近界プルルン奮闘記 作:ドドドドド黒龍剣
Q 向こうの世界と和平的なのを結びたいです。どうすればいいですか?
『俺の勝ちだ迅!』
「何故迅の事を知っているんだ!?いや、コイツはいったいなにを言っておる!?」
ボーダーの管制室で鬼怒田達ボーダー上層部はこの会話を聞いていた。
ジョン・万次郎と名乗る男が実は近界民でなくこちらの世界の住人であった事に驚きを隠せないがそれ以上になにかしている事を鬼怒田達は気にする。迅のサイドエフェクトはボーダー内部でもトップシークレットだ、何処から情報が漏れているのか不明で色々と謎が多い。
「ホントにこちらの世界の人間なのでしょうか?君が代を歌っただけでは断定する事は出来ないですよ」
君が代は日本人ならば大抵知っている国歌だ。音楽の教科書の最後のページ辺りに載っていてなにかの式典とかで歌うことが多い。
良識と常識のある大人である根付はジョンが遊真と共にこちらの世界にやって来た人間ならば君が代を調べる時間があったと推察する。
「迅、ジョンと名乗る
『…………誰かにぶん殴られてる未来が視えた。けどっ……………こっちの世界の人間だ』
困った時の予知、御意見番の迅に城戸司令は尋ねる。
ジョンの素顔を見たことにより迅のサイドエフェクトの効果が発揮した。ジョンを通した様々な未来が見えており、ハッキリと何処の誰かは分からないが生身のジョンを思いっきりぶん殴っている未来が視えた。そして戸籍謄本等も視えてジョンの本名が分かった。
『大変だ、城戸さん。フェイクだ……コイツ等、この大規模な侵攻を利用してオレ達の足止めをしてた』
「フェイク?もうアフトクラトルは撤退し、残っているのはトリオン兵だけではないのか?」
『その認識で間違いない……けどっ……っ、唐沢さんだ!唐沢さんに連絡を取ってくれ!!』
つい先程、城戸の指示だけでも問題無いと太鼓判を押した筈の迅が大慌てになっている。
サイドエフェクトで敵側が完全に去ったと分かったのにこれ以上に脅威があるのだろうか?迅は管制室に唯一居ないボーダーの外務関係担当の幹部である唐沢に連絡を取るように言うと城戸はボーダーの通信端末で唐沢に連絡を入れた。
『城戸司令…………そこに向かうことも出来ず、ボーダーや三門市が左右される危機的状況なので余計な情報を入れてはいけないと判断した為に連絡を入れませんでした……申し訳ない、やられてしまった』
何処か暗い声の唐沢。
唐沢は外務の仕事帰りで、この戦線には立ってはいない。唯一外部を気にする時間があったボーダー幹部だ。
唐沢はいったいなにを言っているんだ?
迅以外の人達は分からない。
つい先程まで本部の基地がアフトクラトルの精鋭で黒トリガー使いであるエネドラに襲撃されていたから、本部の周りに人型近界民が多数出現していたから……それらを対処する為に外部の情報をシャットアウトとは言わないが、殆ど入れない様にしていた。
『俺の真の狙いはこの侵攻を利用してのボーダー、特に迅悠一の足止めだ……お前が大慌てで唯一外に居た唐沢さんが謝罪をしているという事は成功したんだな……』
ボーダー側の迅の慌てる姿や唐沢の謝罪の言葉からジョンは作戦に成功したと喜ぶ
『誰でもいい、スマホを見てくれ』
「……コレは!!」
ボーダーから支給される携帯端末でなく日常使いのスマホを取り出す。
待機状態の暗い画面から電源スイッチを押せば画面に明かりがついて様々なニュースが通達。無論、その中には三門市が近界民の大規模な侵攻を受けているというニュースもあったが城戸の目に止まったのは1つのニュースだった。
『国会議事堂を狙われた』
そのニュースは国会議事堂に近界民が現れたとの報せだった。
※遡ること二十数分前、ジョンが葵に作戦を決行してくれと頼んだところに遡る。
「……そうか」
レグリットは遠征艇に居るルルベットに連絡を取った。
ルルベットが三門市に派遣された目的である事が終えて迅が未来の重要な分岐点に差し迫ったのを判断して今が作戦の決行の時だと通達が来た。
「ハロー、いや、はじめましてだな」
レグリットはシャーリーと共に行動していた。全てはイアドリフとこちらの世界で和平の様な物を結ぶ為にだ。
ジョンは知っている。ボーダーの隊員には1回目の侵攻で家族を失ったり拐われたりした人が大勢おり、如何にこちらが友好的な国家と言えどもボーダーは和平の様な物を結ぶのは難しい、出来ても玉狛支部預かりでトリガーを取り上げられる可能性が高い。ジョンの見解は間違いではない。普通に同盟的なのは結べないのである。
「はじめまして、私はレグリットだ」
「
「固くて結構だ…………それと教官ではないレグリットだ。私達は今、国会議事堂前にやって来ている」
故に確実に同盟的なのを結べる作戦を考えてきた。
レグリットとシャーリーは東京都千代田区永田町にある国会議事堂前にやって来て動画配信サイトというかYouTubeで生配信を行っている。
「この国会議事堂というところにはこのニホンと言う国の役人達が日夜国をどう動かすのか熱い討論を重ねている、国の中枢を担う場所だ…………ああ、言い忘れていた。私達はこの国の人間じゃない、イアドリフという国からやって来た……
レグリットがそう言うと空中に大量の門が展開されていく。
道行く人達はアレはなんなんだと驚きざわめく中で門から大量のトリオン兵が降り立った。無論、それを見ている警備員達は即座に上や警備会社、警察等に連絡を入れる。
「ニホン政府に告ぐ!!我々はイアドリフ!君達で言うところの近界民だ!!ニホンという国と交渉がしたい!!」
そんな中でシャーリーは1000円ぐらいで買える拡声器を片手に国会議事堂に訴えかける。
「
国会議事堂付近に居た民間人は驚きを隠せない。
「現在その街で侵攻している国と我々の国は異なる国だ!こちらの世界にニホンやアメリカ等色々と国がある様に向こうの世界にも色々と国がある!」
「ニホン人よ、私達は交渉に参じた!ボーダーという組織は我々が近界民だというのを理由に話もまともに聞かずに発砲した!!更にはボーダーは民間の組織と聞く……我々はニホンという国と和平や同盟を結びたい!!」
忘れがちな設定かもしれないがボーダーという組織は国が認めた政府公認の民間の軍隊みたいなのであり、政府の組織ではない。
唐沢をはじめとする様々な頼りになるOTONAが色々と上手い具合に交渉したり騙したりしてボーダーという組織を存続させている。
麟児は知っている、ボーダーという組織は民間の組織だというのを。
鳩原は知っている近界民に家族が拐われたり殺されたりして近界民に対して激しい憎悪を抱いているのを。ボーダーが色々と情報を規制している事を。
「…………出てこないか」
「ならば語らせてもらおう」
現在国の偉いさん方が会議している国会議事堂前に見てくれだけの修でも簡単に倒せるトリオン兵を大量に並べた。
シャーリーはなんとしてでも国の偉いさんとの対話を求めるのだが中々に国の偉いさんが出てこない。もしかしたら秘密の抜け穴を使って逃亡したりしている可能性もある……なのでその時間をレグリットは利用させてもらう。
「コレを見ている諸君、コレを撮っている者達よ。思う存分世界に向けて情報を発信しろ」
「皆が思っている知っている
避難しつつも野次馬根性を見せつけている人達はスマホのカメラを向けて撮影しようとしている。
レグリットはそれを利用する。シャーリーもそれを利用して隠された事実である近界民=トリオン兵ではない事を伝える。
そしてそれがバズる。1人も居なかった動画の視聴者が一気に数百人と視聴者が増えていく。この展開をシャーリー達は望んでいる。
「コレを見ている人達に問おう。そもそもで何故戦争は起きる?」
政府の役人が出てくるまでシャーリーの口は止まらない。
「私利私欲に走った悪の人間が世界を支配する為に戦争が起きる……という一例もある。しかし、戦争が起きる主な原因は資源の奪い合いだ。こちらの世界で異国同士の戦争が勃発した際に鉱石や香辛料等を求めての戦争が多く勃発したと記録が残っている筈だ。今では簡単に手に入る胡椒や紅茶、コーヒーを求めて命懸けの冒険をした記録や争いもあるはずだ」
戦争をする1番の理由は資源の奪い合いだ。
悪い人間が世界を支配しようと世界征服を天下統一を企むという一例が無いわけでも無いのだが基本的には戦争は資源の奪い合いである。
「資源の中で最も取り扱いが難しく、量産も難しいものはなんだと問われれば答えは1つ。人間だ……その資源を求めて近界民はやって来る」
兵器は設計図と素材があれば製造工程をミスしなければ100回やっても1回もミスる事は無い。
料理もそうだ。レシピ通りに作っておけばちゃんとした味になる。常に100点の味を出せるかと聞かれればNOだがそれでもレシピ通りに料理を作れば80点以上の味を再現する事が出来る。
しかし人間だけはそうはいかない。様々な個性を多様性を有しており、100回挑戦しても100回とも同じ結果になるとは限らない。
「向こうの世界は資源に乏しい国が多く様々な国を侵攻しておりこちたの世界を侵攻するのも人という資源の確保の為だ……だがイアドリフは食う為の資源には困らない……故にこちらの世界に交渉を持ちかけた。様々な技術を提供する。その代わりに農業をはじめとするこの国の技術を提供してほしい……故に、この国の首相よ出てきてほしい。我々はただ1度しか貴方達の前に姿を現さない。真実を語らない……ボーダーが秘匿にしている事や技術等を提供する事が出来る」
シャーリーは待つ。レグリットも待つ。
日本の首相が、総理大臣が出てくるのを待っている。きっと上は揉めているんだとシャーリーは考えていると屈強な警備に囲まれた男が……この国の総理大臣が出てきた。
「そこのボディガード、銃を持っているだろう?私に向かって撃て」
「え……」
「む、流石に抵抗があるか。ならばトリオン兵に向かった銃を撃ち込め」
突如としてレグリットに銃を撃てと言われて困惑する警備兵。
いきなり撃てと言われても撃つことは出来ない。人であるならば尚更だ。レグリットもそれを理解したのかライオンぐらいのサイズの四足のトリオン兵を総理大臣の元に向かわせると総理大臣を庇うように屈強な警備兵達は動き銃を構えてトリオン兵に向かって発砲した。しかし無傷だった。
「既に知っている者は知っているかもしれないが、こちらの世界の兵器では我々を傷付ける事は出来ない。トリガーを用いなければ傷一つ負わせる事は出来ない……安心しろ、私達は交渉に来た。暴力に走らない……
もしかしたらYouTubeのアカウントが使えなくなる可能性を考慮してカメラの撮影をレグリットは許可する。
秘匿する事が出来ない状況にまで追い込むのが今回の作戦の要である。
「……本当に
総理は問う。近界民はトリオン兵じゃないのかと。
「トリオン兵、いや、こちら風に言えばロボットの事だろう。確かに驚くのも無理は無い。だから冷静になって考えて欲しい、仮にこのトリオン兵がそちらで言うところのロボットでなく生物だった場合、ゴキブリと呼ばれる害虫の様な存在だと仮定した方がいい。なにせ見た目は全て統一されているのだから」
確かに
とシャーリーが言ったことに視聴者や総理大臣は思った。
ボーダーの広報が普段ボーダーは
「1つ、こういう感じの人間。2つ、ゴキブリの様に人間ではない害虫と認定される生物、3つ、ロボットで向こうの世界から送ってくる人間がいる……3つ目と仮定してみよう。別世界から近界民がやって来る?何故?……分かりません。だったら、害虫のよう存在かもしれない。向こうはただただ普通にやっているだけで、私達が生きるために駆除している……という説もあるにはあるが今は割愛しよう」
シャーリーは色々と火種を撒き散らす。気付けば動画の視聴者は数千人に及んでいる。
国営のテレビ局のカメラも回っている。圧倒的なまでにこちらが優位である。
「ボーダーが普段相手にしている近界民はこんなのだと世間に浸透している。近界民が此方の世界を襲う理由がわからないだろう?ただそこにいるだけで迷惑で殺す害虫がなんの為に人を拐う?となり停滞する。近界民はああいう感じの見た目の人間となるが、そうなるとまたなんの為に人を拐うのかが分からなくなる。とにもかくにも、近界民はどうして人を拐う?」
「それは……」
「性的快楽を得る為に拉致をしている?この見た目で性別があると思うか?」
いや、それはない。だってロボットならばそんな事をしなくても構わないから。
「ならば自国を開拓させる為の奴隷か?だが、皆が知っている近界民は私達よりも遥かに大きく住居を倒壊させる等容易く出来る事っと、無駄話が過ぎたな」
世間が思っている近界民=ロボットと思わせる事に成功した筈だとシャーリーは話題を別のものに変える。
「先程も言ったように我々は食う為の資源には困っていないが色々と技術が拙い。おそらくはこの国の農業や畜産業の方はイアドリフの何百倍も発展しているだろう…………そこでだ、私達の技術を提供する代わりにこちらの世界の技術を提供してほしい」
「……こんな物を作れるのにこちらの世界の技術が必要なのか?」
総理大臣の目には無数のトリオン兵が映っている。
拳銃をはじめとする近代兵器をものともしないテクノロジーを持っているのならば今更自分達の技術が必要なのか?と。それはこの動画を見ている人達も同じ疑問を抱いていた。
「……アレを出せ」
緊張が走る中でレグリットが指示を出すと門が再び開かれて……ケビンマスクの仮面をつけた扇風機を持った葵が現れた。
「はじめまして、総理……私の自己紹介は後にします。ですので動画を見ている人達もこの扇風機に注目してください」
葵は自身でなく扇風機を見ろと言う。
扇風機にはコンセントがついておらず代わりに手錠の様な物が繋がっており葵は手錠を付けると扇風機はグルリグルリと回っていく。
「皆さん、ご理解出来ましたか?」
葵は世間や総理に問うがなにが?と疑問を持つ。
南米の民族で電気が通っていない家庭とかならば見ないが大抵の国には扇風機は置いてあるし作る技術力はある。だから葵がなにを言っているのかがさっぱりだった。
「この扇風機、電気で動いていないんです。ねじ巻き式でも手回し式でも電池式でもありません……石炭や石油等も蒸気機関を使っていません」
「こちらの世界では雷のエネルギーを用いた電気という物で明かりを灯す。しかし向こうの世界では電気とは別のエネルギーで明かりを灯す……この扇風機もその別のエネルギーで動いている」
葵はシャーリーが言いたいことを説明する。
扇風機はクルクルと回っている。葵が腕に手錠の様な物を嵌めている以外は何処にでもある極々普通の扇風機の見た目をしている。
「この国は電気というエネルギーが必須だと言わんばかりの文明が発達している物の最低基準が高い高度な文明国だ。そして春夏秋冬と暑い時期、寒い時期と色々とある…………そこでこの扇風機という道具やエアコンという涼しい風を送る道具が活躍する」
「それが……それがどうした」
「国は市民に電気を売っている、市民は暑さや寒さを凌ぐ為に電気を動力に動きエアコンを使う。そこにはかなりの金や資源が掛かる…………欲しくはないか?電気とは違う化石燃料の様に何時かは底が尽く資源とは異なる物に成り代わる未知のエネルギーを。この国の人達は年々高くなる電気の値段に苦しんでいる、貴方達もそれに頭を悩ませている。洗濯機やエアコン等の家電に成り代わる道具はほしくはないか?」
ジョンはこっちの世界の日本で起きている問題を幾つか知っており、こちらの世界に戻ってからも調べた。
その内の1つは電気代の高騰だ。様々な原因で電気代が年々高くなっている。それに悲鳴を上げている一般市民が多数存在しているのを。
年々日本の夏は暑くなっている。昔は気温35℃越えで騒がれていたが今では気温35℃越えは当たり前、埼玉辺りでは40℃越えたとか越えていないとか。そんな中で活躍するのはエアコンだ、扇風機だ。しかしエアコンや扇風機は馬鹿みたいに電気代を食う代物だ。冷蔵庫と違って常時電源をONにしていなければならない物とは言わないがそれでも使い続けたい。だが電気代云々の問題がある。そして目の前にその問題を解決する方法がある。
雨取麟児は言った。
ボーダーという組織は民間組織だ。そしてこっちの世界に関する情報等をボーダーは牛耳っているからボーダーとの正面衝突を避けて国会議事堂辺りで総理大臣に向かって自分達が
普通に国会議事堂を狙おうとすれば騒ぎになるのは確定だ。迅のサイドエフェクトに引っかかるだろう。ボーダーが適当に誤魔化す作戦を取るだろう。
ジョンは知っていた。
遊真がこちらの世界に来たことを三雲修を経由して遊真に接触しなければ遊真が近界民である事に気付かなかった事を。だからそれに便乗してこちらの世界に足を踏み入れて今日まで身を潜めていた。
ジョンは知っていた。
アフトクラトルが三門市に向かって大規模な侵攻をしてくるのを。ボーダーが全勢力とは言えないが総力を上げて対応しなければヤバいぐらいの危機で、迅悠一がヒュースの足止めをし三雲修の死に繋がる未来を回避する為に意識を割くのを。
その僅かな時間だけが作戦を決行する時間だ。
そして様々な作戦を考えた。とことん原作知識などを悪用した作戦だ。
普通に和平を結びたいと言っても無理だから交渉に使えるカードをジョンは考えた。イアドリフ、というか向こうの世界では明かりを1つ付けるのにもトリオンを用いている。しかしこちらの世界ではトリオンを用いておらず電気を用いて明かりを灯す。
一般市民達は知っている、年々電気代やガス代、水道代が高くなっている事を。なんとか節約しなきゃと思っている。
そんな中で電気を用いずに電池や手回し式でもなんでもない石炭や石油を用いていない化石燃料も使わないエアコンや洗濯機があると言うのならば一般市民は欲しいと思うだろう。
「無論、それだけではない……気付いているだろうか?私達が会話をする事が出来ているのを」
「……?」
「この国の言葉はこの国でしか使われていない言葉だ。それなのに異世界の住人である私達と何一つ支障無く対話をする事が出来ている事に疑問を感じないか?」
日本語というのは基本的には日本でしか使われていない言語だ。
日本語を喋れる外国人は年々増加していっているが基本的には日本でしか使われていない。総理大臣や動画の視聴者は言われてみればと反応を示す。
「我々の技術の中には高度な翻訳技術もある。貴方達と会話をする事が出来ているのもその高度な翻訳技術のおかげだ」
トリオン体には翻訳機能が常備されている。
そしてジョンは知っている。学校で習う英語や外国語は完全に使い物にならないとは言わないが、本場の外国語と比べれば聞き取りにくかったりする。その逆もまた然りだと。
「文字の翻訳は不可能だが、言語による翻訳は容易に可能だ…………こちらの世界にも異国の言語を翻訳する翻訳家は居るだろう。異国の言語しか喋れない人を通訳する仕事も存在しているだろう。異国の言語は学ぶのは物凄く難しいだろう。最低でも100以上ある異国の言語や方言を翻訳する機械は欲しくはないか?」
ジョンは知っている。
日本は海外との交流が盛んな国だ。日本の美味しい物や名物を巡るために長期休暇を取って日本に来る外国人観光客は年々増加している。だから通訳する人や旅行会社は結構儲かってる。外国語、英語は喋れないと今後の世の中上手く渡り歩いていけないのを。
「この国の農業や漁業、畜産業の技術は高度に発達しているが肝心の若者がその産業から離れていっている……農家は儲からないというイメージがあるが育てる作物によってはむしろ儲かる。しかしシンプルに体のあちこちが動かなくなるほどキツいという欠点がある……だが我々の技術を用いればその問題の一部を解決する事が出来る」
ジョンは知っている。
若い世代が農業や畜産業等の一次産業から離れようとしているのを。それが社会問題になっているのを。
休みがなかったり儲からなかったりと臭い汚いのがダメだったりと色々な理由で離農していっているのを。全ての問題を解決する事は不可能だが体がキツいという問題を簡単に解決する方法が向こうの世界の技術にはある。というかトリオン体になって暑さを感じる部分を調整すれば40℃以上のムワッとするビニールハウスの中でも簡単に活動する事が出来るのである。
「……」
交渉に使えるカードはまだまだあるが、使いすぎるのは良くない事なのでシャーリーはコレ以上は交渉のカードを切らない様にする。
総理は考える。ボーダーは色々と隠し事をしているのは知っている、ボーダーは未知の技術を持っていて独占しており出し渋っている。もし目の前に居る
「もう1手……感動話があればいいか」
レグリットは総理が色々と思考している事に、悩んでいる事に気付く。後1手で総理を口説き落とす事が出来る。
シャーリーが持っている拡声器を葵に渡した。
「歌え」
「……きぃ〜みぃ〜がぁ〜、よぉお〜はぁ〜。ちぃよぉおに、やぁちぃよぉに、さざれぇ石の、厳となりで、こけのむすぅまぁで……」
「…………君が代?」
ケビンマスクの仮面を付けた葵は君が代を歌った。
総理大臣は当然君が代を知っている。だからどうして葵が君が代を歌ったのかが分からなかったが葵は仮面を外した。
「はじめまして……私は水無月葵と言います」
「水無月葵……まさか」
ここで総理大臣も気付く。
動画の生配信でチャットしている人達もまさか、もしかしてと君が代を歌った理由を、歌えた理由に気付きだす。
「彼女はアオイ……私達が侵攻を受けた国の兵士で、捕虜とした………………この国の人だ」
「っ!?」
「信じてくださいと言っても無理ですよね。君が代を歌えるだけで日本人だと認定するなんて無理ですよね…………お父さん、お母さん、爺やごめんなさい……兵庫県の芦屋の────の住所が我が家です。父の名前は」
葵は自身が覚えている限りの家の住所を言った。親の名前を言った。
世界中でこの動画が見られているのに住所を言えばどうなるのか?色々と大変な事になるのは確定だ。
「47都道府県を言います。県庁所在地も言います……だからお母さん達に会わせてください」
「もういい、もういい……」
「……DNA鑑定をお願いします」
葵はそう言うと1本の髪の毛を抜いてトリオン兵を経由して総理に渡した。
「コレを急いでDNA鑑定に回すんだ!!そこの住所に向かってどちらかでいい。親のDNAを鑑定しろ。今やっているDNA鑑定を全て無視していい。それと芦屋の役所と警察署に水無月葵に関する情報はないのかを」
総理は動く。
葵が言っていることが本当かどうかを確認する為に。
「……本当ならばこんな事をしたくなかったがボーダーという組織を経由しようとしたがボーダーは私達が
「っ……」
総理は考える。
近界民は異世界からの侵略者だと思っていたが友好的な存在が居た。
近界民の世界の技術を提供する代わりにこちらの世界の技術を提供してくれと言われている。
こちらの世界の火薬を用いた近代兵器は近界民には一切通じておらず、向こうが求めているのは農業等の技術、農業系は隠せるだけのものは無い。電気を用いないエアコンや洗濯機等があればこの国が抱えている電気の問題が大きく解決する。
若者が農業をはじめとする一次産業を離れており、この国の食料資源の6割ぐらいは海外との貿易で得た物で賄っている。もし近界民の話が本当ならば若者の一次産業離れを食い止める、新しく農家に挑戦する若者を増やすことが出来るかもしれない。
向こうが求めているのは、こちらの世界の技術。
向こうが提供する事が出来るのは向こうの世界の電気を用いない未知の技術と過去に拉致されたこちらの世界の、この国の人間だ。
「……イアドリフと言いましたね?」
「ああ、我々は向こうの世界のイアドリフという国からやって来た……ここで拒むのならば次は無い」
「…………分かりました。この国と日本とイアドリフの間に和平を、同盟を結びます」
「……そうか」
シャーリーは総理が和平を結ぶと決めたので総理の元に近付く。
警備している人達は何時でも拳銃を抜けるようにしているが、シャーリーはトリオン体なので近代兵器は物ともしない。シャーリーは総理に向かって手を差し伸べた。
「コレは?」
「握手だ……詳しい詳細は今はまだ省くがこの和平を記念して握手をしよう」
「……ああ」
シャーリーと総理は握手を交わした。
この頃には100万人以上の人がこの動画を見ている。コレでボーダーは最初から無かった事にする事は出来ない。
「…………さて、コレはあくまでも私の独り言だ。些細な事だ、気にするな」
「え、レグリット?」
ここまでは大体ジョンが書いた台本通りに事が運んでいる。
ボーダーの邪魔が入らずにホッとしているとレグリットが予定に無い事をするので葵は驚く。
「先ず前提として言っておくが向こうの世界にはそれこそ我々でも数えきれない程の国がある。だから何処の国が4年半前に襲撃してきたかは不明だ…………その点を踏まえて1つだけ不可解な事がある。火薬を用いたこちらの世界の兵器は全くと言って我々の兵器には通じない。しかしボーダーという組織はどういうわけか我々の兵器であるトリガーを手にしていた……疑問に思わないか?」
なんのことだ?と視聴者や総理、シャーリーや葵は思った。
「こちらの世界ではトリガー技術を独占する事が出来るぐらいにはボーダーはトリガー技術を独占している。4年半前の大規模な侵攻の際にはトリガー技術云々は無かった、皆知らなかった。しかしどういうわけか極少数で動いていたボーダーはトリガーを手に入れていた…………私の推察が正しければ極秘裏にこちらの世界の住人と向こうの世界の何処かの国の住人がコンタクトを取ってこちらの世界にトリガー技術を提供していた…………ボーダーには向こうの世界の人間が居る。そして何度か向こうの世界の何処かの国に遠征している筈だ……不自然な理由で休んでいるボーダー隊員が居れば黒だ」
最後の最後でレグリットは爆弾を投下した。
ともあれ麟児が発案し、ジョンが調整を施した作戦は成功した。
迅悠一という壁があるのでたった1度しか出来ない、2度目はないあまりにもリスクが高すぎる作戦だが成功した。コレが後に日本史どころか世界史どころか世界中の歴史の教科書等に出てくる出来事になると葵達はまだ知らない。
A ボーダーは民間組織なのでボーダーを無視して日本政府と交渉する。交渉の台本は大体ジョンが考えてる。
いったい何時ボーダー相手に和平を結ぶと言った?そんなややこしいことするわけないじゃないですか、やだなぁ。
さぁ、こんな事をすればボーダーや日本にどれだけの被害と利益が出るんでしょうね。皆で考えてみましょう。
因みに葵の住所が芦屋なの日本の金持ちの住宅街でググったら出てきたのが芦屋だったから芦屋にした。
幾らなんでも迅を出し抜きすぎでしょうと思っても気にするな。ご都合主義が働いてるで終わる。
今後の展開
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そろそろ原作にいけ
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もう少しオリジナルをやれ。