近界プルルン奮闘記 作:ドドドドド黒龍剣
「コレは?」
「えっと……20m先、西から人がやってくる。相手はおそらく剣の使い手で中距離以上の戦闘をすべき、かしら?」
「かしら?じゃないわよ。合ってるわよ」
葵が拉致されてイアドリフにやってきてから3か月が経過した。
イアドリフの言語を、文字を覚えなければならない葵だったが地頭力が高いのかみるみる内にイアドリフの文字を覚えていった。外国語を覚えるのと同じ要領で覚えており、文字を覚える事にだけ集中しているのか物凄い早さでイアドリフの文字を覚えていっている。
「基礎的な部分は問題無さそうね」
こちらの世界の文字を完璧にマスターしているリーナから及第点を得た。
それを聞いて葵は良かったとホッとする。こちらの世界の文字を読み取る事が出来なければオペレーター作業なんて夢のまた夢だ。なんとか最初のステージを乗り越える事が出来た……だが、ここからが大変な道だ。
「読み書きに関しては問題無さそうよ……けど、ここからが重要になるわ」
オペレーターとしての腕を磨かなければならない。
機器操作、情報分析、並列処理、指揮、戦術を磨かなければならない……指揮能力に関しては俺も磨かなければならない。リーナと適当にやってて今はなんだかんだと生き残っている。緊急脱出機能を搭載してから1度も戦闘不能で緊急脱出していないのはちょっとした自慢だ。
「オペレーターも良いが生身の肉体も鍛える事を怠るなよ」
「分かっています……」
「生身の肉体は鍛えておいて損は無い……何時か役に立つ日がやって来ない事を祈ろう」
「普通は逆じゃないのですか!?」
「危機的状況に陥っているんだぞ。常識的に考えてもアウトだ馬鹿野郎」
生身の肉体がトリオン体よりも強いというのならばそれでいい。
もし生身の肉体でトリガー使いと戦わないといけないとなると……卵の冠を相手にした時だろう。イアドリフは特定の周回軌道を持っていないのでアフトクラトルの相手をすることは……あるかもしれないな。アフトクラトルもなんだかんだと切羽詰まっている状況である事には変わりはない。
「機械の操作と支援はリーナと俺と3人4脚でやっていくとして……そろそろ停滞してしまっているな」
「?」
リーナも俺も順調に強くなっていっている。
リーナは与えられた【ミラージュ】と【カゲロウ】を使いこなしている。俺も管槍の【カゲロウ】と見た目を日本刀にしている【カゲロウ】の二本とトリオンで出来た弾を撃つ2丁の拳銃を上手い具合に使いこなしている。
だがそれだけだ。基礎的な能力は地道な訓練をコツコツと積んではいるがコレだと未知のトリガーを相手にした際に詰む可能性が存在している。【カゲロウ】と【ミラージュ】以外のトリガーが必要だ。
「新しいトリガーを作る権利は何時になればもらえる?」
場所は移り変わりルミエが事務をしている一室に向かった。オレが何かをする時は大体ルミエから許可が必要だ。
ルミエはパソコン的な端末をカタカタと操作して事務仕事をしており俺に視線を向けない……部屋から出て行けとは言わないので話は聞いてくれている様だ。
「このまま【カゲロウ】と【ミラージュ】だけでやっていても頭打ちだ。既にある程度は使いこなせている、なにか新しい機能的なのを搭載しないとコレからの戦いにはついて行けない」
「……」
「俺とリーナは同年代でイアドリフの中じゃトップレベルの筈だ。ここからのレベルアップをさせてくれ」
「……」
「黙りか……」
俺達がトリガーを作ることに関してうんともすんとも言ってこない。
話は聞いてくれているのだろうが返事が一向に返ってこない。お前達には【カゲロウ】と【ミラージュ】だけで充分だと言いたいのだろうか?そうなると日々の訓練をコツコツと積み上げるしかない。そうなると木刀での訓練を増やさないといけない……既に限界まで鍛え上げている気もするが、剣の道はとにかく厳しい。
「……企画書は何処だ?」
「は?」
「だから、企画書は何処だと聞いているんだ。新しいトリガーを作るんだろう、だったら具体的にどんな物を作りたいのかを示せ」
「いいのか?」
「オレはトリガー工学に関しては専門外だ。開発者や技術者達が作れる物ならば作ってもいい……だが、お前は新しい物を作りたいと言っているだけで具体性に欠けている。具体的にはどんなトリガーを求めている?先ずはどんなのを作りたいのかを要点を纏めて企画を作り上げてこい」
「……分かった」
「ああ、それと開発担当の連中が作れないと言えば諦めろよ。お前の事だから奇妙奇天烈なトリガーを考案するだろうが、作れない物を無理に作る暇は技術者達には無いんだ。お前達以外にもトリガーを作って欲しいとの声はごまんといる……分かったのならばさっさと企画書を作ってこい。上にはオレが通しておく」
断られると思っていたのだが割と案外すんなりと通るものだ。
ルミエが企画書をさっさと用意しろと言うので部屋に戻り葵とリーナに企画書の様な物が必要だと報告をする。
「今の時点で充分に強いのにこれ以上強くなってどうするんですか?」
「なに言ってるんだ。この国には無いが、トリガーの中では命を落とすのと同時に作られる
今の時点で充分だと言いたいのだろうが、俺は知っている。
形状を変える事が出来るトリガーを、サークルを展開し無数の刃で切り裂くトリガーを、触れた物を問答無用でトリオンキューブに変えるトリガーが存在しているのを。それ等に打ち勝つトリガーを開発しないといけない
「まぁ、強くなれば色々と有利になるみたいだし……そうね……」
「エンジニア達が開発する事が出来る範囲内の物で頼む…………」
さて、俺はどんなトリガーを開発してもらおうか。
俺にはトリオン操作の才能は無い。体を動かす系のトリガーの才能は少しだけある……となると烏丸京介のガイストか?シルセウスがトリオンの殆どトリオン体に割り振っていると言っていた。ならばブレードや弾丸に通常以上のトリオンを注ぎ込む事は可能だろう。
何だったら俺も通常よりハイスペックなトリオン体を作っておく、幸いにもトリオン能力には恵まれている。トリオン能力5ぐらいに引絞ってトリオン体と【カゲロウ】にトリオンを注ぎ込んだハイスペックなトリオン体を作ることは可能だろう。
「こう、トリオン効率を度外視した一撃が欲しいわね」
割と脳筋でトリオン豊富なリーナは力を求める。
トリオン効率を無視した一撃か……俺には向いていないだろうな。火力のゴリ押しとか極端な話、雨取千佳が頂点に居るみたいなものだからな…………
「葵はなにかないのか?」
とりあえずネタを出させようと葵からも意見を求める。
「私は……特にコレがあればなんて無いです」
「お前も有事の際には現場に出て戦わないといけないんだ。【カゲロウ】も【ミラージュ】も使えないならなにか別のトリガーを持っておかないと……傍観は許さないぞ」
自分だけ何もないとかそういうのは無しな方向だ。
そういえば葵は顔色を悪くする。戦う事が根本的に向いていない、トリオン兵を破壊するのが限度なら……どうするか。雨取千佳や三雲修の様に妨害特化のトリガーが……鉛弾の様な物をイアドリフならば簡単に作ることが出来る筈だ。そっち系を想定して作ってもらう……。
「俺はどうしたものか」
葵の事は最悪見捨てればいい。それよりも自分のトリガーがどんな物にしたいのかを考えたい。
烏丸のガイストの様なトリガーを開発してもらったとしてどうする?最初から運動性能が高いトリオン体を用意すればいいだけの話だ。トリオンには恵まれているので色々と出来る、出来ない事は無い筈……いや、無いは言い過ぎだな。
「あ、そろそろトリオンが切れそう」
「葵、チャージしとけ」
「2人のどちらかがチャージをすればいいのでは?」
「馬鹿言ってるんじゃないわよ。私達は戦闘員でトリオンに余裕を持たせておかないといけないわ」
部屋に貯蓄しているトリオンが底を尽きそうなので葵にチャージをさせる。
葵は俺達がやればいいというがお前は戦闘をしないのでトリオン体を作らない、トリオンを消費する機会が早々に無い。ならその余っているトリオンは有効に使うべきだ……
「トリオンをチャージする……」
なにかが閃きそうな予感がする。
この部屋の物はトリオンで動いており、トリオンはチャージする事が出来る。コレをトリガーに利用する手立ては無いが……なんだろうか。閃きそうな予感がするのだがなにかが一手足りない。なんだろう……喉に小骨が刺さった様な感覚がする。
トリオンを貯蓄するシステムを応用すれば事前に溜め込んでいたトリオンを銃に注ぎ込んで強烈な砲撃が、バズーカの様な物を撃つことが出来るのだが俺には高火力は必要無い。もっと意外性のあるものが必要だ。
「私のこんな社会で役に立ちそうにない能力、もっと他の人にあればいいのに」
「言っとくけどトリオン能力が低かったら問答無用でトリオン器官を摘出されて殺されていたわよ」
こんな能力欲しくなかったと言いたげな葵。
リーナはそのトリオン能力があったからこそ生き残る事が出来たと皮肉を語る。そう……優れたトリオン能力を持っていたから葵も俺もリーナも生き残る事が出来た。ルミエ達は間引きはしていると言っていたのでそういうことはしているんだろう。
優れたトリオン能力を如何せん発揮しようにもトリオンにも限界がある。そもそもでアフトクラトルの
「トリオンを貯蓄するシステムを応用すればトリオン効率を度外視した強烈な一撃を撃つことが出来る筈だ」
事前にトリオン爆弾の様な物を用意しておけばいい。
確かトンガリの砲撃もそんな感じだった。トリオン効率度外視の一撃をお見舞いするならば事前に別枠でチャージしていたトリオンで発射すればいい。事前に別枠でトリオンを貯蓄するシステムは簡単に作ることが出来る筈だ。
なら俺はどうする?強烈な砲撃が撃てる様になるのは魅力的だが、敵を効率良く倒すのならば無駄にトリオンを消費する必要は無い……むしろ俺のトリオンを分割してトリオン体を2個用意しておけば…………!
「コンティニューしてもクリアしてみせる……」
舞い降りた。閃きが舞い降りたぞ。
紙とペンを取り出し、紙にスラスラと自分の思い描くトリガーを書いていく。
「トリオンを貯蓄するシステムを応用して事前にトリオン体を……トリオン貧乏な人に豊富なトリオンを……殺られたとしても直ぐにやり直す事が出来る……登場方法は土管で、カメレオンみたいに透明になる機能を搭載したりして……」
閃いた事をとにかく紙に書いていく。この瞬間を逃してしまえば次は無いととにかく使えそうなネタを書いていく。
勝てない相手にどうやって喰らいつくのか、優れたトリガーを作る事が出来ないのならばどういう感じにフォローをしていくのかを考える。
「こんな物か……」
「もういいの?」
「ああ、もう大丈夫だ」
鬼気迫る感じでメモを取っている俺にリーナ達は声を掛けて来なかった。空気を読んでくれたので俺が書き終えるのを待ってくれた。いい子である。葵は俺が書いたメモを見ていく
「コレは……こんなのを上に要求するつもりなのですか?」
「俺は体を使うタイプのトリガーしか向いていない。新しい武器を要求するよりも他の機能を要求した方が効率がいい」
こんな機能を搭載させるのかと葵は驚いている。理論上はいや、技術上は不可能じゃない、いや、むしろ簡単な技術の筈だ。
今以上に強くなるには新しい武器よりもこういった変則的な能力が必要だ。メモを纏めたので葵にこちらの世界の文字に変換してもらう。一応は誤字脱字が無いのかと確認をした後にルミエに企画書を持っていく。
「出来たぞ」
「ん」
企画書を渡すと事務仕事をしつつ受け取ったルミエ。
パラパラとページを捲っていき内容を確認していくとルミエは笑みを浮かび上がた。
「相変わらず面白い事を考えるな。新しいトリガーの企画を練ってこいとは言ったがこんな機能を作るとは思いもしなかったぞ」
「作ることが出来るのか?」
トリオンを貯蓄するシステムを応用すれば出来る筈だ。
だが、実際のところは開発担当者にしか分からないものでルミエはトリガーを開発している実験室に連れて行かれる
「タリ、どうだ?」
「へぇ……あんた、面白い事を考えるじゃない」
実験室に足を運ぶのは初めてで俺より幼い女の子に企画書を通す。面白いと笑みを浮かび上げており俺の方を見てくる。
「確かにトリオンを貯蓄するシステムを応用すればこの機能を作ることが出来るわ……ただ問題はそこまでトリオンに余裕が無い事よ」
「問題は無い、うちにはトリオンを生活用品にしか使い道が無い奴が居る。そいつからトリオンを抽出してトリオン体を作り上げる……トリオンは混ぜても問題は無い筈だろう」
「ええ、可能よ……これ、応用すればトリオン能力が10のトリガー使いを量産する事も可能ね……あんた中々に賢いじゃない」
「それはどうも……で、作ることが可能なのか?不可能なのか?」
「誰に物を言っているのよ、コレぐらいならそうね……1か月あれば試作品は出来るわ」
「一ヶ月もかかるのか」
「仕方ないじゃない、こっちも色々と忙しいのよ!!」
まぁ、理論上は作ることが可能で不可能じゃないだけマシとするか。
新しい機能を搭載したトリガーを作ることになり、一先ずは企画が通っただけで良かった……トリガー工学に関してはちんぷんかんぷんなんだから専門家に任せるしかない。
「トリガー名を考えないといけないわね……あんた、なにかイイ名前は持ってないの?」
「……
「……あんた、ネーミングセンス無いわね」
はいはい、俺にはセンスは無いですよ。
トリガーを作ることが決まったので企画書が通った事をリーナ達に報告すると我が事の様に喜んでくれた。
今後の展開
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そろそろ原作にいけ
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もう少しオリジナルをやれ。