近界プルルン奮闘記   作:ドドドドド黒龍剣

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第6話

 拉致されてから3日目。

 今日も俺だけ言葉が通じるので講習を受けることになった。今日の内容はトリオンとか黒トリガーとか冠トリガーとかの原作を知ってる人ならば知っている常識的な事だ。

 俺はあくまでもなにも知らない日本人なので時折、質問をしたりして知らないフリを演じ続ける。

 

「今日は戦闘訓練をする」

 

 また森に移動したかと思えば今日はルミエ以外にも見ない顔がいる。

 進行はルミエの様だが、なにかを準備している。

 

「言葉が通じないけど、一応は言っておこう。今日はより実戦的な戦闘訓練を行う……やっぱ分かってないか」

 

 俺以外にもリーナを含めて何名か居るのだが、なにを言っているのかちんぷんかんぷんだ。

 日本語を覚えようとしているリーナも訳が分かっておらず、この中で俺だけがなにを言っているか理解している。とはいえ、実戦的な戦闘訓練とはなにをするつもりだ?

 

「どうも。俺はイアドリフの戦闘用のトリガー開発部門の1人、ドロイだ。今日はトリオン兵との戦闘訓練を行ってもらう」

 

 ルミエの横でなにか準備をしていた男は卵の様な物を投げる。

 すると、卵の様な物は光を放ち段々と大きくなっていき最終的には自動車ぐらいの大きさのフナムシに尻尾をつけたロボットみたいなのになった。

 

「コイツはモールモッド。戦闘用のトリオン兵で、今回はコイツを倒してもらう……2つの内のどちらかのトリガーを使ってだ」

 

 黒い腕輪と白い腕輪を見せるドロイ。

 2つと言う事はタイプが違うのだろうと思っていると、黒色の腕輪の方にUSB的ななにかをぶっ指して操作をするとイメージCG映像でよく見る感じの人のトリオン体が作られる。色は青色じゃなくて黒色か。

 

「黒い方は君達が来た日に使った剣型(ブレードタイプ)のトリガー【カゲロウ】何処の国の技術でも作ることの出来る汎用的なトリガーだが、その分使い勝手はいい」

 

 ブンブンと黒色のトリオン体が剣を振るう。

 言葉が通じないのを向こうも分かっているから、あの手この手で教えに来ている。

 【カゲロウ】についての説明は特にない……剣型はトリガーとしての性能よりも使い手の性能が物を言う感じか。

 【カゲロウ】の説明を終えると黒色のトリオン体は消えて、今度は真っ白なトリオン体が作られる。

 

「2つ目、白い方のトリガー【ミラージュ】。これはイアドリフ独自のトリガー……と言っても、他国でも作ろうと思えば作れるんだけど」

 

 縦に長い六角形の鏡を複数個出現させる。

 鏡で戦うのか?と見守っていると鏡から光線が放たれる。

 

「能力は至ってシンプルだ。トリオンの弾を鏡から放出する。鏡を使うことで反射することも弾道を途中で変えることも可能で、鏡を重ねる事でより強い弾を撃てる」

 

 原作で言うアステロイド(通常弾)バイパー(変化弾)を合わせた感じか。

 縦に長い六角形の鏡から光線を放つと落ちていた木の枝は簡単に貫かれていく。

 

「この2つの内のどちらかを使ってモールモッドを倒してもらう」

 

 白色のトリオン体を消して、俺達にトリガーが入った箱をドロイは見せる。

 1つは黒色の腕輪で【カゲロウ】が入っている。もう1つは白色の腕輪で【ミラージュ】が入っている。

 原作風に言えば黒色が攻撃手(アタッカー)、白色が射手(シューター)のポジションと言ったところ……。

 

「他は無いのか?」

 

 この2つしか選ぶ権利は無いのだろうが、一応は聞いてみる。

 突撃銃とか狙撃銃とか他にも色々とトリガーがある筈だろう。何故それを出そうとしないんだ?

 

「この2つだけで充分だ」

 

「どういう意味だ?」

 

 他にもトリガーはある筈なのに、この2つだけ。

 ドロイとルミエはこの2つを用いて戦っているとは思えないんだが、この2つだけで充分の様だ。

 

「今回はトリオン兵との戦いを想定した訓練で、トリガー使いとの戦いを想定した訓練じゃない。狙撃銃なんかは主にトリオン兵よりもトリガー使いとの戦いに使うから今回は省いた。この2つにしたのは基礎能力を高める為でもある」

 

「基礎能力?」

 

 基礎体力なら分かるが、トリオン体に筋肉やスタミナは関係無い。

 能力となると後考えられるのは昨日やった隠密行動や地形踏破の訓練ぐらいだが、それだけじゃない。

 

「剣型のトリガーは剣の性能よりも使用者の性能が物を言うトリガーだ。使用者の性能はどれだけ効率よくトリオン体を動かせるかで腕の立つ奴ほどトリオン体を自由自在に使いこなしている」

 

「じゃあ、【ミラージュ】は?」

 

「【ミラージュ】の武器は鏡。手で持つ物でも足で動かすものでもない。第三の感覚を覚えさせる為のもので、コレを上手く使いこなせる人間ほどトリオンコントロールが上手い」

 

「……成る程……」

 

 体の使い方を覚えれば覚えるほどハッキリと成長していく【カゲロウ】

 手とも足とも異なる第三の触覚として動かさなければならない【ミラージュ】

 

 トリガーと言う兵器を用いての戦いを覚えるにはちょうどいい様にはしてある……のだろうか?

 俺だったらのトリガー構成をすると言う痛い妄想を何回かしたことはあるが、こういう軍事的な考えをしたことはない。多分、ボーダーもそういうのをしていないだろうな。そもそもでボーダーのやり方って自主性を尊重しすぎて指導する教官的なの自力でどうにかしろっぽいし。

 

「さぁ、どちらにする?トリオンが少ないなら【ミラージュ】は使えないが、お前達はトリオンが多い。基本的になんでも使える」

 

 ドロイは白い腕輪が入った箱と黒い腕輪が入った箱を見せる。

 さて、どうしたものか?トリオンが足りなくて困ってしまうと言う原作主人公のメガネ君の様な事にはならない様だが、此処は慎重に選ばなければならない……幾つか聞いておかねえと。

 

「幾つか質問していいか?」

 

「答えられる範囲でなら」

 

「コレって選んだ方をずっと使い続けるのか?」

 

 どちらかを選べと迫られているが、選ばなかった方が使い勝手が良かったと言う可能性もある。

 此処で可能性の幅を狭める事になるかもしれないのならば、慎重に選ばなければならない。

 

「基本的にはずっとだ。とはいえ、合わなかったり調整したりしないといけなかったりするからある程度の改造は許す」

 

「ある程度って例えば?」

 

「剣じゃなくて槍にするとか……無論、此方はそちらの意見を出来る限り取り入れるつもりだ。使えればだけど」

 

 今から貰うトリガーが暫くは自分のトリガーになるか。

 そうなるとどちらが正しい?トリオンには恵まれているから俺はこうして生き残っている。トリオンに物を言わせた戦闘……いや、それでいいのか……。

 

「両方は無理なのか?」

 

 どっちか選べないなら、どっちも選ぶ。

 万能手(オールラウンダー)というポジションがあるのを知っている。

 

「両方を同時に使いこなせるのか?」

 

「……無理だな」

 

 剣をまともに握ったこともないし、トリオンという第三の感覚を使いこなせると断言出来ない。

 どちらかを使いこなすにもある程度の時間は掛かる……そう考えるとボーダーの万能手はスゴいな。死なない訓練をしてるとはいえ、両立できる奴を数年で何人も作っているんだから。

 

「後が閊えるから早くしろ」

 

「……」

 

 これはどっちを選ぶのが正解だ?

 トリオン強者ならば弾型でそうでないなら剣型の方がいいが……そもそもで俺のトリオンが幾つなのかを知らない。

 

「……【カゲロウ】をくれ」

 

 色々と悩んだ末に【カゲロウ】を選んだ。

 正確なトリオン量を知らないし、トリオン量を増加する角を後天的に移植する手術をアフトクラトルはしている。なら、トリオンに物を言わせた戦いよりも技術云々を覚えた方がいい。

 俺が選ぶと、それに続いて別の人達も選んでいく。

 

「ジョン、which is good?」

 

「white」

 

 リーナは俺にどちらがいいのか聞いてくるので、選ばなかった方を選ばせる。

 

「じゃあ、早速やるか」

 

 トリガーを選び終えたら、早速戦闘訓練がはじまる。

 とはいえ状況がイマイチ理解できていない人達も居るので、俺が問答無用でお手本になれと1番手となる。

 

「どうしたものか……」

 

 最初の戦いと違い相手はトリオン兵、ロボットみたいなものだ。

 奇襲を仕掛けるといった感じの作戦無しでも倒せるには倒せるのだろうが、機械なだけに油断や隙が生まれにくい。純粋な実力で倒さなければならない相手であり、俺は自分の純粋な実力を知らない。

 トリオン体と生身の肉体は差異を掴み出してはいるものの、まだまだ未熟でそれなりの訓練を積んでいる奴等と戦ったら負けるだろう。

 

「勝利条件は相手を倒すこと……俺が持っているのは剣とシールドのみ」

 

 今回は前回と違い実戦を想定した戦いなのか前回無かったレーダーやシールドが標準的に装備されている。

 とはいえ、目の前に敵が居るのであまり役に立ちそうにはない。

 泰平の世を築いて100年。

 平和な日本では武術は廃れていっており、代わりにスポーツが発展していっている。俺はといえばなにか特別な事をしているわけじゃない剣の素人……。

 

「下手な小細工よりも一点突破の方がいいか」

 

 深く腰を落とし刀の切っ先を相手に向け、その峰に軽く左手を添えた構えを取る。

 本来ならばこの技は左手で行うものだが俺は右利き。左手を上手く使いこなすことは出来ないが、そこは気にしないでおく。

 

 必殺技の名前はわざわざ叫ばない。

 必殺技は必ず殺す技であり、なにを取っても倒すことが優先だと俺はモールモッドに向かってひた走る。

 

「っ!」

 

 モールモッドも俺に合わせた動きをしてくる。

 真正面から突っ込んでくる俺に対して左から薙ぎ払うかの様に前足を使って攻撃する。

 単純な攻撃だ。ただ単に素早いだけで、対処できないわけじゃない。

 

「そこだ!!」

 

 左からの攻撃を跳んで避けた際の勢いをそのままに目を狙いにいく。

 

「ちぃっ!!弱点はちゃんと理解しているか」

 

 目を狙いにいったが、攻撃は届かない。右側の足を目元に近付けてガードした。攻撃に使う部分かやたらと硬い。

 【カゲロウ】の刃だとどう頑張ってもモールモッドの装甲を切り裂けないのが分かっただけでも、御の字……いや、待てよ。確か原作の序盤で主人公達がモールモッドの足を斬ってた筈だ。

 

「チマチマとやってたら、評価に関わるが今の俺はその程度か」

 

 原作に出てくるキャラの殆どが、このモールモッドを雑魚扱い出来る。

 今の自分がどれだけ弱いのか痛感できるが、感傷に浸っている場合じゃない。幸いにもモールモッドの攻撃を避ける事だけは出来ている。

 何処から攻撃が来るのか分かってさえいればどうにかなる。巨大な敵の大振りの攻撃でどれだけの硬さか分からないシールドに命は預けられない。

 

「先ずは1本!」

 

 攻撃自体はどうにか対処が出来ている。

 守っていてばかりで攻めに転じれない自分に情けなさを感じつつも、攻撃してくる左足を避け、足の付け根部分を狙うとあっさりと切り落とす事が出来た。やはり原作の知識は神である。

 

「このまま連続でいかせてもらう!」

 

 左足の前の部分を切り落とした事によりモールモッドの攻撃範囲が少し狭まり隙が生まれる。

 この勢いを途切れさせてはいけないと感じた俺はそのまま真ん中の足、後ろ足を切り落としていき左足を完全に切り落とす。

 

「勝ったと思った時ほど人は油断する。右の部分も切り落とす」

 

 ここで目を狙いにいってもいいが、なにがあるかは分からない。

 全ての左足を無くしてバランスが取れなくなったモールモッドの右足を切り裂いていき達磨状態にする。

 

「これで終わ……!」

 

 後は目玉を潰すだけだと突撃するのだが、モールモッドが消えた。

 

「おい、どう言うことだ?」

 

 こんな事をするのはルミエ達しかいない。

 森の外側に向けて声を掛けるとドロイが姿を現した。

 

「後は目玉をぶっ潰すだけで終わりだ。いいところで中止にするな」

 

「あのね……時間を掛けすぎ」

 

「……」

 

 困った奴だと大きな溜め息を吐いて呆れる素振りを見せるドロイ。

 確かに原作みたいにシュパッと軽々しく倒すことは出来ず、時間を掛けてしまった。

 

「左足を潰した時点で目玉を狙いにいけばよかったのに、それをしなかったせいで時間切れになった」

 

「時間切れがあるとは聞いてない」

 

 あるならば足じゃなくて目玉を狙いにいったし、それ以外の作戦を考えていた。そういうことは事前に言ってほしい。

 

「時間制限が無いとは言ってない……第一、モールモッドごときで手こずっていたら話にならないんだよ」

 

「……ッチ」

 

 ムカつくがドロイの言っていることは間違ってはいない。

 原作では弱い事で知られている主人公のメガネ君ですら倒せる相手なのに、無駄に時間を掛けてしまっている。多分、ベテランとかになると一瞬で片付く相手に時間を掛けている。

 

「でも、一応は倒した扱いにはする。時間を掛けすぎた以外は評価出来る部分はかなりある……ただ、慎重になりすぎている。トリオン体を自由に動かせているのに慎重になっているせいで完全に使いこなせていない」

 

「初戦闘で、どれだけ俺に重荷を背負わせるつもりだ?」

 

 はじめてのトリオン兵との戦闘だぞ。

 これだけやれただけでも自分を褒めてやりたいぐらいなのに、原作のエリート集団ことA級の隊員の様に秒殺でもしろと言うのか?言葉が唯一伝わってある程度は従順だからと言って期待値を上げないでもらいたい。

 

「まぁ、死なないでなによりだ」

 

「……ちょっと待て。死なないで、だと?」

 

「トリオン体がやられて生身に戻ったら一応は此方側でモールモッドの電源を落とすつもりだが、万が一の事故はある。現に過去に何名かこの訓練で死者が出ている」

 

「っ……」

 

 まずいな。

 トリオン体であることとワールドトリガーの原作を知っているせいか、生死の実感が湧かない。

 改めて自分がやっていたことが命懸けの訓練であったことを再認識させられ、首に手を翳してもしかすると死んでいたかもしれない恐怖が今頃になって襲ってくる。

 

「……クソ」

 

「怒っているところ悪いけれど、次があるからさ……移動をしよう」

 

 分かっていた事だが、この世界は優しくはない。

 ドロイに連れられて森から出るとリーナ達と再会するのだが、直ぐに次が待ち受ける。俺が戦ったことで、次は自分達が戦うんだと教え込まれた様だ。

 

「時間はあるとはいえ無駄には使っていられない」

 

 その後は他の人達もモールモッドと一対一での戦いをさせられる。

 1人は勇猛果敢に挑むも呆気なくやられ、1人は逃げの一手を選んで失格されて、1人は相討ちと結果は散々なもの。

 

「最後の方になってくると、段々と学習をしてくるか」

 

 良いお手本と悪いお手本を見ることが出来るので後続の人間には有利だ。

 順番が最後のリーナは今までの人達の動きから学んだのか、はたまた脳筋なのか迷いなく鏡を複数出現させてトリオンの砲撃を浴びせる。

 

「トリオン豊富だとああいう事が出来るからいいんだよな」

 

 リーナの戦い方を羨ましそうに見るドロイ。

 

「俺達のトリオン能力はどうなってるんだ?」

 

 間引きが済んだ状態で生き残っているのはある程度のトリオン能力がある。

 実際のところを教えてはもらっていないので、気になる。

 

「1から10で言えばお前は9、彼女は13だ」

 

 十段階評価の意味を知っているのか?

 この評価は公式設定集に載っているトリオン能力だと思えばいいのだろうか?

 

「この歳でこのトリオン量。鍛えれば、まだまだ伸びる筈だ」

 

 結局まともにモールモッドを倒せたのは最後のリーナだけだった。

 そのやり方もトリオン能力によるゴリ押しであった為にルミエもドロイもあまりいい顔をしなかった。





ジョン・万次郎(偽名)

トリオン 9

リーナ(愛称)

トリオン 13

今後の展開

  • そろそろ原作にいけ
  • もう少しオリジナルをやれ。
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