近界プルルン奮闘記   作:ドドドドド黒龍剣

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第34話

 

「コイツが内通者か」

 

「まぁ、そうなるな」

 

「Warte bitte. Ich bin für dieses Land」

 

 イレギュラー門の犯人は見つかった。シャーリーには屋敷に戻ってもらい内通者である攫われた奴隷の人を連れ、ルミエの元まで向かった。

 当然と言えば当然の事だがトリガーは取り上げている。ルミエはトリオン体になっているのでなにを言っているのかは分かっているのだがルミエから見える闘志がプルプルと震えて見えている。明らかに怒っている。愛想笑いをしているが怒ってますよオーラが目に見えている。

 

「この国の為か……確かに敵の情報は大事だ。何処から仕掛けてくるのか分かればそれに越したことはない……だが、独断で動いていいと誰が許可をした?レクスを始めとするこの国の幹部達に一言も相談なく勝手に事を進めていた。見方を変えれば裏切り行為とも取れるぞ」

 

 ぐうの音も無い正論をルミエはぶつけた。

 確かに情報の売買をしていた事や市街地にトリオン兵を送り込ませる事は個人の独断と偏見で判断していいことではない。国が大凡の事情を知った上での侵攻ならばともかくだ……

 

「……Nur so konnte es funktionieren」

 

 成果を上げる為にはそれしか道は無いと主張する……ああ、そうか。

 

「あんた、今の暮らしからより良い暮らしになりたかったんだな」

 

「Warum muss ich das tun?Ich möchte alleine in einem Zimmer wohnen. Ich hasse schlechte Rationen mehr.」

 

 1人の部屋で暮らしたい、美味しくない食事はしたくない。この人はそう主張する。

 俺とリーナと葵は人並みの生活を送る事が出来てはいるが、俺達以外は苦しい生活を送っている。生活を良くする為には成り上がらなければならないがイアドリフは大きな侵攻を受けない。乱星国家なので侵攻しにくい。武勲で成果を上げる事は難しく、トリガー工学で成果を上げれるかと聞かれればNOである。俺はトリガーを考案する事は出来ても作る事は出来ない。リーナもだ。葵は逆にトリガー工学は向いている……脳のタイプが違うんだろうな。

 

「こんな裏切り行為をしてその上で贅沢をしたいとはいい度胸だな」

 

「ルミエ、どうするんだ?」

 

 牢獄的なところにぶち込むのだろうか?それだったら、そうでさっさとしてほしい。

 これ以上この人の話を聞いていれば余計な感情を持ってしまう……俺はホントにつくづく甘い人間だ。

 

「お前は使い捨ての替えが効く駒の1つだ。オレに相談無しにこんな勝手な真似をしてなにも無しは許されない……よって死刑だ」

 

「Bring mich nicht um! Ich habe einige Informationen, die ich von ihm gehört habe.」

 

「ほぅ……どんな情報だ?」

 

 死刑を免れたがると思えば情報があると言う。

 ルミエは不機嫌なオーラを隠そうとはしないが一応は聞く耳を持っている。どんな情報なのか興味を持った素振りを見せる……が、怒っている。

 

「Ich habe Informationen über feindliche Waffen.」

 

「へぇ……」

 

 USBメモリ的なのを取り出して敵の情報を得た事を報告する。

 敵の情報を得た……ガロプラはアフトクラトルの従属国家なのでラービットの情報でも手に入れたのだろうか?

 

「コレは解析に回させてもらう……だが、お前を罰さないといけない。痛いのと楽なのどっちがいい?」

 

「Ich hasse es, Schmerzen zu haben」

 

「じゃあ、こっちにしてやるよ」

 

 そう言うとルミエは腕輪を渡した。

 

「イメージしろ。自分の全てをトリガーに注ぎ込むイメージを……そして全てを注ぎ込め」

 

「ルミエ、まさか!」

 

「Gießen Sie alles in den Abzug」

 

「おい、やめっ──っ!!」

 

 ルミエが何をするのか分かった瞬間、それは起こった。

 腕輪型のトリガーを渡された外国人は真っ白になったと思えば粒子に成り代わる。

 

「っち、失敗か」

 

「お前、何やってんだよ!」

 

「痛い目に遭って殺されるのか痛くない楽な目に遭って殺されるのかのどちらかを選べとオレは言ったんだ。黒トリガーになる様にすれば一石二鳥だったんだがな」

 

 ルミエは外国人を黒トリガーの生贄にしようとした。

 結果は失敗、黒トリガーを作る事は出来ず外国人は灰となって消え去ってしまった。

 

「お前……最初から殺すつもりだったのか?」

 

「当たり前だろう。何処の馬の骨とも分からない奴が上に話を通さずに情報を漏洩していたんだ。ホントなら見せしめとして公開処刑をしてやりたいところだが痛いのは嫌だって言うから黒トリガーになる様にしてやったんだ」

 

「……クズだな」

 

「なんとでも言えばいいさ。少なくともこの男がイアドリフに危機を齎した事実には変わりはない。言っておくがちゃんとオレに報告してくれたいたらこんな目には合わせなかったんだぞ?成り上がりたいのは分かるが個人の独断で動いたんだ……組織に必要なのは個性じゃない、皆同じ一律である事が大事なんだ」

 

 ……ああ、忘れてたよ。人並みの生活を送る事が出来ているとはいえ俺達地球の人間は攫われた奴隷だ。

 ルミエの機嫌を1つでも損ねれば今の生活を全て失う事だって大いにあり得る事だ。今こうしてルミエにタメ口を利いている時点で下手すりゃ首を撥ねられる可能性だってある。

 

「しかし参ったな。ガロプラからの使者とのコンタクトを取ることが出来なくなってしまった」

 

 黒トリガーになるのを失敗した外国人の灰を片付けるとルミエは困った声を出す。

 ガロプラ側としては今回の侵攻は不本意なものだ。アフトクラトルの母トリガーの寿命が残すところ僅かだからこんな辺鄙なところにも足を運んでいる。ある程度は失敗する可能性を考慮した大規模な侵攻をしようとしている。

 

「ガロプラのトリオン兵に関する情報はコレに詰まっている事を期待するとして……シャーリー姫め、安易な正義感が原因で敵の情報を引き出す事が出来なくなったぞ。あの無能が」

 

「お前、アイツは一応は王族なんだぞ?そんな事を言っていいのかよ?」

 

「シャーリーがポンコツなのは今に始まったことじゃない。トリオン能力も恵まれていない、トリガー工学もタリやスパルカという天才が居るせいで凡百のエンジニアになっているし、王族という地位があるだけであってこっちの世界じゃ弱者も同然、影で呼び捨てや悪口を言ってる奴は結構多いぞ」

 

 なんかイジメの現場を聞かされているみたいだな。

 シャーリー、悪い人じゃないのは分かるのだが割と感情的で多方面に敵が居る。安易な正義感は身を滅ぼしやすいとはよく言ったものだ。

 

「それで、どうするんだ?重箱の隅を楊枝でほじくるみたいなチマチマとした作戦を向こうはしてくるが大規模な侵攻をしてくるのは確定なんだ……門を開くラッドを送り込む事はもうしないみたいだけど」

 

「そうだな……」

 

 イアドリフではイレギュラー門が開いている。

 そこから現れるトリオン兵は強くはなく現場に居合わせた手練が倒しているので問題はない……いや、イアドリフの精鋭の実力を見られてしまっているのだからアウトか。イアドリフの情報を更に引き出す為にトリオン兵にラッドを忍ばせておく?いや、イアドリフの手練がどれくらいのものなのかは見抜いている。既に十二分に成果を上げる事は出来ている……となると大規模な侵攻、奇襲を仕掛ける為にラッドを出す……いや、そもそもで敵の狙いは何だ?アフトクラトルの従属国家ならば母トリガーの寿命を迎えそうなアフトクラトルの為に金の雛鳥を探したりするだろうが……あ〜……くそ、何時ぐらいに大規模な侵攻があるのか分からないのはキツいな。ガロプラからの使者を失ってしまったのは大痛手、シャーリーが余計な事をせずに見逃した後に逮捕しておけばそれで良かった。マジで厄介な事になった。

 

「敵の狙いが母トリガーなのかそれとも優秀なトリオン能力者達なのか……不本意で動いているならば母トリガーの制圧の可能性は低いな」

 

「まぁ……どちらにせよ迎え撃つしか道はねえんだよな」

 

「そうなるな……ジョン、トリオンが完全に回復するまで休んでおけ。お前の力も必要になる」

 

「俺の力、ね」

 

 俺のサイドエフェクトの事を言っているのだろうか?

 ともかくイレギュラー門を開いている裏でガロプラと繋がっている裏切り者は見つかり、処刑された。黒トリガーが出来ればそれで良かったのだろうがそう都合の良いことは無いのである。

 

「ガロプラからの使者とやらから貰ったデータは解析に回しておくか」

 

 トリオン回復までの休みを貰う事が出来た。ガロプラが襲撃してくるのは確定事項なのでイアドリフは迎え撃つ体制に入る。

 俺はリーナの事が気がかりだったがシャーリーの屋敷に向かうことはせずにそのまま与えられた部屋に向かいベッドの上で大の字になる。何時もはリーナがいるのだが今はいない。基本的にはリーナと俺はセットの扱いだから1人になる機会は早々に無い。

 

「ジョン、入りますよ」

 

「既に入ってるだろう」

 

 大の字でボケーっとしていると葵が部屋に入ってきた。

 俺とリーナの専属のオペレーターという事もあってか俺達が休みだと言われれば葵も自動的に休みになる。トリオンが有り余っているので部屋の機械を動かすトリオンをチャージしてくれる。戦闘で使わないからこういうところで葵のトリオンは活躍する……トリオン能力が9だったっけ?

 

「イアドリフはどうなるのでしょうか……」

 

「不安か?言っとくが年中戦争してるみたいなものだぞ」

 

 ただそれを実感していないだけで常に俺達は死と隣り合わせに生きている。

 緊急脱出機能が搭載されてから死亡率は格段と減ったが何時かは緊急脱出機能無効化機能みたいなのは作られる。技術とか兵器とかは直ぐにパクられて鼬ごっこだ。

 

「ジョンは怖くないの?」

 

「……お前、俺がなにも思ってないと思ったら大間違いだからな」

 

 葵はハッキリと怖いと言ってくる。俺は……言わないだけで怖いものは怖いのである。

 ゲロ吐きながら泣きながらでも前に進んでいる。ホントは投げ出したい逃げ出したいけどその道はもう無いんだ……あ〜……くそ、辛い。葵が余計な事を言ってきたせいで悲しくなってきた。

 

「ジョ、ジョン大丈夫ですか!?」

 

「るせぇ、お前のせいで殺してた部分が出てきちまったじゃねえか……」

 

「その、ごめん、なさい」

 

「謝る気があるなら膝を貸せ膝を」

 

 余計な事を口走ってしまった事を今になって自覚する葵。

 謝罪の言葉程度で俺が落ち着くわけがないだろうとベッドの上に座らせて膝を借りる。人肌に触れる機会は早々に無い、美少女のものならば尚更だろう。

 

「ジョンはイアドリフに拐われる前にどんな生活を送っていたの?」

 

「普通だよ。親は市役所の職員で姉と妹がいて……まぁ、バカにはなるなよと進研ゼミはやらされてた」

 

「お姉さんと妹が居るんですね……羨ましい」

 

「俺は一人っ子の方が良かったよ」

 

「一人っ子は退屈よ。馬鹿騒ぎする事が出来る家族がいないもの……執事は居たけれど」

 

「おーおー、ボンボン発言か……はぁ、普通の暮らしが送りたい」

 

 何処で道を間違えたんだ。原作開始前に拉致されるとか完全に想定外だぞ。

 普通に学校に行って普通に生きたい……いやでも、ボーダーにスカウトされるとかも有りかもしれない。この厄介なサイドエフェクトも少しは役に立ちそうだしな。

 

「地球に、日本に帰る事が出来るのならばどうするの?」

 

「今更小学生からやり直しなんて出来ない……田中角栄もビックリな小学校中退だ……そう、もう後戻りをする事は出来ないんだ」

 

 越えてはならない一線はとうの昔に越えている。売国奴と言われればその通りな行いもしている。

 今更普通に学校に通いたいとは思わない。流石に中学数学とかの一般教養は使っていないので忘れている……日本史とか世界史の知識は無駄に残っている。どうせならば農業とか科学の知識が残ってくれればよかったのだが、その辺の知識があっても成り上がれるか謎である。

 

「そうよね……私達はもう後戻りをする事は出来ないわ。仮に日本に帰ることが出来ても、近界民の存在を露呈しないといけない……」

 

「……そうだな」

 

 遊真の年齢から逆算して第一大規模侵攻は起きている筈だ。

 そんな中で俺達が帰ってくれば……ボーダーが都合の良い設定を盛ったりするだろう。客寄せパンダにするかそれとも悲劇のヒロインにするのか……そんなのはごめんだ。ボーダーに所属するっていうのも今の現状を考えてもピンとこない。洗脳教育レベルでイアドリフに尽くす事を教え込まれているのでイアドリフの利益になる方法を考える……仮に日本に向かうのならば……いや、これ以上は考えるのは無意味か。

 地球の技術に関してエンジニア達は一応の興味は持っている。トリオンに代わる電気の技術、コレをイアドリフで実装すればイアドリフは豊かになる。冷蔵庫や洗濯機等の家電にトリオンを回さずに済めば色々と他の事にトリオンを使うことが出来る。強力なトリオン兵にトリオン障壁とか色々と……俺に石神千空並の知識があればエンジニアとして成り上がる事が出来たのだが俺にあるのは電球を作るぐらいの知識だ。理科の教科書全然役立たねえよ。

 

「寝るか……」

 

「このままで構いませんわ」

 

「そうか……抱き枕も欲しいところなんだけどな」

 

 リーナなら一緒に寝ようって言えば喜んで抱き枕の代わりになってくれる。

 葵は破廉恥だなんだと言ってくるのでしてくれない。でも、膝枕は嫌がらない。膝枕はセーフとはいったいどういう感性をしているのか小一時間程問いたいのだが、感性は人それぞれ。むしろ俺とリーナの方が異常だったりする可能性も高い。多分異常なんだろうな。

 

「あ〜……久しぶりに……ゆっくりする事が……」

 

 

 

 

 

 

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「すー……」

 

「ふふっ、眠ってますね」

 

 ジョンは私の膝の上で眠っている。

 ここ最近、イレギュラーな門が開いていて何時大きな戦になるのか分からない危機的な状況だったので仕方ないといえば仕方ないこと。やっとゆっくりと休めるとジョンは寝息を立てている。

 

「ジョン……ホントにありがとう」

 

 眠っているジョンに対してお礼を言う。

 私は人を撃つことも斬ることも出来ない。トリオン能力にも恵まれサイドエフェクトも持っているのだけれど人を撃つことも斬ることも出来ない。奴隷としては致命的な欠点……嘔吐しながらでも戦わされる道もあったけれど、運良くジョンに引き取られた。私達は攫われた奴隷、そのスタンスは変わりはない。あの最初のサバイバルもジョンが居なければ最後まで生き残る事が出来なかった。ジョンが居なければ狭苦しいタコ部屋に住まされて……女だからって変な事をされていたのかもしれない。

 

「……貴方はもう戻るつもりは無いわよね」

 

 私達はもう後戻りをする事は出来ないところにまで来てしまっている。

 売国奴と言われても構わないとジョンは覚悟を決めている……だったら私は、私達は最後まで地獄に付きそう。きっとこれから後悔だらけの日々を送るのだろうけど、泣いている暇なんて何処にもない。苦しくても辛くても前を歩く、いや、歩かされる……いいえ、それも違うわね。例えるならばそう、ベルトコンベアの上に私達は立っていて常に前に進まされる。途中で分岐点があるからそこで動くことが自立や選択なのだと思う。

 本音を言えば私だって家に帰りたい。兄妹は居ない、大きな屋敷で暮らしている。友達と何気ない日々を過ごしていた事は今でも夢に出てくるぐらいに熱烈に覚えているわ。

 

「一緒に地獄に堕ちましょう、ジョン」

 

 覚悟は出来た……なら、後は堕ちるところまで堕ちるだけ。

 眠っているジョンの額に手を当ててゆっくりと微笑んだ。




 

今後の展開

  • そろそろ原作にいけ
  • もう少しオリジナルをやれ。
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