近界プルルン奮闘記   作:ドドドドド黒龍剣

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第65話

 第二次大規模侵攻の後処理である記者会見を終えた。

 シャーリーとレグリットは三門市の市役所の一室で一息ついている。

 

「ジョンの先見は凄まじいな」

 

「俺は俺の仕事を、道先案内人の仕事をしたまでだ」

 

 レグリットの爆弾発言はともかく、ボーダーとの間の同盟に関する事は俺が色々と台本を用意した。

 今回は原作知識があまり頼りにならない状況だったがなんとか上手い具合に比較的に有利な条件下でボーダーとの間に政府公認で公に出来る同盟も結ぶことに成功した……コレが正しいことなのか悪いことなのかは誰にも分からない事だ。

 

「あんた爆弾発言多すぎだろう」

 

 台本に無い事をレグリットは言いまくっている。

 三輪の事とか三輪を弁護している様に見えてヘイトを自分に集めている。三輪に関しては触れなくても別に良かったんだ。

 

「誰が悪いのかなにが正しいことなのか分からない状況だ。誰かが悪役を演じていた方がスムーズに進む……向こうにとって私達は敵か?味方か?あまりにも味方だとすれば裏があるんじゃないのかと疑われる。強硬策を取ってくる可能性もある……だから信頼と実績だけでなく疑いも必要だ」

 

「交渉で疑いは必要なのか?」

 

「ああ、必要だ……現にコレでボーダーに対しても世間は疑いを持つことに成功した」

 

 そんな事をしなくても近界民=人間だと証明してトリオン兵=ロボットだと言った時点で殆ど詰みに近いだろう。

 俺もまだまだ子供(ガキ)な事が嫌でも分かる……本当の大人というものが俺には分からないから永遠に子供なんだろうな。

 

教官(先生)、敵を増やしまくってよかったのですか……数年はこちらの世界に滞在しないといけないのに」

 

「別に構わない……お前達以外には殆ど心を開かない方針だ。最も何名かは私に対して心を開いていないが」

 

 シャーリーはレグリットが敵を増やしていることを心配する。

 綺麗事をほざくバカの為にわざと悪役を演じている……そんなところだろう。最早誰が悪いのか分からない状況なので察することは出来ても深くは気にしない。

 

「ジョン……コレで後はイアドリフが再び近付くまでの間に生活基盤を作り上げる、それでいいんだな?」

 

「海外がどう出てくるかは知らねえけど、後はデータとかが必要なぐらいだ……問題は次に何時イアドリフが近付くか、その間にイアドリフが乗っ取られないか」

 

「特定の周回軌道を持たないイアドリフだ。従属国家にする事は難しい……羅生門が此処にあるのが唯一の心配だが」

 

「イアドリフが無くなったら無くなったでこっちの世界で色々と立場を得ればいい。目指せ年収600万だ」

 

 きっと今の俺達ならば年収600万の駐車場付きの二階建ての家を買うことが出来るぐらいの収入を得ることが出来る筈だ。

 野原ひろしや荒岩一味の様な偉大な男にはなれない……あの2人と違って俺はあまりにも道が逸れてしまったから。

 

 年収600万ぐらいならば今から得る地位で手に入れる事ぐらいは出来る筈だ。

 最終学歴が小卒ですらない人が一気に年収600万の人生勝ち組に……あ〜でも嫁とかが居ないか。

 

「む、誰だ?」

 

 色々とああだこうだ考えていると部屋のドアがノックされる。

 記者会見の途中で出ていってその後にトリオン体に換装して見た目を偽装してからこの部屋に入った……取材陣がこちらに来るという事は無いだろう。

 

「ボーダーの忍田と唐沢だ」

 

幻夢(ガメオベラ)……入ってくれて構わない」

 

 ボーダー側からコンタクトがあったか。

 万が一を想定してトリガーを起動してトリオン体に換装してから中に入れると言った通り忍田本部長と唐沢さんが居た……。

 

「ボーダーとの間に政府公認で公の同盟を結んだ……今から俺達を殺しに来たか?」

 

「いや、それをすれば我々が終わる…………今回の作戦、誰が発案したんだ?」

 

「発案者は情報提供者だが、細かな調整はジョンが行った」

 

「おい、バカ。言うな」

 

「そうか、やはり君か…………君はこっちの世界の住人だな」

 

「……あんた達にとっては近界民もどきだろ?」

 

「っ……」

 

「ああ、そうだね」

 

「唐沢さん!?」

 

 俺の言葉を聞いて悲しそうな顔をする忍田さん。

 唐沢さんは俺の言った事を否定するどころか認めてしまった。なにを言っているんだと言いたげな顔を忍田さんはしている……意見の対立だろうな……。

 

「ボーダーが連れ帰る事に成功した悲劇のヒロインならばまだしも君達はボーダーを経由せずに自力で帰還した厄介な爆弾だ……ボーダーにとっては不都合な存在で生まれはこちら育ちは向こうの世界の半近界民、城戸司令はともかく鬼怒田さんや根付さんはそう見ている……私もそれに近しい者と認識している」

 

「彼は、彼は10年という歳月を掛けてここまで辿り着いた……あの時、私が救うことが出来なかった」

 

「あんたのエゴはどうでもいい……俺は10年掛けてこっちの世界に帰ってきた。ただそれだけだ」

 

「っ…………」

 

「忍田さん、悔やんでも仕方がない事だ……彼は救えなかった。だから自力で帰ってきた……敵か味方か分からない立ち位置で」

 

「そうだな……俺は何者にも囚われる事無く独自の立場でこちらの世界を守る浮雲の様な存在だと敵でもあり味方でもある第三者の立ち位置だと思ってくれればいい」

 

 幸いにも俺の見た目は雲雀恭弥似だ。

 孤高とは言わないが囚える事が難しい浮雲ぐらいがちょうどいい。

 

「君とは別の形で出会いたかったよ……君は賢くて強い」

 

「その認識は少しだけ違う……俺はほんの少ししか才能がない。多分、才能だけ見れば三雲修や小南桐絵達の方が遥かに上だ……ただ他の人より知識が豊富だった。頭が少しだけ回った。努力を怠れば死んでしまう地獄の様な環境に居た。努力することをめんどくさがらなかった。他の人よりも効率の良い努力のやり方を知っていた。たまたまそれが自分と噛み合っていた……此処に来るまでに幾つかは無駄な努力も重ねたりした。多分だけど、別の世界線では俺は誰かの下位互換で終わってただろう」

 

 俺がここまで至れたのは偶然と奇跡が幾つか噛み合ったからだろう。でなければ今でも奴隷として虚しく生きていただろう。

 だから唐沢さんが好評価をくだす様な人材じゃない。特に今回の一件なんて原作知識を徹底的に悪用しまくった結果でおそらくは次は無い。

 

「……それほどまで過酷だったのか……」

 

「上には上がいる。黒トリガー使いの歴戦の猛者という化け物を見てしまった以上は強くなるしかない……でも、皆がついてくる事は出来なかった。生き残ったのは俺と葵とリーナだけ……だから下手な同情はしたければすればいい。でも、それを理由に行動はするな。裏切り者と罵られる覚悟はとっくの昔に、最初にリーナを騙した時に出来たから」

 

「そうか……此処に来たのはそのリーナと言う子についてだ。この後に玉狛支部に向かうが時間の方は問題無いかい?」

 

「俺に決定権は無い」

 

「日本政府との同盟を結んだ。ボーダーとも同盟を結んだ。少しの時間と心にゆとりが出来た……構わない」

 

「私達も連れて行くのが条件だがな」

 

「ああ、別に構わない」

 

 俺一人にしてなにかあったら危険だとレグリットは警戒している。

 シャーリー的にはもう大丈夫なラインを越えたから安心出来るだろうが、レグリットからすればまだ安心する事は出来ないだろう。

 レグリット達がついてくる事に関してなにも問題無いと言うのでシャーリー達は見た目を偽装したトリガーを起動し、唐沢さんが手配した車に乗り込んだ。

 

「待ってたぞ……久しぶりだな」

 

「……覚えてくれてたんですね」

 

「忘れたくても忘れられねえよ……お前はある意味、俺達の罪だ」

 

「エゴやノブレス・オブリージュの精神は好きじゃねえ……悪いが仮面を付けさせてもらう」

 

 あっという間に玉狛支部に辿り着くと林藤支部長が出迎えてくれた。

 向こうはほんの僅かしか俺と顔を合わせていないのに覚えてくれた。自分達が取りこぼした存在と認識しているが、今の俺にとってはどうでもいいことでケビンマスクの仮面を付ける。

 

「迅を出せ……此処に来たのはその為だ」

 

「ああ、迅を出す……けど……」

 

「なんだ?」

 

「修達も同伴させてくれないか……彼奴等は居なくなった人を探してる。お前みたいに自力で帰ってくる可能性は低い……夢を見るのは構わない。いいことだ……けど、何処かで現実と照らし合わせないといけない」

 

「…………三雲修とは関わり合いを持ちたくない」

 

「ん、遊真じゃないのか?」

 

「遊真は問題無い……三雲修はヤバい。化け物じみた才能を持ってやがる」

 

「……修が?」

 

「彼が……とてもそうは見えないが……」

 

 俺が修に対して強い警戒心を抱いている事を周りは疑問に思う。

 トリオンという才能では千佳がぶっちぎりのトップだ。戦闘経験等の積み上げてきた物や嘘を見抜くサイドエフェクトでは遊真が厄介だが真にヤバいのは三雲修だ。修の力量を知っている林藤支部長や忍田本部長はなんの事だと頭に?を浮かべている。

 

「何故彼に才能があると言えるんだ?」

 

 戦闘に関してはプロでもなんでもない唐沢さんでも修の才能が分からないので聞いてくる。

 

「俺のサイドエフェクトで三雲修からヤバいものが見えてるからだ……才能が完全に開花しているかはまだ分からないがボーダー側もその内放置する事が出来なくなる」

 

「サイドエフェクト……君のサイドエフェクトは確か……人の強さが動物に例えて見えるだったか?」

 

「正確には動物だけでなく歴史上の偉人やドラゴンやケンタウロス等の神話上の生物等にも見える……俺はコレを闘志と呼んでいる。三輪は角を隠した鬼が見えた。迅からはラプラスの悪魔が見えた。遊真は小さなライガーに乗ったヘルメスが見えた。千佳からはドラゴンの雛が見えた。忍田本部長は白く染まり始めている虎が見える……三雲修から見えたのは色々と厄介な存在だ」

 

「……修からはなにが見えたんだ?」

 

「劉備が見えた」

 

 劉備を修から見ることが出来ている。ハッキリとは見えないけども劉備っぽいのが見える。

 

「劉備って言うと三国志の劉備か……修はあんま強くないし、とてもそうは思えないが」

 

「闘志は強さだけを測るものじゃない、その人の性質も見れる……本人が何処まで自覚があるかどうかは知らないがあいつは人誑しの才能を持っている。現に遊真や迅も晒された口だろう。純粋な戦闘力ならば関羽や張飛が上だろう。三国志においては最強と言える呂布の方がもっと上だろう。知識においては孔明や陳宮が遥かに上だ……だが人の懐に入り込む才能は、それこそ農民から天下人に成り上がった豊臣秀吉クラスの化け物だ」

 

 原作知識があるからハッキリと言える。三雲修には天性の人誑しの才能があるのを。

 現にボーダーに多くのコネを作ることが出来ている。遊真を留まらせることが出来たのも三雲修の人柄があったからこそ出来た事だ。

 原作を見ているからよく分かる。修には後方彼氏面する人達が沢山いる……多分、修が男じゃなくて女の子だったら乙女ゲームの主人公かと思うぐらいにはフラグを建てているだろう。男の時点で後方彼氏面する人達沢山居るからな。

 

「あの手の存在に下手に同情されるのは堪えるしなにしてくるかどうか分からないから怖い……」

 

「成る程……君のサイドエフェクトは間違いじゃないだろうね。三雲くんは劉備や豊臣秀吉の様に懐に入り込む才能はある……当の本人は自覚していないだろうが」

 

 唐沢さんは俺の言っている事に関して納得する。

 記者会見の一件が無かったのに、修の事を買っているとはやっぱり三雲修は天性の人誑しの才能を持っているな。大成するかどうかは別だが。

 

「そんなに危険なのか?」

 

「敵意や害意は今のところは無いが何れはとんでもない化け方をする」

 

 劉備や豊臣秀吉について知らないシャーリーは修の危険性をイマイチ理解出来ていない。

 俺も修は危険だと判断しているが……敵とは言い切れない。既に修にほだされてしまっている……主人公補正、半端じゃねえ。

 

「まぁ、現実を見せたいのならば同伴させればいい……ただ聞くだけだ。会話はしない」

 

 修に関わり合いを持てば厄介な事になるのは目に見えている。

 林藤支部長に修達が同伴してもいいと許可を降ろすと玉狛支部のリビングに向かえば玉狛第一、第二の面々が勢揃いしていた。

 

「よ、待ってたよ……改めてありがとな。メガネ君達を守ってくれて」

 

「雨取麟児に情報を提供して貰う代わりに1回だけでいいから守ってくれと頼まれたからやっただけだ……貸し借りの勘定はコレで0だ」

 

「そっか……ジョンでいいんだな?」

 

「ああ、ジョン・万次郎だ」

 

 迅はサイドエフェクトを経由して俺の本名を知っている。

 俺は本名で呼ばれたくない。だから空気を読んでくれてジョンと呼んでくれる……まぁ、呼ばなかったら呼ばなかったでガン無視決め込んでたから。

 

「ボーダーとの同盟を結ぶ上での約束の1つとしてリーナを家族に会わせて日本で暮らしていける様にする事だ……リーナは7歳の頃に拐われた。俺もそうだが人を殺したりして一部の感情や記憶が薄れていっている」

 

「ああ、絶対に会わせてみせる……オレの持てる力全部掛けても……だから、その子に会わせてくれ」

 

「ちょっと待ってろ」

 

 俺はスマホを取り出してリーナにテレビ電話を入れた。

 リーナは現在東京にある3LDKの部屋に居るから此処に来るまでに数時間は掛かる。無駄な時間は省略したい。

 

「目の前に居る胡散臭いグラサンが迅だ」

 

「君がリーナか……っ……」

 

『nice to meet you. I'm Lina... you're Yuichi Jin.』

 

「……え〜っと、出来れば日本語で話してほしいんだけど」

 

『Instead of being selfish, John learned English on his own and taught me Japanese……まぁ、あんたにそんな期待をしたこっちが悪いわよね』

 

 リーナは迅を相手に英語で喋る。

 トリオン体になれば英語は翻訳する事が出来るんじゃないのかと思ったが携帯電話越しで会話をしているからトリオン体が翻訳してくれないんだろうな。

 

「……先ず、君の本名を教えてほしい」

 

 日本語での対話をする事が出来るようになったので、唐沢さんは交渉する。

 リーナの本名を尋ねる。リーナの戸籍なんかを調べるには本名を知らないといけない

 

『ちょっとそこのメガネとかを退けなさい……貴方と迅にだけ教えるから』

 

「メガネ君、皆、画面の外に出てくれ」

 

『本当はあんた達にも教えたくはないわ……でも、そうするしか道は無い……死んだ扱いされてるかもしれないから』

 

「む?行方不明扱いじゃないのか?」

 

『アメリカって国は治安が悪い国なのよ……そうね、子供が1人自転車でスーパーに行くのが危険なぐらいには治安が悪いわ』

 

「そんなにか?」

 

「まぁ……日本と比べればかなり治安は悪いね」

 

 遊真はアメリカに関して色々と疎いのでリーナがざっくりと説明すれば唐沢さんは頷く。

 きっとリーナは行方不明から死亡届的なのが出されている……俺もその可能性が高かったりする。修達が画面の外に出て唐沢さんと迅が画面に映るようにするとリーナは恐らくだが本名を教えている。

 

「それが君の本名か……分かった。アメリカで10年前に行方不明になった少女でその名前で調べてみる……迅くん、なにが見える?」

 

「うっすらだけど、家族と再会を果たして泣いているリーナを見れますよ……見つける事は成功する」

 

「そうか……うっすらとか」

 

「多分1,2ヶ月は掛かる……けど、視えてるって事は可能性が0ってわけじゃない」

 

 リーナの本名を知れば行動に移る唐沢さん。

 迅から太鼓判を押されたのでこれでいいと色々と思案している。

 

『私は親に会うけど帰るつもりは無いわ。学校に通うつもりもない……けど親の分を含めてこの国の永住権とか市民権とか就職先を用意して』

 

「勿論、そうするつもりだ……ただし普通に本名ならば怪しまれる。特に君達が近界民がボーダーに居るとバラしたせいでそっち系の目が厳しくなっている。だからFBIの証人保護プログラムの様に名前を切り替えないといけない」

 

『別に今更本名が変わっても構わないわ…………名字も多いし佐藤リーナで……』

 

「佐藤◯奈になるからアウトだろう……工藤リーナでいいんじゃないのか?」

 

 奇をてらう名前だと色々と問題があるので工藤にする。

 工藤ならば別に違和感もなにもない名字だ……祖父辺りが日本人だけどそれ以外は全員アメリカ系のアメリカ系日本人と言う設定を盛ればいいか。

 

『じゃあ、それでいいわ。適当に工藤新一だろうが工藤優作だろうが偽りの戸籍を偽造してその孫って言う設定を盛ってて』

 

「せやかて工藤、工藤優作と工藤新一はマズイって」

 

『誰が工藤よ……ジョン、まさかだと思うけどせやかて工藤と言いたいから工藤にしたの?時間潰しにコナンの映画見てたから影響受けたの?』

 

「なわけねえだろう……とりあえずその辺りの設定は後で決める……お前等分かってると思うけど黙っとけよ。戸籍偽造なんてものは何罪かは知らねえけど、確実に何らかの罪に問われる……何処かの誰かさんがボーダーに近界民が居るって爆弾投下して色々とややこしくなってるんだから」

 

「私はあくまでも独り言を呟いただけに過ぎない」

 

 この野郎、開き直りやがったな。

 目の前で堂々と犯罪行為の交渉を、例えそれが司法取引と言えども割と普通に悪いことである。ルルベットとシャーリーとレグリットはイアドリフ人として日本で市民権とかを得るのに……。

 

『ジョン……私は司法取引みたいなもので親に会うわ。葵は悲劇のヒロインとして親に会ったわ…………後は貴方だけよ』

 

「……俺の知る限りではボーダーは過去に拐われた人を救ったという言う情報は無い……そして今回の一件を除けば四年半前の大規模な侵攻以降に誰かが拉致されたという話も聞いていない……ボーダーにとって都合のいい悲劇のヒロインになるかそれとも司法取引をして秘密裏に日本の市民権を与えるのか……今のところは2つに見えるが実際のところは4つか3つの道がある」

 

 俺は千佳や修達に視線を向ける。

 原作通りならば麟児や友達を探したいと千佳は思っている……誰かが汚れるぐらいならば、俺が先に汚れておいた方が少しはマシだろう。

 

「覆水盆に返らずという諺があるように一度起きた事は戻せない、例え軽い気持ちでも1度でも経歴に泥や傷が付けばその時点で詰みだ。ヤクザをやってたけどヤクザから足を洗って5年経っても預金通帳がまともに作れないと言う一例もある……人を助けるって事は凄く難しい事だ。些細な事で救われる奴も居ればそうでない奴も居る。手を伸ばしても届かないんじゃない、握ってくれない可能性だってあるんだ」

 

『……』

 

「葵は都合のいい悲劇のヒロイン、リーナは司法取引、俺は多分だが最悪の結果になる。それを踏まえた上でしっかりと考えてくれ……1度レールから脱線してしまった列車を元の路線に戻す事は容易じゃない。ボーダーという組織にとって都合のいい悲劇のヒロインになる可能性が大きい」

 

「……最悪の結果……ジョンさんは」

 

「リーナと葵が覚悟を決めたのに俺だけが逃げるわけにはいかない……ただ、皆に平等にハッピーエンドが訪れるとは限らないんだ」

 

 御伽話ならば友達を救ってのハッピーエンドで終わるが、コレはノンフィクション、現実だ。

 千佳はなにかを言いたそうだったが言う前に覚悟が出来ている事だけは伝えておき、考えておく事を言っておく。

 

「…………分かりました。ありがとうございます」

 

 色々と思うことが出来たのか千佳はお礼を言ってくる。

 

「……流石にコレばかりは付いてこいとは言えない。お前達はコレから上を目指してランク戦をするんだろ?……辛すぎる現実を見せつける訳にはいかない。少しぐらい未来は明るくないと」

 

「……ジョンさんは後悔していないんですか?」

 

 余計な事を口走り過ぎてしまったな。

 修があまり踏み入れてはいけない領域に足を踏み入れようとしている。

 

「知りたいと言う気持ちは分からなくもない。だがな……触れない優しさってのもあるんだ。その質問の答えは自分で考えろ……」

 

「触れない優しさ……ジョンさんは…………」

 

「下手な同情は止めろよ。逆に俺達を傷つけるだけだ……コレからの事を考慮すれば最低でも5年こっちの世界に居なかった人に手を差し伸べるんだ……少しは疑いを持ってろ。楽観視ばかりしていると痛い目に遭う……俺から出来る数少ないアドバイスだ」

 

「……分かりました」

 

 やっぱりこいつ天性の人誑しの才能を持っているな。

 下手に踏み入れてはいけない領域に足を踏み入れようとしていたら気付いたら色々とアドバイスの言葉を送ってしまった。




ダメだ、多すぎる。修の後方彼氏面する人達が……修が女体化したら確実に修は乙女ゲームの主人公並みにフラグを建てまくるだろうな。
そして大人になるにつれよく分かる。野原ひろしや荒岩一味の偉大さを。
感想お待ちしております

今後の展開

  • そろそろ原作にいけ
  • もう少しオリジナルをやれ。
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