなら返すよ……けど、なんなのかは説明をしてもらう」

 

 そういうと男は俺を閉じ込めた真っ白な部屋を去る。

 

「アピール、なにが出来る?」

 

 あの様子だと全部、持ってきそうな感じだ。

 拐われた人の中で日本人は俺1人。他の人の荷物を受け取ったとして、それを有効活用する事は出来ない。

 

「お待たせ。どれか分からないけど、持ってきたよ」

 

 手で持つタイプの鞄、肩に掛ける鞄、背負うタイプの鞄。

 国は違えど鞄は鞄だと、十数個の鞄を持ってきてくれたが山積みにされており、俺は自分の鞄は何処かと探す。

 

「殆どの中身が本みたいだけど、なんの本なんだ?」

 

「学校の教科書だよ」

 

「学校?」

 

 なんだそれと言わんばかりに首を傾げる。

 今時学校も知らないのかとなるが、原作で主人公の空閑遊真が学校とやらに行ってみたいと言っていた。となると学校がこっちの世界には無い可能性が高い。

 

「勉学を学ぶ場所だよ」

 

「親から読み書きや計算を教わればいいじゃないか」

 

「それ以外にも色々とあるだろう……歴史を学ぶとか」

 

 ごもっともな一言だ。

 読み書きと簡単な計算ならば親にならうか自力で習得するのが手っ取り早いが、他にも勉強ってのはある。

 

「専門職じゃないのに、専門的な事をわざわざ勉強するなんておかしいね」

 

 そんな事を言われても俺は教育を受ける側で、受けさせる側じゃない。

 山積みにされた鞄を探り、自分のランドセルを見つけると直ぐに中身を確認する。

 

「あった」

 

 最近の小学生は進んでいるからか、転生する前は無かった英語の教科書を見つけた。

 

「目的の物は見つけたようだね。見たところ何かの本だけど、それがいったいなんだと言うんだ?」

 

「……あんたは俺達を拐った。詳しい理由は知らないけれど、なんらかの条件を満たしている……けど、それだけだ。拐った俺達に戦わせたりしようとしているけど、そこで色々な壁がある……1番の壁は言葉だ」

 

 あまり顔には出そうとはしていなかったが、言葉が通じていない事に困っていた。

 頭を弄って洗脳する手段を持っているらしいが何故かそれを最初からせずにわざわざ回りくどい事をさせられた。コイツらにはコイツらなりの考えがあるのだろうが、その上で俺達とのコミュニケーションが必要だ。でも、それが出来ない。シンプルに言葉が通じない。

 

「君ならその言葉をどうにかする事が出来ると?……個人的な感想だけど、今回拐った玄界の人間は喋っている言葉だけじゃなくイントネーションもバラバラだ。君が会話出来るとは思えない」

 

 結局のところ英語が通じたのはあの子しかいない。

 他は何処かの国の人で、なにを言っているのかがさっぱりだ。何処かの国の人達は通じていた様だが、俺にはさっぱり分からない。その事を知っているのか、俺の言葉に魅力は感じられない。

 実際英語の教科書1つと中途半端な英語の知識だけで、英会話をマスター出来るとは思ってもいない。

 

「なら、俺の国に関する情報は?」

 

「面白いけど、その情報でうちがどうなる?」

 

 ああ言えばこう言われる。素人なりに色々と考えてみる。

 結果的に自分の国に利益になることならば採用されるが、そうでないなら採用はしない。具体的なビジョンが見える話ならば首を縦に振ってくれるのだろうが、なにを言えばいいのだろう。

 もしかしたら気付いていないだけでまだなにかあるのかもしれないとランドセルの中身を確認するも国語算数理科社会と使えそうな教科は無さそうだ。

 

「そう落ち込まなくてもいいよ……最初からそういうのには期待してないから」

 

 俺からなにか有用な情報を得れるとは思っていない。

 子供だからか、最初からその手の期待は持っていなかった……そもそもでこんな事になるなんて予想することは出来ねえよ。

 

「……俺以外の奴等は、今、どうなってるんだ?」

 

 気分と考えを変える為に他の事を話題に出す。

 負けたら蛸部屋とか色々と言っていたが、今こうやって俺みたいに話をしている?いや、多分無いな。言葉が通じていないから話そうにも話せない。動画を見せるぐらいしか説明方法が浮かばない。

 

「他の奴等が心配かい?」

 

「……まぁ、一応」

 

 名前も知れず、ついさっきまで殺しあいみたいな事をしていた。そのせいかあまりピンと来ないが、一応の心配の感情はある。俺が勝ってしまったから酷い目に遭わされたと考えてみるとお腹が痛くなる。他人の心配なんてしている暇は無いのに。

 

「何度も言うけど、既に間引きは終えているから殺しはしないよ。ただ単に今後の生活が有利か不利になるだけで、拷問とかはしない……しても意味は無い。言葉が通じないから」

 

 そう言われても気になることは気になってしまう。

 トリオン能力に優れた人がランダムに選ばれているとは言え男と女と性別が分かれてる奴等もいる。そんな奴等が1つの部屋だとしたらなんか怖い。

 

「あの子が心配かい?」

 

 勝つためとは言え犠牲にしてしまった女が今頃どうなっているのかが気になって仕方ない。その事を俺は見透かされている。

 

「そういえば、君は彼女と会話をしていたね……飴は必要だな」

 

 男の不適な笑みは俺の背筋をゾクリとさせる。

 これ以上は交渉しようにも交渉に使えそうなカードは思い浮かばず、最初に閉じ込められていた真っ白な部屋から移動し、十二畳程の広さを持つ部屋に連れてこられる。

 

「今日から此処が君の部屋であり家だ」

 

「っ……」

 

 部屋にある窓を見ると先程戦いを繰り広げていた森が目に入る……分かっていたことが辛いな。

 改めて自分が拉致された事を自覚させられる状況に立たされると胃の中がなんとも言えないムカムカに襲われる。

 

「欲しい物はあるかな?」

 

「……どういう扱いだ?」

 

「いや、ほら。部屋は与えたけどもなにも無いでしょ?このまま床で雑魚寝するのもいいけど、欲しいならベッドとかも用意するって意味だよ」

 

「おい、待て。そのレベルなのか?」

 

 勝者が厚待遇なのを何度も聞かされた。

 十二畳ぐらいの部屋を貰えることは嬉しいことだ。1人部屋となれば尚更だが、文字通りなにもない。絨毯ぐらいしておけと言いたい。

 

「もっとこう、ベッドとか常備されてるんじゃないのか?」

 

「それはビリの奴等が寝る五段ベッドとか……君は寝方も選べるんだよ」

 

 だから、福本作品の地下帝国か。

 まさかのところから始まるのでどうしたものかと頭を悩ませる。今、必要な物は揃えれるならば直ぐに揃えれる。

 

「畳、あるか?」

 

「たたみ?玄界の家具の一種か?」

 

 取りあえずの畳で言ってみるものの、畳は無いようだ。

 あれって日本独自の物か……どうだろう。考えたことは無かったな。

 

「絨毯にベッドとタンスと10日分の着替えと机と椅子に筆記用具、テーブルに後はなんだ……」

 

 テレビとゲームを用意してと言ってもこの世界にゲームは無い。

 体を動かそうにも外に出してもらえない。宇宙飛行士は真っ白な部屋に閉じ込められる閉鎖的環境での生活の訓練があるが、それをこれからずっと続けなければならない。

 

「女は要求しないのか?」

 

「俺はガキだぞ」

 

 何処にでもいるとは言わない。けれど、一般的に見れば小学生でガキだ。

 それなのに女を要求するとか……ああ、そういうことか。

 

「救済措置のつもりか?」

 

「無視したいなら無視してもいいんだよ」

 

「……少しだけ時間をくれ」

 

「うん。いいよ。ベッドとか用意してくるから、その間に答えを出してくれ」

 

 俺の頼みを聞いてくれ、部屋から出ていく。

 

「どうしろってんだ……」

 

 大の字に寝転び、腕で目元を被って考える。

 女をくれると言っているが、その意味は多分、俺と組んだ女をくれるという。

 俺はこうして一室を貰い、ある程度は厚待遇の様だが他の奴等は福本作品みたいな環境下に居るかもしれない。

 

「……どっちに転んでも相手は儲けるか」

 

 俺がこのまま1人でいいと言えばあの子は蛸部屋かなにかで住む。当初の予定通りだ。

 俺が女を要求すればこの部屋で住まう事になり、そこから俺とコミュニケーションを取らないとならない。

 そうなれば英語の教科書と前世の記憶しかない……そこで日本語を覚えて貰えば今度から英語圏内の人達を拐っても日本語を覚えて貰えばいいと儲け物。

 

「……俺が勝てたのはあの子がいたから」

 

 さっきの戦い、勝利した1番の要因は1人で戦わなかったから。

 手を組めない状況下で奇襲を仕掛けることが出来た為に、影からの奇襲を成功した。最後の牙突擬きもそうだ。

 攻撃をくらっても死なないと認識したからわざと攻撃を受け止めて、隙を作ってくれたから牙突擬きを使えた……。

 

「決まったか?」

 

 真剣に悩んでいると戻ってきた。

 腕には絨毯らしき敷物があり、寝具の準備が出来た……タイムリミットが来たか。

 

「俺が求めないと、あの子はどういう扱いになる?」

 

「彼女は3人目だから……ここより少しだけ狭い4人組の蛸部屋に入ってもらう。完全な1人部屋で好きに出来る権利を持っているのは君だけだ……どうする?」

 

「……連れてきてくれ」

 

「曖昧だなぁ」

 

 ハッキリとした答えを出さないので少しだけ苛立っている。

 俺だってどうしていいのか分からないこの状況にモヤモヤしている。胸の内をさらけ出したい気分だ。

 

「連れてきたよ」

 

「もうちょっとましな連れてきかたはないのか」

 

 アイマスクをつけた状態であの子は連れてこられた。

 完全に水■日のダウンタウンの連れ方であり、明らかに怯えている。

 

「Please remove the eye mask.」

 

「This voice!」

 

 俺の声に反応してアイマスクを外す。

 何処に連れていかれるか分からずに怯えていた彼女は俺の声を聞いて一安心をするのだが、安心するにはまだ早い。

 

「Do you understand what you are doing now?」

 

「……」

 

 自分の状況を聞いてみると無言になる悲しい表情をしながら俯く。誘拐されている事自体は理解しているか。

 

「I want you to choose the previous place or this place」

 

「……」

 

「言葉、合ってるの?」

 

「合ってるはず」

 

 頭の中に浮かんでいる単語とかを繋げてやっているから文法があっているかどうか知らん。

 少なくとも言葉は通じている。声は出さないが表情で伝わっている事が分かる。

 

「I want to be with you.」

 

「……そうか」

 

「なにを言っているんだ?」

 

「俺と一緒にしてくれって言った……ベッドをもう一個くれ」

 

「うん、無理だ」

 

「は?」

 

「あくまでもこの子をこの部屋に置くのは認めるけど、この子の分は無い。この子の分は既に此方が用意してた四段ベッドと決まっているんだ」

 

「つまり?」

 

「一緒に寝ろってことだ」

 

 この野郎、この状況を楽しんでやがる。

 作り笑いに若干の殺意を抱くが、女の子が俺の腕を掴んで今にでも泣きそうな顔をする。

 

「What about us?」

 

「俺達は今後、なにをすればいいんだ?」

 

 少しずつ落ち着いてくると今後の心配がはじまる。

 このまま戦場に行けと言われてもそれは死にに行くのと同じだ。

 

「安心してよ、剣一本で戦場に出ろなんて無茶は言わない。うちの軌道は決まっていないからっと、この辺りの詳しい説明をするのは明日になるから今日はもう休んで。食事は時間になったら送り届けられるから」

 

「待った」

 

「まだなにかあるの?」

 

「あんたの名前を聞いてない」

 

 作り笑いが絶えない男。

 名前を聞くつもりはなかったが、ここまで来たのなら聞いてやる。

 

「ルミエ、オレの名前はルミエだ……じゃあ、後で色々と運んでくるから部屋は自分でどうにかしなよ」

 

 ポイっと絨毯を投げると部屋から出ていった……「取りあえず、絨毯を敷くか」

 

「Hey you」

 

「なんだ?」

 

「Tell me your name」

 

「名前……ああ、そうだったな」

 

 短いが濃厚な時間を過ごしたのに、名前を一切名乗っていない。

 この子に対して警戒心があったからじゃなくて単純に名乗る暇が無かった……冗談抜きで周りは敵だったからな……。

 

「ジョン・万次郎だ」

 

「It's not a real name。Please tell me your real name.」

 

「悪いが、ジョン・万次郎だ」

 

 女は俺が本名を教えないことに怒り、頬を膨らませる。

 ジョン・万次郎と比べて今の俺はどうなのだろうか……明日からが不安だ。

今後の展開

  • そろそろ原作にいけ
  • もう少しオリジナルをやれ。

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