近界プルルン奮闘記   作:ドドドドド黒龍剣

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第4話

「!」

 

 目を覚ますと知らない天井だった……いや、知っている天井か。

 近界民に拐われて2日目、未だに自分が何処の誰がなに目的で拐ったのかが不明だ。

 

「……」

 

「もっといいシチュエーションがあっただろう」

 

 隣で寝ているジャンルで言えば美少女に分類されている女の子。

 ルミエの糞野郎が、最終的にベッドは1つだけだとキングサイズのベッドを渡してきたので2人で一緒に寝た。

 実家で雑魚寝しているとはいえ床で寝るのはごめんなので一緒に寝る……もっといいシチュエーションで女の子と寝たかった。

 

「夜明け前か」

 

 彼女を起こさないようにゆっくりとベッドから出て、窓の外を見る。

 数時間前に戦った森が目の前にあり、ここが昨日まで住んでいた国じゃないと教えられる。本当なら今頃は学校に向かっていたが、今日からは戦場に向かう……なんでこうなるんだろう。

 ワールドトリガーの世界に転生したのはいいものの、原作知識が糞の役にも立たん。そもそもで原作前だから、どうしろと言うんだ。

 

「ラジオ体操、第一……締まらねえな」

 

 二度寝したいが本来の時間、何時起きればいいのかが分からない。

 幸いにも誕生日プレゼントで貰った懐中時計があるが合っているか分からない。幸いにも日本に近い時間だ。

 

 意識を叩き起こす為にラジオ体操を行う。

 これをやっておいて体の意識を叩き起こさないと今日からのスケジュールをこなせない。

 

「やべえ、二周してしまった」

 

 何時もなら適当にするラジオ体操だが、時間も時間なので真面目にやる。

 するとどうだろう?気付けば二回ラジオ体操第一をしてしまった……そういえばラジオ体操って第三まであるらしいが、学校で使うのも習うのも第一だけだ。

 

「……!」

 

 もう4回程ラジオ体操をした後に与えられた机に向き合っていると彼女が目を覚ます。

 

「おはよう」

 

「ぐ……オハヨー」

 

 グッドモーニングと言おうとする彼女はやめる。

 俺が英語があんまり得意じゃないのと、これから日本語を覚えないといけない事は教えてあるので言わないようにしている。

 

「無理しなくていい……なんて言えないか……goodmorning」

 

 俺の真似をしておはようと言うが、どうしてもイントネーションがおかしくなる。

 無理に日本語を覚えなくていい言えない。なんとか俺がいなくてもと思うけれども、そうそう上手く行かない。

 

「goodmorning……マンジロー」

 

「マンジローじゃない。ま・ん・じ・ろ・う、だ」

 

 どうしても伸ばしてしまうが、伸ばしちゃいけない。

 名前を訂正すると彼女は不満そうな顔をする。

 

「Please tell me your real name.」

 

「NO」

 

「If so, I'll have you call me by your nickname instead of your real name.」

 

「……リーナ」

 

 俺が名前を教えないなら自分も名前を教えない。

 本名でなく愛称を教えて貰い、その名で呼ぶと納得した様で微笑みベットから降りてくる……あ、着替えるの忘れていた。

 

「やぁ、いい夢を見れたか?」

 

 着替えをどうするかと考えているとルミエがやってくる。

 もう日が明けるのかと窓の外を見ると、さっきよりはまだ明るいが薄暗さが残っている。完全に日が昇ったとは言い難い。

 

「今、何時だ?」

 

「世間的に言えば、夜明け前だ。君達には超早目の朝食を取ってもらうよ」

 

 そういうと後ろから台車を引っ張ってくる人が来た。

 台車の上にはパンやスープ、鶏肉を焼いた物と色々と料理が乗っている……乗っているが

 

「味噌汁は無いのか?」

 

「miso soup」

 

「……それは君の故郷の料理か?残念だけど、そんなものはないよ」

 

 小麦でなく米が主食な日本人にとってこれは辛い生活かもしれない。

 持ってきた食事をテーブルの上に並べて、リーナと一緒になって食べる。幸いにも俺もリーナがアレルギー的な意味で食べれない物はない……だが、この時ですら油断は出来ない。

 

「豆……豆はあるのか……卵焼きとかないのか」

 

 パンがあるという事は小麦を生産している事になる。

 スープには野菜と一口サイズに切られた鶏肉、それと豆が入っており野菜はレタスっぽい。

 近界民の世界は食の文明が進んでないイメージがあるが、これは合っている……これをなんとか利用できないだろうか?

 

 唯一、気の抜ける食事時の筈が少しでも情報が欲しいと思い美味しく感じない……。

 

 食事を終えると食器は台車を引いてきた人に返還。

 これからなにをするのだろうと不安を抱いているとルミエがやってきた。

 

「最初はなにをやらせるんだ?……勉強系はやれって言われても困るぞ」

 

 今現在居るところは地球とは違うところに次元にある所謂異世界の国だ。

 地球とは別世界、近界(ネイバーフッド)に地球の様な大きさではないが大量の(くに)が存在していて、地球が太陽を中心にグルリグルリと回っているように、異世界の(くに)もグルリと周期があり、(くに)(くに)が近付けば、異世界に行く船を相手の星に近付けて侵攻する。

 

 

 俺が今いるこの世界も遠征艇を使って地球に近付いて、トリオン能力に優れた人間の近くで門を開いて拐ったわけだ。

 

 

「ああ、無駄そうだからやらないよ」

 

 他にも色々とあるが、その辺りの事を教えるつもりはルミエにはない。

 

「君以外はね」

 

「……俺は受けるのか」

 

 言葉が通じないから教えようにも教えれない。無理矢理教え込む術はあるがその手はあまり使いたくない。

 とはいえ、目の前にいるのは言葉が通じる相手なので教えるつもり満々だ。こういう時に言葉が通じるのは不憫だ。だが、原作知識だけじゃ補完出来ない部分もあるからお得と言えばお得だ。

 

「今度は草原で戦わせようってか?」

 

 俺とリーナ以外にも見たことのある連れ去られた人達が一同に連れてこられたのは草原だった。

 昨日は森のフィールドで戦わされたが、次はなんだ?弾系のトリガーの使い方を教えられるのか?

 

「いや、違うよ。ただちょっと働いて貰おうと思ってね」

 

「?」

 

 今度は俺達になにをさせるつもりだろう。

 再びトリガーが支給されたので軌道をしてみると昨日とは違い、服装は変化しない。変わりに鍬を手にしていた……。

 

「おい、どういう事だ?」

 

「どういう事もそういうことも、畑を耕して貰うんだよ」

 

「俺達をわざわざ拐って、やらすのはそれか!?」

 

 言いたかないが、もっと有効活用あるだろう。

 拉致して小間使いさせるとか、戦場に立たせるとか……いや、どっちも嫌だけども、なんでよりによって農業をしなければならない。

 

「うるさいな。お前しか言葉が通じなくて察しが良すぎるから問題ない様に見えるけど、こっちも色々とあるんだ。あんまり文句と無駄口を叩くなら、あの部屋から追い出すぞ」

 

 っぐ、生殺与奪の権利を握ってるのはコイツだったか。

 下手にルミエに逆らえば、今の環境から悪環境に堕ちる。それは避けなければならない。

 

「Plow the field」

 

「……口を動かす暇があるなら、手を動かすんだ」

 

「あ、そ……じゃあ、1つだけ言っていいか?リトマス紙、用意してくれ」

 

「リトマス紙?」

 

「……あさがおと紙をくれ」

 

 農作業の真意が読めず、脅されているので俺は鍬を手に自分のスペースを決める。

 俺は普通じゃないが家は普通なので農作業なんてやったことは無い。機械での作業が割と当たり前で収穫とかが手作業なこのご時世に畑を耕すのはこの国が遅れているからじゃないかと思ってしまう。

 

「It's surprisingly easy」

 

 逆らっても無駄なのは昨日の時点で知っている。

 文句を言わずに自分のスペースを決めるのだが、リーナは着いてくる。無理に着いてくるなと言うに言えず、黙々と作業をしているとリーナは簡単だと口にする……。

 

「農作業が簡単か……」

 

 近年農家をやめる人達が増えたり高齢化していて問題になっている農業。

 シンプルに儲けが少ないとか色々と理由があり、その内の1つがなんと言ってもしんどいだ。今の俺達は機械を一切使わずにいる。普通ならば暑いだしんどいだ色々と文句を言うが、誰も言わない。言えないんじゃなくて、言わない。

 

 普通ならば肉体的疲労を感じる場面で感じない。鍬やスコップだってそれなりの重さがあるのにも関わらず、子供の俺達は簡単に振り上げたりすることが出来ている。

 それら全て生身の肉体でなく、トリオン体から出来ていること。生身の肉体ならリーナも俺も今頃は根を上げていた。

 

「トリオン体の利便性と馴れさせる為か」

 

 昨日の戦いで、木の枝を跳び回っていたのは俺だけだった。

 リーナにやってみろと言ってみても出来ないと言っていた。木の枝から木の枝に跳び移るのはそれなりに訓練をしないといけない。いきなりのトリオン体で出来る方が異常……だから、その異常を今から普通に変える。

 

「どうやら順調にトリオン体を使いこなしてる様でなによりだ」

 

 言葉が通じないので黙々と作業をしているとルミエが袋を持って戻ってきた。

 読み通り、俺達にトリオン体を馴れさせるのが目的で、重労働をしても問題無い姿を見て納得している。

 

「今度はいったいなにをさせるつもりだ?」

 

 自分のエリアはある程度は耕せた。

 リーナも順調に耕す事が出来ており、このままいけばエリア拡大ぐらいしかやることはない。ルミエはそれを見計らってか俺達の元に来た。

 

「今度もなにも、やることは決まってるじゃないか」

 

 どさりと持ってきた袋を目の前に置く。

 中になにが入っているのかと確認をするのだが、大きな袋の中に更に小さな袋が入っている。

 

「好きなのを植えてね」

 

 小さな袋を開けると中にはジャガイモが入っていた。

 他の袋を開けてみると豆と処理する前の麦が入っており、これらを今から植えるのかと少しだけ気が重くなる。

 

「なんでわざわざこんな事を……農作業に人が必要とかじゃないんだろう」

 

 トリオン体を馴れさせる裏があるのは分かっている。

 けど、それなら昨日みたいに木の枝の上をピョンピョンと飛び回る訓練をした方が効率がいいのにそれをしない。

 飢餓が続いているとか、食べ物関係のトラブルがあるようには思えない。そもそもでそんな事をするなら俺達の扱いはもっと酷いはずだ。

 

「確かに(うち)が食べる事には困ってはいない。けど、あることに越したことはない……特にお金も道具も持っていない君達にはね」

 

「!」

 

 俺達は今現在、元居た国とは別の国にいて無一文状態だ。この世界にもちゃんとした通貨があり、俺達の持っている紙幣と両替することは出来ない。金を得る為には働かなければならないが、どいつもこいつもガキである。手段が限られている。

 不適な笑みを浮かべているルミエは俺達に仕事を与えている?……いや、なんか裏があるぞ。

 

「食事や住みかなんかは此方が最低限与えるけど、お酒とかの嗜好品は自分達で手に入れてもらうっと、全員がまだ子供だったね」

 

「それって売る当てがあんのか?」

 

 食料をどんだけ作っても買い手がなければ、話にならない。

 国自体が食べることに困っていなければ俺達みたいなのが作った食料を安く買い叩く可能性だってある。

 

「君には後で説明をするけど(うち)は特定の軌道がない国だ。近くにある国と通信を取ってみて、いけそうだったらそこに輸出をする。貿易に使わせてもらうよ」

 

 またとんでもないワードがポロリと溢れ落ちた。

 この国は特定の軌道で動いていない……原作で言うところの乱星国家。何処にあるか分からない国か。

 

「言った筈だ。上に上がれるチャンスはあると……まぁ、豊作になるかどうかは話は別だけどね」

 

 金を得る為にも今後の生活を楽にする為にもトリオン体に馴れる為にもこの農作業が1番。一石三鳥と言ったところか。改めて農作業をする意味を理解した俺は残っている部分も耕していく。

 

「君の言うとおり、あさがおを持ってきたけどなにに使うつもりだ?」

 

「調べもの」

 

 漫画で読んだことを本当に実践する日が来るとは思わなかった。まるで小説家になろうの主人公な気分だ。

 ルミエから貰ったあさがおの花を洗い、擦り潰した物を紙に漬け込んでリトマス試験紙を作り出して、俺の耕した部分にぶっ差す。

 

「赤色か……」

 

 簡易的なリトマス試験紙の色は赤く染まった。

 青色がアルカリ性で、赤色は酸性。俺が耕したところを手当たり次第にぶっ指すのだが、全て赤色に染まっていく。

 酸性の土で育つのはよく分からない植物で、ジャガイモとか小麦とかは育たない。

 

「へぇ、花を植えるかと思ったらそんな使い方があるのか」

 

 酸性の土にショックを受けていると、リトマス紙擬きに凄く関心をするルミエ。

 面白いと1枚拝借して地面にぶっ差して色の変化を楽しむ。

 

「土の成分を調べる技術は無いのか?」

 

 この程度の事は小学生でやる。こっちの世界はトリガー文明だからやったこと以前に手段が無いのか?

 

「成分分析はある。けど、こんな簡単に見分ける手段は無い……玄界(ミデン)は独自の技術に進歩していると聞くけど、コレは面白い」

 

「笑ってる場合じゃない。ここの土じゃどれだけ頑張っても作物は育たない」

 

 自分達の国の技術に感心してくれるのはいいが、現状は絶望的だ。

 俺のエリアの土が酸性の反応をしていたから、他の奴等のエリアも酸性の土の可能性が大きい。

 

「場所を変えてくれよ。でなきゃ、なにも育てられない」

 

 酸性の土に強い植物ってなんだ?

 少なくとも小麦は育たない。Dr.stoneで酸性の土だから育たなかった描写がある。

 ジャガイモも大豆も育てられなければお金にならない。貿易に使えない。

 

「ダメだ。お前達が使える土地は決まっている……それで?」

 

「それでって」

 

「玄界でも同じ酸性の土がある筈だ。そこを無視して畑を耕すなんてやっていない。玄界の技術でどうにかする方法を知ってるんだろ?」

 

「……貝殻があれば、どうにか出来る」

 

 漫画で得た知識だから、何処まで頼っていいかは分からない。

 少なくとも漫画だと貝殻を混ぜた砂で酸性をアルカリ性で中和して小麦を育てる事に成功している。

 とにもかくにも貝殻が無ければどうにもならない事を伝えると頭をポリポリと描いて困った様な仕草を見せる。

 

「ここには海が無いから貝殻は見つからないんだよな」

 

「……無いのか」

 

「あ、でももうすぐ他の国の近くを通るからもしかすると海のある国家かもしれない。そうだったら貝殻が貰えないか交渉をしてみるよ」

 

「してみる、か……」

 

「この国の貿易に携わる事だから、お前達が深く関与する事じゃない」

 

 あくまでも俺達は連れ去られた人であり、この国の住人じゃない。

 この辺りは非情だ……どうにかするには、自分が有能だと示さなければならない。連れ去られた奴隷じゃなくて、国の使える優秀な駒だと上に教えないといけない。

 

「今はね」

 

 ルミエは俺達の手柄を横取りするつもりはなさそうだ。

 もしこれで手柄を横取りする奴だったら、俺達は一生上がれない。奴隷のままだ。成り上がるには武勲を立てなければならない……のだろうか。

 

「で、どうするんだよ?このままだとなにも育てられない」

 

「う~ん、残念だけど貝殻が届くまで使わないでおこう」

 

「……」

 

「そう睨むな。こっちだって想定外の事なんだ。悪いと思っている」

 

 何処がだ。

 全く悪いと思っていない素振りしか見せてない。

 

「トリオン体と生身の肉体の違いを実感して貰えたからそれで充分だ……ただ、まだ完全に使いこなせていない。今から訓練をしてもらう」

 

 今までのはウォーミングアップに過ぎないか。

 ルミエについてこいと言われた俺達はついていくと昨日の戦いの場である森に連れてこられた。

 

「昨日は歩いていたけど、今日は跳んで一周してもらう」

 

 この日、地形踏破・隠密行動・追跡の3つの訓練があった。

今後の展開

  • そろそろ原作にいけ
  • もう少しオリジナルをやれ。
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