近界プルルン奮闘記   作:ドドドドド黒龍剣

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第8話

 拐われてから2週間が経過した。

 本当に米が食えないのは痛い。なんとかして米を何処かから輸入してくれないかと頼もうにも、そんなに力を持っていないので頼めない。この一週間、雨が降らないから雷も落ちないから磁石が作れない。

 

「さて、残念なお知らせがある……お前達を実戦投入しなければならなくなった」

 

「それの何処が残念なお知らせなんだよ?」

 

 朝起きてから夜寝るまで訓練付けの毎日。

 何時現場に出されるのか分からない状況だったのが、今やっと分かっただげだろ。

 

「お前はまだいいけど、他の奴等は能力がバラバラで基礎的な部分が殆ど出来ていない。ちゃんとしていない状態で戦場に出すなんて、アホでしかない」

 

 2週間、何日かは休みをくれたりはしているがほぼ毎日訓練に明け暮れていた。

 筋肉云々は必要じゃないトリガーを用いた戦闘。トリオン操作を如何にして極めるかが重要だが、やはりというかそう簡単には馴れるものじゃない……簡単に動ける奴がおかしいか。

 

「どうして立たせるようになった?」

 

 上からの命令なので逆らう事は出来ない。

 そういうことだと決まった以上は受け入れるしかないのだが、本当に急すぎる。ここの国は無理矢理にやれとは言うが無茶振りはしない。少なくともそういう印象が付けられてきたんだがな。

 

「イアドリフが特定の軌道周回を持たないのは話しただろ?今現在、リーベリーと言う国の近くにいる」

 

「リーベリー、っつーと海の国か」

 

 そこに貝殻があるから持って帰るとかどうとか言っていた気がするな。

 どうせならば米を持って帰って欲しいのだが……いやでも、持って帰った米がタイ米とかなら口に合わない。

 

「現在リーベリーと交渉中の部隊が居て、若干ながら国の警備が手薄になっている」

 

「リーベリーと戦争をしてるのか?」

 

「その線もありえなくはないけれど、問題はそこじゃない。イアドリフと同様に軌道周回を持たない国が近くに来ている……試しに連絡を取ってみたが一切の反応はない」

 

 となると、黒か限りないグレーか。

 イアドリフと友好的な関係を築き上げたいのならば、ちゃんと連絡を取り合う。戦う意思があるならば、戦いますよの事前通告をせずに奇襲を仕掛けるのが1番だ。

 敢えて連絡が来ていないフリをし、此方の世界に足を踏み入れてから交渉に来ましたよとか言ってくる可能性もなきにしもあらず。

 

「リーベリーと貿易中で国の一部の精鋭達が居なくなってたりする為に色々と手薄になっているところもある。その部分を埋めてもらう」

 

 下手すりゃ最前線に飛ばされるのかもしれないのか。

 この国の状況を聞かされて、少しだけ顔を青くする。話が分かっていない奴等もなんとなく嫌な話をしているのを察する

 

「因みに何時から何時までだ?」

 

「今日から交渉中の部隊が帰ってくるまでだ」

 

 帰ってくる正確な日も分からず、何時になったら終わるのかが分からない戦い。

 そうなると拐われた人達に掛かる精神的なストレスが激しい……緩和する為には美味い飯とかが必要になる。それを今、貿易をしている人達が頑張っている……どうしたものか。

 

「2時間後から前線に出てもらう」

 

「既に戦ってるのか?」

 

「いや、戦ってすらいない。もしかしたら来ない可能性もある」

 

 それでも万が一を用心して警備を配置する。

 今更だが、迅悠一の存在がどれだけチートなのかが分かる。未来視を利用して何時襲われるのか分かれば、こんなピリピリする事をしなくていいんだから。

 

「残り2時間か……」

 

 誰が何処の配置で何時に休みを取ると言った詳しい説明は受けていない。

 恐らくは他所の国が近付いていたのが想定外の事で対応に遅れたりしていて慌ただしくなっているんだろう。

 内政の事は知らないが、任された以上はやりきるしかない……しかし、残り2時間。

 

「寝るのは無駄だな」

 

 何時休みになるのかは分からない状況で、睡眠を早目に取っておくのも手なのかもしれないが時間が微妙すぎる。

 せめて、3時間だったら考えていたがこうも微妙な時間だと寝るに寝れない。短い時間の仮眠の方が休むのにちょうどいいとか言うが、長く眠りたい。

 

「……」

 

 今回のこの防衛では手柄を上げても評価はあまりされない。

 元々、戦う為に連れ去られた。これは俺達がやらされる通常業務で、やれて当然の扱いになる……そうなると頑張る気力は無くなるな。

 まだまだ未熟なのは知っているので武勲による手柄は難しい。それ以外での手柄をなんとか掴むとして、ここでなにかをしておいても損は無い筈だ。

 

「ジョン、今からなに起こるの?」

 

「戦争、warsだ」

 

 ルミエの説明がイマイチ理解できていないリーナに分かりやすく教えると落ち込む。

 

「なんで私達が……」

 

 今さらな事を言い出すリーナ。

 甘えんなと言いたいが、俺と違ってリーナは普通の人間。俺よりも年下で今頃なら学校にいる。泣き言の1つや2つ言いたくなって当然か。

 とはいえ、俺は泣き言を言ってはいられない。もしかするとこの戦場で死ぬかもしれないのだから、やれることをやっておかなければならない……。

 

「トリオン体の改造をしたい」

 

 

 

 

 

※2時間後※

 

 

 

 時と場所は少しだけ変わり、2時間後。

 俺達は森とも草原とも違う市街地を歩かされ、最終的に街の入口と思わしき場所に連れて来られた。

 外に出歩く権利を持っていないから、まだなんとも言えないがイアドリフはライトノベルに出てくる街よろしく城壁に囲まれた街が幾つもあると言った感じだな。

 

「取りあえずは待機、敵が来ない限りは待機の体勢を取る」

 

「あんたが指揮をするんだな」

 

 ここでも出てくるルミエ。

 外交とか外の世界関係の仕事を担当しているならば、国の防衛はまた別の奴等が担当の筈。それなのにさも当たり前の様にここにいる。

 

「オレは外交関係もしているが、それ以前にお前達の隊長でもある。拐ってきて2週間、そろそろ使える奴と使えない奴がハッキリと分かれてくる。そういうのを見たりするのもオレの仕事だ」

 

 要するにここでの戦いは実験だと言うことか。

 相変わらず俺達の扱いは容赦はないナチュラルな外道っぷりを見せつけてくるルミエ。反抗する意思を持つだけ無駄だ。

 

「向こうがどういう国なのか見に行ったりとかしないのか?」

 

「貿易しませんかの通信をして、それで知らんぷりを決め込んでるんだ。わざわざ関わり合いを持つ必要はない……今はリーベリーと貿易中だ。無理に窓口を増やしても失敗するだけだ」

 

 最初から仲良く出来ないと分かれば一気に仲良くしない主義か。

 なんというかこの国は鎖国的に見えて、しっかりとしている部分が多い……貪欲でしっかりとしているから長い間、生き残ることが出来たんだろう。

 

「さぁ、話はここまでにして仕事に取りかかるぞ」

 

 ルミエはトリガーを起動し、トリオン体へと換装する。

 それに続くかの様に他の人達もトリガーを起動していき、俺も【カゲロウ】がセッティングされている黒い腕輪を起動せよと念じる……ダメか。

 

「……【カゲロウ】起動」

 

 音声認識で【カゲロウ】を起動する。思念を読み取って起動することが出来る筈なのに、どうも上手く出来ない。

 こういう細かなところを少しずつ矯正しておかなければ命取りになると考えていると、周りからの視線に気付く。

 

「Japanese samurai clothes!」

 

 改造したトリオン体を見ておおはしゃぎするリーナ。リーナが言った言葉を聞いてやっぱりと周りの奴等もざわめきだす。

 

「それは、なんだ?」

 

「うちの国の民族衣装だと思えばいい」

 

 与えられた2時間、寝ることも考えたが寝るには時間が足りない。

 トリガーを1から作る権利は無いが、トリオン体を改造する権利はあるので思う存分改造した。着物姿で靴は草履、浅葱色のダンダラ羽織を着ている……要は新撰組と同じ格好をしている。

 本来ならば誠と羽織の背中には書かれているが、漢字なのでエンジニアの人がなんだそれと言い、字を伝えてみたものの無理っぽい感じだったので、狼の顔が描かれている。

 

「ジョン、私も!」

 

「阿呆、今から防衛任務だ。トリオン体を改造してる暇はない」

 

 目を輝かせるリーナだが、今から任務でそんな暇はない。

 第一、リーナが使っているトリガーは中距離系の武器で幕末最強の剣客集団の新撰組の格好は合わないだろう。

 

「ふ~ん……まぁ、仕事に支障を来さないなら文句は言わないよ。けど、早々に都合の良いことなんて無い」

 

 周りが五月蝿い中、ルミエは冷静に俺の服装について考え見抜く。

 日本の新撰組の格好を知らないからこそ理解できるか……。まぁ、着るなと言われないだけましか。この格好をしておけば、大抵の奴等は日本人だと気付く……筈だ。

 

「暇だな……」

 

「暇で結構。平和がなによりだ」

 

 ルミエに言われた通り、何時でも戦える様に待機はするものの暇だった。

 向こうの国が襲ってくるかもしれないレベルなので、もしかすると襲ってこないかもしれない。それはそれで良いことなのだが、何時戦いになってもおかしくない状況に放り出されていると思うとピリピリする。

 

「口は達者でもまだまだ未熟か」

 

「当たり前だ、戦場になんて出たことは無いんだ」

 

 ピリピリしている俺を見て笑うルミエ。

 お前は馴れているかもしれないが、こちとら初戦場。ピリピリするなと言われる方が無茶だ。

 

「そうは言うが、これからお前達には馴れて貰わないと困る。うちみたいな特定の周回軌道を持たない国は長期戦が出来ない。攻めてくる時はとことん全力だ……逆に攻めてこない時は中々に攻めてこない」

 

 価値があれば手に入れに行き、無ければなにもしない。極端すぎるかもしれないが、近界の性質上そうなってしまう。

 

「これからなにもない1日となにもなかった警備は何度もある」

 

「実戦経験が積めないな」

 

「なに、その辺りは色々とやっている。剣一本だけで何処まで戦えるのか、剣使いだけの大会とかもやっている」

 

「お前等、暇なのか?」

 

「まさか、忙しいに決まっている。暇と平和は違うんだ」

 

 それは分かっている。お前の顔を見ない日は今のところ記憶には無いんだ。

 

「……お前なら、どう攻める?」

 

 感覚的に30分程か。

 流石に馴れているとはいえルミエも暇になったのか、不謹慎な話題を俺に振ってきた。

 

「反逆するつもりはねえよ」

 

「そんな事をしても無駄だと分かっているからしないだろう……ただ、お前ならどうやって落とすかを聞いているだけだ」

 

 本当にちょっとした世間話を振ってきたのか。

 そうなると答えないと更にめんどくさく絡んできそうだ……イアドリフを落とす方法か……どうやって落とす?

 地球と違ってトリガーとかトリオン兵の事は熟知しているし……。

 

「内部にスパイを紛れ込ませる」

 

「随分とベタな内容だな。もう少し玄界らしい捻りはないのか?」

 

 お前は地球人をなんだと思っている。

 

「国の中枢や軍隊に紛れ込むって言ってるんじゃねえよ、市街地にさも当たり前の如く溶け込むんだよ。国とドンパチやりあうには拠点が必要で、軍の基地を狙おうにもそう簡単に狙えない。食糧とかも考えれば市街地を奪えばある程度はやれる……長期戦がやれればだけど」

 

「そう、うちは出来ない」

 

 特定の周回軌道を持っていれば国同士が近付く時に救援物資を送れる。

 けど、特定の周回軌道を持っていないせいで、国同士が何時近付くか分からない。救援や増援が何時来るか分からない戦いで持久戦をやられたら無理ゲー過ぎる。戦争するには物資がアホほどいるんだ。

 

「だったら、国の中枢部分に門を開く」

 

「それは出来ない。国の市街地や中枢部分はトリオン障壁に守られている。こういう街じゃない所にしか出られない様になっているのはその為だ」

 

 成る程……原作じゃ門誘導装置なんてものがあったが、ここではトリオン障壁で門を閉じているのか。

 確かにトリオンが当たり前の国ならば街中の人達からトリオンを根刮ぎ貰う事は出来る。ボーダーと違ってトリオン集め放題だ。

 

「外からじゃなく内側から門を開けばどうなる?」

 

 どれだけ優れた装置でも機能でも穴はある。

 原作の序盤に起きたイレギュラー門は、門を外からではなく内側から開くことで門誘導装置の範囲外から門を開くことに成功している。

 

「門を内側からか……」

 

「逆に聞くが門を誘導する装置とか翻訳装置とか作れないのか?」

 

 俺はもう生き残るのに忙しい。自重は捨て去るつもりだ。だから、堂々と聞く。

 

「門を誘導する装置か……面白そうだが、作れる作れない以前に費用(コスト)が掛かる。イアドリフはトリオンに余裕があるわけじゃないから、そんな装置を作ってもそれを動かすトリオンが無い」

 

 エネルギー問題があるわけで、製作的な意味では無理じゃないのか。

 そうなるとますます電気による文明があればエネルギー問題を解決することが出来る……成り上がるには、それしかない。

 

「それと翻訳についてだが、既にやっているよ」

 

「……?」

 

「トリオンを乗せて言葉を話せばトリオン体が自動的に翻訳してくれる。話し手と聞き手のどちらかがトリオン体なら自動的に翻訳はされる……筈なんだけどな」

 

 そういうのもあるのか。知らなかった……けど、まだなにかあるのか困ってそうなルミエ。

 トリオン体を使えば言語が自動的に翻訳されるのであればリーナやその他の外国人達が言葉にわざわざ悩む必要は無い。

 

「そもそもで使っている言語が全く分かっていないから、トリオン体が翻訳出来ないんだ」

 

「……高性能か低スペックかイマイチ分からないな」

 

 日本語が通じていると言うことは日本語に自動的に翻訳される機能がある。

 けど、英語は……難しいな。英文ってスペル少し変えれば複数形とかになるし、英単語を書く場所を変えれば意味が変わる。海外の偉いさん達ぐらいしか翻訳機的なのを耳にしていないし翻訳機的なのはまだまだだ。

 難易度的に言えば、英語よりも日本語の方が難しいらしいがそこはそれ、漫画の世界のご都合主義と言ったところ。

 

「南東付近のエリアに多数のトリオン兵が出現しました!」

 

 新しい知識を得ていると、慌てた様子で此方に報告に来る一般兵。

 こことは違う区域にトリオン兵が出現した事を大慌てで報告をする。

 

「状況は?」

 

「レクス隊長が警備を勤めておりますので今のところは問題無いとのことで、トリガー使いの影は見当たりません」

 

「じゃあ、増援はいらなさそうだな……待機続行だ」

 

 まだ待たなければならないか。

 既に別の場所でドンパチやりあっている中で自分達が待機しておかないとなると先ほど以上にピリピリとした空気になる。もしかすると、襲ってくると言うのがもしかするとじゃなくなる。戦争はもう目の前で起きている。

 

「はい、交代の時間な」

 

 結果だけ言えば、その日は何事も無かった。

 他の区域でドンパチやりあっているとの報告は受けたけれども、それだけで救援に向かう程ではないから待機命令がずっと出されており暇と何時来るかの緊張感で今までに無い程に疲れが溜まった。

 

「明日も頼むぞ」

 

 今日1日だけならばまだよかったが、これが休みなしに続く。

 何時戦闘になるか分からない何処で起きるかも分からない戦い。近界民のやり方とはいえ、これが戦争なんだと感じる。

 

 俺達に未来視を持った実力派エリートはいない。だから、何時に誰が来るか分からない。

 

 俺達に優れたエンジニアである開発室室長はいない。だから、1度でもやられればそれが死に繋がる。

 

 生き残る為には自分の有能さを見せつけて成り上がっていくしか道はない。

 最初の戦場はなんとも言えないしょっぱい形で終わった。




最新話で翻訳機能が判明したけど、一応こういう設定にしておく。

今後の展開

  • そろそろ原作にいけ
  • もう少しオリジナルをやれ。
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