近界プルルン奮闘記   作:ドドドドド黒龍剣

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第5話

「この国の名前はイアドリフ。平坦な道が多く20℃いくかいかないかの程好い気温が特徴的な国だ」

 

 トリオン体だから大丈夫だと次々と訓練内容をこなしていった結果、俺だけ別に講習を受けることになった。

 

「他の国は年中雪が降っていたり、海の上にあったり、城塞都市だったり変わった環境のせいで育てられる農作物や家畜が限られている国もあるけどうちは程好い温度で大抵の物を作ることが出来る」

 

 講習はこの世界についてだ。

 ずっと名前が分からなかったこの国の名前を教えて貰い、与えられたノートに要点を纏める。

 

「土地の環境を理由に農作物が育てられないと言ったことは基本的にはない」

 

「俺達に与えられた土地、酸性の土だったじゃねえか」

 

「あれに関しては本当に偶然、ある意味奇跡だよ」

 

 悪気は無いんだと胡散臭い笑みを浮かべるルミエ。

 本当に偶然なら偶然で、事前の調査をやってくれてもいいんじゃないかと思うが、コイツそもそもでどれぐらいの立ち位置なんだ?

 

「平地が続き気温も比較的安定しているイアドリフだけど、欠点が無いわけでもない。欠点が分かるか?」

 

「地の利を生かせない?」

 

「その通りだ。この国は住むには最適な環境だけど、戦いには不利な立地でもある」

 

 ワールドトリガーの原作で言っていた。地の利を生かす戦術は基本中の基本だと。

 平坦な道が多くあるイアドリフは他所の国の襲撃があった場合、地の利を生かした戦闘を取ることが出来ない。平地なのを生かそうにも使える戦術が限られている。

 

「ある程度の高低差があればいいんだけど、平地が多くて戦いづらいんだよな……平地で使えそうな戦術を言ってみろ」

 

 ここで更なる無茶を言ってくる。

 フィールドを生かした戦術……平地と言う地の利を生かすって、どうやって生かす?

 

「自分の得意なフィールドに誘導する?」

 

「得意なフィールドって、なんだ?」

 

「……地雷地帯」

 

「ん~……まぁ、それも1つの答えだね」

 

 ルミエは流石にコレは答えられないかと少しだけ残念がる。

 平地じゃなくても自分の得意なフィールドに誘導する作戦は使える。平地だからこそ使える作戦……ワイヤー陣?いや、あれは立体的な動きが出来る奴とある程度大きなフィールドじゃないと使えない。今の俺には無理っぽい。

 

「本来なら狙われやすい国だけど、この国は特定の軌道を周回しない。特定の軌道を周回している国なら今頃は何処かの国に支配をされている。特定の軌道を周回しない性質のお陰で狙われる機会その物が減るだけじゃなく、従属国にする価値が下がる……なんでか分かるか」

 

「報連相が上手く出来ないからか?」

 

 決まった軌道を持たずにいるとなると、周回をしている国と違って連携が取れない。

 報告も連絡も相談も安定して出来ずにいる。従属しようにも、この報連相が出来ていなければ裏切りとか色々とありそうだ。

 

「まぁ、大まかなところはそんな所だろう」

 

 ルミエも俺の答えに納得はしている。

 一先ずの及第点は貰えたようだが、喜んでいる暇はない。この国も国としての価値は無さそうだが、それでも狙おうとする奴等は普通にいるんだ。

 

「今のところ何処かと大きな戦争はしていない。けど、何時かは大きな戦いを起きる。そうなったらジョン、お前には戦場に出てもらう」

 

 浮かれている気分は見抜かれたのか現実へと戻される。

 俺は今、訳の分からんところで戦場に立たされに行く過程にいる……。

 

「他所の国と戦争をしてない間はどうするんだよ?」

 

 何時かは他所の国と戦争が起きる。なら、それまでの間はなにをするのか?

 答えは分かりきっている事だが、ルミエの口から聞いていた方がより実感をしやすい。

 

「他所の国と貿易をして国を豊かにする。お前がさっきやったのもその一貫で、他国との貿易を盛んにすることで国自体の経済を発展させ、最終的に軍事力を上げたり他国に狙うのは難しい事を教える」

 

「……」

 

「難しかったか?」

 

「いや、そうじゃない……富国強兵か」

 

 言っていることの意味はちゃんと理解しているつもりだ。

 海外との貿易を盛んにして海外の技術を取り入れたりして国の経済を潤して、結果的に国自体を強くする……それはつまり今から約100年以上前にあった明治政府が掲げた富国強兵だ。

 SFな世界の癖にやっていることは100年以上前の日本と同じとなると、偽名として使おうと名乗ったジョン・万次郎も嘘でなく、本当になりそうだ。

 

「国を豊かにするって言うけど、なにかこういう感じでってのあるのか?」

 

「今のところは食料集めぐらいかな?土地柄が土地柄だけに植物は育てやすいから、食べ物が豊かな国にすることで他の国に救援物資を送ったりして、その代わりにその国独自の物を貰ったり、美味しい料理自体で軍の士気を上げる……食は最大の商売であり武器だ」

 

 まんまとは言わないけれど、やっていることは明治の政府が掲げたやり方に似ている。

 食べ物が豊かな国になれば飢餓とかでの死者も減るし、海外との貿易にも使える。食料を渡す代わりにトリガーを寄越せとも言える。トリガーの技術は原作を見ていてスゴいと思えるものばかりだが、食べ物を作ったりとかは出来ない。

 例え世界が違えども食料の需要だけはどうにもならない。

 

「国の大まかな所はこんな感じで、次は国を運営する人達についてだ。君の国はどういうシステムかは知らないけれど、うちは王様が居て、その下に各エリアや部門を担当する人達が居る」

 

「領主、じゃないのか」

 

「そういう言い方もあるにはあるが、中には土地を貰っていない人もいる。トリガーを作ったりする人とかが土地を貰って開発しろなんて言われても無理だからな」

 

 まぁ、確かにそうだな。

 戦闘が専門な人が内政をやれなんてのは間違いと言うか、お門違いだ。戦闘のプロは戦闘を教える。餅は餅屋と言う。

 

「オレも領主とは呼べない立ち位置の人間だ。正式な役職はややこしいから言わないけど、主に外交関係をしていると思えばいい」

 

「外交関係をしている人間が奴隷みたいなのを用意するか」

 

「なに言ってるんだ。人間は1番貴重な資材だろ?」

 

 合ってはいるが、平気で恐ろしい事を言うな。

 ルミエがそこそこ偉いことを再認識し、話は続いていく。

 

「君達の今後についてだが、成果を上げれば正当な報酬は与えるつもりだ」

 

「さっき奴隷みたいって言ったのを全く否定しなかったのにか」

 

「生殺与奪の権利は握ってるって意味では奴隷だ。言っておくが、こういうことをしている国なんて少ないんだ。玄界(ミデン)から拐ったトリオン強者は問答無用で戦えと劣悪な環境での生活をさせたりする国もあるし、頭を弄る国だってある」

 

 ……そうなんだよな。

 俺が今こうしてルミエから講習を受けているのは普通ならばありえないかもしれない事だ……原作で拐われた人達が具体的にどういった扱いを受けているか描写が無いから分からないんだよな。

 

「なんでそういった事をしないのか、成り上がりのチャンスがあるのか分かるか」

 

「頭を弄るって事は人間の精神を弄ることだ。人間の心は早々に弄っていいものじゃない。成り上がりはモチベーションだろ」

 

「それもあるけど1番は新しい考えを取り入れる為だ。後で説明をするけどトリガーの中には(ブラック)トリガーと呼ばれる物がある。製造方法がちょっと特殊でイアドリフには1つも無い……この国はハッキリと言って弱い」

 

「愛国心無いのか?」

 

「ハッキリと言えるのも、愛国心さ。弱いと自覚しているのと強いと自惚れるのでは訳が違う。弱いからこそ、貪欲なまでに強さを求める。とはいえ、一人の人間だと決まったことしか考えられない。新しい考えが必要だ。玄界(ミデン)は此方の世界と違いトリガーを用いない文明を築き上げた。オレ達と考えが全く異なる……現にお前は二回もオレ達と異なる部分を見せてくれた」

 

「二回、か」

 

「ああ……最初の衣裳変更、あれは目の錯覚を狙ってだろ?」

 

 トリオン体の衣裳を白と黒の縞模様にしてもらったのは相手に目の錯覚を起こさせる為だ。

 剣による切り合いならば、間合いを少しでも間違えたら命取りになる。目の錯覚を起こさせる事で間合いの感覚を狂わせる……つもりだったが、リーナが仲間になった事でそこの部分を発揮しなかった。

 

「立体映像で偽物を作り出すトリガーはあるけど、ああいう考えは無い……」

 

「……なぁ、いっそのこと地球と貿易しないか?」

 

 俺の発想は良いぞと褒めてくれる。そこはまぁ、嬉しいが喜んでる場合じゃない。

 もう原作とかそういうのを気にしている程、余裕は無いので思いきっての提案をする。地球との貿易は確実に利益になる筈だ。

 

玄界(ミデン)との貿易ね……1つ聞くが、玄界(ミデン)には幾つの国がある?」

 

「200いくかいかないかだ」

 

「総人口は幾らだ?」

 

「約70億だ」

 

「1つの国で100万ちょっとの人口なら貿易する価値はある。けれど、玄界(ミデン)は1つの星に幾つもの国がある。もし、そんな所にトリガーと言う玄界にとって未知の技術を取り入れればどうなる?答えは簡単だ。此方の世界が危険に犯される。100000人の軍勢が襲ってくるなんてのもありえることだ」

 

 地球との貿易のリスクの高さを教えるルミエ。

 トリガーの技術はハッキリと言えば危険だ。第一話で近代兵器をものともしない描写があった。近代兵器に変わる新たな兵器を持ち込むのは危険すぎる。

 もし国との交渉に成功したら、アメリカみたいなバカデカい国にトリガーを与えたら、とんでもない遠征艇を作って襲ってくる。考えただけでも、ゾッとする。

 

「玄界の技術は気になるけど、此方の技術を安易に渡すことは出来ない……それに言葉が通じないんじゃ、交渉すら出来ない」

 

「言葉の壁か……」

 

 日本語って、日本人しか公用語として使ってなくてかなり難しいらしいんだがな。

 普通ならば他の言語が発達するのに、そこは漫画の世界だからのご都合主義と言ったところだな。

 

「そう、言葉による壁だ……全く、無駄に広大なせいで拐っても会話すら成り立たないんだから玄界の人間は扱いづらい」

 

 目の前に居るのに、ハッキリと言いやがって。

 

「今日は此処までだ」

 

「もう終わりなのか?」

 

 感覚的に言えば昼過ぎだ。

 黒トリガーとかの説明とか全然受けてないし、他にもやらないといけないことが多そうなんだが。

 

「1度に詰め込んだとしても無理がある。ジョン、お前は考えることが出来るタイプの人間だ。一気に教えて変に思想や知識を偏らせる訳にはいかない。それに、お前にはあの女に言葉を教えないといけない……流石に通訳できる奴が居るとは言え、訳の分からない言語を使い続けるのは困る」

 

「あれは英語って言って、地球じゃ最もメジャーな言語……の筈」

 

 中国人が物凄い多いから中国語が1番の公用語とかどっかで見たことあるから断定できない。

 英語がメジャーでスペイン語辺りがその次で、日本語が覚えるのが難しいとかどうとかしか知らない。

 

玄界(ミデン)基準じゃなくて近界(こっち)基準にしろ。でなきゃ、上に上がれないぞ」

 

 拐われた次の日にこんな事を言ってくるか、普通。

 とはいえ、言ってることに間違いは無い。俺はまだ此方の世界に馴れていない。コレからは此方の世界の考えを常識として持たないといけない……畜生。

 

「上に上がったって、家には帰してくれないだろう?」

 

「なんだ、家に帰りたいのか。そういう素振りを見せないから、家に帰るつもりは無さそうに見えた」

 

「ただ大人しくしてるだけだ」

 

 覚悟が出来た上で戦場に立つのはまだしも、覚悟もなにも出来ていない。

 まだ拐われたと言う感覚が薄いが、これから段々と出てくるんだろう。そうなればホームシックかなにかで泣く。

 

「第二の人生だと思って楽しめばいいさ。イアドリフは優秀な人間を歓迎する。優秀な人間なら一夫多妻も認められる」

 

 既に第二の人生は歩んでいるんだよ。

 なんてことは言っても意味が無さそうなので、これ以上はなにも言わずに与えられた自分の部屋へと戻っていく。

 

「リーナは……帰ってきていないか」

 

 部屋にはポツンと俺だけ。

 リーナが戻ってきているんじゃないかと期待したが、リーナはいない。

 日本語が通じるのとポンポンと与えられた課題をこなしていく俺と違い、言葉が通じずにトリガーに馴れていないリーナは悪戦苦闘中だ……出来れば会って、会話をしたかった。

 一人で居ることは楽だが、状況が状況だけに苦にしか感じない。嫌なことを忘れるためにも少しでも話をしてみたい。

 

「……ああ、やらなくちゃ」

 

 自由な時間を与えられた様に見えて、まだ完全に自由な時間じゃない。

 これからやらなければならない事は沢山ある。戦闘に関する訓練とかトリガーに関する説明とか、そういうのは順を追って説明してくれるから待つしかない。俺を奴隷として扱ってはいるがちゃんと説明等はしてくれる。

 俺がやるべき事は強くなることでもなければ成り上がることでもなく生き残ること……

 

「やれることを探さないと……」

 

 生き残る為には自分が使い捨てで代わりがある駒じゃないと証明しなければならない。

 ルミエの態度から俺は唯一言葉が通じる相手で、一応拐われた奴隷の中では1番評価が高い筈だ。ここから生き残るもとい成り上がるにはやれることをやらなければならない。

 

「マンジロー、Lunch has arrived」

 

 あれこれ考えていると台車を引っ張って戻ってきたリーナ。

 台車の上には遅めのお昼ごはんが乗せられてはいるのだが、白飯はない……あるのは蒸かしたジャガイモだ。おかずとかとは別に蒸かしたジャガイモが更に置かれている。

 米と小麦とトウモロコシが主な主食だって聞いたことはあるが、ジャガイモを主食としてこの国は食うのか。見たところ、日本じゃ市販出来なさそうな形の物だったりで……味は問題無さそうだ。

 

「リーナ、Do you think there is rice in this country?」

 

「rice……Does John want to eat rice?」

 

「……まだ、我慢出来る」

 

 拐われて部屋を与えられて1日目の昼御飯だ。

 毎日三食お米が当たり前な日本人でもまだ、まだ耐えることは出来る。

 

「リーナ、Have them learn Japanese from now on」

 

「……Oh……」

 

「嫌だと言ってもやらせる」

 

 先ずはリーナに日本語を覚えてもらう。

 その事を伝えると少しだけ俯くのだが、教える側も教える側で大変なんだ。ランドセルに入っていた英語の教科書と国語の教科書と前世の知識だけで日本語を教えないといけない……。

 

「What are the other people going to do?」

 

「……どうするんだろうな?」

 

 リーナは他の人達を心配している。

 コミュニケーションを取ろうにもイアドリフの奴等は言葉を覚えさせるという事をする素振りは見せていない。俺が喋れるのは英語で、拐われて生き残った人達の中で英語を使っているのはリーナだけだ。俺がリーナに日本語を教えるが、問題は他の人達はどうするのだろうか?

 

「ジョン・万次郎は何だかんだでアメリカでの生活を乗り切ったし、弥助は戦国時代、信長に気に入られて家臣になった……世の中、どう転ぶか分からん」

 

 昔の人達は何だかんだで通訳とか教科書無しで言葉と文字を覚えていった。

 俺が日本人で日本語が通じるとアピールをすれば、日本語を覚えればいいのかと理解してくれるかもしれない……けど、そんな余裕は何処にもない。

 

「いただきます」

 

「……イタダ、キマス?」

 

 俺のいただきますをリーナは真似をしてからごはんを食べ始める……ジャガイモはおやつやおかずにはなるが、主食としては食いづらいな。

 

「I want to eat sushi if I have rice」

 

「Can't be made without vinegar」

 

 まだまだこの世界の事を知らないので、学ばなければならない。今は基礎を固める大事な時だ。

 にしても、寿司食いたいか……俺は寿司よりも丼ものが食いたい。

今後の展開

  • そろそろ原作にいけ
  • もう少しオリジナルをやれ。
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