近界プルルン奮闘記   作:ドドドドド黒龍剣

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第53話

 

「コレは……」

 

「遅い。A級は緊急事態で最前線に出ないのはまだ分かるがフリーのB級はそうじゃない。どうせならば中位から上位の部隊もしくはマスタークラスと呼ばれるレベルの隊員をC級の警護に付けておけよ」

 

 倒された新型を含むトリオン兵の山。

 現場に現着した木虎はどうなっているのかと辺りを見回した後に目の前に居る難攻不落の鉄騎兵の仮面をつけた男は文句を言う。

 ボーダーは死なない戦闘訓練で急成長を遂げているが避難訓練等は上手く出来ていない。そういうのは消防や警察とかの仕事である。

 

「こちら木虎、人型の近界民に」

 

「待ってください!!その人、敵じゃありません!!」

 

 一先ずは人型の近界民に接触した事を木虎は上に報告しようとする。

 しかし千佳はジョンの事を敵だと言わない。なにせ自身の近界民を察知するサイドエフェクトに引っかからない上に兄から言伝を預かってきたのだから。

 

「俺が敵か味方かどうかは自分の目で見て決めろ…………お前が三雲修で間違いないな?」

 

「…………どうして僕の名前を知っているんですか?」

 

「雨取麟児にお前と千佳を1回だけでいいから助けてやってくれと頼まれた」

 

「っ!?」

 

 麟児の名前を出せば驚きを隠せない修。

 当然の反応で修が次になにを言うのか予見していたジョンは修の口を人差し指で抑える。

 

「麟児さんを知っているんですか!?」

 

「この大規模な侵攻を無事に生き残る事が出来たのならば、答えられる範囲で雨取麟児について教えてやる……雨取麟児の情報が喉から手が出るほどに欲しいのならばそれをモチベーションにして戦うんだ」

 

「……はい!」

 

「……敵、ではないのね?」

 

「味方かどうかも怪しいがな」

 

 本部に人型近界民が現れた事について既に報告を上げている。

 木虎は万が一があるかもしれないと警戒心を高めているがジョンに敵対する意思は無い。

 

「また人型じゃと!?」

 

 場所は移り変わり、ボーダー本部の管制室。

 木虎に人型の近界民が現れた事について報告を受けたボーダー本部は慌ただしくなっていた。

 新型のトリオン兵の情報が入ってきて、とあるA級トップクラスと言っても過言ではない狙撃手が威力重視の弾丸を撃てる狙撃銃、アイビスを撃ったら弾かれるという事態になった。とあるB級部隊の隊長がラービットに捕獲されてしまった。A級の風間隊が救った。

 

 色々と情報がてんてこまいな中で鬼怒田は慌てるが直ぐに大人の冷静さを取り戻す。

 

「三輪くんが1人、人型と思わしき近界民を撃退したとの報告が上がっている……その近界民は緊急事態機能を真似た物で逃亡したとの事で」

 

 三輪が1人人型の近界民を倒した事を報告している。

 ならば今更1人ぐらい増えても問題はあるにはあるが、大慌てする程の事ではない。状況をクールに根付は判断をする。

 

『それがその……敵じゃないと言っています。新型を含めた辺りのトリオン兵を全て倒しています』

 

「敵じゃない……」

 

『ここからは私が話そう』

 

 トリオン兵を倒した事について報告を上げると上は判断に困る。

 もしかしたら自分達は敵じゃないと思わせる自作自演の行為なのかもしれないと考えているとレプリカから通信が入る。

 

『彼の名はジョン・マンジロウ……私達と一緒にこちらの世界にやって来た』

 

「なんですと!?」

 

「おい、何故その事について教えんかったんじゃ!!」

 

『私達と一緒にこちらの世界にやって来たと言うのは語弊があるな、私達がこの世界に遠征に向かう彼等の船に乗せてもらったが正しい。ユーマが学校に通うまでの手続き等をする代わりに聞かれるまでは自分達の存在について黙っていてくれと頼まれていた』

 

「…………今襲ってきている国との繋がりは?」

 

『イアドリフと言う国は特定の周回軌道を持たない乱星国家だ……私はユーマの身の安全を保証する代わりに聞きたい情報はないか?と尋ねた。アフトクラトルに関する情報は教えた。約束はなにも破っていない』

 

「えぇい!屁理屈をこねおって!」

 

 聞きたい情報は無いのか?とレプリカに尋ねるチャンスはあった。しかし城戸司令達は聞かなかった。

 嘘は言っていないがホントの事も言っていない。鬼怒田はレプリカの並べた屁理屈に対して青筋を立てる。

 

『ジョン達はこちらの世界を襲撃したりしないと言っていた、ユーマのサイドエフェクトに反応は無かった。おそらく本当だろう』

 

「ならば今まで何処に息を潜めてなにをしていた?」

 

『何処に息を潜めていたのかは私も分からない。ただジョンはこちらの世界の農業等を調べていた』

 

「農業?……何故そんな事を?」

 

『それは分からない。ジョン達は裏でなにかを企んでいるのは確かだ。だが人を拐うと言った事はしない。なによりもジョンは……いや、今はともかく、私の個人的な見解としてはジョンは敵ではないと断定できる』

 

「……君はどう思う?」

 

 レプリカからまだ大事な事を聞かされていないが、どうすべきかと考えた城戸司令は忍田本部長に意見を求める。

 忍田本部長は友好的な近界民は居るには居るがその友好的な近界民と交流を盛んにしているわけではない。だが友好的な近界民も居るのを認識していて話もせずにいきなり排除すると言う危険な思想は持ち合わせていない。

 

「……何故今になって現れたんだ?」

 

 忍田本部長は何故に今になってか尋ねる。

 

『雨取麟児という男から1度でいいからチカとオサムを守ってくれと頼まれたから来たそうだ』

 

「なんとも都合のいいタイミングですね」

 

 やっぱりなにか裏があるんじゃないのかと根付は疑う。

 

『シノダ本部長、ジョンから貴方に対話をしたいと通信を求めている』

 

「……繋げてくれ」

 

 色々と指示を出さないといけない立場なので余計な事に思考を奪われるわけにはいかない。

 しかし相手の出方が分からない以上はやるしかないとジョンとの通話を受ける事を決める。

 

『どうも……昔と違って声が変わっちまってるから分からないだろう』

 

「……昔?」

 

『あんたはかなり偉くなって今そこから動くことが出来ない。指示を出す役割を担っている……俺に対して色々と疑心暗鬼を持つのも無理は無い。だからあんたがボケてないのならば幾つかのキーワードで答えが分かる筈だ』

 

「……待ってくれ。君とは何処かで出会っているのか?」

 

『約8年前のアリステラ、新選組、Defeat me if you want to know、Our purpose is to sprinkle salt water on farmland and cause salt damage、Take that person and evacuate to somewhere else」

 

 忍田本部長の質問に答えずに一方的な通信を取る。

 最初の2つのキーワードでなんの事だ?となり、更には英単語が出てきて余計になんの事だ?となる。

 

『Defeat me if you want to knowは知りたければ自分を倒せ。Our purpose is to sprinkle salt water on farmland and cause salt damageは農地に塩水をバラまくのが目的だ。Take that person and evacuate to somewhere elseはその人を連れて何処かに避難してくださいという意味だ』

 

 万が一を想定して意味が伝わっていない可能性もあるとざっくりと翻訳する。

 

「農地に塩水をバラまくとは、やはり侵攻が目的な近界民(ネイバー)なのでは!?」

 

 翻訳した意味を聞いた途端にやっぱり敵だと敵認定をする根付。

 なにを意味しているかは分からないのだが、とりあえず進言だけはしてみようとすると忍田本部長は固まっていた。

 

「忍田本部長?」

 

「約8年前のアリステラ……新選組…………農地に塩水を撒き散らす…………!!」

 

 ジョンが並べたキーワードをパズルの様に繋ぎ合わせる。

 繋ぎ合わせた結果、忍田本部長の脳内にビリリと電流の様な物が走っては1人の子供を思い出す。

 

「君は、君はあの時の!」

 

『声も変わった。体格も変わった。あんたも立場が変わった…………だが、覚えていてくれたのか』

 

「あの時の少年なのか!?」

 

『あんたは今、現場に出て最前線で戦う仕事をしているわけじゃない司令官だ。だから1から説明をしていると長くなる……俺もあんたも生き延びる事が出来てから話せばいい』

 

「っ…………木虎、三雲くんそこの……ジョンと協力するんだ」

 

「いいのですか!?」

 

「なにかあった場合の全責任を私が受け持つ……彼を近界民として撃とうとするならば私は躊躇いなくその者を斬る…………コレは命令だ」

 

「命令……命令!?」

 

 本部長補佐の沢村は驚いた。

 忍田という男は本部長に位置する偉い人で、現在巻き起こっている緊急時には指揮官として色々と指示を出さないといけない。命令を出さないといけない立場だが、権力等を振り翳すタイプの人間ではない。故に驚いた。ハッキリと命令だと言ったことを。温厚で真面目な人間が命令という単語を使った、大規模な侵攻をしている今でさえ指示を出しているのに。

 

「いったい何者なんですか、そのジョンという男は!」

 

「詳しい話はこの大規模な侵攻を食い止めてから……迅、聞こえるか!」

 

『はいはい、どうも〜実力派エリートの迅です……誰かがメガネ君たちを助けに来たんですよね?』

 

「ああ」

 

「って、お前見えてたなら一言ぐらい教えんか!!」

 

 迅との回線を繋げば修達に助っ人が現れた事をもうわかっていると言う。

 鬼怒田は分かっていたことならば一言ぐらいは言っておけとキレるのだが迅は気にしない。

 

『だって誰か分からなかったんですよ……色々と駆け回っても視えなかったんだから伝えても極少数の人にしか伝えれないですよ』

 

「……迅、ジョンという男は敵か?」

 

 念の為だと城戸司令は探りを入れる。

 

『……誰かが千佳ちゃん達を守ろうとしてる未来が視えます。今は先ずこの大規模な侵攻を協力して乗り切る事に専念しましょう』

 

「……分かった。一時的な協力をしよう」

 

『あんたが許可しなくても勝手にってヤバい!!』

 

「っ、三雲隊員等が居る市街地付近に(ゲート)発生!!』

 

「なに!?その区域には門は誘導され……例の門をこじ開ける偵察型のトリオン兵か!!」

 

 沢村から報告を受けるとありえないというが鬼怒田は直ぐに原因に気付く。

 如何にボーダーの門誘導装置が優れていても内側から門を開かれれば一溜まりもない。

 

「コレは……C級隊員が避難を勧めている区域で門の多発!」

 

『どうやら敵の狙いはC級っぽい。ラービットを足止めや倒すことは出来ても、ボーダーの基地まで導く事は出来ない。色付きのラービットはトリガー能力を有したラービットだ。並大抵のボーダー隊員じゃ無理だから足手まといが居ない精鋭部隊を寄越せ』

 

「その点に関しては問題無い……ボーダー最強の部隊を派遣している」

 

『そうか……と言ってももうすぐ片付くんだがな』

 

 ジョンは倒したバムスターやモールモッドの内部から出てきた門を開く機能を搭載したラッドが開いた門から出てきた色付きのラービットを容易く撃退した。

 

「あ〜もう、修達がピンチだってのになんで私達遅いのよ!!」

 

「仕方ないじゃないですか。小南先輩を迎えに行ってたんですから」

 

 一方その頃、ボーダー最強の部隊である玉狛第一は現場に向かおうとしていた。

 自称最強で実際のところボーダーの中でも最強クラスである小南は可愛い後輩のピンチに駆けつける事が出来ない事に文句を言う。しかしまぁ、駆けつける事が出来ない1番の原因は小南である。小南の通っているお嬢様学校がシンプルに遠くてレイジ達が車で迎えに行くのにそこそこ時間が掛かってしまって殆どの部隊より出遅れてしまったのだ。

 

「京介、小南、もうすぐ現場に到着だ」

 

 うが〜と文句を垂れ流すのはそこまでにしておけよとレイジは言う。

 現場に到着するのが間もなくであるならばと烏丸も小南も頭のスイッチを切り替える。

 

「作戦はどうするんです?」

 

「小南が暴れて俺達がフォローをする」

 

「つまり何時も通りって事っすね。頼みますよ、小南先輩」

 

「任せなさい!トリガー、起動(オン)!!」

 

 ざっくりとした作戦だが、それでいい。

 玉狛第一は最強クラスの攻撃手である小南が暴れてレイジと烏丸がフォローをする。シンプル過ぎる作戦だが、それでも個の力が圧倒的で他を寄せ付けない強さを秘めている。

 

「待たせたわね、修!千佳!私が来たから安心しなさい……って、あれ?」

 

「ちょうど今終わったところだ」

 

「…………ロビンマスク?」

 

「小南先輩、色と形状をよく見てください。ロビンマスクじゃなくてケビンマスクですよ、アレは」

 

 ドヤ顔で修達の元に向かえばそこには色付きのラービット……の残骸があった。

 既に色付きのラービットは撃退されており小南の前には難攻不落の鉄騎兵の仮面を被った男が居た。それを見て何故にロビンマスク?と疑問を持つ小南だが、烏丸がロビンマスクでなくケビンマスクだと訂正をする。

 

「ふぅ、ヒーローは遅れてやってくるのは仕方がねえ事だがもうちょっと早く来いよ。見せ場が作ることが出来ねえだろう」

 

「……あんた、何者?」

 

 新型のトリオン兵が来てヤバいとの話を聞いており、新型のトリオン兵を容易く破壊したジョンを警戒する小南。

 

「ジョン・マンだ……今襲ってきている国とは別の国からやって来て雨取麟児という男に頼まれ雨取千佳と三雲修を1回だけ助けに来た」

 

「雨取麟児って千佳の兄貴じゃ」

 

「詳しい話はこの大規模な侵攻が終わった後……そしてその時には迅悠一を出せ」

 

「…………なんで迅の事も知ってるのよ?」

 

「知りたければ終わらせろ……言っとくが俺のトリガーには緊急脱出機能が搭載されている。力で抑えてくるものならばこの場から逃亡させてもらう」

 

『コナミ、トリマル、レイジ、ジョンは信頼する事が出来る者だ。そしてジョンのトリガーには緊急脱出機能が搭載されている。仮にジョンを倒したとしても緊急脱出機能(ベイルアウト)で逃げられるだけだ…………対話の精神を持ってほしい』

 

「……まぁ、分かったわ。修達を助けてくれたみたいだし、ありがとう」

 

「……めんどくさいなぁ……」

 

「なっ……人がお礼を言ってるってのになによその態度は!生意気よ!!」

 

「違う。お前に対して言っているんじゃない………………む………………」

 

 三雲修が実に厄介な存在である事を改めて思い知らされる。

 小南が怒っているが特に気にする事なくレーダーを展開するとレーダーにはそこかしことトリオン兵が映っている。空を見上げれば偵察型のトリオン兵も居るので当然と言えば当然だがジョンは少しだけ考える。

 

 本来の道筋であればワールドトリガーならば木虎がラービットに吸収されて千佳が覚醒してトリオン兵を撃つ。そして玉狛第一が登場する。

 自分が現れたラービットを全て撃退した事に関しては後悔は1ミリも無いのだが、ここで困った事になった。

 

「色付きを一瞬で撃退しただと?」

 

 中々にアフトクラトルのトリガー使いが現れない。周囲にはまだラッドがちらほらと居るので出ようと思えばこちらに向かって出ることが可能な筈だがアフトクラトルの遠征艇の作戦会議室的なところでトリオン兵から送り込まれてくる映像を見て呟くはアフトクラトル側の大将とも言うべきハイレインだ。

 

 ラービットはアフトクラトルの手練れでも倒すのが難しい。

 更に言えば色付きはアフトクラトルの手練れでも逆にやられる可能性を秘めておりトリオンをかなり注ぎ込んで出来ている代物だ。玄界(ミデン)の兵は少数一組の部隊を組んだり、白色で統率されているのが訓練兵だったりと色々と見抜いている中で情報に無かった謎の青い仮面を被った男が現れてトリオン兵を一掃した。

 

玄界(ミデン)の進歩も目覚ましいという事ですね……どうしますか?」

 

 この場にいるラービットは全て破壊されてしまった。しかし他の場所に居るラービットは健在だ。

 アフトクラトル側の最強の駒であるヴィザは次の一手をどう出るのかをハイレインに尋ねる。

 

「……当初の手筈通りに雛鳥を頂く。コイツはかなりの手練れだ……ヴィザ翁、ヒュース、時間を稼げ」

 

 滅茶苦茶強い駒が浮いているに近い状態だが、ヒュースとヴィザならばどうにかする事が出来る。

 ヴィザが負けたという話はこの数年で1度だけで聞けば出来立ての黒トリガーに起動中の杖を奪われたそうだ。手に持っていなければ操作する事が出来ない星の杖の唯一のデメリットを突いてきた一撃だ。

 

「了解しました」

 

「了解です」

 

「おい、オレ達も忘れるんじゃねえよ」

 

「分かっている。お前達も当初の手筈通りに撹乱をしろ、欲しいのは雛鳥だ。無理に欲張って玄界(ミデン)の兵を捕らえなくてていい」

 

 ハイレインは動き出す。

 ヴィザとヒュースを玉狛第一の元に放つ。エネドラを風間隊の元に放つ。ランバネインを旧三門大学付近で合同で固まっているB級の元に放つ。

 全ては戦力を分散させ、雛鳥達を捕まえるために。




感想お待ちしております。

今後の展開

  • そろそろ原作にいけ
  • もう少しオリジナルをやれ。
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