そのラージャンは如何にして伝説へと至ったか 作:勇(気無い)者
密林の地に、中堅の女性ハンターと、一匹のオトモアイルーが足を踏み入れた。
最近、ファンゴの群れが余所から流れてきたらしく、密林に大量のファンゴが住み着いたので、その狩猟を任されたのだ。
彼女の腕前は、ソロでジンオウガとやりあい、苦戦の末に撃退出来る程度のモノだが、本来チームで戦闘する事を推奨されているジンオウガ相手に、それだけやれれば
使用している武器は弓。五十メートル先の獲物の急所を、寸分違わず撃ち抜く事が出来る腕前を持つ。
……相手がちょこまか動き回るのなら、その四分の一まで距離を詰められれば九割は狙った場所を撃ち抜ける、といった所だが。
その弓の腕で、ファンゴを一頭一頭丁寧に始末していった。
しかし、ファンゴの群れを始末しただけでは、この騒動は終わらない。群れを率いるドスファンゴを狩猟しなければ。
とはいえ、彼女は一人でジンオウガを苦戦の末に撃退出来る程度の腕前を持つハンター。離れた場所から十矢ほど射抜き、見事ドスファンゴを仕留めてみせた。
そして、遺体を解体しようと近付いた、その時だった。
背後から、ドスンと
そこに立っていたのは━━━ラージャンだ。
通称、金獅子と呼ばれる超攻撃的なモンスター。一説によると、その戦闘力は「天災に匹敵する程の力を持つと言われる古龍種」と比べても遜色ない程だとか。
ジンオウガと比べれば、その戦闘力は月とスッポン、まさしく天と地ほどの差がある。
当然、そのジンオウガ程度に苦戦する様な彼女に、勝ち目などある筈がない。
向こうを向いていたラージャンがゆっくりと振り向き、女性ハンターと目が合った。
その瞬間、死を覚悟した彼女の脳裏に、過去の思い出の数々が走馬灯のように過ぎ去ってゆく。
村人との何気ない会話とか、過酷な訓練の日々とか、受付嬢の愛らしい微笑みとか、友人の湯治に付き合って出向いたユクモ村の温泉とか、教官の寒いダジャレとか、初めて自分で肉を焼いて食べた事とか、アイルーをマタタビで酔わせてお腹に顔を埋めた事などなど━━━本当に様々な事が脳裏を
そして、ラージャンの目がクワッと見開かれ━━━
━━━脱兎の如く逃げ出した。
「…………ぇ……?」
何が起こったのか理解出来ず、彼女は呆けてしまう。
が、すぐ近くで土を掘り返す様な音が聞こえ、悲鳴をあげて尻もちをついた。
振り返ってみれば、音の正体はオトモのアイルー。
━━━コイツ、危険を察知して、いち早くこの場から逃げてやがったな。
彼女はそう思ったが、それは無理からぬ事。大した戦闘力を持たないアイルーでは、圧倒的な強者を前にしたら本能的に逃げてしまうのだ。
……中には数匹で行動してリオレウスやジンオウガ、果てはイビルジョーなどの超危険な大型モンスターを狩猟してしまう猛者アイルーが居るらしいが、今のところそんなヤバいアイルーはベルナ村の超人ハンターが雇用しているオトモアイルーぐらいだ。
中堅ハンターの彼女が雇っている貧弱一般アイルーからすれば、そんなモノは眉唾ものの
その貧弱一般アイルーは、心配そうに彼女の元へ歩み寄ろうとして、途中で足を止めた。
疑問に思った彼女が問いかけてみたら、アンモニア臭が強くて鼻が曲がりそうとの事。
彼女の股間は、酷く湿っている。
彼女は、穴があったら入りたい気分になった。
★
そんなこんなでハンター達に存在を知られたラージャンだが、古龍観測隊はそのラージャンを『特異過ぎる』と言った。
何故ならば、そのラージャンはハンターに出会っては余所へ逃げ。ティガレックスやディアブロスに追いかけ回されては余所へ逃げ。ドスランポス如きに対面しただけでも余所へ逃げ。
挙句の果てに、雪山でポポの子供と一緒に日向ぼっこをしていた所、親ポポに見つかって角でどつかれただけでも逃げ出していたからだ。
本来ならば、相手がティガレックスだろうがディアブロスだろうが、果ては一部の古龍にすら突っ掛かっていく程に気性が荒い、超攻撃的生物であるラージャンが、ポポにどつかれただけで逃げる。
そんな事は観測史上、初めての事であった。
それだけにハンターズギルドでは、このラージャンの処遇を決めかねていた。
酷く臆病ではあるが、相手はラージャン。
しかも、ラージャンは雑食性で肉も魚も木の実も食べる事が知られているが、この個体が好んで食しているのが、ヒーラカの実である。
このヒーラカという実だが、もぎ取るのは非常に簡単であるものの、その殻は異常に硬い。ハンターのズバ抜けた切れ味を誇る武器でも刃が通らない程に硬い。
武具に使えそうと思うかもしれないが、ヒーラカの殻は時間が経てば経つほどに劣化してゆき、いずれは土に還ってしまうという特性を持つ。
一流の加工屋が武具にこの殻を使った事があるが、この「劣化してゆく」という特性だけはどうにもならず、結果ヒーラカの実は加工に使えないという事になったとか。
人類は未だ、ヒーラカの実に存在価値を見出す事が出来ていない。
閑話休題。
特異個体の臆病ラージャンだが、なんとヒーラカの殻を指で砕いて、中の実を食しているのだ。
はっきり言って、異常な握力である。そんな事は、通常のラージャンでも出来ないのではないか。
仮にこのラージャンがハンターと戦うのなら、捕まえて握り潰すだけで勝敗は決するだろう。何なら、岩竜と呼ばれる程に硬いバサルモスの体すら握り潰せるのではないだろうか。
下手にハンターを送り込んで刺激しようものなら、内に秘めた凶暴性が目覚めて暴れまわる可能性がある。その時の戦闘力は、もしかしたら通常のラージャン以上なのかもしれない。
幸いと言って良いのか疑問だが、放置していても特に生態系や人間への害はなく、色々な場所で色々なモンスターから逃げ回るだけだ。
仮にココット村やポッケ村、ユクモ村やベルナ村に駐在している特級ハンター達に狩猟を依頼しても、結局は逃げて他の地へ移動してしまうだろう。
現状、静観する以外の選択肢は無かった。
★
それから一月ほど経っただろうか。あの特異個体ラージャンに動きがあった。
いや、色々なモンスターから逃げ回っているので動き回ってはいるのだが、進展があったという意味だ。
いつもの様にモンスターから逃げ回っていた特異個体ラージャンだが、逃げ込んだ先である森の中には、あの幻獣キリンが居るのだ。
ラージャンと言えば、興奮状態になると体毛が金色に変わる事が有名だろう。
しかし、この現象━━━闘気化と呼称されているが、成長したら全ての個体が闘気化を出来るという訳ではない。
ラージャンの体内には発電器官があり、それにはリミッターが掛けられている。そのリミッターを解除しない限り、ラージャンは闘気化も発電も出来ないという報告が上がっている。
そして、そのリミッターを解除する方法が、キリンの蒼角を摂取する事なのだ。
これはマズイ事態になったと観測隊は思った。
恐らくだが、あの特異個体ラージャンはキリンの蒼角を摂取していないだろう。今まで観測してきて、一度も闘気化を行った所を見ていないからだ。
もしも、あの特異個体ラージャンがキリンの蒼角を摂取したら。そして、闘気化を身につけたとしたら。その戦闘力は、一体どれ程のものになるのか。
ヒーラカの実を指で砕くほどの力を備えているのだ。通常のラージャン以上の戦闘力に至る可能性が高い。
……逆に、全く戦おうとしないので、通常のラージャンより弱い可能性もあるが。
どちらにしても、ラージャンはラージャンだ。もしも凶暴になって暴れ回れば、多少弱くとも危険度は火竜や角竜などの比ではないだろう。
何にせよ、両者の接触を止める術など観測隊にはない。彼等に出来る事は、対象を観測し続け、ハンターズギルドに報告する事だけだ。
そして、ラージャンとキリンの両者が互いの姿を視認する。
……動かない。
あのドスランポス如きと対面しただけでも逃走していた特異個体ラージャンが、キリンを前にしても逃げ出さない。
やはり本能によるものなのか。特異個体といえど、本能には逆らえなかったのか。
しばらくすると、キリンはラージャンから視線を外して、近場の草を食べ始めた。特異個体ラージャンを「脅威ではない」と判断したのだろうか。
更に少しして、ラージャンの方もキリンから視線を外し、近くのヒーラカの実を食べ始めた。
━━━杞憂だったか……。
観測隊はそう結論付けたが、しかし油断は禁物。いつ、気が変わってラージャンがキリンに襲い掛かるか、分かったものではない。彼等は今しばらく観測を続ける事にした。
そして、ふと気付く。あの二頭が居る辺りが快晴であるという事に。
キリンが存在する場所は、必ず空が雷雲に覆われる筈だ。少なくとも、今まで観測されたキリンが出没した地域はそうだった。
しかし、特異個体ラージャンと共に居るキリンの上空には、それらしい雲は全く見当たらない。美しい青空が広がっているだけだ。
もしや、あのキリンも特異個体なのではないだろうか。特異個体ラージャンを危険視しないのは、そこに理由があるのではないか。
そんな考えが観測隊の脳裏を過る。
それから数分後、キリンが行動を起こす。
なんと、自らラージャンの方へと寄って行くではないか。
手を伸ばせば届く程に近い距離だ。もしもあのラージャンがその気になったら、命が無いという事に気付いていないのだろうか?
そして、ラージャンもキリンがすぐ側に居る事に気が付いた。
互いにじっと見つめ合う。
そして、ついにラージャンがその手を伸ばし━━━キリンの方も、その手に顔を近付ける。
一体、何をしているのか。望遠レンズで観測してはいるものの、観測隊の位置からはかなりの距離がある。特異個体ラージャンは勘が鋭く、近付き過ぎると気取られて逃げてしまうからだ。
ふと、キリンがその場で飛び回り始めた。何を興奮しているのか分からないが、ラージャンの方は逃げる素振りを見せない。
そして、キリンはラージャンに擦り寄り、二頭はピッタリとくっついていた。
━━━馬鹿な。
そんな言葉しか浮かばなかった。
天敵である筈のラージャンに、キリンが擦り寄るという現実。一体、何が原因でそんな事になっているのか、もはや観測隊の脳では完全に理解不能だった。
そもそもにして、キリンとは孤高な生物である。同族以外には決して心を許さず、かといって群れる事もない。
古龍種と認定されており、他の古龍種と比べて小さな
そんな気高い生物なのだ。
だというのに、アレは一体どういう事だ?
アレは本当にキリンなのか?
ただの見た目がキリンに似ているだけの、白くてデカいケルビではないのか?
ドスケルビ亜種か?
思わずそんな事を考えてしまう程に理解不能だった。
理解不能だが、面白い。
そのまま観測を続けようとしていたのだが、他の隊から連絡が入った。
何と、あのイビルジョーがこちらのエリア方面へ移動してくるかもしれないとの事。
イビルジョーといえば、ラージャンと同じぐらい獰猛で危険とされ、しかも完全なる肉食性で、その捕食対象は「ありとあらゆる生物」である。
その食欲は常軌を逸していて、イビルジョーが通った後は、如何な生物であろうと姿を消すと言われる程だ。
捕食出来る生物がいなくなれば、違う餌場を探して移動する。もはや、歩く災害と言っても過言ではない。
そんなものがやって来るとなれば、おちおち観測する事も出来ないだろう。奴は気球に向かって岩石を放り投げ、墜落させようとした前例もある。
逃げるにしても、街まで追いかけてこられたら被害が出るし、気球も永遠に空を飛び続けられる訳でもない。
非常に残念ではあるが、観測隊は撤退を余儀なくされた。
★
さて、ここで如何にしてあの特異個体ラージャンが誕生したのか、順を追って話そう。
まず、幼い頃に親を亡くしてしまったのが最大の原因だろう。
如何なラージャンとて、幼少期に厳しい自然環境の中で他のモンスターを相手に戦える戦闘力は備えていない。
故に逃げた。出会うもの全てから逃げて逃げて逃げて、逃げ続けた。
それは成長して成獣になっても変わらず、攻撃性のある生物であれば大小問わず逃げるのが癖になってしまった。
それ故に、このラージャンは自分が強者である自覚も自信も持ち合わせていない。
砂漠に行ってはディアブロスに追いかけ回され。
密林に行ってはティガレックスに追いかけ回され。
洞窟に逃げ込んでみれば、ドスランポスに威嚇され。
危険性の無いであろうポポ達と一緒に雪山で日向ぼっこしていて、子供のポポに絡まっていた枝葉を取り除いてあげたら、襲おうとしていると勘違いされて親ポポにド突かれ。
そうやって各地を転々としながら、今日まで生き延びてきたのである。
しかも、逃走ばかりだった所為か逃げるのがやたらと上手く、目立った外傷も無いままに。
そんな風に孤独な日々を過ごしていたある日、ラージャンはキリンと出会った。
今まで見た事がないほどに美しい生物を前に、思わず見入ってしまう程に綺麗だと感じた。
しばらく見つめ合っていた両者であるが、やがてキリンの方が興味を無くしたように近場の草を食べ始めた。
それを見て危険性は無いと判断したラージャンも、近くに実っていたヒーラカの実をもぎ取り、殻を砕いて食べ始める。
さて、何故このラージャンがヒーラカの実を食べるようになったかだが、それはこの実がどの地方に行っても実っていたからである。
砂漠や火山のような灼熱の大地だろうが、反対に雪山のような極寒の大地だろうが、一年中実を付けているという驚異的な生命力を持った実なのだ。下手な雑草より強い生命力である。
しかも、殻が異常に硬いので、どんな生物も直接もぎ取って食べようとしない。つまりは、他の生物に食べ尽くされる心配はなく、いつでもどこでも食べられる最高の実なのだ。
しかして、さしものラージャンといえど、初めから殻を砕く事が出来ていた訳ではない。
初めて食べた時は、地面に落ちていた殻が劣化したものを砕いて中身を食したのだが、それが非常に美味だった。
それを
直接もぎ取ってみた物は百パーセント割る事が出来ず。落ちていた物を砕こうとしてみたら、全く割れない物と比較的容易く割れる物がある事を知り。
その理由が分かるほど頭が良い訳ではなかったラージャンは、落ちている物を片っ端から割っていく事に決めた。
そうして段々と指の力が鍛え上げられ、
閑話休題。
さて、大人しくヒーラカの実を食べていたラージャンだが、ふと背後に気配を感じて振り返ってみれば、先程の美しい獣がすぐ近くでラージャンをじっと見つめていた。
いや、正確にはラージャンの手元をじっと見つめていた。
真横に居た事に気付いてビクッとなったラージャンだが、キリンの方は特に反応も無く、ただただラージャンの手元をじっと見つめ続けている。
その視線の先には、ヒーラカの実。
特に何かを思った訳ではないが、ただ何となくヒーラカの実の中身を差し出してみると、キリンはラージャンの手から直接それを食べた。
すると、体を震わせながら小さく
いきなりそんな行動を取ったキリンにビクつきながらも、危険な様子は無かったのでラージャンは逃げなかった。
が、その直後━━━キリンが擦り寄ってきた事には困惑した。
今の今まで、ラージャンは敵意を向けられた事はあっても、親愛の情を向けられた事など一度もなかったのだ。
それ故にキリンの意図が分からず、ただただ困惑した。
そんなラージャンの胸中など知らずに「もっとくれ」と催促するキリン。
この後めちゃくちゃ餌付けした。
★
そんな事もあってか、ラージャンとキリンは行動を共にするようになった。
外敵に襲われた際は、キリンが蹴散らしてくれるので、逃げる必要性が無くなった。というか、殆どのモンスターはキリンの姿を見ただけで逃げるので、そもそも襲われるような事も殆ど無くなったが。
そして、キリンはヒーラカの実を食べられてハッピー。余程気に入ったようである。
ラージャンとキリンは持ちつ持たれつ、ギブアンドテイクな関係だ。
それだけでなく、お互いの体を毛繕いしあったり、一緒に抱き合って日向ぼっこしたりと、仲睦まじい様子も見せている。
人間がその光景を見たら、天変地異の前触れかと疑う事だろう。実際、観測隊所属の者の中にも、そんな事を抜かしていた奴は居た。
そう、この二頭の事は既にハンターズギルドまで知れ渡っている。
ギルドが出した結論は「静観」であった。
正直なところ、二頭とも害らしい害が無いのである。
まず、特異個体ラージャンはどの生物とも争う気がなく、ヒーラカの実や果物を主食としており、生態系への被害はない。
元々、ポポ如きに追いやられていた程に温厚な個体である。最近では、森のケルビ達ですらラージャンの姿を見ても逃げなくなっていた。
そしてキリンの方も、本来であれば雷雲を呼び寄せ、付近の生物は逃げ惑うところであるが、雷雲を呼ぶ事もなく。
実力差も分からず突っ掛かってくる、ティガレックスのような輩を撃退する時でさえも空は快晴のままで、体に蓄えた雷を放電するだけで追い返していた。
この観点から、キリンの方も特異個体だと言えるであろう。
そんな二頭を狩猟する必要などあるだろうか?
答えは否である。どちらかに手を出せば、片方が怒り狂って襲い掛かってくる可能性が非常に高い。
故に、一利も無いけど一害も無い二頭は放置して問題ないという結論になった。
そんな人間側の事情など
キリンは意外と肉や魚以外なら、大体の物を食べるらしい。無論、全てのキリンがそうだという訳ではないのだが、少なくとも特異個体キリンは特異個体ラージャンと同じ物を食べている。
ぺたぺたした食感のペタリンゴに、通常の物と比べて二回りほど大きいビックりモモ。その二つを、ラージャンは腕いっぱいに抱えていた。
後は、お気に入りのヒーラカの実を幾つか採ってキリンの元へ戻ろうとしていたが、そこで異変に気付く。
つい先程まで快晴だった筈の空が、いつのまにか雷雲に覆われていたのだ。こんな事は初めてである。
何だか嫌な予感がしてきたラージャンは、キリンと合流すべく、腕に果物を抱えたまま元来た道を引き返した。
しばらくすると、開けた場所に出て━━━そこには、ラージャンの数倍以上の大きさの化け物が居た。
イビルジョーだ。……が、通常種と比べると何かがおかしい。
まず、通常種よりも一回り体躯が大きい。元々、全高六メートル、体長二十メートルという巨体が、更に一回り大きいのである。
目は赤く血走り、緑色だった外皮は漆黒に。首から尻尾にかけて、上部が所々真紅に光を放ち、口からは禍々しく漂うドス黒いオーラのようなものが漏れ出している。
ハンター達が「怒り喰らうイビルジョー」と呼んでいる怪物だ。
亜種という訳ではなく、特殊個体として扱われている。あまりにも危険過ぎる為だ。
何しろ、並みの古龍以上の戦闘力を秘めているという報告があがっている。
そもそも、古龍自体が天災に匹敵する程の力を持っている怪物なのだが、コイツはそんな古龍を
故に、ハンターズギルドは特級ハンターを除く全てのハンターに「遭遇即撤退」を徹底させている。
そんな怪物を前に、臆病なラージャンは逃げなかった。というか、放心したように一点を見つめたまま動かなかった。
その視線の先には━━━イビルジョーが首元に噛み付いて振り回している、キリンの体。
やがて、キリンの頭と胴体が千切れて投げ出され、ボトリと地面に落ちた。
咆哮をあげるイビルジョー。何が起こっているのか理解が追いつかず、放心したままのラージャン。
そこで、イビルジョーはラージャンの存在に気が付いた。迷わず駆け出し、体当たりを仕掛ける。
眼前に迫るまで呆けていたラージャンは、これに直撃。凄まじい衝撃を体に受けて吹き飛び、近くの岩壁に頭から叩き付けられ、左の角がへし折れた。
その所為で視界がぐらりと揺れる。角は頭蓋骨と繋がっているので、脳が揺さぶられたのだろう。
その隙にイビルジョーが襲い掛かる━━━事もなく、ラージャンの集めた果物を貪り食っていた。
しかし、イビルジョーにとっては腹の足しにもならない量である。すぐに平らげてしまったイビルジョーは、ラージャンへと襲い掛かった。
右腕に噛み付き、玩具のように振り回し始めたが、痛みに暴れたラージャンの左手がイビルジョーの目に直撃し、その痛みで解放されたラージャンは放物線を描いて地面に叩きつけられる。
その眼前には、今日まで共に暮らしていたキリンの頭が転がっていた。
物言わぬ
そもそも、ラージャンがここに来るまでの間、悲鳴の一つも聞こえてこなかった。あのイビルジョーは手痛い反撃を受けた事に腹を立て、キリンが絶命した後も八つ当たりをするかの様に、玩具の如く振り回して嬲っていたのである。
そんな事まではラージャンには分からなかったが、ただ自分の友は死に、イビルジョーに殺されたのだという事実は理解した。
その瞬間、ラージャンは自分の胸の内から、何かドス黒い物がふつふつと湧き上がってくるのを感じた。
そして━━━
━━━聞く者を震え上がらせる怒りの咆哮をあげると同時、全身の毛が黄金へと変色し、まさしく怒髪天を衝くように逆立った。
しかも、体が二回りほどメキメキと大きくなり、炎の様に揺らめく黄金のオーラを身に纏っている。
まるで面影を感じさせない変貌を遂げたラージャンに対し、イビルジョーも負けじと咆哮をあげてラージャンに襲い掛かった。
左腕へと噛み付き━━━持ち上げて振り回すよりも先に、ラージャンが右手でイビルジョーの鼻面を掴み、握り潰さんとする程の力を込めた。
凄まじい激痛が鼻面に走り、思わず口を離したイビルジョーだが、ラージャンの方は離さない。
更に左手で下顎を掴み、引き千切らんとする勢いで左右に引っ張った。
凄まじいまでの膂力だ。バサルモスすらも容易に噛み砕く顎の力を持つイビルジョーが、上顎と下顎を掴まれて口を閉じる事も出来ず、ただただ
が、イビルジョーの足掻きは無駄ではなかった。
ラージャンの指はイビルジョーの肉を抉り取り、その際にも足掻いていたので、血肉で滑って手離してしまったのだ。
自由になったイビルジョーは、悲鳴をあげながら
しかし、そこへラージャンの拳が飛んできて、イビルジョーの横面に直撃。コマの様に数回転した後、地面に倒れ伏した。
頭蓋骨にはヒビが入り、脳を揺らされ激痛と共に意識が飛んで動かなくなったイビルジョーだが、ラージャンは止まらない。
顔面目掛けて拳を振り下ろし、イビルジョーの頭は跡形もなく砕け散って完全に絶命した。
骸となっても攻撃は止まらず、肉を引き千切り、骨を握り潰し、体を踏み潰す。
何度も何度も何度も繰り返し、そして━━━イビルジョーの体は、文字通り跡形もなくなった。
後に残ったのは、
そこでようやく我に返ったらしい。炎の様に揺らめいていた黄金のオーラは消え、しかして全身の毛は黄金に変わったままだ。
ラージャンはキリンの頭を優しく抱き上げると、悲しみの咆哮をあげた。
その日を
そのラージャンの調査が進められ、ハンターズギルドはこのラージャンを「
穏やかな心を持ちながら、激しい怒りによって目覚めた伝説の戦士━━━
なんつってね。
最初、小説のタイトルを「伝説の超ラージャン」にしようとしてたけどやめました。今のタイトルも気に入ってはないので変えるかも……。
この小説ですが、ピ○シブ百科事典のラージャンの項目を読んでいてポッと思いついたんですよね。四日で書き上げました。
モンスターの設定とか見てみると面白いですよ。ラージャンがキリンの蒼角を摂取して闘気化するようになるとか、初めて知りました。ワールドやらなかったので。
それから、その後の話をもう一話だけやろうと思います。
如何なる理由があってハンターズギルドはラージャンを「特別危険指定生物」とし、交戦の一切を禁じたのか。ラージャンはどのように行動しているのか。
その辺りについての解説とかとか。
ここに足したら長くなり過ぎるので、分けます……。
感想は読ませて頂きますが、返信等は行いません。どうしても気になったものは、この後書きに説明とかを追加しようと思います。
後半へ続く!
以下は解説になります。
・特級ハンター
それぞれのシリーズの主人公達の事。圧倒的な力を持つ古龍種を、一人で仕留める実力を持つ猛者達。
あなた方の事ですよ。
たった一人(オトモが居る場合もあり)であらゆるモンスターを狩猟し、時には最大四人で徒党を組んでモンスターに襲い掛かる怪物共英雄達。ある意味、世界最強のモンスター生物。
モンハン界ではシリーズが変わる毎に彼ら(彼女ら)の功績は無かった事になっていますが、何となく納得がいかないので存在してる事にしました。そっちの方が話を創りやす(ry
というか、コイツら居なかったら人類滅ぶのでは……。
・ヒーラカの実
そんな物はモンハン界に存在しません。
ヒーラカはサンスクリット語で「ダイヤモンド」に当たるそうです。
話の都合上、何か硬い木の実を出そうと思っていたのですが、調べるのが面倒だったので、でっち上げました。
名前をどうしようか迷っていたところ、ラージャンという言葉はサンスクリット語で「王」という意味があると知ったので、同じサンスクリット語で硬いを意味する単語ってなんだろなと調べたら、金剛という言葉が。
金剛とは、サンスクリット語でヴァジュラらしいですね。
でも、ヴァジュラの実って名前は安直だなーと更に調べていたら、ダイヤモンドはヒーラカと呼ばれているらしいと知り。
他に候補も無かった(調べても碌に出て来なかった)ので、ヒーラカの実になりましたとさ。
名前考えるのあんまり得意じゃないんですよ……。
因みに殻が劣化していくのは、鳥とかに遠くに運んでもらって、そこで殻が腐って中身をぶちまけ、根を下ろすからという設定があったりします。
作中で説明しろよ……。
・ペタリンゴ
これはモンハン界に存在します。
「ペタペタした食感が味わえるリンゴ」としか書いてなかったので、どのシリーズのどういう食材なのかは不明。
ペタリンゴで調べたらポカポカアイルー村が出てくるので、そこが初出か。
・ビックりモモ
そんな物はモンハン界に存在しません。
ていうか、念の為にググったらあつ森の「桃のビックリばこ」が出てきたので、そんな言葉も存在しない模様。
リンゴだけだと淋しいかと思い、もう一個フルーツが欲しいと調べたけど、季節や地方によってはペタリンゴと一緒にあったらおかしい物もあるかもしれない。そもそもペタリンゴがどこに実るのか知らないのにどうして使ったのかコレガワカラナイ
じゃあ、でっち上げるか。
↓
リンゴと桃は時期的に一応被ってるな。
↓
デカい方が食い出があっていいな。
↓
びっくりするほどビックなモモ
↓
ビックりモモ
名前考えるのあんまり(ry
ビックりピーチの方が良かった気がしないでもない。
どっちにしてもクソダサ(ry
・キリンって草以外食べるの?
知らぬ。
調べたら草食とは書いてあった。
いいんだよ、コイツは特異個体だから(暴論)。
追記
・感想欄で二つ名募集はヤバくない? 規約に抵触するのでは?
確かに。
あぶねー! よくぞ教えて下さいました感謝感激雨あられ!
という訳で、活動報告を作りましたので、もし何か良い二つ名を閃いた方はそちらまでお願い致しますm(_ _)m
ネーミングセンスの恵まれない作者の代わりに、ラージャン君に清き二つ名を!