近界プルルン奮闘記   作:ドドドドド黒龍剣

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第9話

「来たぞ」

 

 防衛2日目。

 今日も暇なんだろうと思っていたが、暇ではなくなった。(ゲート)が開いて中からトリオン兵が出現してくる。

 

「何時ものか」

 

 出てきたのは何時ものモールモッド。

 何時もと違うところがあるとすれば、色が黒色というところ。

 

「油断はするな。同じに見えて、使っているトリオン量が違えば出力は変わる」

 

 何時もと同じ相手だからと俺も含めて周りは気を抜いている。

 ルミエが喝を入れ直すと俺は真っ先に突撃してモールモッドの弱点である目を狙いにいく。

 

「何時もより早いな」

 

 何時も通り倒しにいこうとするが、前足の攻撃が来た。

 モールモッドの攻撃方法は限られており、足の動きにさえ注意すればいいのだが気のせいか何時もより早い。

 反応できない速度でないので避けるのだが、何時も通りの戦いで倒すことは少しだけ難しい。

 

「リーナ」

 

 1人でなら。

 

「OK」

 

 俺は1人で戦っているんじゃない。最初から頼れる奴はいる。

 俺がモールモッドに攻撃をさせて隙を作っている間にリーナはモールモッドの目玉に目掛けて鏡からトリオン砲を放つ。俺への攻撃に時間を割いているので足を目元に向ける事は出来ずそのまま撃ち抜かれる。

 

「何時の間に連携出来るようになったんだ?」

 

「そこまでの連携じゃない。初歩的な部分での即興だ」

 

 ただ俺が囮になって相手の隙を作り出し、リーナが仕留める。

 連携と呼ぶにはそこまでの代物で、昨日の仕事が終わった後に打ち合わせをしておいた。

 

「ジョン!」

 

「分かっている」

 

 まだ一体倒しただけで他にもモールモッドがいる。

 ルミエが言っていた通り、まだちゃんと戦えず手こずっている奴も居るので手当たり次第でなく選んで戦わなければならない。

 

「リーナ、手分けして……別々に行動するぞ」

 

 言葉1つ、選ばなければならない緊迫した空気。

 手分けしてを英語でどう言えば分からず、昨日一応はトリオン体が翻訳してくれるとの説明は受けたのでそれに賭けて次のモールモッドを倒しにいく。

 

 最初に戦った時とはもう違う。

 どういった攻撃をして来るのかが分かり、動きが見えてきたので直ぐに攻めに転じることが出来る。

 必要なのは集中を途切れさせないこと。足を狙って達磨にする必要は無い。目玉を潰せばその時点で活動停止するので無理に切り落とさなくていい。

 

「牙突ばかりだと何時かは限界が来るからな、別の技の練習相手になって貰う」

 

 原作の方は対人戦闘ばかりだが、忘れてはいけない。

 基本的にはこういうトリオン兵を相手にするのがメインで、他国に攻め入らない限りはトリガー使いを相手にする機会は早々に無い。何時ものビリヤードでよくやる構えをせずに【カゲロウ】を両手で握り、思いっきり振りかぶる。

 すると、モールモッドは1番装甲が固い足の先端部分で攻撃を防ぎにいく。

 

「それを待っていた」

 

 剣による攻撃を避けるのでなく防がれる。

 これから先、右片手一本突きもとい牙突擬きを防がれ研究される可能性がある。牙突はそれでも無敵なのだが、俺自身は無敵じゃない。攻撃を防いでくる相手に対してなにかをしなければならない。

 

「確か斬ると同時に押すだったな……」

 

 俺の剣はモールモッドの装甲を切り落とす事は出来なかった

 しかしモールモッドの装甲を凹ます事には成功した。モールモッドが立っている場所も凹んでおり若干ながら後退りした後も出来ている……失敗だな。斬ると同時に押すを使う難しい技だが使いこなせれば攻撃を防いだり受け流そうとする奴に有効打になる……多分だが。

 普通の剣術をせずに漫画に出てくる剣ばかり使っているので、ある意味俺は阿呆なのだが、案外これが使えたりもする。トリオン体で超人的な運動能力を得たからだろう。

 

「大分、戦いが板についたじゃないか」

 

 モールモッドしかトリオン兵が出てこないのでスパスパと斬っていくと感心するルミエ。

 もう完全にモールモッドを相手にする事が出来る。1度に5、6体来られれば難しいが一対一だと負ける気はしない。

 

「そういうお前はさっきから全然戦ってねえじゃねえか」

 

 人様を戦わせておいて見物しているルミエ。

 こいつが戦っている姿をマトモに見たことは無い。本当は弱いんじゃないかと時折疑うのだが、この疑いで足元を掬われるのだけはごめんだ。

 

「オレは隊長だからな、周りを意識しておかないといけない……っと、言ってたら大変な事になってきた」

 

「まだ劣勢じゃないだろう」

 

 少しだけダメージを受けている奴等はチラホラといるが、トリオン兵に負けた奴はまだいない。

 トリガー使いが来たのかと辺りを見回すとモールモッドじゃないトリオン兵が何体かいた。 四足歩行で首長竜程とは言わないが首が長いトリオン兵。

 

「あれは……」

 

「バンダーだ。砲撃兼捕獲用のトリオン兵で、お前達は相手をしたことない」

 

 知っているがはじめて見るトリオン兵。

 三雲修が純粋な実力で1番最初に倒した強いんだか弱いんだかイマイチな敵であり、今までの訓練で相手にした事は無い。トリオン兵の主な弱点は目玉で、こいつも目玉が弱点だった筈だ。

 

「アイツも倒さないとダメだろう」

 

「アイツを野放しにすれば、街への被害は拡大する」

 

 砲撃なんて危険で浪漫溢れる攻撃をしてくるんだ。

 野放しにしておけばこの防衛ラインを軽く突破する事が出来るだろう。

 

「バンダーはオレが相手をする……見ておけ」

 

 初見の相手を倒しにいけと無理を言わず、自分から戦いにいくルミエ。

 どんな戦い方をするのだろうかと見ていると、ルミエの影がウニョウニョと動き出して1つの弾となりバンダーへと向かっていく。

 黒い玉の形は少しだけ分解されて弾となってとんでいく。残っている大きい部分は剣とメリケンサックへと変化する。形状を変えることで斬撃、打撃、弾の自由に使いこなす。トリオンコントロールが難しそうで俺には扱えないトリガーみたいな感じか。

 

「と、余所見をしてる場合じゃない」

 

 ルミエが簡単にバンダーを倒しているが、まだ戦いは終わっていない

 物凄い居るわけではないのだが、1体でもトリオン兵を通してしまうと俺の評価に関わってしまう。

 

「ayúdame!」

 

「ジョン、そいつは頼んだ!」

 

「くそ、無茶を言いやがって」

 

 ルミエが後方でスタンバってたから戦いやすかったが、そのルミエがバンダーを倒しにいったので陣形が崩れた。

 酷くてひび割れ程度のダメージだった、まだ完全に戦えると認められていない何処かの国の人はトリオン体を破壊されてしまい、元の生身の体に戻ってしまう。

 

「何処に避難しておけばいい!」

 

 フォローに回れとルミエから指示は出ている。

 助けるにしても、こいつを何処に連れていけばいいのかが分からない。

 

「街の入口前にでも置いておけ」

 

「おい!」

 

「ここは戦場だ。負ける奴が悪い」

 

 避難所は何処にもない。

 そうなると攻略されれば詰む街の入口に置いておけと言うルミエの判断は間違ってはいない。地球の戦場ならばこいつは既に死んでいるのだから。

 

「多少手荒になるが、文句は言うなよ!!」

 

 倒された何処かの国の人を脇に挟んで安全地帯の入口付近まで連れていく。

 思いっきりぶん投げてやりたいが、それをやったら骨が折れそうなのでやらない。

 

「ジョン、他にも出てきた!避難は後にしろ!」

 

「くっそ……兵の質の差がありすぎる」

 

 リーナぐらいに動けるのは本当に数名ぐらいで言語の壁があるせいで会話が出来ず、上手くコミュニケーションがとれずに連携が出来ない。

 取りあえずは生身の肉体に戻った奴等の付近からトリオン兵を倒していく。途中、バンダーもいたが弱点が目でモールモッド程の動きではないので、砲撃さえ注意すれば初期の雑魚修でも倒せるものだったのであっさりと倒せた。

 

「増援が来たけど、油断はするな」

 

 何時終わるか分からず限界ギリギリで戦っていると、遂にやってきた増援と言う名のトリオン兵。

 原作じゃ対人戦ばかりだが、此方の世界ではトリオン兵を兵器として扱っている描写があった。

 

 増援で送られたトリオン兵のお陰でじり貧だった戦況は一転した。

 使い捨てしても問題の無い兵器なのでポンポンと導入していき、俺達が減らしていた分もあったのであっという間に殲滅することに成功した……が、それだけだ。

 

「人っ子一人も出ねえか」

 

 出てきたのはトリオン兵で、トリガー使いが1人も出てこなかった。

 本当に此方の世界を攻め入るならばトリガー使いを送り込むもので、様子見でこの世界に侵攻してきた。こっちは富国強兵の為に交渉をしようとしてるのに交渉に応じない癖に取りあえずの様子見とは胸糞が悪い……いや、違う。

 

「遂に出たか……」

 

 死人が出た事に腹が立っているんだ。

 トリオン兵の増援がやって来ても、直ぐに優勢になるわけじゃない。ほんの少しの間で、モールモッドの攻撃に巻き込まれた何処かの国の人が居た。

 幸いか不幸か、目に見える大きな怪我をしておらずポックリと逝っている……多分、体の骨がグキリと折れて体の大事な神経とかに刺さって死んだのだろう。

 

「はじめての事だらけなのに、随分と冷静じゃないか」

 

 戦後の処理を他の人に任せたのか、俺に話し掛けるルミエ。

 

「何処が冷静だよ。今にでも吐きそうな気分だ」

 

「トリオン体だから吐かないよ」

 

 ああ、そうだよ。

 激しい感情で泣いたり叫んだりしたいが、不思議とそういった気分にはなれない。心にそういった余裕が無いからか?それともこの人に対してなんの感情も抱いていないからか?

 

「ジョン、Did this person die?」

 

「……ああ」

 

 死んだかどうか俺に聞いてくるリーナ。

 首を縦に降るとリーナの表情は段々と変わっていき最終的には口を押さえる。

 

「Return to your original body」

 

 トリオン体じゃ吐くことは出来ない。

 ムカムカした気持ちは溜め込むだけ無駄。発散できるならしておいて損は無い。

 吐きそうだったリーナはトリオン体から元の体に戻って膝をついて嘔吐する。

 

「やれやれ、初戦場でこうだと本格的な戦闘になると耐えられないぞ」

 

「こんなもん、馴れたくはない」

 

「Mom……」

 

「……っち」

 

 遂に耐えきれなくなったリーナは涙を流して母を呼ぶ。

 泣きたいのは吐きたいのは俺だってそうだが、トリオン体のせいで涙はでない。トリオン体を解除すれば、リーナの様に泣き叫んでしまう。俺を頼ってくれるリーナの前で泣き叫べばどうなるだろう?

 俺がいるからとある程度は安心してくれるリーナに不安を抱かせてしまう……なんで俺は他人の心配をしているんだ?

 

「……ああ、そうか。ムカつく」

 

 誰かを助けたとか救ったとかの優越感で心の隙間を埋めようとしている自分がいる。

 人助けをしたんだと自分に言い聞かせている。この子は俺のお陰で生き延びることが出来ていると思いたい……。

 

「なにか考えている様だな」

 

「……俺がトリガーを開発する権利は何時手に入る?」

 

 今のところトリオン体を新撰組の衣装にするのと【カゲロウ】の日本刀にみたいにするしか出来ていない。あくまでも見た目を変えるだけであって、中身はなにも変わっていない。

 トリガーの見た目を改造する権利はあるがトリガーの開発そのものは許されていない。俺にエンジニアの才能があれば練習として作ってみろと言われたかもしれないが、俺にはエンジニアの才能は無い。

 

「お前、【カゲロウ】が合わないのか?」

 

「そうじゃない。戦う以外の機能が欲しい」

 

 今のところ【カゲロウ】が合っている。

 下手にあれこれ手を出すよりも【カゲロウ】で剣を覚えてから他のトリガーに手を出す。最終的に万能手と似たような感じに落ち着けばそれでいい。

 その辺りに関しては無理に焦っても意味はない。時間が解決するものも中にはある。どうしても強くなりたいと今は思っていないのでそこを重点的にしない。

 

「戦闘をサポートするタイプの機能か?【カゲロウ】をサポートするにしても刃が延びるか形状が変わるかの2つぐらいしかなさそうだが」

 

「違う。【カゲロウ】をパワーアップさせたいんじゃない」

 

【カゲロウ】は既に完成されているもので旋空や幻踊みたいなオプションはいらない。

 あった方が便利なのかもしれないが、それよりも今は欲しい機能がある。

 

「脱出機能を作ってくれ」

 

 戦場で人が死ぬのはトリオン体を破壊されて生身の肉体に戻った人間がそのまんまだからだ。

 トリオン体が破壊されても生身の肉体が生き残るのならば、その生身の肉体を何処かに持っていけばいい。

 

「トリオン体が破壊されたり捕まりそうになった時に基地とかに帰還するトリガーを作ってくれ」

 

「面白い事を考えるな」

 

「面白い事、か……」

 

 俺がやっていることは原作知識を悪用したものだ。

 今、ルミエに注文をしているのはこれから先の未来でボーダーが作り上げる緊急脱出機能(ベイルアウト)だ。

 原作ではこの緊急脱出機能のお陰で戦闘に破れた者をその場に残すのでなく、基地へと転送される。そうすることで本部とか基地が狙われない限りは死人を出すことはない。

 原作の方でも本部が狙われたから死人が出たけども、戦いでの死人がボーダー側から1人が出なかったのは緊急脱出機能にある。

 

「別空間に閉まった肉体ごと基地に、それこそ別空間にある遠征艇に転送する事さえ出来れば死亡率を大幅に下げることが出来る筈だ」

 

 これは原作のガロプラ編での出来事だ。

 ガロプラの方も緊急脱出機能を搭載したトリガーで挑んできて、緊急脱出機能を用いて自分達の遠征艇へ帰還する事に成功している。緊急脱出機能さえあればある程度はリスクのある仕事が出来るようになる。

 

費用(コスト)は戦っている奴等のトリオンで、トリオン能力2の奴でも運用することが出来るはずだ」

 

 主人公のメガネくんこと三雲修はトリオン能力2だが、それでも緊急脱出機能を搭載されたトリガーを使っている。

 なら、トリオン能力に優れた奴等のみに間引いている兵達に使いこなせない道理がない。

 

「成る程……面白い事を考えるな」

 

「死人が出ると困るだけだ。むしろ、なんでこの機能を搭載しないか謎だ」

 

「戦場で死なないと思っているのかそれだけ鍛え上げているかの、どちらかだよ」

 

 それこそ1番の慢心だろう。

 ある程度の実力を備えた人間が最も恐れないといけないのは油断よりも慢心だ。自分は強いから死なないなんて思っていたら1番足元が掬われやすい。

 

「この案を上に通してほしい。このままだと地球から拐っていった言葉が通じない人達がただいたずらに死んでいくだけだ」

 

 今回の戦闘でハッキリと分かった。

 俺はなんとか動けているが、他の人達は動けていない。動ける奴とそうでない奴の差が激しすぎる。ルミエの言うとおりだ。 それをどうにかするには訓練が必要だが、ボーダーと違って死なない安全な訓練なんて存在しない。戦闘系の訓練は一歩間違えれば死ぬ……どうにかしてボーダーの訓練施設を再現できればいいのだが、それをするにはまず電気による文明をこの世界に持ってこないといけない。

 

「脱出機能は面白い案だ。作れるか作れないかは別として、上の方に話は通しておくよ」

 

 俺の提案は一先ずは飲んでくれる。こういうところで融通が利くからルミエはいい。

 とはいえ、今回の一件で自分がどれぐらいの強さなのかを理解した。まだまだ弱く、やれるようにならなければならない課題は多く見えた。

 

「人が死んだな」

 

 トリオン兵の襲撃で溜まっていたフラストレーションは解放された。

 その後はトリオン兵は襲ってくることもなく、また暇な時間を過ごしていく中、泣き止んだリーナを膝に乗せる。少しでも落ち着いて欲しいから、こうやるしかない。

 

「ジョン、How long will such a day continue?」

 

「何時まで続くんだろうな」

 

 こんな日が何時まで続くか不安を抱くが、こんな日はずっと続く。

 どうにかする方法はたった1つ。成り上がること。武勲か発明か、発案かとにかく成り上がらないといけない。

 緊急脱出機能を提案した以上はもう戻れない。下手をすればボーダーと敵対する事になるかもしれない……玄界に独自発達したトリガー技術があると知ったのならば、どうするのか。

 

「これで俺もめでたく売国奴か」

 

 自分の情けなさを痛感しながらその日もリーナと一緒に眠った。

今後の展開

  • そろそろ原作にいけ
  • もう少しオリジナルをやれ。
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